はじめてのヒトイヌ公園 ~はじめてのあとで 2~
Added 2020-05-25 13:24:14 +0000 UTC手早く用を済ませてあかりの元に戻ると、彼女はわたしの足元にすり寄ってきた。
「ごめんね、あかり。お待たせ」
そう言って彼女の頭を撫でてあげながら、わたしは職員さんに肝心のお願いをする。
「あかりの拘束を解くのは、わたしにやらせてください」
それがわたしの考えていたことだった。だからあかりより先に自分の拘束を解いてもらったのだ。あの手袋をしたままでは、とても出来なかったから。
意味はあまりないかも知れないけれど、わたしはあかりのご主人様として、最後まで責任を持ってあげたかった。
職員さんは少し驚いたような顔はしつつ、特に何も言うことなくわたしの提案を受け入れてくれる。
「わかりました。必要な鍵などを順次お渡ししますので、今市様の手で外してあげてください」
「ありがとうございます。お手数をおかけします」
職員さんに向けてペコリと頭を下げ、わたしは改めてあかりの傍に膝を突いた。
「そういうわけだから……ごめんね、あかり。慣れてないから拘束を解くのに少し手間取るかもだけど」
「わぅ!」
気にするな、とばかりにあかりが一声啼いた。どうやらわたしの提案を快く受け入れてくれたようだ。
それを象徴するように、あかりの尻尾が左右に揺れ、喜びを表現している。
お尻はあまり動いていないところを見ると、公園で遊んでいる間に尻尾の動かし方をマスターしたみたいだ。
(ほんと、順応性が高いというかなんというか……)
呆れるやら感心するやら。
わたしはそう思いつつも、飼い主として優秀なヒトイヌの彼女を誇らしく感じるのだった。
「それではまず――首輪を外しましょう。こちらをどうぞ」
職員さんに渡された鍵を持ち、あかりの首輪に手をかける。あかりは四つん這いの状態で、胸を反らし、首元を曝け出すようにしてわたしが弄りやすいようにしてくれていた。
その首輪には接触禁止を示すプレートと、わたしとあかりの名前が彫られたプレートのふたつがぶら下がっている。
(そう言えば、こっちのプレートは記念に持って帰って良いって言ってたわね……)
わたしはそう思いつつ、二つのプレートを脇に避け、あかりの首輪が外れないようにしている南京錠を掴んで、その鍵穴に職員さんに渡された鍵を差し入れる。
――カチン、と軽い音が響く。
終わりとしてはあまりにも呆気なく鍵は回り、南京錠のツルが開いて首輪から取り外せてしまった。
これで首輪を外すことができる。
わたしは呆気ない終わりになんとも言えない寂寥感を覚えつつ、首輪を緩めてあかりの首から取り外した。
「ふ、ぅ……」
首が楽になったからだろう。あかりが深く息を吐いたのがわかった。
わたしはそんなあかりの頭を軽く撫でてあげる。あかりは気持ちよさそうに目を細めていた。
「次は犬耳ですね」
ひとつひとつ、確実にあかりは人間に戻っていく。
わたしは犬耳兼耳当てを口枷に固定しているベルトについた鍵を外しつつ、ふと思い出す。
(そう言えば……この犬耳の機能は使わなかったわね)
人の言葉を、意味のわからない音に変える機能。耳当てで周りの音を遮断し、耳あての内側の内蔵スピーカーで外の音を流しているからこその機能だ。
その機能のオンオフを切り替えるスイッチを渡されてはいたけど、途中からは存在自体を忘れていた。
(まあ、普通はこういうプレイに慣れた人が使うものだろうから、いきなり使うものでもないかもだけど)
そういう機能があったのに、使わなかったのは勿体なかったかも知れない。小市民なわたしはそんな風にケチくさいことを思ってしまった。
犬耳を外すと、隠されていたあかり本来の耳が露わになる。まだ犬のマスクはそのままなのに、人の耳が露わになるだけであかりから受ける印象がずいぶん違うものになっていた。
「次はマスクですね。こちらを顔の下に敷いてください」
職員さんがそう言って渡してくれたのはタオルケットのようなものだった。
咥えている口枷を外せば、それによって溜まっていた唾液が溢れるだろうから、妥当な処置と言えた。
職員さんから受け取った鍵で、マスクを固定している鍵を開ける。
パチン、と音がして、少しマスクが浮いた。
「あふ、ぅ……」
あかりが大きく口を開き、咥えていたマスクの口枷部分を吐き出す。どろりと零れ落ちたヨダレが、下に敷いたタオルケットに吸い込まれていった。
「はっ……はっ……はっ……」
荒い呼吸をするあかり。ずっと口枷を咥えていた弊害か、口が閉じきれないようで半開きになっている。
わたしは少し心配になって、あかりの頬を撫でた。
「あかり、大丈夫?」
「ん……ふぁい、ほうふ……」
大丈夫、と言いたいのだろうけど、顎に力が入らないらしく不明瞭な言葉にしかならない。
数時間ぶりにあかりの人としての声を聞いた。そんなに時間は経っていないはずなのに、ずいぶん久しぶりのような気がする。
なんだか妙な気分だ。本来それが当たり前のはずなのに、あかりが人の言葉を喋っていることに違和感がある。
(ヒトイヌとしてのあかりに慣れちゃったのかしら……)
わたしはあかりのことを順応性が高いと感心していたが、案外わたしの方が状況に流されやすいのかもしれない。
意識してあかりは人間であると自分に言い聞かせながら、あかりのヨダレ塗れになっている顔を拭いてあげた。
子供か幼児にやるような行為だったけど、あかりは不満そうな顔ひとつせず、受け入れてくれていた。
次に外す装備は、尻尾だ。
わたしは職員さんと共に四つん這いのあかりの後方へと移動する。
股間のジッパーを開くと、ラバースーツの伸縮に従ってぱっくり割れ、内側の様子を晒す。
尻尾飾りのついたプラグが、肛門に突き刺さっている様子がはっきりとわかる。
それは普通に抜けるものなのだろうか。
そう思っていると、職員さんが引き抜くための道具を手渡してくれる。
それは、注入口の先端が細く長く尖った形状の、ローションの瓶だった。
「まずこれを使って肛門にローションを流してください。ローションを出しながら、少し先端を入れて奥まで流すようにした方が、抜くとき痛くなりません」
わたしは頷き、そのローションの瓶を使ってあかりの肛門にローションを流し込んだ。
「うひゃっ! つ、めた……っ」
あかりが素っ頓狂な声をあげて反応し、その結果肛門がきゅっと締まったのか、尻尾がビン、と立ち上がる。いかにも犬みたいな反応に、思わず笑ってしまった。
それを聞きつけたのか、振り返ったあかりがわたしをジト目で睨んでくる。
「ごめんごめん。反応が犬っぽくて良かったから、つい……」
犬っぽい、なんて本来なら悪口にも取られかねない言葉だ。
だけど、あかりにとってはむしろ褒め言葉になるようで、不満そうな顔はしつつっも、どこか嬉しそうな顔もしていた。
わたしはそんな彼女が可愛く思えて、その尻尾の根本、つまりは肛門に指を触れさせた。
その接触にあかりがびくん、と大きく反応する。
少しはみ出たローションを馴染ませるつもりで、肛門を指先でなぞると、あかりが思ったよりも大きな反応を見せる。
「ひゃっ、ひゃ、ひゃこっ!」
嫌がっているのかと思ったけど、どうも違うようにも見える。戸惑っている、と言うのが一番近いだろうか。あと恥ずかしいと言う感じ。
わたしはそんなあかりに対し、笑顔を浮かべて見せた。
「大丈夫。奥までは入れないから」
自分で言っておいてなんだけど、何が大丈夫なのだろうか。
あかりも同じことを思ったはずだったけど、口には何も出さなかった。
そうしてしばらくローションを馴染ませていると、職員さんから声がかかった。
「そろそろよろしいかと。今市様、ゆっくりと引っ張って差し上げてください。瀬田様は肛門から力を抜くことに集中してくださいね。力む必要はありません。慣れていないと逆に力が入って抜けなくなる可能性がありますから」
気付けば職員さんのあかりの言葉遣いが人に対するものに戻っている。あかりはまだ四つん這いだけど、首輪を外した時点で人の扱いになるらしい。
(……わたしはいつ、いつもの調子に戻せば良いんだろう)
すでにあかりの頭部からは道具が全て外れている。
汗まみれで髪もぐちゃぐちゃでメイクもしていないけれど、いつものあかり――いや、瀬田さんの顔に戻っていた。
そう考えるともう呼び方や接し方を戻しても良いような気もするけど、体勢が体勢だからか、まだヒトイヌのあかりのイメージの方が強い。まだ自分がご主人様だという意識が残っているのかもしれない。
(まあ、自然に戻るかな)
女友達である以上、下の名前で「あかり」と呼んでも不自然ではないはずだし。いままで呼んでいなかったのはなんとなく苦手意識もあったからだ。今回のことを経て、普通の女友達程度には仲良くなった、といってもいいだろう。
普通の女友達がやるはずもないプレイをやっておきながら、わたしはそんなことを考えていた。
ラバースーツも脱がせて完全に人の格好になれば、自然と接し方も戻るだろうからと楽観的に考え、わたしは作業に集中する。
尻尾飾りのついた、アナルプラグの根本を指先で摘んだ。
そしてなるべくあかりを刺激しないように、ゆっくりと慎重に力を込めた。
「んぅ……っ、あっ♡」
ピクン、と反応したあかり。思わず肛門を締めてしまったのだろう、摘んでいたアナルプラグが軽く引っ張られた。
私はあかりのお尻に手を置いて、掌でそのお尻を軽くペチペチと叩いた。
「あかり、力を抜いて」
「んっ……わかって、るぅ……!」
目に見えて脱力してお尻の穴から力を抜くあかり。その試みは半分成功して、指先に感じていた抵抗がゆっくりと緩んでいった。
再度指先に力を入れてアナルプラグを引っ張ると、ズズッ、と少し抜けかける。
(うーん、まだもうちょっと一工夫必要かな……?)
あくまでこのアナルプラグは、括約筋の力で窪んている部分を挟み込むような仕組みになっていたはずだ。だとすると引っかかっている部分さえ抜ければあっさり抜け落ちるはず。
そう考えた私は、何の気無しに掴んだアナルプラグを回転させてしまった。その感覚はダイレクトにあかりに襲い掛かる。
「んひゃああ!?」
肛門に直接そんな刺激を与えられたのだから、あかりが悲鳴をあげたのも無理はない。
わたしは慌ててアナルプラグから手を離した。
「ご、ごごごめんあかり!」
ブルブルと肩を震わせながら、あかりが振り返って、その肩越しにわたしを睨みつけてくる。
「ちゃ、ちゃこぉ……!」
怒ってはいると思うのだけど、その目には涙が浮かんでおり、恥ずかしさのあまりか頬も真っ赤だったので、怖くはなかった。
けれど怒っているのはわかるので、わたしは平謝りするしかない。
「ごめんね……ゆっくり、引き抜くから……」
「…………」
あかりは何も言わずに再び前を向く。
とりあえず許されたようなので、わたしはもう一度アナルプラグに指をかけた。
(ゆっくり……ゆっくり……)
そっと力を込めて引っ張る。あかりが出来る限り力を抜き、アナルプラグがぐっと後ろに下がる。肛門がかなり広げられ、プラグの一番太い部分が微かに見えた。
(あ、行けそう……!)
一番太い部分があかりの肛門に差し掛かっている。あと少し引っ張れば抜けそうだ。
肛門の様子を見ていたわたしはそう思ったけど、あかり本人は力を抜き続けるのが限界だったようで。
あかりの力が入るのと、わたしがほんの少し強く引っ張っるのはほぼ同時だった。
「んひっい!?」
ギュッとアナルプラグを締め付けることになってしまったあかりが悲鳴を上げ、プラグの一番太いところを余計に締め付ける。引っ張っていたわたしの指が弾かれる勢いでアナルプラグが飛んでいった。
「ひゃあ!?」
勢いに驚き、わたしはお尻を突いてしまう。
飛び出したアナルプラグが床を転がる。
「あ……あ、ぅ……っ」
余程刺激が強かったのか、体をぶるぶる震わせたあかりが、その場に崩れ落ちる。折り畳まれた四肢が開き、べったりと体の前面を床につける形だ。
しかも、ハプニングはそれだけでは終わらなかった。
――チョロ、チョロロ……
わたしがお手洗いに行きたかったのと同じように、あかりも同じように結構我慢していたようだった。
ヒトイヌ拘束でわたしより汗を掻いていたかもしれないけれど、いくら汗を掻いても尿が溜まらなくなるわけではない。
むしろ汗を掻いた分、溜まる尿はより濃いものになってしまっていたようで、鼻につんとくるアンモニアの臭いが強烈だった。黄色い水溜まりがあかりの股間から広がってくる。
失禁してしまったあかりの姿を見て呆然としていると、職員さんが動いた。広がりつつあった尿にタオルをかけて吸収させる。
「瀬田様、失礼いたします」
そしてあかりに一声かけたかと思うと、その身体の脇の下あたりに手を入れ、あかりの体を持ち上げた。膝を突かせ、上半身を起こしながら、あかりの股間にタオルを当てる。
そうすることで、漏らした尿がお腹側に広がらないようにしているのだ。
職員さんの手早い処理に救われた。
あかりはしばらく呆然としていたけれど、少しして漏らしたという状況を自覚したのか、真っ赤な顔を俯けて小さくしゃくり上げ始める。
「あ、あかり……」
わたしはどうしたら良いのか、尻餅を突いた姿勢のまま狼狽ることしか出来なかった。
そんなわたしの呼びかけに反応して、あかりの視線がこちらを向く。わたしは思わず、姿勢を正してその場に正座していた。
「……ちゃこ」
ぐすぐす、と鼻をすすりながらあかりが口を開く。
「な、なに……?」
力を入れるタイミングを間違えたのだから、詰られても仕方ない。
わたしが覚悟を持って問いかけると、あかりは予想外のことを口にした。
「責任、とってね」
涙を浮かべた目で言われ、わたしは困惑する。
何をどう責任をとれば良いのかは全くわからなかったけれど。
「え? ……あ、えっと……はい」
そう答える以外にわたしに選択肢はなかった。
そんなわたしたちのやりとりを見ていた職員さんが、遠慮がちに声をかけてきた。
「お二方、申し訳ありません。一応拭きましたがこのままですと拭き切れなかったところが被れてしまわれます。早めに拘束を解いて、シャワーを浴びられた方がよろしいかと」
「あっ……ご、ごめんなさい。部屋を汚しちゃって……」
あかりが申し訳なさそうに謝る。わたしも慌ててそれに続いた。どちらかというとあかりよりもわたしのせいである。
職員さんは優しい笑顔を浮かべていた。
「お気になさらず。初めての場合はままあることです」
職員さんは尿を拭いたタオルを手早くまとめ、袋の中に放り込み、そして袋の口を締めるなど、手では手早く作業をしつつもこちらに向ける笑顔は全く揺らぎもしていない。
まさにプロの接客だ。
本心がどうあれ、助けられているのは事実。
わたしはそんな職員さんに感謝しながら、あかりの拘束を解く作業を続行した。
つづく