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改変された世界の片隅で ~千本松光樹視点~ その5


 移動中の電車内では、特に目立った変化は見られなかった。

 ラッシュ時だとまた違うのかもしれないが、少なくともその時間帯から外れたいまの時間帯だと、車内の様子にほとんど変化は見られない。設備的な意味でも、特に変わった物はなかった。

(相変わらずすごい格好をした女はいるけど……)

 俺は車両の隅の席に座り、さりげなく車両内を見渡した。

 ベビーカーを押して、ドアの近くを陣取っている女性の姿がまず目に入った。

 いかにもまだ若い新米ママという風貌だったが、彼女はとても乳幼児を連れている者の格好ではなかった。


 その女は、全身タイツのような服を身に付けていた。


 淡いピンク色であるため、非常に目立つ。首から下の体にぴっちりと張り付き、その体のラインを完璧に浮かび上がらせ、エロティックな雰囲気を滲み出している。

 足にはヒールのついた靴を身に着けていて、全身タイツのような格好には似合っているが、子供を連れているシチュエーションには似合わないものだった。

 肉便器やポニーガールが身に付けていたラバースーツとは違い、艶かしさよりも柔らかさを感じる見た目だ。

(材質自体が違うみたいだから、当たり前だけどな……)

 極薄のラバースーツというわけではない。とても肌触りの良いタイツなのだろう。

 触りたくなるが、この世界で痴漢行為がどういう風に扱われるかわからない以上、いまは我慢するしかない。

(俺だったら男が女に触れても罰しない……ってことにするけど、そういう自覚のない接触で感じられても、って感じはするし、何よりあんまりなんでもかんでもオーケーっていうのも、逆にエロくなくなるしなぁ)

 そもそも、痴漢行為はスリルなども含めてのものであって、普通に許されていると、それは痴漢行為として成り立たない気がする。単なるスキンシップになってしまうからだ。

 俺はそこまで痴漢という行為に思い入れがあるわけじゃないから、正直理解はできないのだが、禁止されるからこそ燃え上がるということもあるだろう。

 痴漢が許可されているか、それとも禁止されているかは、世界を改変した奴の考え次第と言えた。

(まあ、そういうことはあいつが調べてるだろうから帰ったら聞いてみよ……)

 政夫は慎重派だから、安全に行動するために色々調べているだろう。何がダメで何をしていいのかは細かく調べているはずだ。

(いや、待てよ。いまスマホで調べてみるか?)

 そういう手段もあったなと、スマホに手を伸ばしかける。暗黙の常識・マナーの範疇になるとネットでも調べにくいが、調べてみる価値はある。

 その時、突然大きな泣き声が聞こえてきて、思わず手が止まった。

 声がした方をみると、全身タイツの人妻が、ベビーカーに乗っていた子供を抱き上げてあやしているところだった。

 どうやら何かの理由で子供が泣き出してしまったようだ。

 子供が泣く声は車両中に響き渡る。それに反応して、そちらにちらりと視線を向けている者もいた。

(おっ、チャンス!)

 俺もその流れに便乗し、子供をあやす彼女に対して視線を向けることができた。

 視界の端でしかみられなかった時とは違って、細部までよく見える。

(うぉ……やっぱ……エロいな)

 とても経産婦とは思えない、抜群のスタイルだった。

 母乳が溜まっていることもあるのか、俺の片手には余りそうな、巨大なおっぱいが柔らかな素材のタイツに包まれて揺れている。

 全身タイツは実に柔らかそうな素材だったが、おっぱいの形を維持する程度の機能はあるようだ。

 そして、よくみると先端部の突起の形状がそのまま浮かび上がっていて、非常にエロい。

(……でもあれ、脱ぐのも着るのも大変そうだけど……どうやって授乳してるんだ?) 

 ふと、そんな疑問が湧いた。

 その疑問の答えはすぐにわかった。どうやら子供が泣き出したのは空腹故のことだったらしく、母乳をあげる必要があったようなのだ。

 どうやって乳房を曝け出すのか。興味を持って見守る。

 俺の視線の先で、幼児を抱えた女が首元に手をやったかと思うと、ジッパーを下ろすようにそのタイツが裂け、全身タイツの前面が開いていった。

 タイツが裂けたように見えるが、おそらくはジッパーのようなものがあるのだろう、ぺろり、という擬音が聞こえそうな動きでタイツが捲れ、その柔らかそうで大きなおっぱいが曝け出される。

 本来なら、あるていど隠しながら行う行為だが、まるで躊躇無く乳房を曝け出している辺り、ちゃんと常識が改変されている証拠だった。

 周りも全く動じることなく、その光景を受け入れている。まあ、こと授乳に関しては、本来エロいものではなく、必要に応じての行為だから、周りの反応はこうあるべきな気もするが。

 改変された世界の常識ではない常識にいる俺には、彼女の姿はとてもエロいものに思えてしまう。

 乳幼児が曝け出された乳首に吸い付き、母乳を貪る。

「ん……っ、あふ……」

 子供が乳首に吸い付いた途端、母親の方は顔を赤くして微かに喘ぎ声をあげた。ただの授乳で感じるのは不自然だが、おそらく「乳首を吸われるとシチュエーション問わず感じる」風に改変がされているのだろう。

 身体的な構造まで改変はできないようだが、普通に性感帯を開発することはでき、どんな刺激に対しても感じるように精神を弄る程度は容易、といったところか。

 母親の格好や反応がなければ、乳幼児に母乳を与える、という穏やかな光景なのだが。

(眼福眼福……)

 改変前の常識で見ている俺にとっては、非常にエロい光景で、実に楽しめるものだった。

 そうしていると、電車が次の駅にとまった。

 その駅では、遠足にいくのかなんなのか、学校の生徒らしき集団がホームで待っていた。

 迷子防止にか、二人一組になって、引率の教師に従って乗り込んでくる。比較的落ち着いた学校の生徒なのだろう、特に騒ぐことなく、子供同士が少し話している程度で、躾の行き届いた様子だった。

 これだけなら、いままでにもたまに見かけていた光景だ。

 今回の子供たちは落ち着いているが、騒がしい悪ガキどもに出くわしたら、あまり子供が好きではない俺にとっては最悪の状況だった。

 しかし改変された世界においては、そんな子供たちも俺を楽しませてくれる存在になっていた。

(フィクションだとよく見たが……リアルになると、ちょっとやべえな)

 俺個人はロリコンでもショタコンでもないつもりだが、目の前の光景はそういった年齢が若いとか幼いとかいう範疇を超えていた。

 まず、二人一組になっているというのは、男女のペアだった。そして、男の方は見た限りでは特に変化がない。異常な姿に変わっているのは、女子の方だ。


 彼女たちは歩くための足以外、体を完全に拘束されていた。


 首に巻かれた無骨な金属の首輪から伸びたリードを、その子のペアになっている男子が握っている。

 頭部は髪型が崩れない程度に、目隠し、耳当て、口枷がそれぞれの器官を封印している。

 目が見えず、耳も聞こえず、口も利けない彼女たちは、リードに牽かれるまま歩かなければならないわけだ。

 さらに、体の方もかなりの拘束がなされている。その未成熟な体を縛り付けているのは、拘束衣と呼ばれる類のものだった。色は白で、囚人のような者が身につける物のようだった。

 両腕の袖がかなり長くなっていて、自分で自分のお腹を抱えるような体勢から動かせないよう、背中側で袖先が固定されているようだ。太いベルトが拘束衣ごと彼女たちの上半身を縛り上げている。腰から上は捻ったり曲げたりすることも難しいだろう。

 拘束衣の裾はそれほど長くなく、ヘソの下くらいまでしかなかった。それはつまり、ガチガチに拘束された上半身に対し、下半身はほぼ丸出しということになる。

 可愛らしい臀部や、眩く輝く白い太ももが露出している。

 股間には拘束衣から伸びる太いベルトが縦断しており、秘部や肛門をしっかり覆いつつも食い込んでいる。彼女たちが上半身を揺する度に、ベルトがギシギシと食い込んで軋む音がしていた。

 街中を歩くのに裸足では危険だからだろう。足にはちゃんと靴下とスニーカーを履いていた。しかしその普通さが逆に、体の拘束度合いの異常さを際立たせていた。

(しっかし、えげつねえな……)

 改変前の世界でやろうものなら、性的虐待もいいところだし、幼い子供に対するしうちにしては中々にえげつない。少々子供たちに同情してしまう。

 まあ、その光景を見て興奮してしまっている俺には、そんなことをいう資格は無いのだが。

 首輪に繋がれたリードを引いている男子たちは、ほとんど自由を奪われた少女たちを丁寧に導いていた。普通、あのくらいの年頃の男子なら、自分の興味に任せて好き勝手行動する悪ガキがひとりふたりはいそうなものだが、異様なほど素直に女子たちを導いている。不意に蹴躓いて転びかけても、即座にフォローができるほど、女の子の様子に集中しているようだった。

(ふむ……男は男で、女子を映させるための舞台装置扱いってわけか)

 そう感じてよく観察してみれば、男子たちの行動には、ほとんど個性らしきものが感じられなかった。一見、完全に拘束されて一切の自由がなさそうな女子の方が、微妙な体の動きなどが違い、まだ個性を感じる。

 改変されているのは女子だけではない、というのはわかっていたが、改めてそれを理解すると、なんとも恐ろしい話である。

 数駅移動したところで、その子供たちは降りて行った。

 その後も、乗り込んでくる新しい客の格好などを楽しみつつ、俺はついにこのあたりでは一番の都会へとたどり着いた。

 駅のホームに降りた瞬間、俺はさっそく改変された要素を見つける。


 ホームの待合室に、壁尻が設置されていた。


 透明な仕切りに覆われた密閉空間、というのは普通の待合室と変わらない。

 だが、その待合室の壁には、真白い柔らかそうな尻が生えていた。それもひとつではなく、等間隔に五つもだ。

 尻が生えている壁は透明ではないため、その尻の繋がっている向こうがどうなっているかはわからない。どんな女性が尻を差し出しているかもわからないが、とにかく肉付きのいい尻が並んでいた。

 電車を待っている間は、誰でも使っていいらしく、サラリーマン風の男が壁の尻の前に立って、股間から取り出したチンコを壁尻の性器に突き入れていた。

 前後にピストン運動をした後、一際強く腰を押し込んで射精したようだ。

 少し萎えた様子のチンコを引き抜くと、壁尻のすぐ上に用意されていたティッシュのようなものを使い、ペニスを拭って自分で後始末をする。

 その後、使ったティッシュのようなものを壁尻の肛門に無造作に突っ込んだ。

(後ろの穴はごみ箱扱いなのか……えぐいな)

 朝のラッシュ大量に詰め込まれたら健康的にやばそうだ。

 そう思っていると、壁尻を使用した男がそれから離れると同時に、その壁尻は壁の中へと消えていった。どうやら使用されるごとに洗浄しているようだ。それならば衛生的には問題ないのかもしれない。

 しばらく壁尻が一個欠けた状態になっていたが、観察しているとまた壁の中から白い尻が生えてきた。

(さっきと同じ奴、か? 尻だけじゃなんとも言えないが……色的にさっきと違う奴なような気もするなぁ)

 肌の色が違えばわかりやすいのだが。さっきに比べると少しだけむっちりしているような気もする。

 いずれにせよ、駅の構内にそんなものが用意されているほど、大規模な改変がされているということはわかった。

(色んなものが見れて楽しめそうだ。……でも)

 ホームの待合室だけで、最低でも五人もの女性が使われている。

 ほとんどの女性が、そんな風に設備的な感覚で使われているとすると。

(女の数が足りなくなったりしないのかねぇ? 物理法則に反することはさせられないってことになると、一気に出産させたり、成長を促進させたりってことも無理だよな?)

 元々世界には山ほど人間がいるとはいえ、さすがにこんな調子で全世界で使用されていたら、若い女性の数が足りなくなりそうである。

(……ま、いっか!)

 俺は楽しめればそれでいいのだ。

 細かいこと、難しいこと、面倒なことは改変者が考えるべきことであって、俺はそれの尻馬に乗って楽しませてもらうだけである。

 壁尻はスルーして、俺は駅の外へと向かう。


 改札を抜けて出た先の駅ビルでは、さらに夢のような――女性にとっては悪夢かもしれないが――光景が広がっていた。



千本松光樹視点 その6 につづく


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