改変された世界の片隅で ~赤土政夫視点~ その6
Added 2020-03-13 23:58:48 +0000 UTCラーメン店の看板娘として有名な美女・明日美さんに、自宅の玄関先で騎乗位でペニスを受け入れてもらい、その十分に磨かれた技術を振るわれた。
家の外では改変された世界とはいえ、何事もなく日常が流れていて、私だけが覚えるとはいえ、背徳感はかなりのものだった。
それも加わった時の快感と来たら、とても私が長時間耐えられるレベルではなかった。
「く、ぅう……っ!」
今にも爆発しそうなほど、ペニスが脈打っている。少しでも楽しい時間を引き延ばすべく、なんとか噴出を堪えようとはしたが、そう長く保ちそうになかった。
そんな私に射精を促すため、明日美さんが深く腰を落としてくる。そして、根元まで私のペニスを飲み込むと、今度は強くペニスを締め付けながら引き抜く方向に腰を浮かせた。
「んぅっ……はぁっ、ん……っ」
彼女の方も感じているのかどうかは定かではなかったが、みたところ気持ち悪そうな様子はない。頬は紅潮しているし、鼻息も荒くなっている。
時折ぴくん、と体が意図せず跳ねている様は色っぽく、女としての艶を感じた。
何より、繋がった場所から伝わってくる熱と湿り気が、彼女が演技でなく本気で感じていることを余すことなく伝えて来ている。
(ぐ、ぅ……っ、だめ、だ……っ、出る……!)
彼女が一際素早く腰を落とし、膣の中の締め付けを強くするのに耐えかね、私は盛大な射精に到ってしまった。
自慰で出す時とは比べ物にならないほど、大きな快感だった。凄まじい勢いで精液が彼女の中に迸る。
「ウウッ!」
目の前が真っ白になり、思わず大きな呻き声をあげてしまう。
そんな情けない私に対し、明日美さんは私が射精している間は動かずにじっとしていた。
男の射精と同時に絶頂する、などということはなかったようだ。私がその域に達する前に出してしまったのだから仕方ない。彼女がそのことを気にしている様子がなかったのは掬いだった。
明日美さんは私が膣の奥で射精しているのを感じつつも、あくまで冷静に受け止めている。情けない話だが、経験値が違いすぎる。
彼女は私の射精が終わると同時に、エプロンのポケットからハンカチを取り出した。
そして、膣から私のペニスを抜くと同時に、素早く自分の割れ目をハンカチで抑え、私が注いだ精液が零れないようにしていた。実に手慣れている。
さらに、明日美さんは膝立ちの状態のまま、数十センチ後ずさり、口に咥えていたエプロンの裾を離す。ぱらりと裾が落ちて、一瞬前まで私のペニスが挿入されていた明日美さんの股間が隠される。
「失礼します」
そして、明日美さんは上半身を倒して、私のペニスに吸い付いた。
「うっ」
一度射精に到って落ち着いてはいたものの、暖かな口内の感触に思わず声が漏れる。そんな私の様子に構わず、明日美さんは私のペニスを舐めていた。
それはフェラチオのように射精を促すために刺激を与えているのではなく、ペニスが愛液や精液に塗れていたのを、綺麗にしてくれているのだった。
明日美さんのサービスは、ペニスを綺麗にするというアフターケアまで充実しているようだ。
綺麗になったペニスから口を離すと、明日美さんは空いた片手で別のハンカチを取り出し、彼女の唾液でテカっていたペニスを拭いてくれる。
それはとても優しい手つきだった。本人の気質的にそうだとは思っていたが、ちゃんと丁寧に扱ってくれるところが彼女らしい。
温かく柔らかな指先が、ペニスを撫でていくのを感じる。じわじわとした快感が広がっていく。
しかしそれが大きくなる前に、彼女は私のペニスから手を離してしまった。快感を与えるのが目的ではなく、綺麗にするためなのだから仕方が無い。少し寂しくはあったが。
「はい、これで『明日美のサービス』は終了です。御利用ありがとうございました!」
明日美さんはいつもラーメン店で帰り際にかけてくれる声音と変わらない、にこやかな様子でそう言った。
この世界の常識に改変されている明日美さんにとっては、ラーメンを配膳するのと変わらないのだから仕方ない。ただのサービスとはいえ、性交した相手として彼女を見てしまう私としては、明日美さんに対して少々申し訳ない気持ちになった。
「あ、ありがとうございます……」
「食べた後の食器は、玄関の脇に置いておいてくださいね」
出前を持ってきた人間として当たり前のことを最後に告げ、明日美さんは立ちあがった。
まだ片手は股間を抑えている。エプロンに隠れてその場所がどうなっているかはわからなかったけど、きっと私が奥に注いでしまった精液がゆっくりと垂れだしているのだろう。
裸エプロンな上、そんな破廉恥とも言える状態の明日美さん。
しかし彼女は何食わぬ顔をして外に置いてあった岡持を手にすると、私に礼儀正しく一礼した。
「またの御利用をお待ちしています!」
「そうです、ね。またよろしくお願いします」
私の返答に快活な笑顔を返すと、明日美さんは背を向けて去って行く。
裸エプロンの彼女が背を向けると、そのむき出しの背中やお尻が丸見えになる。
その刺激的な格好に、思わずペニスを反応させてしまいつつも、私は何もせずに黙って彼女を見送った。
彼女が私とセックスしてくれたのは、あくまで出前に伴うサービスとしてだ。
特別な関係になったというわけではないことを忘れてはならない。もし仮にここで後ろから彼女を襲ったら、それは単なるレイプ事件として扱われるはずだった。
あるいはもしかすると、この世界では男性の行う性的な行為は問題として扱われない、という考えることも出来るが――そこまで甘くはないだろうと推察している。
(それにそんなリスクを犯さなくても……今回のように明確に改変された要素だけでも、十分楽しめそうだしな)
私は明日美さんの背が見えなくなるまで、彼女を玄関先で見送っていた。
彼女が角を曲がって見えなくなった時点で、家に入ってドアを閉める。
「ふぅ……まずは、腹ごしらえだな」
普段、朝っぱらから射精するなんていうことはない。ましてや、昼前の時間帯に二度目の射精を行うなんてことは、皆無だ。
(結構疲れたな……)
体力をずいぶん消費してしまった。元々アウトドア派の人間ではないということもあるのだろうが、あまり調子に乗って色々しない方がよさそうだった。
私は明日美さんが運んできてくれたラーメンセットを部屋へと運ぶ。改変された世界でも、ラーメンは変わらぬ安定の味だった。
(まあ、考えてみれば当たり前か……元々ラーメンは男の店主が作っていたんだし)
女性の扱いが変わったところで、その味が変化することはない。
料理や場合によっては、女体盛りのようなこともあるのかもしれないが、ラーメン店ではそういったことは難しいだろう。
(出汁に……みたいなこともなさそうだしな)
フィクションの範疇でいうなら、女性の浸かったお湯などを活用する場合もあるが、この改変された世界では、そういう衛生的に問題のある類いのことはされていないようだった。無論、食材という意味でも、だ。その辺り、改変者は好き勝手に世界を改変しているように見えて、最低限度の線引きはしているのかもしれない。
(まあ、そもそも世界をまるごと改変する必要があるのかは疑問だが……ある、としたらどんな理由なんだろうな……)
そんな風にとりとめもないことを考えながら、ラーメンを食べ終わった私は一端休憩することにした。自分の部屋に戻り、ソファに寝転ぶ。
(さて……腹も満ちたが……これからどうするか)
改変された世界の状況は、大体掴めて来た気はする。しかし、堂々と出歩くにはまだ勇気が出ないところもあった。
(まずは……慎重に動く、か……大学の講義にも……まだ余裕、が……)
朝から二度も射精に到った疲労感に加え、満腹になったために、昼過ぎだというのに睡魔が襲ってきた。
特にこの後用事があるわけでもなかったため、私は眠気に逆らわずに眼を閉じ、一眠りすることにした。穏やかな昼寝という奴だ。
その眠りは、唐突なチャイムの音によって中断させられた。
私は慌てて起き上がり、寝起きではっきりしない頭を抱えつつ、玄関へと向かう。
その途中、ふと疑問が湧いた。
(あれ? 今日は特に何の荷物も届かないはずだけど……勧誘とかだと面倒だな)
もちろん尋ねてくるような客の予定もない。
この家には私しか住んでいないのだから、私が知らない荷物の到着や来客の予定など、あるわけがないのに。
不思議に思いながらも、私は玄関に行き、まずは冷静にドアの覗き穴から何がやって来たのかを見定める。
改変された世界で白昼堂々強盗が来るとは思えないが、警戒心の強い私の癖のようなものだった。
覗き穴の向こうでは、なにやら複数の人間が大きな荷物を抱えて立っていた。
(運送会社……だよな。あんなでかい荷物、頼んでたらさすがに覚えていると思うんだが……)
私は不思議に思いながらも、玄関ドアを開いた。
見慣れた運送会社の制服を着たその人物は、丁寧に頭を下げてくる。
「こんにちは。こちら、赤土様のご自宅で間違いないでしょうか? お荷物をお届けに参りました」
やはり荷物だったらしい。けれど疑問は解消されない。
「荷物? 誰からですか?」
「千本松という方ですね」
千本松。私は記憶を巡らせる。
その名前には聞き覚えがあった。なぜか昔から不思議と実家と付き合いのある家だ。同じ年頃の子供がいるということもなく、接点など何もないはずなのに。
とはいえ、子供だった私にはわからない大人の付き合いもあるだろうし、そのことをあまり気にしたことはなかった。それに千本松夫妻は私に優しかったし、親戚の叔父叔母と同じくらいには慕っている。
(旅行の土産か何かを贈ってくれたのかな?)
実家に帰った時に土産を貰うことはあったので、今回もそれに類するものなのかもしれない。郵送してまで渡されたことはなかったので、少し不思議ではあるが。
「荷物の内容って、わかりますか?」
「ええと、商品欄にはペット、となっていますね」
「……は?」
ますます訳がわからなくなった。改変された世界ではペットを贈るのが普通なのだろうか。ネットで調べた際にはそこまで調べてはいなかった。
とりあえず、少なくとも私宛てであることは間違いないようだったので、その荷物を家の中に運んで貰った。
二人がかりで持ち上げないといけない辺り、中身は相当重いようだ。
運送会社の差し出して来た伝票にサインをして受けとったことを証明すると、運送会社の彼らは手早く撤収してしまった。
ペットによっては返送することになるかもしれないが、とりあえず状況を整理しなければ始まらない。
置いていかれた荷物を再度見る。荷物はとても大きなものだった。無理すれば人間でも入れそうなほどの大きさだ。
(全く……一体全体なんでいきなりペットなんて……というか、本当にペットだったとして、こんな形でペットを送っていいのか?)
箱はプレゼントという側面もあるためか、包装紙にきっちり覆われていた。
暗くて狭い箱の中に閉じ込めているのだとすれば、大抵の動物にとってはストレスになるはずだ。
とにかく、生き物なら早く出してやらなければならない。
私は包装を破り、箱の蓋に手をかける。その段階に到るまで、私はペットのことを極普通の犬猫などだと思っていた。
この改変された世界で、人間が入れそうな箱で送られてくるペットとなれば、その段階で連想が出来てもおかしくなかっただろうに。
いまだに改変される前の世界の常識でものを考えてしまっていた。
だから――蓋を開けた瞬間、拘束された女性が現れて仰天した。
年齢的には、私と同年代のように見えた。
ふっくらと肉付きのいい体に、瑞々しい張りのある白い肌。
狭い箱の中に仰向けに寝かされている。M字開脚の形に体を開き、手は後ろでコの字型に組んでいるようだ。自分の身体が重みになって腕は動かすことは出来ないだろう。
その彼女の身体の各所には拘束具が装着されていた。箱と繋がっているところも多く、まともに動くことはできそうにない。
目隠しに口枷の他に、耳をヘッドホンが覆っていて、何も見えず、何も喋れず、何も聞こえない状態にあるようだ。
そして、彼女の身体の中で、最も私の眼を引いたのは、その巨大な乳房だった。
まるで漫画のような大きさで、頭と同じくらいはある。世界には実際に自分の頭より大きなバストの持ち主がいるというのは知っていたが、直に見るのはもちろん初めてだ。
彼女のバストは相当な弾力を持っているらしく、仰向けの状態でもなお、聳え立つように持ち上がっている。箱の蓋によって抑えられていたのが解放されたことで、彼女の微かな動きに合わせてゆさりと揺れていた。
なお、あられもない格好を晒している彼女だが、乳房と股間を必要最低限の布地が覆っていた。所謂ビキニというものだが、それは牛柄で、極端に布地の面積が少なかった。少しずれれば乳首や秘部が見えてしまうことだろう。
端的に彼女の存在を表すのであれば、『牛娘』というべきだろう。
絞れば母乳が出るのではないかと思えるほど、彼女の乳房は大きく、そして張りがあった。彼女の身につけているビキニは、普通の水着と違って当て布もないらしく、薄い布でしかないようだ。乳首がそこに押しつけられた結果、その場所がうっすらと乳首の形に盛りあがっている。その微妙な盛り上がりはそれがどういう感触なのかを如実に想像させ、直接見えているより性的な魅力を感じさせている。
思わずごくりと生唾を飲み込んだ私の前で、牛娘は微かに体を動かしていた。どうやらちゃんと意識はあるようだ。蓋が開いたことによって空気が直接肌に当たるようになり、それを感じ取っているのだろう。
彼女が体を動かそうとする度に、その双丘がふるふると揺れる。
(……これは……なんというか、すごいな……)
思わずごくりと生唾を飲み込む。触ってみたくなるが、人間のペットという存在をどのように扱えばいいのか、私は把握していない。
人間相手なら触れるには相手の同意を得なければいけないが、ペットという立場なのだとしたら、勝手に触れても許されるのだろうか。
迷っていると、彼女が収まっている箱の隅に封筒が入っていることに気づいた。
(もしかして、千本松おじさんからの手紙?)
正確には伯父でも叔父でもないが、感覚的には同様に捉えているのでそう呼んでいる。
封筒を手に取り、中に入っていた手紙を取り出す。
そこには、年賀状で見覚えのある千本松おじさんの達筆な文字でペットを送ることになった事情について書かれていた。
要約すると、千本松おじさんたちが海外に旅行に行くことになったため、おじさんたちの家で飼っていた牛娘を預ける、というものだった。
どうやら私は正月に直接会った時に、ペットを預かることを承諾していたことになっているようだ。
なぜ私の実家ではなく、独り暮らしの私に預けることになったかというと、牛娘はペットの扱いではあるが、芸として家事全般が仕込まれているそうなのだ。
つまり彼女を預かることで、私は煩わしい家事から解放され、より学業に打ち込めるようになる、というわけだ。
(……なるほど、確かに、私の認識も改変されていたとしたら、おじさんたちの申し出を受けるのは当然だろうな)
私でなくとも当然だろう。ペットは維持費がかかるものだから自分では導入し難いが、今回の場合は必要な諸経費は預け主の千本松おじさんたちが出してくれる。
他人にあまりプライベートな空間に踏み込まれたくない私にとっては家政婦は好ましくないが、その認識がペットならば問題ない、と感じるだろうからだ。
(……ペットという立場なら口止めもしやすいだろうし、この世界のことを理解するのに利用出来るな)
もしこの世界の常識に則ると変なことを訊いてしまっても、飼い主の立場で口止めすることが出来る。他の人には聞きにくいことも、彼女に確認を取ればいいわけだ。
(思い掛けない好機だな……少し美味すぎる話な気もするが)
この世界を理解するためにそういう窓口が欲しいと思っていたところに、脈絡なくペットを預けるという話がやってくる。そこに何らかの作為を感じないほうがおかしい。
とはいえ、こちらにとって不都合があるわけではないのだ。ありがたく話に乗らせてもらっておくのが賢い選択だろう。
私はペットが無事に届いたことを千本松おじさんにメールで知らせる。約束した実感はなかったので、「大事にお預かりします」とも添えておいた。改変された世界の様子を見る限り、ペットとはいえ粗末に扱っていいわけがなかったから、不自然には受けとられないだろう。
(さて、と……とりあえず一端出してあげないとな)
いつから梱包されているのかわからないが、全く身動きが取れない状態で長時間放置されているとなれば、体にいいわけがない。
牛娘に施されている拘束具は、トイレに設置されている肉便器のそれと違って鍵がかかっておらず、手順さえ踏めば簡単に外せるようになっていた。それを外しつつ、ふと思う。
(こいつみたいに完全に固定されているわけではないとはいえ、肉便器は大丈夫なのか?)
一瞬疑問が生じたが、実際に設置されていて大きな問題が起きていないのなら、大丈夫なのだろう。
私はそう考えつつ、牛娘の体の拘束を解いていった。拘束具を外す際、柔らかく触り心地のいい体に触れないわけにはいかず、その魅惑の感触に少し興奮するのがわかった。
「ウゥ……」
体の拘束が解かれた牛娘に手を貸し、箱から出す。牛娘は箱の外に出られはしたが、すぐには動けないのか、その場にへたり込んでいた。
体の下になっていて解けていなかった腕の拘束を解いてやる。外すと、牛娘は自分で自分の身体をさすっていた。血流を促しているようだ。
私は続いて牛娘の顔を拘束している目隠しやヘッドホン、口枷などを外していく。
徐々に明らかになる彼女の顔立ちは、驚くほど整っていた。うちで肉便器になっている彼女や、明日美さんもかなりの美人だったが、あくまで一般的に街中で見られる美少女・美女であった。それでも普通は十分なのだが。
この牛娘はそれ以上だ。私の好みからは少し外れているが、誰かの「美しい女性」という理想がそのまま形になったかのようだ。
モデルやアイドルが、何千という候補の中から選び抜かれた「理想系」であるように、彼女もまた理想型のひとつであると言えた。
(千本松のおじさんたちは特に金持ちだとかじゃないはずだけど……凄くいいペットを飼ってたんだな……)
そんなことを思いつつ、私は牛娘に施されていた拘束具を全て外した。
牛娘は暫く眼を慣らすようにパチパチと瞬いていたが、眼が慣れると、私に向き直って礼儀正しく手を突いて頭を下げてきた。
「お久しぶりです――政夫さま。今日からよろしくお願いします」
涼やかな声音はお淑やかで、なんとも耳に心地良いものだった。
正座して床に手を突き、頭を下げる様は土下座をしているかのようで、マイクロビキニのみを身につけた姿でやるには少々刺激的な姿勢だ。まして、彼女の場合でかすぎる乳房が体と足の間で潰れて、たわわに溢れている。漫画のような驚きを与えてくれていた。
それにしても、だ。
(やっぱり、知己の間柄なのか。そうだよな……今年の正月に千本松のおじさんたちには会ってるし)
知らない仲というわけではないのだろうと予想はしていたが、もちろん私の記憶に彼女のことは全くない。
だから、不自然に思われても、最初に訊いておくべきことがあった。
「あー、と……申し訳ないんだけど、変なことを訊いても、気にしないでもらえる、かな?」
どれくらいの距離感で話せばいいのかわからない。探り探りやっていくしかなかった。
牛娘は不思議そうな顔をしつつも、頷く。とりあえず特に敬語など要らなさそうだ。
「何も言わずに応えてくれ――君の名前は何だっけ?」
私はまずそれを訊かなければならなかった。
知己の関係となっている以上、彼女の名前を知らないというのは不自然なことだが、残念ながら私に彼女の記憶はない。千本松のおじさんたちに訊くのも不自然だし、本人に尋ねるしかなかった。
案の定、牛娘は不審そうな顔をしつつ、あくまで私の質問に答えるのが優先されるのか、素直に教えてくれた。
「わたしの名前は――ミツキ、です」
赤土政夫編 最終話 につづく