ヒトネコライフ!8
Added 2020-07-13 13:41:58 +0000 UTCその日の夜。
いつも通りお風呂場に連れて行かれたわたしは、お風呂に入る前にトイレに連れて行かれた。そして、大きな方の用を足すように促される。
普段は朝の早い時間帯にさせられるのだけど、今日はお風呂に入る前。
そう言った可能性があることは事前に聞かされていた。
いわゆる『合図』のひとつだったのだ。
(とうとう、この時が来ちゃったかぁ……)
出すものを出してスッキリしたわたしは、いつも通りお風呂番さんに体を洗ってもらいながら、ドキドキしていた。
ヒトネコとして飼われることを了承した以上、そして、そういった内容の説明を受けていたこともあって、いつかはこの時が来るとわかってはいたけれど。
それでもやっぱり、緊張は隠せない。
ここ数日で慣れた髪や肌のメンテナンスーーヒトネコ風に言うのであれば、ブラッシングだろうかーーも、今日は殊更丁重にされているような気がする。
(メイドさんたちはそういうことに関して知ってるのかしら……知らないわけもないわね)
館の中をほとんど裸の女の子二人がうろついているのを、受け入れているくらいだ。もしかするとメイドさんたちにもそういう役割がある日があるのかもしれない。
(もしかして、大河原さんや丹羽さんにも……?)
そういった内容込みの住み込みバイトだったりするのだろうか。
そんなことを考えてしまったけれど、下世話がすぎるかもしれない。
つらつらとそんなことを考えている間に、ブラッシングが終わった。
いつものように、猫耳付きの耳当てと、尻尾飾りの繋がったアナルプラグを身に付けさせてもらう。
今日はそれに加えて、いつもと違う衣装も着せられた。
衣装といっても、もちろん普通の服ではない。
尻尾飾りを通す穴があいたショーツと、胸を覆うブラジャー。ブラジャーはいつもの就寝時用のものではなく、レースで彩られたデザイン重視の、とても可愛らしいものだった。
(ちょっと恥ずかしいかも……)
似合わない、というほどではないだろうけど、少し気恥ずかしい。
とはいえ、今からやることを考えれば、こういう衣装が相応わしいのだということはわたしにもわかっていた。
準備が整って脱衣所から廊下に出ると、待機していたメイドさんがわたしを先導して歩き始める。
その歩く道はいつもの方向ではなく、わたしたちの部屋とは全くの別方向に向かっていた。
メイドさんについて歩くことしばらく、同じように四つん這いでメイドさんに先導されていた美里と遭遇した。
いつもは美里はお風呂に時間がかかるので、廊下で出くわすことはなかったけえれど、今日はあえて出くわすように時間を調整していたようだ。
彼女もわたしと同じように、デザイン重視の、可愛らしい下着のような衣装を身につけていた。わたしと違うのは、その布面積だ。
美里の無垢な快活さとは真逆に――あるいはだからこそ、あえてかもしれないけど――めちゃくちゃ布面積が少ない。
下着というより、マイクロビキニというべきかもしれない。上は先端のポッチ周辺しか隠せていないし、ショーツは異常なまでのローライズで、お尻の尻尾飾りに干渉しないようになっていた。
天真爛漫な美里が身につけるには、あまりにも大人っぽいというか、性的な主張の激しい衣装だった。彼女がいつもの感覚で動き回れば、あっという間に大事なところが見えてしまうだろう。
いつも剥き出しjで走り回っているから、多少なりとも隠されているということが、かえって妙な色香を生んでいる。
美里はわたしの存在を確認すると、満面の笑顔を浮かべて近づいてきた。
「にゃーん♡」
楽しげに啼きながらすり寄ってくる美里。
お風呂から上がったばかりの彼女からは、やけにいい匂いがした。わたしからも似たような匂いがしているのだろう。
わたしより頻繁に中庭に出て遊びたがる彼女の肌は、それなりに焼けている。お風呂上がりでしっとりと濡れ、手入れの直後でピカピカに磨かれていることもあって、思わず触ってみたくなる見た目と質感だった。
向こうにとってのこちらもそうだったのか、美里は躊躇わずわたしの頬に自分の頬を擦り付けてくる。思った通りもちもちですべすべの感触がした。
「んにゃっ」
気恥ずかしくて避けるわたしを追いかけてくる美郷。
しばらく軽くじゃれあった後、美里と一緒にメイドさんたちの後をついて歩き出した。
美里はいつも通りとても楽しそうだった。事前の説明は美里と一緒に受けたのだから、これから何をするのかは当然わかっているだろうに。
ほとんど同じ境遇のはずなのに、この辺りの感覚の違いはなんなのだろう。
(美里が特殊すぎるだけ……よね)
わたしは自分にそう言い聞かせた。
最も、美里の感覚が一般の感覚から言えば異端であるように、何日経ってもなかなか慣れることができないわたしの感覚もわりと異端寄りではあった。
普通は否が応でも慣れるからだ。いつまでも慣れないというのもそれはそれでおかしなことなのである。
そんな異端同士のわたしたちは、とうとうその部屋の前にたどり着いた。大きな人間用の扉の他に、ヒトネコ用に押して開けられる小さな扉も存在していた。
(そう言えば、まだこの部屋に入ったことはないわね……)
ヒトネコ用の扉がついているということは、ここもわたしたちが自由に入っていい部屋ということなのだ。しかし、わたしたちはまだこの部屋に入ったことはなかった。
この部屋の主人が頻繁にわたしたちの部屋に来てくれてい他ので、わざわざここにくる理由がなかったのだ。
(そもそも日中はあまりいないっていっていたしね……)
その部屋は天景院さんの私室だった。
わたしたちが入っていい部屋は、ヒトネコ用の扉があることに加え、プレートがかけられていたので、間違いない。
メイドさんたちはここまで案内するのが仕事だったようで、わたしたちに向けてペコリと一礼すると、素早く去っていった。
何事もないように仕事をする彼女たちは、いかにもプロという感じで、少し憧れる。
メイドさんたちをみてそんなことを思っていたわたしは、ヒトネコ用の扉が押し開けられる音で、美里がさっさと中に入ろうとしていることに気づいた。
「にゃあん!?」
(わわっ、待ってよ!)
置いて行かれそうになったわたしは慌てて美里を追いかける。扉を押しあけ、中へと入った
天景院さんの部屋は、概ね今まで見てきた部屋とそれほど変わりがないように見えた。この屋敷に合わせた内装と調度品。嫌味じゃない風に纏まっていて、とても豪奢でありながら威圧感は与えないという絶妙の塩梅になっていた。
そんな部屋の中でも特に目立つのは、天蓋付きのベッドだ。
御伽噺でたまに見られるものより装飾は質素ではあるけど、それが逆に地に足がついた感じがする。
そんなベッドに、天景院さんが腰掛けていた。
女性の魅力を最大限引き出し、溢れんばかりの色香を放つネグリジェを身につけて纏っている。普段はもっと普通の、大人っぽくても落ち着いた感じの服を着ていたから、その女性の魅力を最大限発揮するようなネグリジェ姿はかなりインパクトが強かった。思わず圧倒されて固まってしまったくらいだ。
「ーーーーーー、ミヤ、ミサ」
格好は違えど、いつもの柔らかい笑顔で天景院さんが迎えてくれる。
先行していた美里が、天景院さんに向かって駆け出す。天景院さんは両手を広げて出迎える姿勢を取り、誰もが美里は天景院さんの腕の中にダイブするつもりなのだろうと思っただろう。
しかし美里はその期待をかわし、天景院さんの目の雨で急激に方向転換をすると、いかにも柔らかそうな天景院さんのベッドに向けてダイブした。
きっちり敷かれたシーツが乱れるのも構わず、ゴロゴロと思うがままに転がる美里に、わたしも天景院さんも思わず呆気に取られてしまった。
美里らしいと言えばとてもらしいし、とても猫っぽい行動と言えば、確かに猫っぽい行動だった。全力でそういった行動を躊躇いなく取れるのは美里のいいところだ。
それを天景院さんもわかっているからか、広げた両手を袖にされた形になったけど、全く気にしていないようで、むしろ楽しそうだった。
ベッドの上で寝転がる美里に手を伸ばし、そのお腹を撫で摩る。
「んにゃぁ♡ にゃは♡」
くすぐったいのか、美里は身をよじって笑っていた。
なんとも微笑ましい光景だ。
その二人が性的な衣装を身につけていなければ、という条件がつくけれど。
取り残されたわたしは、恐る恐る天景院さんの傍に近づいていった。
美里を撫でていた天景院さんが、わたしの接近に気付いて、こちらに向き直る。思わず警戒してびくっと体が震えたのを、天景院さんは優しく見つめてくれていた。
わたしはさらに近づき、天景院さんの足元に到達と、その足に軽く頭を擦り付けた。こういう時、ヒトネコとしてどういう態度を取るのが正解かわからなかったから、とりあえずやってみる。
(うわ……すべすべでやわらか……細いし、すごい……)
天景院さんの脚はとても心地よく、いつまでも触れていたいような、そんな心地よさがあった。
わたしの行動は失敗ではなかったらしく、天景院さんが頭を優しく撫でてくれる。
これからわたしと美里は、天景院さんと『遊ぶ』ことになっていた。
それも疑似的な猫としての扱いではなく、ヒトネコとして、天景院さんを満足させなければならない。
(今更だけど、ハードルが高いわ……)
そういう目的があるということは理解していたけれど、実際にちゃんとできるかどうかはまた別問題だ。
基本的には美里とお店でショーをやった時みたいに、好きなように絡んでくれればいいとは言われていたけれど、同じヒトネコという立場の無邪気な美里と絡むのと、仮にも飼い主という立場の天景院さんのような妖艶な大人の女性と絡むのとでは、勝手が違いすぎる。
(ここは……うん、天景院さんが何をして欲しいのかを見極めよう)
天景院さんに合わせることにして、わたしはその出方を伺う。
彼女は長い髪が邪魔にならないようにか、後ろで括っていた。その所作だけでもかなり美しく、わたしや美里にはない大人の色香を感じる。
(わたしたちももう子供とは言えないはずなんだけどなぁ……)
お店でいうママさんもそうだけど、本物の大人の色香には全然敵わない。
いつかわたしたちも天景院さんみたいな大人の色香というものを醸し出せるようになるのだろうか。
そんなことを思っている間に、準備が整ったのか、天景院さんがベッドの上にあがり、そしてわたしを手招きした。美里はすでにベッドに昇っている。
美里はベッドに昇って来た天景院さんにしきりに体を擦りつけ、甘えに甘えていた。
そういう行為のためらいのなさはさすがは美里というべきか。わたしもそんな風に出来たらいいのだけど、とても真似できる甘え方ではない。
とりあえずベッドの上にあがろうと、四つん這いでよじ登った。さっき軽快に跳び上った美里に比べればなんとも不格好な上がり方だったけど、ぽんぽんと飛び跳ねられる美里の方がおかしいのだ。
わたしがなんとかベッドの上にあがると、すでに美里と天景院さんが絡み合いを始めていた。天景院さんが壁際に座り、背中を壁に預けつつ、半身を起こしている。
その天景院さんに背中から体を擦り付けにいっている美里。その美里の体に手を回し、天景院さんが美里の胸を優しく愛撫していた。
「んにゃ……♡ んに……っ」
気持ちよさそうに美里が小さな声で啼く。これまでわたしと美里はヒトネコ姿で色んな人と関わって来たけど、体に触れてもらうことはあまりなかった。
お店だとお触りはNGだし、頭を撫でてもらうくらいが最大限だった。
ヒトネコトリップの時に愛撫してもらったこともあったけど、ここまで密着した状態でされたことはなかった。
天景院さんは同じ女性ならではの細やかさで、美里の胸を的確に刺激している。
マイクロビキニの内側に手は入れず、あえてその上から乳首を刺激しているようだ。普通の水着と違って薄い素材で出来ているから、美里の先端の膨らみがよく見える。
その膨らみが徐々に大きくなり、美里が天景院さんの愛撫で感じていることは明らかだった。
美里は気持ちよさそうに顔を緩ませている。今回は相手が天景院さんという女性であることもあってか、彼女も存分に身を委ねているようだ。
ふわふわと柔らかいベッドの上を這って、ふたりに近付く。
天景院さんはわたしを、美里を抱いていない方の手で優しく抱き寄せてくれた。
その手に導かれるまま、わたしは天景院さんの胸元に顔を埋める体勢になる。
「んにゅ……っ」
人の胸に顔を埋めている体勢になってしまったのが、気恥ずかしくて顔を赤くし、上目づかいで天景院さんの顔を窺う。
天景院さんはとても優しい笑顔で、わたしたちを受け入れてくれていた。
半裸の女性三人が絡み合う不可思議な空間が生まれている。
柔らかな乳房の暖かな体温を感じつつ、天景院さんに体を預けていると、体が少し引き上げられた。促されるまま、わたしは体を動かし――
天景院さんの唇が、わたしの唇に重ねられた。
つづく