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夜空さくら
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ヒトネコライフ!10


 寝転んで私たちに身体を委ねる天景院さん。

 わたしがどうその身体に触れようか迷っていると、美里は全く躊躇なく天景院さんの顔に自分の顔を近づけていった。

「んにゃ……♡」

 楽し気に微笑んだ美里は、天景院さんとディープキスを交わし始める。

 さっきのわたしと違って、美里は最初から舌を伸ばし、積極的に舌を絡めに行っている。

「ん……♡」

 わたしの時はわたしがその気になるまで動かなかった天景院さんも、美里相手なら大丈夫だと判断したのか、天景院さん側からも積極的に舌を伸ばしていているようだった。

 しきりに喘ぐ声が聞こえてくる。明確な言葉ではないからか、特に変換されることなく天景院さんの喘ぎ声が聞こえて来る。

 少し気恥ずかしく感じつつ、わたしも何かしなければという気持ちにさせられた。美里だけに愛撫を任せておくわけにはいかない。

(でも、ど、どうしよう……?)

 口は美里で塞がっているから、別のところに狙いを定めなければならない。

 一瞬、天景院さんの股間に目を向けてしまったけど、ちゃんと気持ちよくできるかわからないし、そこに顔を近付けるのはハードルが高い。

 そこでわたしは無難に、天景院さんの胸に狙いを定めた。

 天景院さんのおっぱいは、とても綺麗な形をしていて、ボリュームもかなりのものがあった。肌に吸い付いてくるような張りがあり、思わず触りたくなるようなおっぱいだ。

 顔を近くに寄せると、妙に甘い匂いがし始める。不快な感じではなく、自然と引き寄せられるような、そんな匂いだ。

(なんの匂いなのかしら……?)

 わたしは恐る恐る舌を伸ばして、天景院さんのおっぱいに触れさせる。

 柔らかな脂肪の塊が、わたしの舌が押した形に凹み、形を変える。

 天景院さんがそれに反応してこちらを見たような気がした。した、というのは恥ずかしくて直接は見られなかったからだ。顔が赤くなっているのがわかる。

 乳房を唾液塗れにしないよう、注意を払いながら舐めて刺激を与え続ける。

 そうしているうちに、わたしはなんとなく妙な味がしているのを感じていた。

(やっぱり甘い、ような……? 母乳って甘くはないわよね?)

 母乳の味なんて知らないからわからないけど。

 でも少なくとも、天景院さんが母乳を出せるような状態にないことはわかる。お腹に経産婦らしき特徴も見当たらないし、綺麗なものだ。

 まだ乳首を舐めているわけでもないし、彼女の身体に塗られているオイルか何かの味や匂いなのかもしれない。

 ぺろぺろと舐め続けていると、天景院さんの乳首が硬く尖って行っているのがわかった。刺激によって気持ちよくなってくれているのだと思うと、嬉しい。

 わたしはその尖った乳首を舌で舐め、そして口に含んでみた。

「あっ……♡」

 天景院さんが気持ちよさそうな声で喘ぐ。この歳になって、乳首を口に含ませる側ではなく、含む側になるとは思ってもみなかった。

(やっぱり乳首から何か液体が滲んでる……ってわけでもないみたいね)

 雰囲気に酔って、そう感じてしまっている、というのはあるのかもしれない。

 わたしは甘噛みした乳首に舌先で刺激を与えつつ、妙に気持ちよく感じている自分に気付く。

(むぅ……なんだか、むずむずするわね……?)

 乳首に吸い付いて変な気分になっていることはあるかもしれない。

 わたしは手を猫の形に丸め、猫が肉球で押すイメージで、丸めた手で天景院さんの乳房を揉む。

 別に丸めた状態で拘束されているわけではないのだから、指先を使っても別にいいとは思うけど、ヒトネコとしては極力そういう指先を使う行動は控えた方がいいと思ったのだ。

(まあ、それを言い始めると、そもそも愛撫自体が猫のやることではないんだけど)

 ヒトネコとして好ましい動きとそうでない動きというものはある。

 例えばこうして天景院さんと絡むのが、娼婦として――つまりは人間の女として、性的行為をするために呼ばれたのだとしたら、指先もフルに使って依頼主に気持ちよくなってもらうのが筋だろう。

 けれどわたしたちはヒトネコとして彼女に飼われている立場だ。ヒトネコとして飼われている以上は、ヒトネコとしての行動を徹底するのが、求められていることだろうと思う。

 わたしは無自覚であったのだけど、そういう思考をしてしまうところが、天景院さんに気に入られている要因のひとつなのだった。

 そうこうしている間に、天景院さんも十分気持ちよくなってくれているのか、身体が細かく動き始めた。

 そろそろ絶頂するかな、というところで。


 唐突に部屋のドアが開かれた。


 まさかこの状況でそんなことが起きるとは思っていなかったわたしたちは、一斉に扉の宝を見る。

 その目に、とても大きな女傑が飛び込んで来た。満面の笑みで、仁王立ちになっている様が実に凛々しい。

「ーーーーーー! ーーーーーーー!」

 それは、天景院さんの妹さんである、天景院奈津樹さんだった。

 猫耳の効果で何を言っているのかはさっぱりだったけど、大体の意味は理解した。するだろうこの状況なのだから。


 彼女は、わたしたち三人に混ざりに来たのだ。





――少し時間は遡る。


 ミヤとミサ、二匹のヒトネコがその体を私にすり寄せてくる。

 ミヤは相変わらず恥ずかしそうだ。

 ここ数日、ほとんど裸同然の格好で過ごしているというのに、いまだ高いレベルの羞恥心を維持しているのは、流石の逸材と言わざるを得ない。

 ミサのように天真爛漫で無邪気なのもヒトネコなら、ミヤのように羞恥に身を焦がしながら猫のように振る舞うのもヒトネコ。

 ヒトネコの対極とも言える二匹を同時に飼えるなんて、私は本当に恵まれている。

 いくらヒトネコを養えるお金があっても、素養ばかりはどうしようもないからだ。

(ふふ……本当に、あの旅行は無理をしてでも見に行って正解だったわね)

 愛おしいヒトネコ立ちが拙くも愛撫してくれる心地よさを感じながら、この二人を見つけた日のことを思い出す。



 正直、その旅行について最初は期待していなかった。

 ヒトネコトリップというお題目には心躍らされたものの、私の求めるヒトネコがその中にいるとは思えなかったからだ。

 別にそれが悪いというわけではないのだけど、大抵はSMプレイの延長のような感覚でいる人が多い。

 ヒトネコとして振舞うのと、ペット扱いされることに喜びを抱くマゾヒストは似ているようで違う。ヒトイヌとごっちゃになっている人もよく見かけた。

 それはそれでいいものではあるのだけど、私が真に求めていたヒトネコではなかった。

 猫のように自由でしなやかで、しかし人としての情緒は失わず。

 そんな理想のヒトネコはそういるものではなかった。

 二匹を見つけるまで、私が唯一理想と認められたヒトネコは、ヒトネコ横丁で雇われノラネコをやっている白い子だけだった。

 実はあの子にも何度かうちで飼われてみないかと声をかけてみたことがあるのだけど、あの子にはつれなく断られている。

 曰く「猫が縄張りを離れるわけにはいかないわ」とのこと。

 実に横丁のボスネコにふさわしい回答を返してくれた。

 横丁に訪れるたびにいの一番に会いに行くのだけど、何度会いにいってもつれない態度を取られていた。

 ミヤやミサとも違う、あの子はあの子でヒトネコの理想系なのだ。

 彼女のことはともあれ、ヒトネコトリップという旅行が行われているという情報を聞いた私は、どんな参加者がいるのかを見にヒトネコホテルを訪れた。

 そして出資者としての特権で、特別な観覧席で旅行に参加している子達の様子を見せてもらった。ホテルには至る所にカメラが仕掛けられていて、それを通してヒトネコたちの様子を見ることができる観覧席があるのだ。セキュリティの都合上、ネットを介して見ることはできないので映像を見るためには直接そこに行かなければならず、仕事で忙しいとなかなか難しい。

 その時は無理に無理を重ねてどうにか予定を開けたのだけど、それは正解だった。


 その日、そこには――ミヤとミサがいたからだ。


 最初に目についたのは、やはりミサの方だった。とにかく目立っていたからまず目についたのは当たり前だったけど。

 ミサはとにかく無邪気な猫らしいヒトネコだった。

 四つん這いとは思えない速度でホテルの中を駆け回り、好奇心旺盛にホテルの従業員や他のヒトネコに躊躇なく近づいて行く。

 ともすれば人懐っこいワンちゃんみたいに見えてしまいそうなものだけど、彼女の天真爛漫さは絶妙だった。

 そんな彼女が特に仲良くしていたヒトネコが、ミヤだ。

 ミヤはとにかく恥ずかしがり屋で、大抵はミサの後ろに隠れていた。あまりに恥ずかしがるので、ミサに付き合わせているだけの、ヒトネコになり切れていないただの人間かと、最初は特に注目していなかった。

 しかし観察を続けるうちに、だんだんミヤから目が離せなくなっていた。

 そのあまりにビクビクする様子が、人を警戒して懐かない臆病な猫のように見えてきたからだ。それはとても不思議な感覚だった。

 そして、とある男性との触れ合いをしているところを見せてもらって、ミヤのヒトネコとしての素養の高さに気付かされた。触れられて、気持ちよくなって相好を崩す彼女には、見ていただけの私にすら「普段懐かない猫がお触りを許してくれた時」くらいの愛しさを感じたのだ。

 無理を言って彼女についての情報を開示してもらって、彼女の経歴を知ってそのポテンシャルの高さに気づいた。

 奇跡のような存在。これ以上ない、ヒトネコとしての理想が形になっていた。

 さらに加えてミサの存在もある。

 この二人が存在し、そしてそれが気の許し合った友人同士であるという事実。

 もはやこれ以上の奇跡はないと、私はお金や手間を惜しむことなく、二人を、二匹のヒトネコを確保することにした。

 たまたま夏休み前だったこともあり、一ヶ月もの長期契約が結べたのは、本当に運が良かった。

 二匹を存分に可愛がってあげるために屋敷も改修したし、世話役のメイドも増員した。

 私は理想のヒトネコちゃんを、自分の館で飼うことができたのだ。



 そして今、私はそんなヒトネコちゃんたちを両手に侍らせている。

(あー、幸せ……)

 私はそう呟きながら、近づいてきたミサと唇を重ねる。

 積極的に唇を合わせてくれるミサ。舌もすぐ口内に伸びて来た。

 さっき口付けをしたミヤはなかなか舌を絡めて来てくれなかったけど、ミサは最初から積極的に舌を絡めてきてくれた。

(この違いがあるのがふたりのいいところよね……)

 まずはミサの好きなように動かしてもらい、十分昂ってきたところでこちらからも舌を絡める。ミサは元気いっぱいで積極的だけども、技巧的にはまだまだだ。

「んにゃ……ぅ……♡」

 少し舌で口内を刺激してあげると、ミサの顔は途端に蕩ける。そんな彼女がとても可愛らしかった。

 そうして私がミサと口付けを交わしていると、胸に刺激が与えられた。

「ん……♡」

 思わず声を上げながら胸を見ると、ミヤが私の乳房に舌を這わせていた。

 恥ずかしそうにはしながらも、ミヤは恐る恐る私の乳房を刺激してくれていた。なるべく気持ちよくなるように、という気遣いを感じる。

 手で揉むのはヒトネコらしくないからか、猫の手の形にした手で押さえながら舐めてくれていた。

(こういう自然な猫としての行動ができるのが、ポイント高いのよねぇ……)

 これこそが、ミヤのいいところだ。

 そういう役であると頭では分かっていても、実際にそうできる子はなかなかいない。思わず手の指を使ってしまったり、立ち上がってしまったり。

 その点、ミサやミヤはそういうことがほとんどなかった。

(だからこそ、二人をこういう格好で飼うことができるというものだけど……)

 一応人の言葉を分からなくする猫耳や発声や二足歩行を禁止するチョーカーを身に付けてもらってはいるけれど、猫耳はともかくチョーカーは着けなくとも、このふたりなら普通にヒトネコとして振る舞ってくれそうだ。

(まあ、もうしばらくはこの格好を楽しませてもらって……そのあとはどうしましょうかしら)

 ヒトネコは裸派な私だけど、ラバースーツを着せるのも捨てがたい。あれはあれでいいものだ。

 まだまだ契約期間はある。 

 二匹の愛しいヒトネコたちと愛し合いながら、これからどうやって楽しもうか考えていると、不意に部屋の扉が開かれた。

 私の自室をノックもなしに開けるような蛮行をするのは、一人しかいない。

「お姉ちゃん! アタシも混ぜて!」

 愚昧・奈津樹である。

 奈津樹は同じ両親から生まれたとは思えないほど性格が違うけど、なぜか性癖は一緒だった。私も奈津樹も女の子が好きで、その中でもヒトネコに代表されるペットプレイが大好物なところまで一緒。海外を拠点に活動しており、ヒトイヌやポニーガールを飼育する牧場を経営していた。

 私と違うのは、奈津樹は時に動物側にもなるというところだ。

 ポニーガールになって普通の女性ではとても動かせない馬車を独りで動かす様は、海外の愛好家から人気が高い。奈津樹のポニーガール姿はパワフルだから無理もない。

 ただ、私をマスターにはしてくれないし、私の前で動物側になることはない。曰く「お姉ちゃんはお姉ちゃんだから」とのことで、譲れない一線があるようだ。

 それはさておき、豪快な奈津樹だから、動物側の子たちに好かれるかどうかは結構極端に分かれる。

「ふしゃーーーッ!!」

 特に出会いが最悪だったミサは全身で威嚇していた。私の首に抱き着いて、足を私の胴体に絡め、身を隠している。

 一方のミヤはまだそこまで苦手意識はないのか、突然現れた奈津樹に戸惑ってはいるものの、拒否まではしていないようだ。

 しかし乱入されたことで、すっかりお楽しみの雰囲気がなくなってしまった。

(これはあとで折檻する必要がありそうね……)

 一端それは脇において、私はしがみついてきているミサを撫でて宥めながら、奈津樹に向けて口を開く。

「あなたねぇ……少しは自重というものが出来ないの?」

「だって! 三日間は接触禁止だっていうから頑張って我慢したのに!」

「明日にでも接触禁止は解除しようと思ってたのよ……全く、仕方ないわね」

 私は深々と溜息を吐いた。結局妹には甘くなってしまうのが姉である。

 ミヤとミサの様子を確かめてみた。いや、ミサは見るまでもなかった。

 消去法で、というわけではないけど、ミヤに頼んでみるしかない。困惑している様子のミヤの頭を撫でながら、わたしは尋ねる。

「ミヤ。奈津樹と遊んであげて欲しいのだけど……出来る?」

 言葉はわからずとも意図は通じたのか、ミヤの目が見開かれて丸くなった。



つづく



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