改変された世界の片隅で ~千本松光樹視点~ 最終話
Added 2020-03-14 14:38:10 +0000 UTCルームメイトとして、一緒に暮らしている赤土政夫。
子供の頃からお互いをよく知る幼なじみであり、家族ぐるみでの付き合いもあるくらいには、関わりはそれなりに深い。
ただ、お互いに弁えているから衝突こそ少なかったが、俺と政夫は水と油程度には相容れない存在であった。
俺はガンガン外に出て男女問わず交流していくタイプだったが、あいつはうちに篭もって特定の相手とのみ深く付き合うタイプだった。性格も俺が大胆ならあいつは慎重で、難しいことを考えるのが苦手な俺に対し、あいつはいつも難しいことばかり考えていた。
俺があいつを無理に誘わなかったのと同様に、あいつも俺に自分の考えを押しつけてくるようなことはなかったから、上手くやれていたようなものだ。
親友というには少し距離があったが、ただの友人というにはお互いを知りすぎている。
俺と政夫は正しく『幼なじみ』だった。
そんな政夫のペットとして暮らせと、俺を牛娘に変えた天使は言う。
(じょ、冗談じゃねえ……!)
正直、めちゃくちゃ嫌だった。
あいつのことは別に嫌いではないが、よく知る間柄だからこそ、あいつにペットとして扱われたくはない。ましてや、いまの自分の姿や立場を考えると、当然「ああいったこと」もしなければならないのだろう。
俺がペットショップで店員にしたように。
あいつに性的な奉仕しなければならないなど、悪夢のような話だ。
(い、いやだ!)
俺は体を暴れさせて逃れようとしたが、体を縛る拘束具はびくともしない。体に食い込んで痛いだけだった。暴れた拍子にでかいおっぱいがぶるんと揺れ、それもまた痛い思いをする一因になった。
そんな俺の様子を見た天使は、そりゃあ仕方ないよ、とばかりに溜息を吐く。
『嫌じゃ無かったら罰にならないじゃん』
もっともだがもっともすぎて腹立たしい。
イライラする俺に対し、それにさ、と天使は続けた。
『大体、結構慈悲のある処置だと思うんだけど。君は、見ず知らずの中年男性に延々犯される方が良かった?』
天使の言葉に思わず、汚いおっさんに組み伏せられ、犯される想像をしてしまった。
ぞっと血の気が引いた。一気に体温が下がったような気さえする。
(た、確かに……汚いおっさんにやられるのは、さすがに……)
舌を噛んで死にたくなる。
『別に汚いとまでは言ってないけど……無作為に選ぶから、その可能性はないとはいえないね』
どちらにしても嫌だが、少なくとも政夫であれば、それなりに綺麗好きだ。身だしなみに特別気を使っているわけではなかったが、俺から見て普通程度の清潔感はある。若いからまだ臭いも男としてはマシな方だろう。
政夫は童貞で女の扱いに慣れているわけではないし、性交の回数も少ないはずだった。
(ダチとして考えるとつまんねえ奴だけど、この状況なら……)
確かに、政夫に飼われるというのは、悪い話ではないのかもしれなかった。
性欲だけ旺盛な汚いおっさんに日がな一日犯され続けるかもしれないことを考えれば、選択肢として政夫は決して悪くない。あくまで他のと比べれば、という話にはなるが。
『あ、ちなみに彼からはいままでの君の……千本松光樹としての記憶は消えてるよ。君は千本松家に飼われていて、君の両親が海外旅行に行っている間、赤土政夫くんに預けられることになったペット、という設定になってるから』
わざわざ俺の両親を海外に飛ばしてまで、設定を作り込んでくるとは。
天使とやらは暇なのだろうか。
『失敬な。こういう処理も含めてボクの仕事ってだけだよ』
天使はそう言って不満げに頬を膨らませた。なんというか、やたらと人間臭いところがある天使だ。
さらに、と天使は説明を続ける。
『言動を君の意志に完全に任せると上手くいかないだろうから、自然にペットの牛娘らしいものになるようにしてあるよ。考えようによっては楽すぎて暇かもしれないけどね』
そこまでやるなら、俺を牛娘に変えた意味があるのか、と思うが。
俺に対する罰なのだと考えると、そうおかしなことではないのかもしれない。
(……政夫の奴は、この世界が改変されていることに気づいたままなのか?)
『うん、そうだよ。彼はまだ君みたいにこの世界のルールを破ろうとせず、慎重に動いているからね。いまのところはだけど、ペナルティをつける予定はないみたい』
(みたいって……お前が判断してるんじゃ無いのかよ)
『ボクは君の担当だよ。赤土政夫くんには別の天使がついてる』
言われてみれば、わざわざ俺に着いて歩かなければならないのだから、天使が複数いないと監視は成り立たない。
万能なんだか万能じゃないんだか、よくわからない存在だった。
『全知全能ほどつまらないことはないからね。だから改変者はわざわざ制限をつけて世界を改変しているわけだし……っと、喋りすぎたかな』
天使が指を「ぱちん」と鳴らすと、それまで見えていた天使や俺自身の姿の映像が目の前から消え、目の前が真っ暗になった。
『君がペットとして扱われる期間は十年。十年経ったら、もう一度ボクは君の前に現れる。その時に人間に戻りたいか、ペットのままでいたいかを訊くからね』
(は……? いや、普通に戻せよ。なんでわざわざ選択しなきゃいけないんだ)
俺はそう問い掛けたが、天使はかすかな笑い声だけを響かせて消えた。
何度も問い正そうとしたが、天使の声が返ってくることはなかった。
(戻りたいか、いまのままでいたいかを訊く……?)
十年。長いようで短い時間だ。俺の生きてきた時間のおおよそ二分の一。
十年後に自分がどう考えているかなどわからないが、下手するとペットとしての意識に吞まれて、そのままでいたいと思うようになるということだろうか。
(冗談じゃねえ……俺は絶対に元に戻ってやるからな……)
そう密かに決意を固めた俺。
その時、誰かが体に触れてくる感触が走った。
「ンッ……!」
触れられた瞬間、そこからびりっと電流が走ったような気がした。いまの俺の体はメチャクチャ敏感なようだ。
(落ち着け……大丈夫だ、こんなの……慣れたらなんともないはず……っ)
ごそごそと体の周りを手が這い回っている。何をしているのかと思ったが、不意に足が動かせるようになった。どうやら拘束具が解かれたようだ。
しかし、動かせるようになっただけで、俺の意志で体を動かすことは出来なかった。足は勝手に動き、開いた股を閉じる方向に動く。まるで股間が晒されているのを恥ずかしく思っているような動きだった。あえて股を開いてみようとしても、足はぴくりとも動かない。
全身拘束具に固められていた時は、動かせたんだが。
(あー、なんつうか、夢でも見てる気分だな……)
そこにあるのは間違いなく自分の身体なのに、自分の意志で動かせないところが実にそれっぽい。俺は自分の意志で動くのを早々に諦めた。
そうこうしている間に、俺の体を拘束していたものが外され、仰向けに寝かされていた姿勢から、体を起こされた。
さっき天使が見せてきた映像からすると、俺は箱に詰められていたはずだ。足の裏にひんやりとしたフローリングの感触が伝わってくる。
(箱から出された……のか)
手は後ろ手に固められた状態から動かせなかったが、かなりの部分の体が自由になっていた。女がよく座る形で床に座りこんでいるのが体の感覚でわかる。体の柔らかさがいかにも女になっていることを知らしめてきて、なんとも言えない気分になった。
それだけじゃなく、体を起こした状態だと、胸にでっかいボールがついているような感覚がして、落ち着かない。
(つか、重……っ。女はこんなんぶら下げて生活してんのかよ……)
ここまでのサイズは中々ないだろうけども。微かに体が動く度に、明らかなに存在感を主張してきて、正直鬱陶しかった。第三者として傍から見るのならば喜んでいたが、それが自分の胸だと思うと、興奮もしない。
自分の身体の感覚に早くもうんざりしていると、腕の拘束が外された。
すると、その自由になった手で、自分の身体をマッサージし始める。もちろん俺は何をしようともしていない。勝手に動いているのだ。
(く……っ、体は勝手に動くのに、感覚は確実に伝わってくるっていうのは……なんというか、変な感じだな……っ)
本当に悪い夢でも見ているかのようだ。ふわふわすべすべした体の感触は、男として触るのであれば、さぞ気持ちがいいものだっただろうに。
そして、最後の拘束具である顔に纏わり付いていた道具が外されていく。
まず耳当てが外され、普通に音が聞こえるようになった。微かに荒い息づかいが聞こえている。恐らく政夫だろう。
(たくっ、童貞が……興奮してやがんな)
一応要所は隠しているとはいえ、今の俺の格好はほとんど裸に近い。それをみて政夫は興奮しているのだろう。
続いて口枷が外される。口枷は特に喉に到達するほどの突起があるということもなく、普通に口を塞いでいただけだった。
とはいえ、舌を抑える役目だっただろう突起が口の中に潜り込んでいたので、外される際、涎を啜りながらにしなければならなかった。それでも少し垂れそうになった分は、自分の手で受け、こすり取る。
(きったねぇ……)
傍で見る分にはエロいかもしれないが、自分のものだと思うと途端に汚く感じるのはなぜだろうか。
そしていよいよ、目隠しが外された。
真っ暗だった視界が明るさに慣れずに真っ白に染まる。微かに見えた景色は、俺と政夫が暮らしている家のようだった。
(俺の部屋とかどうなってんだろうな……)
そんなとりとめもないことを考えているうちに、眼が完全に明るい場所に慣れた。
俺から取り外したと思われる拘束具を、箱の中に戻している政夫が目の前にいる。
政夫の姿を認めた瞬間、なぜか俺の心臓は高鳴った。
(んあ……? おいおい、なんだいまの)
もちろん俺自身は、意識としてはなんとも感じていない。むしろ別に政夫は悪くないのだが「上手くやりやがってこの野郎」と恨みごとを考えてしまったくらいだ。
しかし俺の体はまるで、憎からず想っている相手に会えたような、一言でいうならときめいた時のような反応をしていた。
俺の意識の困惑に構わず、俺の体は自然と正座して姿勢を正し、政夫に向かって丁寧に一礼する。
「お久しぶりです。政夫さま――今日からよろしくお願いいたします」
俺の口から出た声は、言葉の内容も含め、全く俺に似つかわしくないものだった。
鈴のような音色、というのはこの声のようなもののことをいうのだろうが、それにしても元の自分の声と乖離が酷くて気持ちが悪い。
それに、一礼したことによって、体と足の間で押し潰される形になったおっぱいのことも気になった。
(どんだけでかいんだよ……普通にしてても視界の端にみえるって、相当だよなぁ)
何カップあるのかわからないが、日本人としては明らかに大きすぎる。それなりに大きなクッションを間に挟んでいるような、そんな妙な感触が足と体の両方からしていた。
男の俺には有り得ない、不思議な感覚に戸惑うしかない。
「あー、と……申し訳ないんだけど、変なことを訊いても、気にしないでもらえる、かな?」
恐る恐る、という様子で政夫が口を開く。
天使曰く、政夫は俺のことは忘れてしまったが、世界が改変されたことに気づいている状態だから、どことなくぎこちないのは当然なのだろう。
俺の体が政夫の声を受け、顔を上げる。政夫はなんとも情けない顔をしていた。
「何も言わずに応えてくれ――君の名前は何だっけ?」
その言葉に、俺の体が微かに眉を顰めるのがわかった。
そして感じる、微かな胸の痛み。当然、俺はその痛みに覚えがない。
(まさか……俺じゃなくて、改変された世界基準の俺は……政夫に惚れてやがんのか……?)
そんなバカな、と思う。確かに政夫は悪い奴ではないが、女が交際相手に選ぶかといえば、否だろう。少なくとも俺が女なら絶対選ばない。
しかし俺の体にとってはそうではないらしく、微かに痛む胸はそのまま、政夫の質問に素直に答えた。
「わたしの名前は――ミツキ、です」
(名前は変わってないのかよ……)
子供の頃は、女みたいで嫌だった名前だが、こうなったいまは違和感のない名前になってしまっている。なんという皮肉か。
政夫はふむふむ、と頷いていた。
「そうか……うん。すまない。ありがとう。……ミツキ、これからよろしく頼むよ」
俺から視線を逸らしつつ、政夫が言うのを、俺の体は何も言わずに再度頭を下げることで応えた。
政夫はとりあえず、とばかりに家の中を案内してくれた。政夫の視点からすれば、俺はこの家に来るのは初めてだろうから、的確な手順といえるだろう。
その際、俺は元自分の部屋が、ほぼ物置になっている現実を目の当たりにした。
「ミツキはここを使ってくれ。いまはろくな家具がないし、荷物も邪魔だろうけど……あとで片付けるから」
「よろしいんですか?」
俺の体がそう政夫に問い掛ける。わざわざ何を訊こうというのか、俺は内心で戦々恐々としていた。
「いいって、なにが?」
「いえ……わたしはペットですし、政夫さまの部屋に檻でも置いていただければ……それで十分なのですが」
(おおい! ヤメロよ!)
確かにペットならそういう扱いでも当然かもしれないが。せっかく部屋をひとつ使ってもいいと政夫が言っているのだから、それに甘んじておけばいいものを。
そして政夫は政夫で、悩む素振りを見せる。
「……それがペットなら普通かな?」
「人によっては人間のような部屋をペットに与える方もいらっしゃいますので、政夫さまの考え方次第ですけど……」
「なるほど……それもそうか」
政夫はそんなことを呟く。改変される前の世界の常識と照らし合わせているのだろう。
(普通にペットに一部屋与える飼い主もいるしな……頼む、政夫!)
俺の願いが通じたのかわからないが、政夫は暫く考えたのちに結論を出す。
「とりあえずいまはこの部屋を普通に使ってくれ。この家に檻はないし」
「……わかりました」
だからなんで俺の体は若干残念そうなんだ。政夫の部屋に入れてもらいたかったのか。
(女として改変された世界の俺は、政夫に対してそんなに好感度が高いのか?)
元々の俺はそんなに高くないと思うのだが。
性別が変わり、立場が変わるだけでそんなに捉え方が変わるものなのだろうか。
よくわからないまま、話は続いた。
ちなみに、トイレには肉便器が設置されていたはずだが、いまは跡形もなく、普通のトイレに戻っていた。政夫が少し不思議そうにしていたのは、あいつの認識ではそこに肉便器がいたはずだったからだろうか。
(確か政夫が言うには、複数人男が暮らしている家に派遣されてきていたって話だから……政夫ひとりの家になったことで、対象から外れたってことか?)
よくわからない。考えるのは俺の役目じゃないんだが、いまは考えることしか出来ないからつい考えてしまう。
だがろくに考えがまとまらないうちに、家の案内が終わったようだった。
「さて、とりあえずこんなところか。何か訊きたいことは?」
「わたしは基本的に家事を行えばいいのでしょうか?」
能動的に俺の体が動き出すと、違和感がまた大きくなる。どうにも慣れない。
「うん、そうだな。好き嫌いはないし、特に家事に関して拘りもないから、ミツキがやりやすいようにやってくれ」
「承知しました。……もうひとつ、大事な質問なのですが」
「なに?」
「性欲処理はどれくらいの頻度で行いましょうか」
「『ぶふっ!』」
思わずリアルの政夫と同時に噴いてしまった。
慌てて鼻を拭う政夫。俺の方は意識上だけのことだったから平気だったが、同じように体が自由に動いていたら、噴きだしていただろう。
「あー、うん、そうだな……それも当然すべきことか?」
「若い男性である政夫さまであれば、当然かと。ペットを飼っているのに性欲処理をさせないというのは、特別な事情がない限りは、ないと思います」
(なんでそう必死になるんだよ俺の体……)
明らかに言いつのっているような言い方だ。
「……千本松のおじさんはどうしてた?」
「あの方には伴侶がいらっしゃいますから、わたしを使う必要がありません。わたし自身の性欲処理のために、道具は使っていただいておりましたが」
「そ、そうか……」
(うーん、なんとも変な話だ……)
元の世界の常識を知る俺や政夫からすれば、奇妙でしかない。
実際政夫もそう感じているのか、なんとも言いがたい顔をしていた。
「……うん、そうだな。ちなみに、一般成人男性ならどれくらいの頻度が普通だと思う?」
「毎日でもおかしくはないかと」
(おかしいわ! ヤメロっつーの!)
冗談ではない。毎日毎夜政夫に犯されるなんて。
一方、政夫はなんとも言いがたい顔をし、悩み――そして結論を出すのだった。
くそ真面目で面白みに欠ける奴。
それが俺から見たあいつの基本的な評価だが、唯一夜のおかずの好みだけは、認めてやってもいいくらいに、ディープで刺激的なものだった。
俺自身は、付き合っている彼女がいればそれとヤることで発散出来たから、おかずばかりを使ってはいなかったが、彼女がいない期間は政夫に頼み込んでそのおかずを貸してもらったりしていたものだ。
そして、その政夫の嗜好というのは、いわゆるSMとか緊縛とかの類いのプレイだった。
牛娘になってしまったその日の夜、俺は政夫の部屋で縄をかけられていた。
「じゃあ、縛らせてもらうよ」
「はい、どうぞお好きなように」
実践したことなどないだろうに、無駄に器用な政夫は俺の体をしっかりとした縄で縛り上げていく。
(なんで持ってんだ? こんな縄……)
いつかSMプレイに理解のある彼女でも作るつもりだったのだろうか。それとも俺は政夫が童貞とばかり思っていたが、どこかで女を縛るようなプレイをしていたのだろうか。
いずれにせよ、政夫は迷いなく俺の体を縄で縛り上げていく。
「ん……っ、うぁ……」
敏感な肌を縄が締め上げると、俺の体は自然と嬌声をあげていた。明らかに初めて縛られる感じではない。体が勝手に疼いて仕方ないのだ。
「痛いか?」
「だ、だいじょうぶでふ……」
口には特に何もされていないのに、すでに呂律が回らなくなっている。
俺は俺の体が生じさせている異様な快感の渦に、辟易していた。
(こっちまで変な気分になるじゃねえか……っ)
体の主導権がないだけで、体が覚える快感はそのまま伝わってくるのだ。
いくら俺にその気がなくとも、変な気分になることは避けられない。
体を這い回る縄に酔う。そんな状態に自分がなっているということを、認めたくはないが認めざるを得ない。
流されないように耐えている間に、政夫の手で俺の体はあぐらをかいた状態で縛り上げられていた。
「よし、これで……と」
政夫が俺の体を抱えるようにして持ち上げる。陰キャのくせに以外とまともに力はあるようだ。
「ひゃっ」
俺の体は背中を下にした状態で再び床に置かれる。そうなると、あぐらを書いた足の付け根――股間がもろに晒されることになる。
「ひぅ……っ」
恥ずかしさを感じているのか、顔が熱くなり、体中に熱が伝播していくのを感じた。
あぐらをかいた足ごしに政夫が俺の股間を見ているのが見えてしまう。
「……ッ」
恥ずかしいところを見られている、という羞恥が限界に達したのか、俺の体が眼を逸らして眼を瞑る。
そんな俺に対し、政夫は軽く平手で尻を叩いた。ぺちん、といい音が響く。
「眼を逸らすな。自分の恥ずかしいところをちゃんと……見えないか」
そういう政夫の言葉は正しい。普通の女なら、下を向けば自分の股間くらい見えるだろうが、あいにくいまの俺の体は規格外のでっかいおっぱいを抱えている。
政夫が縄で絞り出したこともあって、仰向けに寝ているいまの状態でもその双丘は絶大な存在感を持って俺の視界を埋めていた。
だから俺がいくら頑張って自分の股間を見ようとしても、肌色のでかい果実が見えるだけで、なにも見えないのである。
「まあ、とりあえず眼は閉じるな。……そうだな。縛り上げられてもなお、いやらしく尖ってる乳首でも見てろ」
そう言われた俺の体は、自分の乳首に目線を動かした。
確かに、縄で付け根を絞りあげられ、ぱんぱんに膨らんだ乳房の頂点で、硬くなったピンク色の乳首が存在を主張している。
少し体が揺れるだけで、その乳首に空気が当たり、じんわりとした快感が生み出されていた。
(俺の体、マジでエロくなっちまったなぁ……)
夜に到るまでの活動でわかってはいたが、こうして直にエロく立ちあがっているところを見せられると、強く実感する他ない。
諦めの境地に到ってそんな風に考えていると、服を脱いだ政夫の姿が自分の身体越しに視界に映り込んだ。
「さて……それじゃあ、使わせてもらおうか」
膝立ちになった政夫の股間に、聳え立つチンコ。男の時の俺のものと比べれば粗末なものといわざるを得ないが、いまの俺にとっては恐怖の対象だった。
しかしそれを受け入れる俺の体にとっては、そうではないようだ。
どくん、と激しく心臓が高鳴る。それは緊張も含まれた鼓動ではあったが、それ以上に、それを受け入れられて嬉しい、という俺には考えられない気持ちが働いている鼓動だった。
(マジで改変された俺の体の、政夫の認識ってどうなってんだよ……)
股間からも熱い感覚が迸っているのだから、勘違いでは有り得ない。
そんな俺の体の様子を見てか、政夫の方もその気になってチンコを硬くしているのがわかった。
俺の意識だけが、置いてけぼりにされている。
そう、思っていた。
「入れるぞ……ミツキ」
「はい、どうぞ……政夫さま」
そう俺の体が告げると同時に、政夫が俺の中に入ってくる。反射的に気持ち悪く感じた俺だが、その精神的な不快度は直後に生じた凄まじい快感に押し流された。
(まじっ、かよ……っ、こんな……っ)
ずぶずぶとチンコが入って来る感覚なんて、気持ち悪いだけのはずなのに、俺の体はそれを悦びを持って迎えていた。股間が熱くなって愛液が濡れ出し、チンコに押し出された分の液体がどろりと体外へと零れ出す。
「んあっ、ああああっ」
堪えきれなかった喘ぎ声が口から零れて、溢れた。それがなんとも女性的な声だったので、俺の意識はかき乱される。
(こ、こんなの……俺の体じゃな……っ)
身体の奥が押される感覚。政夫の先端が俺の体の奥に到達していた。
体を奥まで征服されたという自覚が瞬く間に全身を貫いていく。
政夫が腰をピストンのように動かし、俺の奥を何度も突く。意識はともかく、俺の体はその衝撃を受けるたびに性的に昂ぶり、我ながらはたしないと思えるほど乱れていた。
ぱしん、ぱしんと俺の尻と政夫の下腹部が打ち合わさって音を立てている。
「……っ、出すぞ……!」
そう保つこと無く、政夫は俺の中に精液をぶちまけた。改変前の俺なら、この早漏野郎と揶揄ったかもしれないが、いまの俺にそんな余裕はなかった。
(お、俺の体……感じやすすぎだろ……っ)
わずか数十秒のピストン運動程度で、何度絶頂したかわからない。
俺の経験上で一番感じやすい女でもここまで絶頂しやすい女はいなかった。
こんなのを毎日されたら、俺の体は――俺の心も――どうなってしまうのか。
自分の意識が快楽に塗りつぶされない恐怖に、心が震えた。
しかしそんなことは知らない政夫は、まだ足りないとばかりに、そのチンコを勃起させていた。
「……続けても、いいか?」
乱れすぎている俺の体を案じてか、そう声をかけてくれる政夫。
俺は全力で頷きたかったが、俺の体は俺の願いを無視する。
「もち、ろんです……好きな、だけ……わたしを、犯してくださいませ」
そんなことを女に言われて黙っていられる奴は男じゃない。
政夫は再び硬く勃起した逸物を、俺の体の中に挿入するのだった。
改変された世界の片隅で。
俺の意識は、いつまで改変されずに居られるのだろうか。
俺が俺で無くなる日は、そう遠くない未来の気がした。
千本松光樹視点 最終話 おわり