SamSuka
夜空さくら
夜空さくら

fanbox


液体女体風呂


 女体風呂、という単語を聞いた時、皆さんならどんな光景を想像するだろうか。

 ハーレム漫画が好きな人なら、浴槽に寝転ぶ裸のご主人様らしきものを中心に、無数の美女が裸で一緒に浴槽に入り、ご奉仕しているような、そんな光景を思い浮かべるかもしれない。

 極端な猟奇的趣向でなければ、女体風呂と聞いてまず思い浮かべるのはそんな光景だろう。

 レズ嗜好である私にとって、そんなご主人様ポジションになるというのは少し憧れではあった。実際にはまず同性愛を理解してくれる女の人がそう多くないから、あくまで夢、夢想のひとつでしかなかった。

 そんなある日、ふと立ち寄ったレズ風俗店で「女体風呂はじめました」と書かれていた時には、一に二もなくそれを注文したのだった。

 だけど、案内された部屋で用意されていた女体風呂は、私の想像とは全く違う別の何かだった。

「ええと……これが、女体風呂……なの……?」

 私は全裸にバスタオルを巻いた姿で、浴槽の縁に腰かけていた。

 最初、勢い込んで浴室に入ったとき、浴室に誰の姿もなく、ただ蓋がされた広めの浴槽しか見えなかったときは、これから次々女性たちが入ってくるのかと思って、ドキドキしていたのだけど。

 先に浴槽に浸かっておいた方がいいのかと、浴槽の蓋を開けてみたのだ。

 そして現れた浴槽の中の様子を見て、私は唖然としてしまった。


 浴槽の中には、黒くてテカテカした得体の知れない何かが蠢いていたのだ。


 幸いにして名前も呼びたくない例のあの虫というわけではなく、どちらかというとウナギとかナメクジとか、そっちの方が近かった。けれど、とにかく人の形はしていないようだった。

 ドロドロした粘液にまみれていて、タコやイカという表現でもいいかもしれない。

 それらは複雑に絡み合い、浴槽の半分ほどを満たしている。

「生きて、るのかな……?」

 恐る恐る手を伸ばし、浴槽の中のそれに触れてみる。

 思ったよりもそれの弾力は弱かった。ぬるっとローションみたいな粘液で滑りながらも、私の指が押した分、それは凹んで窪んでしまった。

 指先から伝わってくる感触は、ラバーのようで、ラバーとは言い切れないものだった。その感触に私は覚えがあった。

「これ……もしかして、平面化スーツと同じ素材……?」

 平面化スーツとは、最近開発されたトンでもない超技術の産物だ。

 人間をカーペットみたいに圧縮して、運ぶことが出来るようにするという魔法のようにしか思えない技術。まだそんなに普及はしていないけど、いずれ世界の流通や移動手段を変えてしまうといわれている。

 その平面化スーツは、見た目ラバースーツのようなのだけど、超技術が内蔵された特殊な素材で出来ている。ラバーと同じ見た目と感触だからラバーと認識している者が多いけど、厳密にいえば違うものらしい。

 いま目の前で蠢いているそれからも、それと同じ感触を覚えた。

 でも少なくとも平面化スーツとは違う。平面化スーツは圧縮されると動けなくなるはずだし、何よりこんな厚みを持った状態にはならないはずだ。

 さっきはウナギのような、と表現したけど、太さは結構部位によってまちまちだった。私の指ほどの太さしかないところもあれば、胴体と同じくらいに太い部分もある。

 それらは蠢きながらも絡みあっていて、正体が不明で気味悪く恐ろしかった。

 私は割となんでも恐れずやってきた自覚はある方だけど、さすがにこの、ありていにいって職種のようなものに満たされた浴槽に入る気はしない。

「仕方ない……脱衣所で誰か来るのを待とう……」

 私はそう考え、腰かけていた浴槽の縁から立ち上がろうとした。

 その時だ。

 浴槽内に収まっていたその黒い何かの一部が、急に私の手首に絡みついてきた。

 立ち上がりかけていてバランスを悪くしていた私は、その黒い何かに腕を引かれ、倒れ込むようにして浴槽の中に引きずり込まれた。

「ひゃ――ッ!」

 のけ反って背中から浴槽の中に落ちる。衝撃に備えて、思わず固く目を瞑った。

 けれども、衝撃が来るという予想に反して、私は柔らかく暖かな感触に受け止められる。

 恐る恐る目を開けてみると、浴槽内を蠢いていた黒い何かが私を包み込むようにして受け止めてくれていた。

 浴槽の反対側の縁に頭を打ちかけていたけど、浴槽内を蠢く何かが、器用に隆起して私の頭を守ってくれていた。

(た、助かった?)

 ほっと一息ついたのもつかの間。

 浴槽に蠢くそれが、それの上に倒れ込んだ私の体に絡みついてくる。

「うわっ、わわっ、なんなの……ひゃあっ!?」

 イソギンチャクにからめとられた魚の気分だった。

 バスタオル一枚しか身に着けていない体に、それが絡みつき、私は動けなくされてしまう。

「いやっ――むぐっ!?」

 大声で悲鳴をあげかけた口を、塞いできた。ぬめぬめした不思議な感触だったけど、妙に温かくて人の手によって口を押えられているような感じだった。

 次々起きる意味不明な現象に狼狽していると、さらに奇妙なことが起きた。

 私の体に絡みついた何かの一部が、ゆっくりと隆起し、人の形を作っていくのだ。

 いや、元々人の形はしていたようだった。あまりにも軟体的な動きをしていたので、わからなかっただけで。

 それが人の体としての硬さを取り戻したことで、関節部分などがハッキリし、人型であったことが理解できた。

 いまは、全身を黒いラバーに覆われた人間のようにしか見えない。

 全身がのっぺりとしていて、頭部も同様だった。呼吸する穴も何もなく、不気味なほどにのっぺらぼうになっている。

 けれど確かにそれは人間だった。

 私の体の上で起き上がったその人型は、指先を首元にもっていくと、全頭マスクをまくり上げ、その下に隠されていた素顔をあらわにする。

「ふぅ……来店ありがとうございます、お客様。女体風呂コースへようこそ。私たちが担当させていただきます」

 その人は妖艶な魅力を放つ妙齢の女性だった。

 いまのいままでウナギかナメクジかというような得体の知れない存在であったとは思えないほどハッキリと、そのメリハリのある身体で私の身体の上にのしかかっている。

「んんんッ」

 私はまず、口を押えている何かからの解放を求めた。

 それが塞いでいるのは口だけだったけど、ローション的な粘液が鼻の方にもかかって呼吸が苦しいのだ。

「あらら……申しわけありません。悲鳴を上げられたくなかったもので。もう離していいですよ」

 その女の人がそう呼びかけながら、私の口を押えている黒い何か――恐らくそれも別の人間なのだろう――を軽く掌でぽんぽん、と叩くと、黒い何かは素直に私の口を解放してくれた。

「ぷはっ。な、なんなんですか、これ……?」

 どろどろした粘液はローションで間違いないみたいだけど、口周りがそれで汚れてしまっていた。

 それを私の体に跨って乗っている彼女が、優しく拭ってくれる。その拭う彼女の手もローション塗れだったからあんまり意味はなかったけど。

「うふふ……申し訳ありませんね。受付での説明が不足していたようです」

「あ、あの……これは、一体?」

 いまだ私の身体には軟体生物化した人間と思われる何かが絡みついていて、自由に動けなかった。そもそも、彼女が私の身体に跨がっているから、逃げられないのだけど。

「ふふふ……当店では、液体化スーツを身に付けた店員が、お客様にご奉仕させていただいているのです」

「液体化、スーツ?」

 平面化スーツと同じものだろうか。名前の響きは似ているけども。

 けれど、平面化というには、浴槽内に満ちている物はあまりにも不定形だった。

 首を傾げた私の疑問に、目の前の女の人が応えてくれる。

「平面化スーツはご存じですか? あの技術が応用されたものです。見ていただいた方が早いでしょう――液体化、起動」

 百聞は一見にしかずということなのか、その女性は見に纏っているスーツを起動させた。

 すると、いままで普通にスーツを着ていただけの彼女の体が、急に関節や骨を失ったように、ぐにょぐにょとしたものになる。それは浴槽内に満ちているものとほとんど変わらない姿だった。

「どうぞ、触って感触を確かめてみてください」

 そういいながら手を差し出してくる。その差し出してくるときの動きも、普通の状態とは異なった動きだった。

 まるで水が無理やり人の形を維持しているような。関節も筋肉も関係ない、タコやイカが腕を伸ばしてくるような、そんな動きだった。

 私は差し出された手を、恐る恐る握ってみる。すると、水の入った袋を強く握ったときのように、簡単に彼女の手が握り潰せてしまった。

「あんっ♡」

 それと同時に、気持ちよさそうな声をあげたので、私はびっくりして手を放してしまった。すると、私が握りつぶした形になっていた彼女の掌は、すぐに元の厚みを取り戻し、何事もなかったかのように蠢く。

「失礼しました。液体化、の意味はご理解していただけましたか?」

「な、なんとか……」

 要は平面に圧縮する前の、ドロドロになった状態であえて止めているということだろうか。そもそも平面化することのできる理屈もよくわかっていないので、そういうことが出来るのかどうかすら、考えたことがなかった。

「このスーツが平面化スーツと違う点は、ある程度自分の意思で動けることです。イカやタコのような軟体生物レベルでしか動けませんが……このように」

 説明してくれる女の人は、私の体に四肢を絡めるように体を伸ばしてきた。本来腕や足が伸ばせる長さよりも遙かに長く伸びている。その分、細くなってはいるようだけど。

(これじゃあ、最初見たとき人の体だってわからなくても無理はないわよね……)

 多数の手足が絡み合い、全体が黒一色であることに加えて、体のラインを無視して伸ばしていたらわかるわけがない。

 ローションに塗れて滑りが良くなっている彼女の体が、私に巻き付いてくる。ラバーと似たような素材のスーツだから、本来は抵抗が強くて仕方ないだろうけど、いまはローションのおかげで実にスムーズに私の体に巻き付いて着ていた。

 唯一、元の体のままの頭部が、私の顔のすぐ傍に近づいてきた。こうしてみると、彼女はとても綺麗な顔だちをしていた。さっきまで軟体生物みたいに蠢いていたとは思えない。

 キス寸前の至近距離まで近づいてきたその人は、私の耳元で囁いてくる。

「それでは改めて……女体風呂、堪能していただきましょうか。お客様は何もする必要はございません。ただ、力を抜いて私たちに身を委ねてくださればいいのです」

 甘い囁きに、体が震える。体に絡みついている彼女以外の人たちも、かすかにふるえて私の体に微妙な刺激を与えてくる。

「よろしいでしょうか……?」

 最終確認なのだろう。引き返すならここしかない。

 ここで頷いたら、周りに満ちている何人いるかもわからない女性たちが一斉に動き出す。そのすべてが私を気持ちよくするための動きで、それがどれほどの気持ちよさを生み出すのか。想像することも難しい。

 もちろん私の答えは決まっていた。

「よろしく、お願いします……」

 どれほどの快感を与えてくれるのかと、期待を込めて頷く。

 私の了承を得て、女性はニコリと笑った。

「ここでしか味わえない、素晴らしい体験を貴女に」

 その人がそういうのと同時に、私の周りに満ちていた、ラバーに包まれた黒い液体状の何か――液体化した女性たちが、一斉に動き出した。

 体に巻いていたバスタオルなど、一瞬でどこかに行ってしまった。

 入ったことはないけど、ウナギ風呂にでも放り込まれたらこんな感覚なのかもしれない。

 けれどよく感じてみれば、人の手の形をしたものが私の体を撫でまわしているのだということがわかる。

(い、一体、何人、いるのっ、これっ)

 体中を弄られ、私は混乱した。

 まるで無数の人に囲まれて、体中を弄られているような感触。

 けれども目に見える範疇では、本当に人間かどうかもわからない、無数の何かが私の体を弄りまわしている。

 私の困惑を察したのか、首だけ元の体になっている女性がいう。

「もう少し、視覚的にわかりやすくしてみましょうか。――スーツを透明に」

 彼女がそういうと、視覚的に劇的な変化が起きた。

 今まではただの黒い物体だったのが、急にその黒色が薄れ、肌色の物体へと変わったのだ。

 そしてついた色は肌色だけじゃない。髪の毛の色、唇の色、目の色、詰めの先の色など、人体に存在するわずかな色の区別が付くようになり、そうすると途端に、その液体状の物体が『液体化した人体』だということがよくわかるようになってしまった。

 透明な膜の向こう側にある目から、急に視線を感じるようになった。

(ま、まさか見えてるの……? この状態で?)

 この状態で動けるのなら、見えるのかもしれない。急に恥ずかしくなってきてしまう。

 そんな私の反応などお構いなしに、液体化した多数の人間の手が、私の体に絡みつき、的確に性感帯を責め始めた。

「ひゃっ――あんっ♡ んあっ!」

 さっきまでの黒かったときとは動きの質がまるで違う。

 何も見えない状態で手探りで刺激していたのがさっきまでだとしたら、いまは私の性感帯を見抜いて、的確にその性感帯を刺激してくる。

「ひゃ、あっ、ああっ、んひゃあっ♡」

 びくんっ、と身体が跳ねる。

 乳房が包みこまれ、液体化した指先が乳首を挟んで擦って来ていた。

 普通、指で乳首を挟んで擦り上げてくるのであれば、親指と人差し指で挟んだり、指と指の間で挟んで擦ったり、そういうやり方になるだろう。

 けれど、液体化して関節も筋肉も関係なくなった彼女たちの刺激の仕方は独特だった。

 乳首を一周するように指が回り込み、スクリューのように回転しながら、乳首の先端を絞り出すように乳房全体を締め付け、恐らく親指の指先を乳首の先端に宛がった上で、くるくると回転させている。

 それを何十回転ごとに回転の向きを変えてくるのだから、溜まらない。

 ローターとかバイブとか、そういう機械的な振動とは全然別種の刺激が、私の乳房と乳首を刺激し続けてくる。

「んぎいいいっ♡ これ、これやばいって! 止め、てええっ♡」

 あまりに気持ちよすぎて、悲鳴のような声をあげてしまった。

 けれども悲鳴が気持ちよさに起因していることは向こうに把握されているようで、女性に止める気はさらさらないようだった。

「気に入っていただけているようでなによりです。ですが……まだまだ、序の口ですよ」

 そのことを示すように、私は胸から生じる強い快感に負けないほどの衝撃を、下半身から感じた。

 驚いて顔をあげて見れば、無防備に開いてしまっていた私の股間を、液体化した女性の腕がずぶりと刺し貫いている。

 液体化しているから、腕の太さは圧力に応じて変わっているみたいだったけど、腕分の液体が私の中に入り込んでいることに違いは無い。

「おぅっ♡ あふっ♡」

 子宮口に到るまでの膣道が全て埋め尽くされているのがわかる。そんな長さのものを入れられたら、普通は激痛を感じるところなのだろうけど、液体化した彼女たちの肉体は私の身体に負担を感じさせないギリギリを責めることが出来た。

 無理のない拡張で留まっているので、異物感は凄まじかったけど、痛みや苦しみにはならない。そんな絶妙な刺激を可能としていた。

 その上で、私の中を満たしたものが動き始める。ぐるぐると回転するように動き、まんべんなく刺激を与えてくる。どんなバイブや張り子とも違う、絶妙な刺激が私を貫いていた。

 私は特別膣内を開発しているわけではなかったのだけど、その刺激の絶妙な力加減に快感を覚えざるを得ない。

 なにより心地良かったのは、それの持つ温度が私の体温のそれと全く変わりの無い範疇のものだったということだ。

 だから最初こそ強かった異物感も、徐々に無くなっていき、やがて一体化したのかと錯覚するほどそこにそれがあるのが自然になっていた。

 その上で動くことによる刺激自体は的確に与えてくるのだから、私は天にも昇れそうほどの強い快感を覚えていた。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……♡」

 胸と股間、両方から与えられる刺激に、呼吸が荒くなる。

 天を仰いで荒い呼吸を繰り返していた私の口に、また別の人の手が添えられた。

「んごっ、おおぉっ!?」

 上を向いて開いていた口に、液体化した人の手が入り込んでくる。思わず口に力を入れそうになったけど、ラバーに包まれた液体は程よいテンションで私の歯を押し返し、噛み切れそうな気配は全くない。

「んぐっ、んおおおッ」

 気道は確保されていたけど、異物が喉に入ってくるのだから苦しいことに違いは無い。

 イラマチオ、なんてことはしたことがなかったけど――そもそも男性経験自体ない――実際にしたら、こんな感じなのかもしれなかった。

 おっぱいと、秘部と、口内。

 そして液体化して肌触りが気持ちよくなった体を擦りつけられる、全身。

 すべてがすさまじい快感を生み出し、私は気を失うまで――あとから聞いた話、気を失った後もだったけど――延々と液体化した彼女たちに責められ続けたのだった。

 解放されたのは、プレイの時間が過ぎてしばらく経ってからだったという。



 逝きすぎて足腰が立たなくなった私は、お店のバックヤードでしばらく休ませてもらっていた。

 暖かいココアを呑んで体力を回復させていると、先ほど私を散々責めてくれた女の人が現れる。いまは液体化しておらず、液体化スーツを身に着けただけの姿だ。それだけでもよく考えるとすごく煽情的な姿なのだけど。

「ところで、お客様に提案があるのですが」

「……なん、でしょうか」

「実は先ほどの女体風呂プランの、女体風呂側のメンバーは随時募集しているんです。ギャラは最低限しか出ませんが、女体風呂側として、先ほどのプレイを体感することができますよ」

 その話を聞いて、私はなんであれほどたくさんの人数を私ひとりに割けていたのか、納得した。どう考えても、私が払った料金と人件費が釣り合っていないと思ったのだ。

 客としてやってきた女性を勧誘し、女体風呂の一部として使っているわけだ。

 向こうは人件費を安くあげられるし、こちらは気持ちよくさせる側とはいえ、あの女体風呂の一部になることが出来る。

 なんともよくできたシステムだった。


 そしてもちろん、私の答えは決まっているのだ。



液体女体風呂 おわり


More Creators