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夜空さくら
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液体化スーツ ~姉妹の濃厚な絡み(物理)~

 ある日、久しぶりに実家に帰ってきた伊澄お姉ちゃんが私に見せてくれたのは、まだどこにも発表されていないどころか、発表する予定がないという新型のスーツだった。

「なんでそんなのを作ったの?」

 その私の真っ当な質問に対し、お姉ちゃんの答えはシンプルだった。

「私が欲しかったから」

「じゃあしょうがないね」

 そもそも平面化スーツ自体、元々はお姉ちゃんが趣味で作ろうと思ったから出来たという話だった。そんなことに会社の貴重な研究資金を使っても良かったのかわからないけど、結果として平面化スーツが生まれ、会社は世界有数の大企業に成長できたのだから、お姉ちゃんが正しかったということだ。

 お姉ちゃんはいつも正しい。

 シスコンと自他共に認めている私だけど、これは別に身内の贔屓目というわけじゃない。お姉ちゃんが間違ったり失敗したりしたところを見たことはない。

 もしかすると私には見えないところでミスしているのかもしれないけど、わからない以上は私はお姉ちゃんを絶対的に信頼するだけだ。

「それで、その新しいスーツって、どんなスーツなの?」

 私はわくわくしながらそう問い掛けた。

「それは見ての……いえ、試してのお楽しみね」

 お姉ちゃんがベッドの上に広げたのは、人型の黒いスーツ。首から下を手足の先まで覆う全てが一体化したタイプだ。いままでテスターとして平面化スーツを着てきた私には、見慣れたものである。

「これはね……液体化スーツっていうの」

 お姉ちゃんがスーツを指差してそう言ったので、私は首を傾げた。

「液体化、スーツ? 平面化じゃなくて?」

「ええ、そうよ。百聞は一見にしかず……みくら、着てみてくれる?」

 そうお姉ちゃんに請われれば、私に断るという選択肢はない。

「わかった!」

 着ていた服を手早く脱ぎ捨てて、裸になった。

 お姉ちゃんの前で裸になるのは別に恥ずかしくない。お姉ちゃんっ子だった私は、昔っからお風呂に一緒に入ることも多かったし、大人になってからも、お姉ちゃんの開発した平面化スーツの試作品を着る時には、いつも裸になっていたからだ。

 だから特に気にしなかったのだけど、あんまりにも脱ぐ勢いが良すぎたせいか、私が脱衣するのを見ていたお姉ちゃんが少し苦笑していた。

「慎みって大事よ?」

「え。ダメだった? えっと……こんな感じで恥じらってみせた方がいい?」

 もじもじと、わざとらしく身体をくねらせてみる。

 そしたら、お姉ちゃんに「あはは」と声をあげて笑われてしまった。

「私の前では普通にしてていいけれども、他の人の前では慎みを持ちなさいね」

 憧れのお姉ちゃんに、優しい声音で呆れ気味に諭される。

 裸でいることよりもそっちの方が恥ずかしかった。

「はーい……」

 その気恥ずかしさを誤魔化すついでに、手早くスーツを身につけていく。

 毎回着ているのだけど、このスーツは着るまでが大変だ。身体にぴっちり沿うように出来ているのだから、仕方ない面もあるとは思うけど。

「もっと簡単に身につけられるようになったらいいのにねぇ」

 そう本音を漏らすと、お姉ちゃんも同意してくれた。

「そうなのよね……私はスーツをじっくりと着ていく過程も好きだけど、一般に普及させようと思ったら、装着に時間がかかってちゃいけないし……裸になる必要もあるのは、難しいところね」

 そんな話をしつつ、要所要所でお姉ちゃんに手伝ってもらいながら、私はスーツを身につけた。

 軽く身体を動かして見て、緩みや弛みがないか確認する。

「大丈夫……かな?」

 今のところ、スーツとしては平面化スーツと変わりがないように思えた。

 特別な形状をしているとか、変わったギミックがありそうな感じはしない。

「まずは身体だけで試してみましょう。ベッドの上に寝転んでくれる?」

「はーい」

 私はお姉ちゃんに言われた通り、ベッドの上に仰向けに寝転がった。

 スーツは私の身体を一番理想的な状態で留めてくれる。だから仰向けに寝転がっても、お胸の形は全く崩れることなく、お椀を伏せたような綺麗な隆起を保っていた。

「それじゃあ、いくわね」

 そう言いつつ、お姉ちゃんが私の着ているスーツのうなじ辺りに触れ、スイッチを入れたようだった。

 キュウウウウウ、とスーツと身体が擦れ合うような音が響く。けれどもそれだけで、いつもの平面化のような、身体が徐々に平たくなっていく感触はなかった。

 てっきり潰されると同時に強烈な快感が来ると思っていたから、少し拍子抜けだ。

「スーツ、起動させたの? 特に何も変わって無いような気がするんだけど……」

 そう呟きつつ、アタシは身体の前に手を持ってこようとした。

 けれど、私の身体は私の思うとおりに動かなかった。

 まるでミミズかナメクジが這うように、ベッドを擦るようにずるる、と動く。

 一般的な軟体芸レベルの話じゃ無い。自分の身体が液体状になっているのがわかる。

「うわっ、なにこれ!?」

 クラゲになったような気分だった。

 平面化される時は動けなくなるから、動けること自体にも驚いたけど。

 私が腕を持ち上げると、関節や骨格をまるで無視した動きで腕が動く。本来曲がる方向じゃ無い方向にも、関節が動くので見ようによってはとても気持ち悪い。

 例えば人差し指を動かしてみる。普通の人は、関節が曲がる方向にしか指は曲がらないだろう。けれどいまの私は、その関節や骨格を無視して、くるくると指を丸めることが出来た。人差し指の先で同じ側の手の甲が掻ける、と言ったらどれくらい奇妙な状態かわかってもらえるだろうか。

 私の身体は厚みをそのまま保ったまま、軟体生物のタコとかイカのような動きが出来るようになっていた。

(とするともしかして……)

 私は身体全体で頭を持ち上げるように動かしてみる。安定はしなかったけど、私の身体は頭をなんとか持ち上げることが出来た。

「うわぁ……なにこれ、変なきぶ……んひゃっ!」

 一瞬気を抜いた瞬間、私の頭部は液体化した胴体を押し潰しながら、下へと下がった。まるでクッションの中にダイブしたような感覚だ。ただ、そのクッション自体、自分の身体だから、なんだか奇妙な感覚としか言い様がなかった。

 私の頭は私自身の股間を押し潰し、そこで止まる。

「んきゃあっ!」

 セルフクンニをしているような形になってしまい、強烈に発した快感に身悶える。

 そんな私の痴態を、お姉ちゃんは楽しげに眺めていた。

「さっそく自分の頭で自分の身体を押し潰して気持ちよくなるなんて、さすが私の妹ね」

「じ、事故だもん……」

 『さすが私の妹』なんて言われたら、嬉しくて仕方ない。

 けれどもさすがにいきなり自慰を始めたみたいに言われるのは恥ずかしくて、つい否定してしまった。

 そういう気持ちも理解してくれているお姉ちゃんはニコニコと笑っていた。

「まあこれでわかってもらえたと思うけど、つまり、このスーツはある程度の身体の自由を持った上で、スーツ特有の衝撃吸収力も相応なものを備えているの。だから……」

 お姉ちゃんがベッドの上に上がって、私の腕を掴んだ。そのとき生じた快感に私が嬌声をあげている間に、お姉ちゃんは私の身体を使って私の頭を包み始める。

「お、おねえちゃ……んぷっ」

 自分の手足が頭を絡めて一つに纏められる。その上でお姉ちゃんは手足を軽く結んでしまった。

 実に簡単な結び方だったのだけど、スーツ同士が擦れ合う摩擦の力が強く、結ばれると自力では解けなくなった。

「こうして纏めて……そして……」

 自分の身体に包まれた私の頭部を、お姉ちゃんが胸に抱いて持ち上げる。

 お姉ちゃんの柔らかくて温かい胸の感触が伝わって来て、とても気持ちよかった。

 けれどお姉ちゃんはそんな私を四角い箱の中に下ろしてしまう。

「こんな風に、身体をクッション代わりにすれば、緩衝剤要らずってわけ」

「んむーっ」

 私は自分自身の身体で視界が覆われて、何も見えなくなっていた。

 口が身体に埋まっていて満足に喋れない。

 辛うじて呼吸は出来たけど、わずかな隙間しかなくて、かなり息苦しい。

「まあ、本来は全身平面化して折り畳んでしまった方が場所も取らないからいいんだけどね」

 動けないのが不安だとか、圧縮出来る幅に限度がある人はこの形式の方がいいのかもしれない。

 お姉ちゃんは私を箱の中に入れたまま、自分も着替え始めた。流石に開発者だけはあって、私以上に着慣れている。

「あとで出してあげるから、少し待っててね」

「んー……」

 私は了承の意図を込めて唸る。

 最初は驚いたけど、慣れてくると結構心地良い空間になっていた。四方八方を壁に囲まれ、自分の身体しかない状態。このままの状態で寝てしまえそうなほど、かなり安心する空間になっている。

 身体を動かそうとすると、その身体に包まれている頭部にその動きが伝わってきた。

 揺り篭で揺らされているようで、かなり心地良かった。

 傍から見ると肉塊の中に頭部が浮いているような、そんな異常な光景だったかもしれない。けれど、私にはとても心地良い空間になっていた。

「……んー」

 その中で微睡んでいると、着替えが終わったらしいお姉ちゃんが目の前に立つ。

 液体化スーツらしき私が着ているのと同じスーツを身に付けていた。

「さて、私も液体化する前に……出してあげるわね」

 そう言ってお姉ちゃんは私を箱から取り出してくれた。

 自分の身体が箱の形に合わせて四角くなってしまっているのがわかる。そんな私を、お姉ちゃんは再び胸に抱えた。今度はさっきよりもハッキリと、お姉ちゃんのおっぱいの柔らかさを感じることが出来た。

 お姉ちゃんは私を抱えたまま、浴室へと移動した。うちの浴槽は、大人ふたりが並んで寝転べるくらい広い浴槽なのだけど、その中にはお湯も水も張られていなかった。栓だけはきっちり嵌められていたけれど。

 お姉ちゃんが私をその底に降ろし、結ばれていた手足を解いてくれる。

 そうすると私は再び自由に動けるようになり、浴槽の底にどろりと広がった。口に押しつけられていたものがなくなって、自由に呼吸が出来るようになる。

「ぷはぁ。かなり気持ちよかったよ、お姉ちゃん」

 素直な感想を口にすると、お姉ちゃんはにっこりと笑ってくれた。

「そう。なら良かった」

「でもなんて浴室に移動したの?」

 その答えは、お姉ちゃんが無言でローションを取り出したことで、ハッキリする。

 ローションの瓶を開け、中身を浴槽の中へと流し込む。

 私にそのローションがかかり、ますますイカやタコみたいな見た目が強調された気がした。

「それと……」

 お姉ちゃんが私に全頭マスクを被せてくる。呼吸が出来なくなるので、すぐ液体化がオンにされたみたいだった。頭の先まで液体化した私は、どこを起点に力を込めればいいのかわからなくなって、全身を水槽の底に沈めてしまう。

 マスクの色は真っ黒だったから、私の視界も真っ暗だ。

「あ、忘れてた。……これでよし、と」

 お姉ちゃんがそう呟いて、何かの操作をした途端、急に視界がまぶしく光る。

(うわっ、まぶし……って、なにこれ?)

 私は多少ぼやけてはいるけど、お姉ちゃんが私のすぐ傍に立っているのを『見た』。

 どうやら私を液体化させたスーツが透明になって、それ越しに周りが見えるようになったようだった。

「ふふふ……見えてるかしら? このスーツにはある程度自由に色を変えられる機能があるの。まだ黒か、白か、透明か……くらいしかないんだけど。ゆくゆくは着用者が好きに色を選べるようにしたいと思っているわ」

 まためちゃくちゃな機能を付けてきた。一体どうやれば自在に透明にしたり白黒変えたりできるのだろうか。どうせ教えてもらってもわからない理屈だろうから、聞かないけど。 

 お姉ちゃんは私のことをじっと見て、少し顔を赤くしていた。

「……透明はちょっと考えないとダメかもね」

 そういいつつ、私にもわかるようにか、お姉ちゃんが自分の着ているスーツを透明に変える。お姉ちゃんの姿を見た私は、どうしてお姉ちゃんが少し顔を赤くしたのか理由がわかった。

 スーツの透明度合いは予想以上に透明で、ほとんど裸と変わらない様子だったのだ。

 かすかにスーツの光沢自体は残っているし、体を形を整える機能は残っているので、下手な裸より恥ずかしい姿、といえるかもしれない。

 お姉ちゃんのお胸はそんなに主張が激しくないけど。

 心の中で密かにそう思ったつもりが、どうやらお姉ちゃんに伝わってしまったようだった。

「……みくら? どこを見て、何を考えているのかしらね?」

 お姉ちゃんの足が私の体を軽く踏みつけながら、浴槽の中に入ってくる。

(ふ、にゃっ!)

 びりびりと快感が生じた。私は思わずそのお姉ちゃんの足に自分の体を絡めてしまう。

 お姉ちゃんは絡まれつつも落ち着いていた。腰を下ろし、液体化した私の足の上にお尻が載せられる。

「全く……まあいいわ。せっかく久しぶりに返ってきたのだもの。一緒に楽しみましょうね」

 お姉ちゃんはそういうと、自分も全頭マスクを被って、全身を液体化させた。

 私と同じように液体化し、軟体生物のようになったお姉ちゃんが、私の体に自分の体を絡めてくる。イカとタコが互いに絡み合っているように、私とお姉ちゃんは絡み合った。

 ぶちまけられたローションがさらにいい抵抗と程よい滑りを生み、私は夢中になってお姉ちゃんに自分の体をこすりつけた。

 お姉ちゃんもまた、絡み合っているうちに気分が高ぶってきたのか、勢いよく私の体に体をこすりつけて来る。


 私とお姉ちゃんはひとつになる勢いで、液体化した体でしばらく絡み合ったのだった。



液体化スーツ おわり



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