はじめてのヒトイヌ公園 ~はじめてのあとで 3~
Added 2020-05-29 13:42:06 +0000 UTCたくさんあったあかりの拘束具も、残るは四肢の拘束具を残すのみ。
(手足……の前に、先にこっちね)
あかりの背中を斜めに走る、両手両足の拘束具をそれぞれ繋いでいるベルトから取り掛かる。手足を覆っている袋状の拘束具がずり下がらないようにしているベルトだ。先にこっちを取り外さないと、手足の拘束具が外せない。
職員さんから鍵を渡してもらい、そのベルトを取り外す。
このベルトで特に体の可動域を制限していたわけではないのだけど、しっかりとした作りのベルトだったから背中に乗っていただけで圧迫感はあった。それが外されると、ずいぶんあかりが身軽になったように感じる。
それに続いて、いよいよ手足の拘束具を取り外す。
「まずは腕の方から外して差し上げてください」
職員さんの指示に従い、まずはあかりの右手から取り掛かった。
腕の付け根と、付け根と肘の中間くらいを引き絞っていたベルトを外し、緩めていく。
袋状の拘束具をずらして脱がせると、あかりはようやく腕を真っ直ぐ伸ばすことができるようになった。
できるようにはなった、のだけど。
あかりは腕を伸ばそうとはせず、顔を顰めて唸っていた。
「んっ、んぎぎ……っ」
本人は腕を伸ばそうとしているようだけど、なかなか伸びきらない。
どうやらずっと曲げた状態を保っていたために、筋肉が固まっていて、伸ばそうとするとかなりの痛みと痺れが走るようだった。
「あかり、大丈夫?」
心配になってそう声を掛けた。
「ん……っ、なん、とか……っ、あいたた……っ」
しばらく悪戦苦闘したのち、あかりは手を伸ばして床につく。
けれど、その腕に力が入っているようにはとても見えず、生まれたての小鹿のようにぶるぶると震えていた。四つん這いになって体重を支えることは全くできそうにない。
「瀬田様、一度座る姿勢になった方がよろしいかと」
苦戦しているあかりに、職員さんがそうアドバイスする。
それに従って、あかりはお尻を床にぺたんと着く女の子座りになって、上半身を起こした。
その状態で、右腕をぷらぷらと振る。
「あ……これすごく楽……」
ほぅ、と息を吐くあかり。
気持ちよさそうではあったけど、わたしは気づいてしまった。あかりは腕に意識が集中しているから気づいていないようだけど、無防備に脚を広げているせいで、あそこが思いっきり見えてしまっていた。
ラバースーツの股間のジッパーが開いたままになっていたのだ。
わたしもバスローブの下は裸だし、今更気にするべきことでもないのかもしれないけど。
ラバースーツを着ているあかりのあそこは、ラバースーツとのコントラストが強調されることもあって、かなり目立っていた。陰毛があれば違うのだろうけど、こういうことをすることを想定してしているのであろうあかりのあそこは剃られていて無毛だった。
(先に閉めてあげればよかった……)
ハプニングがあってうっかりしていた、というのは言い訳だろうか。
今更それを指摘できないわたしは、本人が気づかないことを祈りつつ、左腕の拘束具も取り外していく。
こうして、あかりの両手は自由になった。
まだ手の先は拳状に固めたまま動かせないようにラバースーツが覆っているから、完全に自由というわけではなかったけれど、前足ーーじゃなかったーー腕が伸ばせるようになっただけで、一気にヒトイヌらしさがなくなった気がする。
両手をぶらぶらさせ、血が通っていく感覚を、彼女は存分に味わっているようだった。
「はあぁぁぁあ……気持ちいいい……」
温泉に浸かって脱力しているみたいな物言いで、少し笑ってしまった。
今までも血は通ってはいたはずだけど、体の締め付けがなくなったときの感覚は非常に心地いいものがある。
それはグローブやブーツなどを脱いだときにわたしも感じていたことだったので、具体的に共感できた。
だからあかりがその快感を味わうことを邪魔するのはやめて、しばらくあかりの好きにさせた。
少しの間、腕を曲げたり伸ばしたりして動かしていたあかりは、その腕に完全に力が入るようになったようだ。
改めて、四つん這いの姿勢に戻る。
「それじゃあ、足の方もお願い。ちゃこ」
「ええ。分かったわ」
わたしは頷き、足の拘束も外しにかかった。大きさは違えど、拘束具の構造としては腕と同じだから、難しい事は何もない。
ベルトを緩め、袋状の拘束具を脱がし、あかりの脚を解放する。
外れると同時に、脚が伸びていったけど、それはあかりにとってはなかなかの刺激になるようだった。
「あっ……! う〜っ! あだだだっ!」
なんだかちょっと情けない声をあげるあかり。
脚も腕と同じくらい痺れていたらしく、その感覚は長く正座をして脚が痺れたときのそれに近いのかもしれない。
そんなあかりに同情しつつ、わたしはもう片方の足の拘束も取り外した。
当然、そちらも痺れていないはずがないわけで。
「あいたたたっ、し、痺れが……っ、アタタタっ」
あかりは情けない声を上げて悶絶していた。
我慢しきれなかったのか、あかりは床にゴロンと寝転がる。
脚を上に丸めて悶える様は、こう言ってはなんだけど、犬がいわゆる「降参」をしているようなポーズにも見えた。
実に情けない姿を晒すあかりを見て、わたしはつい衝動を抑えきれなかった。
指を伸ばし、震えるあかりの脚をつんと突く。
ちょっと触れただけでも、効果は劇的だった。
「ふにゃあ!? ちゃ、ちゃこぉ!」
ビリっと電流が走ったような感覚を覚えたのか、あかりが声を震わせて悶える。きゅっと手足を縮め、刺激を堪える姿勢だ。
怒っているというよりは驚いたと行った様子で、わたしはつい突いてしまったことを詫びた。
「ごめんごめん……あかりがあまりにも無防備だから……つい」
「むぅ……ちゃこって、何気にサドっ気あるよね……」
「そういうあかりはマゾ気質よね」
痺れている箇所を突かれたら普通は怒りそうなモノだけど。
足の痺れが取れていく気持ちよさもあるのか、怒っている様子はあまりない。
しばらくひっくり返ったままだったあかりだけど、時間が経って痺れが取れたのか、勢いをつけて体を回転させてうつ伏せになると、手を突いて体を持ち上げた。
足の痺れも取れたのか、ふらつきながらも立ち上がろうとする。
(まだちょっと不安ね……っと!)
あかりの足元がふらついて倒れそうになったので、わたしは咄嗟に腕を伸ばしてあかりを抱きとめた。
下手をしたら自分も巻き込まれて倒れてしまうところだったけど、わたしとあかりにはわりと体格差があるので、なんとか転ばずに受け止めることができた。
わたしの胸に顔を押し付ける形になったあかり。
「わぷっ! あ、ありがと、ちゃこ」
「ふぅ……気をつけて。相当体力も消耗しているだろうし……んっ」
あかりの手が、わたしの胸に伸びていた。柔らかいバスローブの上から、乳房を揉んでくる。
彼女の手はまだラバースーツの先端に覆われている。拳を作った状態から動かす事はできないのだけど、それこそ犬や猫がその丸っこい前足で器用にボールを扱うように、あかりは拳を作った手でわたしの胸をぐにぐにと揉んでくる。
さっき痺れた足に触られた意趣返しといったところだろうか。
「……やっぱり、ちゃこのおっぱいって大っきいし、柔らかいよね」
「んっ、こら、あかりっ、揉まないで!」
ごめんごめん、と反省したそぶりもなく謝りつつ、あかりは手を離す。
わたしは調子のいい彼女に呆れつつ、その接触が然程嫌ではなかった自分に気づく。
昨日までだったら、普通に嫌だと感じていたはずだ。
(まあ、あかりとはあれだけのことをやったんだし、当たり前といえば当たり前かしら……)
おっぱいに触れるのがどうのこうのレベルではないことを、わたしたちはしたのだから。
こうしてあかりがヒトイヌから人に戻り、特別な時間が終わると、あんなことをしたのが嘘のように思えてくる。
(今思い出すとものすごく恥ずかしいわね……)
雰囲気に酔っていたところはあるのだろうけど、どうしてあそこまでしたのかわからない。あかりの方がどう思っているかはわからなかったけど、少なくともわたしは彼女の顔を真っ直ぐに見れなかった。
「と、とにかく、ラバースーツまで脱いじゃいましょう。背中を向けて」
「あ、うん」
あかりがわたしに背を向ける。小さな背中だった。
わたしはなるべく意識しないように努めながら、ラバースーツのジッパーを引き下ろして行った。
とたんに広がる、あかりの濃厚な汗の匂い。昨日までなら不快な臭いと感じるのかもしれないけど、散々密着した後だからか、その匂いはむしろいいものとして認識できていた。
(うーん、ほんと、これからあかりと普通に接することができるのか、不安になるわね……)
今はまあいいとして、日常生活の中でふとあかりの汗の匂いが漂ってきた時とか、変に気分が昂ってしまいそうで少し怖い。
あかりはどう考えているのか、背中を向けている彼女からは読み取れなかった。
とりあえず、ラバースーツに包まれていたところが外気に触れ、ひやっとするであろう感覚に体を捩っている。
「うひゃああ……なんだか、脱皮してるみたい……肌が、すごく敏感に……」
あかりのその言葉を聞いて、わたしはちょっとした悪戯を思いついてしまった。
無防備に晒されているあかりの背中に、指先を触れさせる。
「ひゃわんっ」
想像していた通りに、肌の感覚が敏感になってしまっているようだ。
声を上げて悶えるあかりに構わず、背中に触れた指を背骨に沿わせ、「ツゥー」と下げていく。
「あひゃ、あひゃひゃひゃ! くすぐったいよちゃこ!」
思ったより効果は抜群だったけど、思ったのと反応が違う。
あかりは笑い上戸気味なところがあるから、仕方ないのかもしれないけど。
もっとこう、艶やかな反応を見せて欲しかった、というのは我儘だろうか。
「……残念ね」
「あれ、ちょっと待ってなんでちょっとガッカリしてるの、ちゃこ? 私何か間違った反応した?」
困惑している様子のあかりに構わず、ラバースーツのジッパーを一番下まで引き下ろす。
「はい。あとは自分で脱げるでしょ?」
「ちゃこが冷たい! いや、無理だからね!? 手の先を見て!?」
そういえばそうだった。なんとかすれば脱げそうではあるけど、流石にちょっと可哀想かもしれない。
わたしは仕方なく、ラバースーツを脱ぐのを手伝ってあげる。
腕さえ引き抜ければいいだろうと、割れ目を押し広げ、皮をペロリと剥くように脱がしてあげる。あげようとしたのだけど。
「あ、あれ、ラバースーツが肌に張り付いて……っ」
「かなりきつい、わね……っ」
肩まではめくり上げていくことで自然と剥がれたのだけど、最後の腕がなかなか抜けない。先端が拳状になっているということもあって、かなり強い抵抗を感じた。
悪戦苦闘しつつ、なんとか脱がすことに成功する。
「ふぅ。よかった」
「今度こそ、あとは自分で脱げるでしょう?」
あとは腰から下に張り付くラバースーツを脱げばいいだけだ。自分でやるのが一番早いはず。
しかし彼女は、首を縦には振らなかった。
キラキラとした上目遣いでわたしを見上げる。
「えー、ここまでやってくれたんだし、最後までやってよぉ。お願い、ちゃこぉ」
甘え上手というかなんというか。
彼女のこういうところが、昨日までは嫌いとまではいかなくとも苦手だったはずなのだけど。
「仕方ないわね……」
今回の経験を経て、そんな気分になってしまっている。自分の気持ちの変化がむず痒い。その変化が嫌ではないのが、余計にその微妙な気持ちにさせる原因かもしれない。
わたしはあかりの後ろに立ち、ラバースーツの腰のあたりに指をかけた。そして肌とラバースーツの間に隙間を作るようにしつつ、ゆっくりとラバースーツをずり下げていく。
足の方も腕と同じく、ラバースーツが肌に張り付いて脱がし難くはあったのだけど、さほど苦労せず脱がし切ることができた。
手と違って先端が拳状に丸まっていたわけではないから、それも影響としては大きいのだろう。
あかりの生足が露わになる。今時の女子である彼女は普段から短いスカートなどで生足をよく晒していたから、見慣れているはずのものだ。けれど、今はなんだか久しぶりに目にしたような気がして、思わずドキリとさせられてしまった。
散々汗を掻いていたからか、肌艶もいつもよりずっといい気がする。元々シミや傷などはない、玉のような肌だったから、余計にそう思えるのかもしれない。
そして、艶やかな小ぶりのお尻。
ぷりんという擬音が聞こえてきそうなほど張りがよく、触り心地がとてもよさそうだ。ラバースーツに包まれていた時から思っていたけど。
今までだって、着替えの時とか水着の時とか、見る機会はいくらでもあったはずのあかりの裸なのに、なぜだか無性にドキドキさせられた。
それが自分の認識の変化によるものだと、わからないほどわたしは鈍感ではない。
全ての着衣を脱ぎ、裸になったあかりが大きく伸びをする。
「ん〜っ。……ふぅ。終わっちゃったねぇ」
とても残念そうな様子であかりが呟く。わたしはなんと言っていいかわからず、とりあえず「そうね」とだけ答えておいた。
そんな私たちに向け、職員さんがこの部屋にある、トイレや入り口とはまた別の扉を指し示す。
「あちらの扉がシャワー室となっておりますので、汗などをお流しください。着替えは机の上に置いておきますので、お着替えが完了しましたら受付にお越しくださいませ。お預かりした手荷物はそちらで返却いたします」
言うべきことを言った職員さんはペコリと頭を下げると、素早く退出してしまった。
あかりと二人っきりになる。
それまでも公園内では二人っきりだったのだけど、ヒトイヌ状態じゃないあかりと二人っきりという状況に、なぜだかすごく緊張した。
「それじゃあ……あかりから先に」
シャワーをどうぞ、と言おうとしたら、あかりが腕をわたしの腕に絡めてきた。
「一緒に入ろうよ! その方が時短になるでしょ?」
大きな浴室でもあるまいし、シャワーなら一人ずつでもいいはず、という常識的に考えてすごく真っ当な主張は出てこなかった。
「し、仕方ない、わね……」
あかりに求められるまま、わたしはあかりと一緒にシャワー室に向かう。
バスローブは脱いで、机の上に置いておいた。
体を隠すそぶりもないあかりに対し、手で要所を隠すわたし。
(今更……とも思うけど、恥ずかしいのは恥ずかしいのよね)
ごく普通の感覚だと思う。あかりはそういうそぶりを一切見せないのは、演じていた立場の性質ゆえか、それとも単に個人的な性格なだけか。
「ほらほら早くぅ!」
天真爛漫な彼女は楽しそうに笑いながら、わたしを促した。
そんなあかりに腕を引かれ、わたしは彼女と一緒にシャワー室に入るのだった。
つづく