改変された世界の片隅で ~千本松光樹視点~ その6
Added 2020-02-24 14:34:31 +0000 UTC駅から直結の大型商業施設の中には、華々しい天国が広がっていた。
ただし男にとっては、という意味だが。
(すっげぇ……なんだこれ。やばすぎるだろ……)
そのビルの正面入り口は、数階分が吹き抜けになっていてかなり広いホールになっている。
ショーや展示会など、催事が開かれることもあるような所だから、広くて当然ではある。
現在そこは、女たちをエロティックに飾るための場所になっていた。
まず目に付いたのは、天井からぶら下げられている、巨大なシャンデリアーーのようなものだ。
昨日まではどこかの帝国ホテルだかなんだかで実際に使われていた、本物のシャンデリアだった。それをデパートの内装として持ってきたとかで、ごく普通のデパートを飾るには絢爛豪華すぎるものだったと俺は記憶している。
いま現在、そのシャンデリアはなくなっていて、代わりに縄で芸術的に縛り上げられた女体が吊り下げられていた。
いわゆる緊縛の吊りという奴だが、その規模が尋常じゃない。
数十人から成る連縛によって、巨大なシャンデリアが構成されていたのだ。
ポーズも背格好も様々だったが、共通してるのはシャンデリアのどの部分を形成している女も、一際美しい風貌をしているということだろうか。スタイルについては緊縛されていることもあってよくわからないが、極端に太っていたり、ガリガリだったり、胸がなかったりする女はいなさそうだった。
そんないままでの世界で言えば、男を侍らせて豪遊三昧だったであろう美女たちが、ただのシャンデリアの一部品に落とし込まれて、吊るされている。
(とんでもねえな……しかし、肉体的に大丈夫なのかよ……)
緊縛における吊りという行為は、体に大きな負担をかけるはずだ。肉体構造が変えられない以上、そんな負担がかかる吊り方はしていないと思うのだが。
そんな配慮がなされている様には思えないレベルで吊るされている。
まさかすべての女を一本の縄で縛っているわけではないとは思うが、もしかしたらそこまで拘っているのかもしれないと思える程度には、芸術度の高い吊り様だった。
シャンデリアを構成してる彼女たちは一様に全裸で、縄以外の着衣は一切身につけていない。
俺の親指ほどもありそうな太い荒縄がその柔肌に食い込んでいる。
かすかに身動ぎする際に響く軋む音は、縄からしているのか、それとも女たちの体からしているのか。
上下に渡された縄によってくびり出されたおっぱいや、コブ付きの縄が食い込んでいる股間。縄が結ばれることによって作られるコブは、股間に食い込む以外にも、彼女たちの口を塞いで、まともに声を上げられないようにしていた。
女たちは自由を奪われた不自由な状態で、呻き、もがく。
女たちで作られたシャンデリアは尖った先端が下を向く逆円錐の形を成している。
それぞれ色々なポーズで縛られているが、一番下になっている女は特にすごい格好でぶら下げられていた。
まず両腕は後ろに回し、両の掌を合わせてうなじあたりで拘束されている。確か合掌縛りと言われるものだ。
両足もうなじあたりで足首が交叉するようにねじ曲げられていて、彼女が軟体を誇る体だったとしても、大変キツそうな体勢になっていた。
手足を後ろに回しているため、亀甲縛りで絞り出された胴体がよく見える。
なにより、足が上にあげられていることで、大きく割り開かれた股間がよく見えるように曝け出されていた。
他の女達にも通されているコブ付きの股縄は、当然彼女にも施されている。
体勢が体勢なので、股間に縄のコブが食い込んでいる様子がとてもよく見えた。
どうやらコブは三つほど作られていて、それぞれ肛門、秘部、そしてクリトリスに正確に食い込んでいるようだった。
(うぇ……えぐいな……)
男の俺には女の股間の感覚はよくわからないが、あれだけ体に縄が食い込んでいたら痛いのはよくわかる。恥骨の形が変形してしまうのではないか、というくらいの食い込みようだ。
そんな状態で吊るされているだけでも辛いだろうが、シャンデリアの一番下になる彼女に与えられている苦しみは、それだけではなかった。
シャンデリアを形成している彼女たちには、周囲からスポットライトが当てられている。
それによって彼女たちの白い肌は輝きを見せ、いかにもシャンデリアっぽい見た目になっているわけだ。実際離れたところから見ている分には、非常に綺麗で美しいと言える。
だが、舞台などに立ったことがある者ならわかるだろうが、スポットライトの光というのは相当な熱を発するものなのだ。距離にもよるが、当てられ続けていたら自然と汗ばんでしまう程度には。
そんなものを四方八方から当てられ続けたらどうなるか。彼女たちは火に炙られているような感覚だろう。格好もあって炙り焼きにされるハムの気分かもしれないが。
サウナ、とまでは言い過ぎかもしれないが、夏の炎天下に放置されるのとそれほど大差はないはずだ。
ゆえに、彼女たちは滝のような汗を掻き、その体を縛る縄を湿らせている。彼女たちがかすかにもがくたびに汗は流れ、濃密な女の匂いが下にいる俺のところまで匂ってくるようだった。
全体がそうして灼熱地獄に晒されていることで、一番下にいる彼女はより苦しむ羽目になっていた。
女たちを吊るし、繋げている縄を伝って、汗や涎、あるいは愛液といった液体が流れていっているからだ。あえて狙わなければそんな風には流れないだろうから、狙ってのことなのだろう。
それらは一番下の女へと集中し、彼女の体をドロドロに汚していた。
汗であれ、唾液であれ、あるいは愛液であったとしてもーー要は上の方の女たちの老廃物である。
そんなものが全身にまとわりつくなど、潔癖症の人間ならそれだけで死にたくなる地獄だ。一部は口枷代わりの縄を伝って口の中にも入るだろうし、死にたくなっても不思議ではない。
俺は特別潔癖なわけではないが、そんな俺でさえ、そんな位置には絶対に立たされたくはなかった。
(常識が改変された奴が、どう感じているかはわかんねえけどな……)
ふと、俺はシャンデリアの女たちからなにやらキラキラしたものが、真下に向かって落ちていることに気付いた。
最底部となっている女。その股間に食い込む縄から、上方の女たちから滴り、集まった『女汁』とでもいうべきものが、シャンデリアの真下へと垂れ落ちていた。
それらはシャンデリアの真下に置かれているオブジェの中へと吸い込まれていっている。
オブジェはなにやら大きな優勝カップのようなもので、垂れ落ちる滴を受け止めるために設置されたのだろうことは明白だった。
女汁は自然蒸発よりも遥かに早いスピードで滴り落ちて来ているらしく、カップのオブジェの中はその液体でいっぱいで、溢れ出しているほどだった。
ちなみにカップから溢れ出した先にも受け皿はあり、左右的にはその受け皿に開いた排水溝らしきものの中へと液体は流れていっていた。
(わざわざ一度カップで受け止める意味はあんのか……?)
別に排水溝に直結でもいい気はする。
貯めておいている以上、何かに使うのかもしれないが、何に使えるのかどうかはわからない。儀式めいた何かを感じた。
不思議に思いつつ、俺は入り口で満足せずに、デパートの中を見て回ることにした。
普段はこんなデパートの中を見て回るなんてことはしないが、いまはとにかくどんな風に世界が変わっているか、興味があった。
キョロキョロ周りを見回しながらデパートの中を歩く俺の姿は、さぞ奇妙に見えていたことだろう。
常識が改変されても他人に興味がない現代人の性質はそのままであるらしく、基本的には無視されていたので、気兼ねなくデパートの中を見て回ることができた。
デパートの中は、とにかく異様で、かつエロい光景が広がっていた。
よくある話だが、デパートの一階は化粧品売り場であることが多い。
この世界でもそれは大筋として変わらなかったのだが、売られている化粧品とやらは、媚薬だとか精力剤だとか、そういったものが配合されているものばかりだった。
化粧品らしいものといえば、ボディペイント用の塗料が一番それらしかったかもしれない。本来の化粧品の類はおまけ程度にしか売られていなかった。
ある程度年嵩になった女性らがそういったものを購入し、若くて現役バリバリの女たちは皆普通ではない化粧品を身につけているようだった。
面白いのは、それらの『化粧品』のお店には、お試し要員として、そのための女性店員が待機していることだった。
彼女たちは一様に同じような笑顔で店先に立って、客によってその化粧品をつけられるのを受け入れている。
俺の目の前で、紳士風の男が化粧品を手に取っている。この世界では化粧品売り場に普通に男がいるのだ。おかげで俺もそれに紛れて観察することができた。
「ふむ……君、これを使ってみてもかまわんかね?」
紳士風の男が、販売員の女性店員に対してそう呼びかけると、その女性は笑顔で頷いた。ちなみにその女性店員は普通に店の制服を身につけていた。
「はーい、可能ですよ! 美咲ちゃーん!」
そういって女性店員が美咲というらしい店員を呼ぶ。
美咲と呼ばれた店員が、すぐに紳士風の男性の側にやってきた。
「ご利用ありがとうございます! 試験員の美咲です! どうぞお試しください!」
彼女の着てる制服は、大筋のデザインは販売員の女性店員と変わらなかったが、全く違う構造をしていた。
端的に言って、胸と股間が露出しているのだ。肌の露出も普通の制服よりはるかに多く、さらになぜか両手が後ろでコの字型になるように拘束されていた。
性風俗で働いている者でももう少し自由がありそうなものだ。
その格好の理由は、すぐに判明する。
「では試させてもらおう」
紳士風の男が、手にしていた香水をその彼女に吹きかけたのだ。
それをもろに浴びた美咲という女性は一瞬体を竦めていたが、たちどころにその香水の効果か、呼吸を荒くし、乳首を立てて、股間から愛液を垂れ流し始める。
どうやら即効性の媚薬が配合されているようだった。
「ふむ。なかなかいい利き目じゃないか。香りもいい。気に入ったよ」
紳士はそう呟きながら、店員の胸を揉み、股間を弄って濡れ具合を確かめていた。
「あ、ありがとうございま……んひゃっ」
乳首の先端を指で弾かれ、びくんと体を跳ねさせる美咲店員。紳士の指先から愛液が滴るほどに、彼女のそこは濡れていた。
紳士はその香水を買うことにしたらしく、普通の女性販売員と話を始めてしまい、美咲という店員は放置された。
両腕が拘束されていたのは、勝手に自慰などをしないようにするための処置だったようだ。もどかしそうに両足を擦り合わせて悶えている。
そんな光景が、化粧品売り場の至るところで起きていた。
全裸になってボディペイントを施されている店員もいる。普通に恥じらっているように見える店員もいれば、全くそんな風な気配はなく、堂々と受け入れている店員もいた。
(常識は改変されても、恥ずかしく感じる奴は感じるってことか……?)
考えてみれば、恥ずかしがり屋に合法か違法かどうかは関係がない。
人前で喋ることを恥ずかしく思う者もいれば、全く平気な者もいるのと同じだ。
基本的に若く見える店員ほど恥ずかしがっているように見えるので、慣れとかそういうものなのかもしれない。
ローションの実演販売という体で、セックスを始めているところも見かけた。
(薬と考えれば、化粧品売り場の改編はまあわからなくもないか)
気になるのは、ここから先。
デパートには服飾店や家具売り場、その他いろんなお店や売り場があるが、そこはどんな風に改変がされているのか。
俺はさらにわくわくして、エスカレーターで上階へと向かうのだった。
千本松光樹視点 その7 につづく