はじめてのヒトイヌ公園 ~はじめてのあとで 4~
Added 2020-06-01 13:00:02 +0000 UTC更衣室から直接繋がっているシャワー室は、わたしが想像していた以上に広かった。
てっきり一人が入れるくらいの、シャワーブースが一つある程度だろうと思っていたのだけど、そのシャワー室のブースは複数人が並んで入れそうなほどに広かった。脱衣所にあたるところもわりと広くて、余裕を持って作られている。
床はシャワールームでよくあるタイル張りではなく、少し柔らかいスポンジのようなものになっていた。もしかすると四つん這い状態のヒトイヌを洗うことを想定しているのかもしれない。
ラバースーツを着ていたらシャワーを浴びることはできないだろうけど、例えば四肢をベルト状の拘束で固めただけの状態とか、拘束プレイの一環としてではない、犬として振る舞うことが重要なペットプレイの方に重点を置いている人なら、何も身につけていない状態でも四つん這いになることもあるだろう。そう言った客層を想定しているのではないかと思われた。
それなら、複数人が入ることを想定したかのような、この広いブースも納得がいく。ご主人様がペットを洗うことも想定されていると思われた。
(シャワーヘッドの位置も、上だけじゃなくて下にもあるし)
立った状態で頭から被れる位置にあるものは普通のものだとして、腰のあたりの高さからもシャワーヘッドが突き出していた。
普通に立つとしたら少し屈まないとシャワーが腰に当たらないから、中途半端な高さのように見えるけど、もし四つん這いのヒトイヌを洗うためのものだとすれば、ちょうどいい高さだ。
(本当にここは……ヒトイヌのための施設なのね)
シャワーブースひとつとってもヒトイヌのために環境が整っている。
なんとなく感慨に耽っていると、あかりに手を引かれ、シャワーブースの中に引き摺り込まれた。
「ちゃこー、頭洗ってー?」
勢い良く出したお湯を早速頭から被り、ずぶ濡れになりながらあかりが無邪気に求めてくる。
前から、あかりが「あれしよう」とか「これしよう」とか求めてくる時のテンションは高かったけれど、今はなんだか犬が戯れてきているように感じるのだから、人の印象というのはあっさり変化するものだと改めて感じる。
「はいはい……」
わたしは求められるまま、シャンプーを掌に出して泡立て、あかりの頭をしっかり頭皮から洗ってあげる。あれだけ大量の汗を掻いていたのだから、最低限これくらいしなければスッキリしないだろう。
そうしていると、あかりはとても楽しげに鼻歌まで歌い始めた。
(本当にペットみたいね……はぁ。まったくもぅ。仕方ないわねぇ……)
この時のわたしはそんな風に呆れながらも、あかりの頭を丁寧に洗って上げていた。
だけど、考えてみればそういう状況を表現するなら、幼い妹とか、子供とか、そういう普通の表現だってあったはずだ。
なのに、最初に『ペットを洗っているようだ』というイメージを連想してしまった時点で、わたしはすっかりあかりのペースに毒されていた。そしてそのことを全く自覚してしていなかった。
しっかりシャンプーを泡立てて頭皮を洗ったあと、髪全体を透くようにして髪全体から汗や汚れを落とし、トリートメントやコンディショナーを使って丁寧に手入れをする。
そうしてあかりの頭を洗い終えた。
「よし、これでおわ……あかり?」
終えると同時に、あかりがわたしの後ろに回り込む。
「今度は私が洗ってあげる!」
わたしとあかりには体格差があるけど、子供と大人ほどの違いはない。
あかりの手がわたしの頭に手が届かないわけじゃないから、彼女がわたしの頭を洗うことは可能だった。
とは言え、できるとしても洗い難いことに変わりはない。そもそもわたしは誰かに頭を触られることがあまり好きではないのだ。
今までならこのあかりの提案は即断って、自分の頭は自分で洗う。公園に来るまでのわたしだったら、まず間違いなくそうしていたはずだ。実際、仲間内で髪型弄る流れになっても、わたしだけはあかりにも誰にも髪を触れさせていなかった。
「……手早く、お願いね」
けれど、今この瞬間のわたしはあかりの提案を受け入れていた。
ヒトイヌ公園での経験をして、あかりとの距離が近くなったからだろうか。
いまだに頭を触られるということに対して嫌なことだという感情はあるけど、あかりに触られても、絶対に拒否しようと思うほど嫌とは感じなかった。
そのわたしの変化を一番感じているのは、今まで触れようとして拒否されてきたあかりのはずだ。彼女は嬉しそうに笑い、張り切ってわたしの頭を洗ってくれた。
意外と、というとあかりに失礼だけど、彼女の洗い方は結構気持ちがいいものだった。
元々、一般的なファッションやボディケアに関してはわたしよりもあかりの方がずっと拘っている。手順や手つきに怪しいところや不慣れなところは全くなく、実に的確だった。任せて大丈夫だと思えたのだ。
だから、油断していた、というのは言い訳だろうか。
あかりはわたしの頭をしっかり洗ったあと、そのまま流れるように体の方まで洗い出したのだ。
それも素手で。
いきなり背後から乳房を鷲掴みにされ、心臓が飛び出すかと思うほど驚いた。
「んひゃんっ!?」
あかりの手がわたしの乳房を掬い上げるように揉みしだき、その柔らかさを堪能しつつも、大きいが故に群れやすい下乳や谷間の汗を拭い去っていく。
その絶妙な強さの触れ方に、わたしの思考が停止したのは仕方のないことだっただろう。
固まったわたしの耳元で、あかりが妖艶に囁く。
「こっちもしっかり洗ってあげるね」
そのあかりの声音は、それまでの無邪気な子供のような響きとは打って変わって、確かな大人の女性が持つ甘い響きを有していた。
あかりの手がわたしの胸を執拗に揉んでくる。モミモミ、グニグニ、と手つきがとてもいやらしい。
「んっ……!」
あかりの手つきは、こういうことを初めてするとは思えないくらい的確で、乳房全体を揉みしだきながらも、乳首を刺激するのを忘れていない。
硬くなった乳首をぐりっ、と親指と人差し指で挟むようにしてこねくり回されて、体が跳ねた。
「ちょっ……と、あかり……っ」
止めようとしてあかりの手を掴もうとしたが、彼女の手は素早くそれを交わした。
ボディソープでぬるっとして掴みにくいのもあったけど、それ以上にあかりの手の動きが異様に素早いのである。
「いーから、いーから。私とちゃこの仲じゃん?」
そういうあかりの手が脇腹を滑るように移動し、わたしの足の付け根を撫でたかと思うと、自然な動きでわたしの秘部に触れてきた。
「わぁっ! そ、そこはだめぇ!」
わたしは慌てて手で股間を覆う。それをすり抜けるように、あかりの手はわたしの秘部を責めてきた。
「んー、ダメっていう割に、ちゃこのここは、すっごく熱いし、それにヌルヌルしてるよ?」
揶揄するように囁くあかり。
「なっ、そんなっ、ことっ……!」
指摘され、わたしは二の句が告げなくなった。
考えてみればあかり自身の手がボディソープでヌルヌルしているのだから、それで触れれば滑りを感じても普通のことだったのだけど、わたしは自分が濡らしているのだと思ってしまった。
実際に濡れているかどうかは関係なく、そうなっている可能性に思い至ってしまって愕然とした、ということではあるのだけど、まんまとあかりに反撃を封じられた形だった。
股間を抑える手が緩んだ瞬間を逃さず、あかりの手がわたしの秘部に潜り込んでくる。
「んん……っ」
ぬちゅ、ぬちゅと音がしている。元から濡れていたかどうかはわからないけど、今現在そんな水音を立ててしまっているという事実が全てだった。
「ちゃこの中、すっごく熱い……指に伝わってくるよ」
ねえちゃこ、とあかりが囁いてくる。
「ちゃこって処女じゃないみたいだけど、もう誰かにあげちゃったの?」
「そうい、うわけ、じゃ……っ。じぶ、んで……」
昨日までなら「関係ないでしょ」と突っぱねていただろう質問にも、わたしは素直に答えてしまっていた。
そんなわたしの返答に対し、彼女は微かに笑ったようだった。
「そっか……じゃあさ。ちゃこの初めてはあたしってことでいいかな?」
体の奥をあかりの指が刺激してくる。自分以外のものがそこに触れている感触はわたしも初めてで、あかりのいうことに気を回す余裕がなかった。
「あたしの初めてはちゃこにあげたんだし……いいよね?」
性器の中だけでなく、秘部の外、刺激によって存在を主張し始めていたクリトリスを、あかりの親指が擦り上げた。
「ひゃっ……! い、いい! それで、いいから……っ、こ、これ、以上は……っ!」
情けない姿を晒してしまう。そう感じたわたしは必死にそう訴えていた。あかりはとても満足そうに笑い、わたしに背後から密着し、抱きしめてくる。
それと同時に、膣の中に差し込んだ指が激しく波打った。
「〜〜〜ッ!?」
激しい刺激がわたしの体を駆け巡り、絶頂のような小さな痙攣が何度も起きた。思わずあかりの指をギュッと締め付けてしまったけれど、あかりはそれも嬉しそうに受け入れている。
「ふふ……ちゃこのここ、きゅっと締まってあたしの指を離したくないって。このまま差しっぱなしにしてあげようか?」
「ん、ひゃっ、だ、ダメっ、そんなのっ」
「あはは。冗談冗談。流石に無理だし」
そう言いながらあかりがわたしの中から指を引き抜く。締め付けが強くなっているところでいきなり引き抜かれたから、その衝撃は凄まじいものになった。
目の前が真っ白になって、星がチカチカと瞬く。絶頂しているのかしていないのか、それすら分からないまま、ただひたすらに堪えることしかできなかった。
シャワー室の壁に手を突いて、ガクガク震える膝でなんとか崩れ落ちることを堪えていると、シャワーが背中に当てられるのを感じる。
あかりがシャワーをかけて汗やら何やらを流してくれているのだと分かった。
「あんまり時間かけてたら施設に迷惑だろうし、体洗って出よっか」
「……そう、ね」
生真面目なわたしとしては、そう答えざるを得ない。
けれど言葉に不満が出てしまったのか、あかりはクスクスと笑っていた。
「そんなに残念そうな顔しなくてもいいのに」
「……っ、し、してないから! ほら、体洗って出るんでしょう!?」
わたしはシャワーがあたる位置から退いて、代わりにあかりをそこに立たせる。
「はいはい。全くもうちゃこは仕方ないなぁ」
余裕ぶったあかりがとても憎たらしい。
しかしその憎たらしさは、悪戯を仕掛けてきてすっとぼけているペットを見る時のような、憎たらしいのは憎たらしいでも、可愛さを覚えてしまう憎たらしさだった。
悠々と体の汚れを洗い流し始めるあかりの背後から、わたしはその体を抱くようにして腕を回す。手には備え付けのスポンジを掴んでいた。
「ちゃこ?」
「……ペットの体を洗うのは、飼い主の仕事よね?」
ピタリ、とあかりの動きが止まる。その時あかりはなんと形容したらいいかわからない、嬉しいような恐れているような、微妙な表情を浮かべていた。
「……や、優しくしてね?」
「もちろん。乱暴にはしないわよ」
そしてその言葉通り、わたしは彼女の体を丁寧に、そして優しく洗ってあげた。
ただしうなじから足の爪先まで、隅から隅までを徹底的に洗った。
股間は特に重点的に、しかし必要以上の刺激は与えらないように、念入りに洗い倒してやった。
性的に愛撫される可能性は考えていたかもしれないけど、無茶苦茶丁寧に洗われるのは想定していなかったらしく、逆に恥ずかしがっていた。
「ちゃ、ちゃこぉ……そんなに丁寧に洗わなくていいよぅ……」
シャワーブースの壁に手を突かせ、お尻を突き出させた格好になっているあかりがーーわたしがそういう体勢を取らせたんだけどーー恥ずかしさのあまりか、少々情けない声をあげる。
わたしはその言葉に構わず、彼女がこちらに向けて晒しているその場所ーー肛門を丹念に洗っていた。
愛撫が目的ではなかったけれど、シワの一本一本まで念入りに洗われると、さすがに感じるものがあるらしく、先ほどからあかりの腰はピクピクと反応していた。
「ダメよ、あかりはわたしと違って、アナルプラグを入れてたんだから。しっかり丹念に、傷がないかも確認しながら洗わないと」
まあ、肛門の方はプラグを抜いた時にわたしだけじゃなく職員さんも見ていたから、問題はないだろうとわかってはいた。
これは単に、散々愛撫されたことに対する意趣返しが目的だった。
「はい、後ろは大丈夫ね。次は前。あかり、こっちむいて腰を突き出して」
大事なのはむしろここから。
前の穴の様子はしっかり見ておきたかった。
「……っ。は、はいぃ……」
言いたいことはあるのだろう。人間の『瀬田あかり』としてなら、言いたいことは山のようにあったはずだ。
しかし全ての装備が外され、体は素の人間に戻っても、心はそう簡単に戻らない。わたしがそのつもりで呼び掛ければ、あかりはいつでもヒトイヌの『あかり』に戻ってしまう。
(わりと深刻な気もするけど……まあ、大丈夫かな)
わたしはこちらを向いて腰を突き出すあかりを見つつ、跪いて視線を彼女の腰の高さに合わせる。
ヒトイヌ小屋で処女を散らしたあかりの割れ目は、今はぴったりと閉じていた。指先で割れ目を軽く開きつつ、シャワーを浴びせるだけじゃ落としきれなかった汚れを丁寧に指先で擦って落としていく。あくまで洗浄が目的なので、それ以上のことはしない。
(傷は……大丈夫みたいね)
ここはとてもデリケートな部分だ。十二分に注意して弄らなければならない場所である。
可能な限り丁寧に弄ったつもりではあるけど、ヒトイヌ小屋では興奮に任せてしまっていた面もある。傷つけていないか、それをきちんと確認するのは飼い主としてというか、彼女の体を管理する者の当然の責務だと考えていた。
幸い彼女のそこは少し赤くなってはいるものの、傷や炎症といった悪い影響は出ていないように見えた。
(これは必要な行為……ではあるんだけどね)
肛門の方をあれだけしっかり見て洗ったのは意趣返しの意図が大きかったけれど、こっちは純粋に必要だからしっかり確かめただけだ。
それでも、いくらあかりと言えど、至近距離で丹念に秘部を見つめられるという行為には、顔を真っ赤にして恥じらっていた。両手を顔の前で交差させ、わたしに表情を見られないようにと、必死に隠している。
(あかりったら、可愛いわね……)
羞恥心が完全になくなってしまえば、それは単なる獣なので、羞恥心をしっかり覗かせでいる彼女は獣ではなく確かに人間であり、ヒトイヌだと言える。
無邪気に遊ぶ時と、恥じらいを感じる時。
これらがちゃんと揃ってこその、ヒトイヌなのかもしれない。
(なんて……何考えてるんだろう、わたし)
ヒトイヌ公園独特の雰囲気に流されて、柄ではないことを考えてしまっている。
わたしはあかりの秘部の確認を終え、身体に全体的にシャワーを当てて洗い流し、全ての作業が終了した。
大きなタオルであかりを包み、しっかり水気を拭いて、髪はドライヤーでブローした。そのお返しに、あかりがわたしの髪を整えてくれる。
こうして、私たちは綺麗さっぱり、全ての汚れと汗を洗い落とした。
更衣室に戻ると、そこには公園に来た時に着ていた服が、綺麗に折り畳まれて置かれていた。
どうやらわたしたちが散策していた間に、クリーニングまでしてくれたらしく、下着も含めて来た時よりもむしろ綺麗になっていたかもしれない。
それらを身につけて、わたしたちはようやく、普段の『今市ちゃこ』と『瀬田あかり』に戻ったような気がした。
「それじゃあ、帰ろっか。ちゃこ」
少し寂しそうにあかりがーー瀬田さんが、いう。
わたしの胸中に、なんと表現したらいいのかわからない複雑な感情が湧き上がったけれど、結局それを表現する言葉をわたしは絞り出せなかった。
「……そう、ね。帰りましょうーー瀬田さん」
ご主人様とペットの関係は今日一日だけ。
そういう約束で始まったわたしたちの関係は、これで終わるのだから。
最終話につづく