改変された世界の片隅で ~千本松光樹視点~ その7
Added 2020-02-29 07:15:37 +0000 UTCデパートはどの階層のどの売り場でも、とんでもないエロ改変が行われていた。
服飾店にはボンテージなどのエロ衣装が専門店ごとに並び、普通の服を駆逐する勢いだ。普通の服も置いていないわけではないのだが、傾向としてセーラー服やメイド服などの特殊な服が多く、コスプレ的な意味合いが強い印象を受けた。
ちなみに実在の学校の制服が、この世界では普通に売られていた。
(制服があるってことは、女学生は皆肉便器になるってわけでもないのか?)
政夫がそんな風なことを言っていたような気がするのだが。
言っていなかったような気もするが、まあどちらでも構わない。
ここに制服があるということは、うちにいた肉便器みたいにされていない女学生も普通にいるのだろう。
適当に見て歩いていると、ショッピング中らしい女の一団に出くわした。大学生くらいだろうか。若めの一団だ。
嬉々として、あなたに似合うだのあなたには似合わないだのいいながら、SM衣装のようなボンテージや性器が丸出しになる拘束具を眺めている姿は、元の世界では考えられないものだ。
(美的感覚っつーか、ファンションセンスとかどうなってるんだろうな……)
訊いてみたい気もするが、下手に声をかけて奇妙に思われるのも御免だったため、俺はさっさと他の階層へと移動する。
家具売り場では椅子や机に混じって、三角木馬や開脚椅子などが平然と並んでいた。
拷問用具でしかない鉄の処女やユダの揺り篭まであって、一瞬ぎょっとさせられたが、さすがに機能まで本物というわけではなく、身体を傷つけないようSM用に調整されたものだったので少しホッとした。
(ガチでそういう趣味の奴も世の中にはいるけど、そういう界隈ってこの世界じゃどうなってるんだ?)
単にここが駅前のデパートという環境だからSM用に調整されているだけで、行くところに行けば本物のこれらが売られているところもあるのかもしれない。
俺はそういう方面には興味がないから行くことはないが、この世界でそういう趣味がどういう扱いなのかは少し興味がある。いつか調べてみてもいいかもしれない。
次に立ち寄ったアクセサリーの専門店では、性器などに付ける卑猥な形のピアスを初めとして、首輪や手枷足枷などが普通のアクセサリーに混じって売られていた。
どういう関係なのかわからないが、男女のペアらしき客がいて、その乳首にピアスを試着していた。
ここまで来たらもはや見慣れたものだが、嬉々として胸を曝け出し、その乳首に空いた穴にピアスを通して試している。
「うーん、やっぱりこれは少し重いよ」
「形としてはオレ好みなんだけどなぁ……もう少し軽い奴で似たようなのあります?」
「でしたらこちらが……」
そんな風に店員とやり取りをしていた。
その間、ずっと女の方は乳房を露わにしていたが、本人達含め周りが気にする様子は全くない。
(羞恥心が見られないっていうのは、マイナスかもなぁ)
無駄に恥ずかしがらない分、面倒がなくていいという気持ちもあるが、羞恥の仕草は時には興奮のスパイスにもなる。それが見られないのは若干残念ではあった。
書店では性的なことに関する雑誌や書物が、一番目立つところに堂々と並べられていた。普通のファッション誌だったはずの雑誌も、どこかで見たことがあるような超有名モデルが、酷くきわどいエロ衣装を着て表紙を飾っている。
(AV女優かよ、って感じだなぁ)
ジャンルとしての規模はかつてのような、書店のごく一部というレベルではなく、一大ジャンルのコーナーとして、書店全体の四分の一ほどがそのために確保されていた。
俺はあまり本を読まないが、軽く見てみるととんでもなく細かいところまで網羅されているようだ。
(……すげえな。なんだこれ。『ヒトイヌの躾け方』って……元の世界じゃ絶対有り得ないだろ)
俺は世界を改変した力は物理的な制限を取っ払えるものではないと思っていたが、よく考えると、人が牽くことを前提にした馬車だとか、駅構内に設置された壁尻だとか、明らかに過去の世界にはなかったものが普通に置かれているのは妙な話だった。
(明らかに超常的な、秘密道具みたいなのはないみたいだけど……こういうのを書いたり作ったりするのだって、相当な時間がかかるよな?)
世界が改変されたのが昨日の晩だとすると、改変する力に物理的な制約があるというのは、つじつまが合わない気がしてきた。
俺はそれが何を示しているのか、考えてみようと思ったが、考えている途中で面倒くさくなってしまった。
(まあ、いっか! 政夫がなんか考えてるだろ)
思考を放棄する。俺は小難しく考える必要もないのだ。楽しむだけ楽しめれば、俺としては満足なのだから。
ここまで街やデパートを巡ってわかったことは、基本的にはいままでにもあったようなものが、エロを強調したものになっているということだった。
いままでの世界ならとてもそれらの類いのものは売ることは出来ないだろう、というものが堂々と売られているのは、世界が改変されたからこそだ。
さらに、改変の影響で増えたものに関しては、全体的に値段も抑えめになっているようだった。
(相場なんてよくわかんねえけど……どう考えても、安いよな)
本に関してはそこまで変化が無かったが、普通なら万はいくであろう本革で作られたSMグッズが、比較的お手頃な価格で買えてしまうのだ。
これだけのものがその価格で手に入るというのは、この世界ならではというべきか。
(俺みたいな奴にしてみれば、この世界はかなりいいよなぁ)
楽しみがいがあるというものだ。
しかしこうなってくると、目立たないようにこっそり行動するのが面倒になってくる。目立つことによる危険は理解するが、思いっきり楽しみたい。
(せっかくこんなやりたい放題な世界なんだし……やりたい放題出来るパートナーが欲しいところだよなぁ)
元カノとよりを戻してヤらせてもらうことも考えたが、果たしてそう上手くいくだろうかという不安がある。過去の記憶がある分、躊躇ってしまいそうな気もした。
(もっとこう……ヤリ捨てても罪悪感のない……俺の言うことは絶対によく聞いて、万が一何かあってもそんなに問題にならない相手が欲しいな)
さすがに都合が良すぎるだろうか。
そう思いながらエスカレーターで次の階層にやって来た俺は、その階層の売り場を見て思わず足が止まってしまった。
エスカレーターの出口で立ち止まってしまった俺を、後ろから続いて上がってきた人が迷惑そうに避けていく。
(やべっ)
目立ってしまうことに気づいた俺は、慌てて壁際に移動した。
そして改めてその売り場を見る。
そこは――ペット売り場だった。
そしてこの世界において、ペットには大きく二種類存在した。
片方は、いままで通りの動物のペット。これは特にいままでと変わりない。
そしてもう一種類は、人間だった。
人間が、ペットとして売りに出されているのだ。
(犬娘がいたんだし、予想してしかるべきだったな……)
朝会ったあの犬娘に関しては、祖父と孫の関係だったようだが、普通にこうして店でペットを買うことも出来るわけだ。
(これは……いいんじゃないか?)
俺はペットが飾られている売り場に近付く。
壁一面に備え付けられた多数のケージ。ペットショップでよく見かける光景だが、その大きさは人間大であり、その中に人間の女たちが様々な格好で展示されていた。
(うぉ……やべえ。どいつもこいつもエロ……え、なんだこれ、やっす!?)
元の世界で人間の価格の相場がどれくらいかなんて知らないが、そう気軽に買える安いものではないはずだ。いや、外国に行けば安いのかもしれないがそれは別の話として。
ともあれ、ここで売られている人間のペットたちの値段は異様に安かった。
同様に売られている、通常のペットの値段よりも安いのだ。無論高い者もいるが、安い者だと2,3万円くらいから買えてしまう。
(しかも……なんでこのレベルで数万なんだよ? おかしいだろ……)
ブスだったりデブだったりするから安いのかと思えば、全くそんなことはない。
普通に可愛らしい容姿をしている女が数万円で売られていた。元の世界なら風俗店で一回セックスするような値段で、彼女達が買えてしまう。
命の価値観はどうなってるんだ、とも思ったが冷静に考えてみると。
(人間の全体数を考えたらこうなるか……犬みたいに血統書があるわけでもないしな)
せいぜい国籍で分ける程度の分類で、その全体数は犬や猫なんかと比べ物にならない。
さらに細かく値札に書かれている情報などを見ていったら、安い理由がわかってきた。
(あー、そうか。人間だと年齢が二十歳超えたらもう成犬扱いってことになるのか……ペットの常として、若い方がやっぱり高くなるわけだな)
人間の場合、躾の必要性とかそういうのが全く異なってくるだろうから若ければいいというものでもないだろうが、普通のペットと同じ扱いにするとそうなるわけだ。
(くくく……いいじゃねえか)
ペットの立場の人間なら、いくらでも好き放題出来るし、俺が改変されていないことがバレても問題ない。
最悪何かの加減を間違えて死んでしまったとしても、人間として扱われている女を殺すよりは罰則などもマシなはずだ。
(と、なると、出来る限り可愛いのを選びたいな……そもそも、種類についてはどう判断すべきか……)
真剣に吟味を始める俺に、ペットショップの店員が寄ってきた。
「いらっしゃいませー! 何かわからないことがあったら、お伺いします!」
その店員もまたレベルの高い女だった。容姿も抜群だが、その体付きがエロい。
まるで巨大なスイカでもぶら下げているのかと思うほど大きな乳房がペットショップの制服を下から押しあげている。衣装はこの世界のものにしては極普通のものなのに、その一点だけでなんだか逆に非常にエロく感じた。
その揺れる物体に思わず目を奪われつつ、俺はなんとか応える。
「い、いやぁ……人のペット飼うのは始めてでさぁ。どれにしようか悩んでるんだよね」
「ああ、わかりますわかります。ヒトのペットはうちでも最近取り扱い始めたんですが、種類の特徴が色々あるから悩みますよねぇ。……でしたら一通り説明しましょうか?」
言いながらも、店員は早速説明を始めていた。
「初めてヒトを飼育する方にもお薦めなのは、やはり犬娘タイプですね。従順で何でも言うことを聞きますし、教えれば芸もするようになります」
ケージの中で「おすわり」の姿勢になっている女が、こちらをつぶらな瞳で見上げている。どこかで見たような態度と視線だ。おすわりの姿勢で真正面をこちらに向けているため、秘部を堂々と晒している形になる。ちゃんと手入れされているらしく、下の毛も綺麗な生え揃い方をしていた。
(……この店員が毎日整えてやってんのかな)
腹を見せてひっくり返っている犬娘のあそこを、巨乳店員がカミソリで整えてやっているところを思わず想像してしまった。なんとも倒錯的でエロい光景である。
次のケージの中では、猫耳と猫の尻尾を身に付けた小柄な娘が、丸まって眠っていた。
「ペットとして人気があるのは猫娘タイプですけど、初心者さんにはお薦めはできないです。特に猫娘の場合、ペット側の気分が最優先なので、我が儘な子だと言うことを聞かないこともままありますし、セックスが出来るのも気分次第になっちゃいますし」
改変された世界じゃなければ、とんでもないことをさらっと言われた気がする。
(人間のペットとはセックスしても普通なわけか……さっきの芸もその類いな感じだな)
ペットとセックスなんて、本来ならとんでもないことなのに、普通に流しているあたり、この世界は中々に歪んでいる。
店員自身は特に気にした様子はなく、次のペットの解説に移っていた。
「触り心地や抱き心地を優先するなら、豚娘タイプですかね。少し体重は重くなりますが、お客さんは体格がいいですし、問題にはならないかと思います」
豚娘たちはデブというほどではないが、ややぽっちゃりした体格をしていた。確かに抱き心地は良さそうだ。
鼻フックをかけられ、見事な豚鼻にさせられている女が、四人ほどケージの中に押し込められるように四つん這いで並んでいる。互いの身体を押しつけ合って、暑苦しいというか匂いが相当篭もってそうだ。
本当のペットショップならなんて窮屈な飼育の仕方だと非難されそうだが、このペットショップでは問題にならないようだ。ぱっと見、肌色でケージが埋め尽くされていて、奇妙な光景ではあるが。
「兎娘はさみしがり屋なのであまりお薦めはしません。一緒にいてあげないとすぐ啼いてしまいますし。飼うなら多頭飼いがいいかと思います。ただ、兎はセックスが大好きなので、それなりに精力に自信がないと、欲求不満になった兎娘同士で勝手に始めてしまうこともあるので要注意です」
(それはそれで見てみたいな……)
その後も淀みなく説明を続けていく巨乳店員。
自分とそんなに変わらない年齢の女たちを、嬉々とした調子でペットとして売りつけようとしてくる。
本人の意識上はそれが自然なこととはいえ、その意味を正しく認識出来ている俺にとっては、なんとも背徳的な話だった。
「そしてこちらは……牛娘ですね」
そういって彼女が次に紹介してくれたのは、牛娘とプレートがかけられた種類の、人のペットだった。
巨乳店員に負けず劣らずの巨乳娘がケージの中にいる。
ここまでのペットはほとんどが動物の耳や尻尾などを身につけっている以外は裸だったのだが、牛娘は牛柄のビキニのようなものを身に付けていた。ギリギリ乳首や股間の割れ目を隠せるかという程度の、かなり際どいものだったが。
ビキニは乳房の形をギリギリ程よい力加減で支えている。そういった支えがなければ、こういう巨大な乳房は垂れるだけだろうから、衣装としてそういったものを身に付けさせているのは賢いと言わざるを得ない。
そんな巨乳な牛娘のケージの前に、同じく巨乳の店員がしゃがみ込む。
人間の身体部分だけみれば、二人の間に見た目の差はほとんどない。しかしケージの壁ひとつ隔てたその二人の間には、人間とペットという明確な違いがあるのだ。
「牛娘は大きな乳房の開発が重点的に行われているペットです。ほとんど性感帯と変わりませんので、胸を揉むだけで牛娘を気持ちよくさせることが出来ます。他の種類のペットですとスレンダーなタイプが多いのですが、牛娘はごらんの通り巨乳の個体が多いので、お客様ご自慢のペニスを包み込んでパイ擦りをさせることも容易かと思います」
真面目な顔で説明してくれる巨乳店員。
態度と言ってることのギャップがとてもいい。
「ほほう……」
巨乳の店員が胸の説明をすると、なんとも説得力があった。
目の前で揺れる彼女の乳の方を触ってみたくなってしまう。
「……あんたはペットじゃないんだよなぁ」
内心だけで留めておくつもりが、思わず口から出てしまっていた。
聞こえてしまったのか、巨乳店員の目がまん丸になってこちらを見ている。
(やべっ、しまった、つい……!)
まずったかもしれない。
「い、いや、いまのは失言でした。忘れてください」
思わず敬語で取り繕った。
不快、というよりは「まさかそんなことを言われるとは」みたいな驚きの硬直みたいだが、この後の反応が怖すぎる。
嫌な汗が背中に流れているのを感じた、まさにその時。
「ほう。それは面白そうな話ですな」
ペットショップの制服を着た、中年男性がこちらに歩いてきた。俺と店員の会話を聞いていたのだろうか。近くに居たような気はしなかったのだが。
巨乳店員がその男性の方を見る。
「て、店長……?」
戸惑っている様子の店員に対し、近付いてきたその中年男性――店長らしいが――は、肩に手を置いて諭すように言う。
「篠山くん。ペットショップの店員の勤めは、お客さんが求めるペットを提供することだ。つまりお客さんが店員をペットに求めるのであれば、応える義務がある――そうだね?」
「あ……は、はい……そう、です、ね?」
篠山というらしい巨乳店員は、どこか不思議そうな顔をしながらもそう頷いた。
(なんだ……? なんか、上手く言えないが……)
おかしな雰囲気になってきた気がする。額にまで冷や汗が滲むのがわかった。
いますぐこの場から離れた方がいい気がするのだが、足が動かない。
店長の男が、こちらを見た。笑顔だがなんだか見定められているような感覚がする。
「お客様、ペットのご購入をお考えなのですね」
「あ、ああ……まあ……」
「でしたら、こちらの篠山紗友梨――改め、牛娘のサユリで試してみてはいかがですかな?」
そんなことを言い出す店長に驚いたのは、俺だけではなかったようだ。
いまのいままで普通の店員の扱いだったはずの紗友梨が、目を見開いて店長を見ている。だが抗議の声をあげようとはしない。従うのが当然、とでも思っているかのような態度だ。
そんな彼女に向け、店長が笑顔のまま、視線を向けた。
「サユリ。服を脱いで彼に実践してみせなさい」
「……っ、は、はい、店長……」
何か言いたげだったが、それを口にすることはせず、サユリは戸惑い露わに震える手で着ていた制服に指をかけた。
(ど、どうなってる……? こういうのが普通のことって雰囲気じゃねぇぞ……!?)
まるで普通の人間の女性が、何らかの理由で強制的にいうことを利かされているような。
改変された世界にしては、妙な反応をサユリは見せていた。
だがその疑問も、すぐに吹き飛んで忘れてしまった。
サユリが上半身の服を脱ぎ、その下に隠されていた爆乳が露わになったからだ。
どっしりとした乳房の重みが伝わってくるかのようだった。制服を着ていた時から大きいとは思っていたが、抑圧するものがなくなった彼女の胸は、巨乳などという表現では収まりきらないものだった。
柔らかそうなおっぱい。白く眩しい肌に、清楚な水色の下着がよく似合っている。
そして、サユリが見せる恥じらいの仕草。
それは裸体を自然に曝け出しているペットたちのそれとはまた違い、人間的な魅力を醸し出していた。
「サユリは牛娘として調整されてはいませんが、もしお客様がご購入されるのであれば、きちんと調整した後にお届けいたしますので、ご安心ください。この場では素体として楽しんでいただければ、と」
店長の売り込みトークは、正直すごく魅力的だった。
ペットとして調整された姿しか見られない他のペットと違って、このサユリならいま人間としての姿を楽しみ、人間外の存在になった状態も楽しむことが出来る。
魅力溢れる提案に、俺は思わずサユリを見ながら舌舐めずりをしてしまった。
だから、店長の浮かべる笑みが、営業スマイルとは全く違う質のものであることに気づけなかった。
千本松光樹視点 その8 につづく