ヒトネコライフ!11
Added 2020-07-24 12:33:04 +0000 UTC奈津樹さんは顔と手以外の全身を、ラバースーツで覆っていた。
彼女はまるで外国の人のような体格だから、それがとても似合っている。外国の映画にたまに出てくる、逞しい体つきをした女性主人公みたいな、そんな印象だった。
ラバースーツの表面に、手足や身体の筋肉の筋が浮かび上がり、いやらしいというか、なんというか、逞しい。
腕や足の筋肉も凄いけど、インパクト抜群なのは腹筋だった。
筋肉を表すのにシックスパックという表現があるけど、奈津樹さんの腹筋はまさにそれだ。ボディビルダー並みの筋肉の隆起がはっきりと露わになっていて、思わず見入ってしまう。
よく聞く話だと、筋肉を身につけるために運動する人は胸の脂肪も燃焼しまうため、胸は小さくなりがちらしいのだけど、奈津樹さんの乳房はラバースーツの上からもはっきりとわかるくらいに大きかった。スーツはそんなに薄い素材じゃなさそうなのに、それでもなお大きく見えるということは、元が相当大きいということになる。
胸が大きい方のわたしにとっては、少し親近感の湧く共通点だった。
とはいえ、そんな共通点を踏まえてもなお、奈津樹さんからは感じるのは仲間意識ではなく威圧感なのだったのだけれど。
天景院さんはそんな人と『遊べ』という。
(うぅ……)
正直な話をすれば、身が竦む。
初日に美里が乱暴に撫で回されたことは記憶にまだ新しく、自分もあんな風に扱われたら、と思うと二の足を踏んでしまう。
(けれど……さすがにその辺りの話はされてるだろうし……)
ケダモノじゃないのだ。天景院さんから厳重に注意されたはずだし、いまは傍に天景院さんもいるのだから、最悪本気で泣き叫べばすぐ助けてもらえるだろう。そうなったらその時こそ屋敷から追い出してもらえばいい。
多少の我慢は破格の御給金のうちだ。
我ながら生真面目なわたしは、そう考えて奈津樹さんを受け入れることにした。
「にゃ、にゃっ」
わたしはこちらの反応を伺っている天景院さんに、肯定の意味で頷いて見せる。
そして行動でも示すべく、ベッドから降りて――軽やかに、とはいかずほとんどずり落ちるみたいな形になったけど――奈津樹さんに近付く。
わたしの意思は十分に伝わったのか、満面の笑みを浮かべた奈津樹さんが、ずんずんずん、と近付いていた。
思わず向かいかけていた体が止まる。
(だ、だから……それが怖いんだってば!)
山のように巨大な奈津樹さんに目の前に立たれると、文字通り身体が竦んで動けなくなってしまう。
おそらく天景院さんが言い聞かせてくれているとは思っても、そのあまりに威圧感のある体格を実際に前にすると、本能的に恐怖を覚えざるを得ない。
「ーー! ーーーーーーーーー!」
わたしたちには意味が伝わらないというのに、相変わらず大きめの声で奈津樹さんが何かを言い、そしてわたしの方に広げた手を伸ばして撫でようとしてきた。
上から被せるようにして伸ばしてくるものだから、襲い掛かってこられているようで怖い。思わず目を閉じて身体を丸めて伏せる。
「ーーっ! ーーーーー!」
天景院さんの鋭い声が響いた。
目を開くと奈津樹さんが伸ばしかけていた手を引っ込めている。どうやら手の伸ばし方を叱られたようだ。
本物の猫を撫でるときも、手は上から被せるのではなく、最初は下から伸ばすのが基本のはずだ。奈津樹さんは動物が好きなわりにそういうことを実践できてはいないらしい。
奈津樹さんはバツの悪そうな顔をしていた。
本人もそういったことを知らないわけではなく、単純に動物を前にするとテンションがあがりすぎて忘れてしまうようだ。まあ、どうあれ迫られる動物側にしてみればたまったものではない話だけど。
奈津樹さんの手が、今度はちゃんと下から伸ばされる。
二度目はさすがにゆっくりとした動きだったから、受けるこちらも余裕を持ってそれを出迎えることが出来た。
奈津樹さんの女性にしては逞しい指先が私の喉あたりをくすぐってくる。
もっと乱暴に撫でられるかと覚悟していたけれど、奈津樹さんの手つきは意外に優しかった。こしょこしょ、と喉をくすぐられる。
「ん、にゃ……っ」
くすぐったくて身を捩ると、奈津樹さんは嬉しそうに相好を崩し、さらに撫でてくる。もう片方の手も使ってわしわしと――優しいけれど豪快に――頭が撫でられた。
奈津樹さんの手はとても大きく、その上で両手を使って撫でてくるものだから、まるで自分の頭がハンドボールかなにかになった気分だった。そんなことはしないと頭ではわかっていても、握り潰されたらどうしようと嫌な汗が額を流れる。
(うん……これは怖いわ)
本能的な恐怖に訴えかけてくる奈津樹さんの威圧感は、なるほど確かに並みの動物では受け止められないものだろう。
ライオンが尻尾を巻いて逃げても無理もないと思えてしまった。
わたしの喉や頭を撫でていた奈津樹さんが、わたしを抱えて立ち上がる。
「にゃっ!?」
あまりに軽々と持ち上げられた。フワッと体が浮くような体験はなかなかできないものだろう。
思わず奈津樹さんの腕の中で体を丸めて硬くなってしまう。
見た目的にはお姫様抱っこの状態だ。
今の自分をお姫様、と称するには格好があれだったけど、似たような体勢であることは間違いない。
奈津樹さんの体格は怖がられるなどデメリットも多いけれど、こういうことが苦もなくできるのは間違いなくメリットだろう。
丈夫な体幹をしているからか、わたしひとりを抱えても全く小動もしていない。一応わたしには普通程度に体重があるはずなのに。
正直、そのことにはドキリとした。奈津樹さんは女の人だけど、逞しい腕に抱かれていることには変わりない。
ただ、そのドキリがときめきだけではないのが、困る。確実に恐怖も混じっていた。
身体を丸め、硬くなっているしかないわたしを抱えて移動した奈津樹さんは、ベッドの上に優しく仰向けに寝かせてくれた。
「にゃ、にゃお……」
手足を丸めたまま、奈津樹さんを見上げる。
続けて奈津樹さんがベッドの上に昇ってきた。
天景院さんのベッドは非常に丈夫で、わたしたち三人が乗ってもびくともしないくらいしっかりした造りになっている。だからもう一人くらい乗っても問題ないはずだ。
けれど、一瞬ギシリとベッドが揺れた。奈津樹さんの体重はどれくらいなのだろうか。大柄だし筋肉質だしで、相当重いのは間違い無いのだろう。
そんな彼女に覆い被さられ、思わず心臓がどきりとしたのはときめきか恐怖か。
ラバースーツに浮かび上がる筋肉の筋ひとつひとつが力強さを感じさせてくる。
「ーーーー、ミヤ」
名前を優しく呼ばれた。パワフルな外見にばかり目がいっていたけれど、大柄なこともあってか、その声には普通の女の人には無い渋みがあり、なんだかドキドキする。
「にゃ……あ……」
奈津樹さんの大きな手が、わたしの腰に触れてきた。
別にいきなりというわけでもなく、触ろうとしていたのも見えていたのだけど、触れられた瞬間、思わずびくっと腰が反応してしまった。
くすり、と笑った奈津樹さんの手がさらに動く。
掌が腰からお腹の方に移動してきて、その掌から熱い体温が直接伝わって来た。
(あ……そうか……だから、手の先は開けてるんだ……)
すべすべした奈津樹さんの掌の感覚を覚えたわたしは、どうして彼女が全身をくまなく覆うラバースーツではなく、手の先が開いているものを着ているのか理解した。
触れたところの感触を、ラバー越しではなく、直接感じ取るためなのだ。
手はとても大きいけど、肌自体はとても柔らかく、彼女が男性ではなく女性なのだと改めて実感して少し安心する。男性だったとしたら、わたしも受け入れることはできなかっただろう。
ヒトネコトリップなどで多少は男の人とも触れ合ったけど、それはあくまで触れ合いというレベルで、今のような完全に性的なことを目的にした触れ合いじゃなかった。
そんな風にわたしが思っている間、奈津樹さんはわたしのお腹に手を触れさせたままだった。体温が馴染むのを待っているかのように、わたしの腹部をゆっくりと撫で擦る。
(ん……っ、体が……熱い……?)
優しくお腹を撫でられているだけなのに、妙に体が熱くなって来た。
世の中には手を当てることで病気を癒せる人がいるそうだけど、奈津樹さんの手からも何かそういう不思議な力が出ているのだろうか。
単に高めの体温の奈津樹さんの体温に、わたしが温められているだけかもしれない。
触れられて最初は緊張していたわたしだったけど、慣れてくると人の体温を感じるのは心地がいい。
「ふにゃ……あ……」
だんだん力が抜けて来た。
固く縮こまっていた体を、徐々に開いていく。
奈津樹さんのもう一方の手が今度はわたしの首あたり、さっき撫でてくれていた喉元へと伸ばされる。
こちょこちょ、と猫にするように擽られ、思わず笑ってしまった。
「にゃふ……っ、ふふっ、にゃぅっ」
本当の猫だったら喉を鳴らしているような感覚で、思わず声が出る。
奈津樹さんはこの程度の触れ合いも今までできなかったのか、とても感動しているようだった。楽しそうな笑顔が眩しい。
(初めて……なのかしら? 流石にわたしたちみたいな立場の人なら、これくらいの触れ合いはできると思うけど……)
わたしは不思議に思った。天景院さんが多数のメイドさんを雇っているように、その気になればそういう立場の人と触れ合うことくらい、奈津樹さんにだってできるはずだろう。
あとから知った話、奈津樹さんはSMプレイの一環として、全身を拘束されたヒトイヌやポニーガールなどとの触れ合いは結構やっていたそうだけど、わたしや美里みたいな相手とペットプレイとしての触れ合いはなかなかうまく行かないのだという。
そもそもわたしたちほど徹底して動物役に徹することができる人はそんなにいないらしく、そういう意味でも奈津樹さんにとってわたしとの触れ合いはとても得難いものだったようだ。
奈津樹さんの愛撫は執拗に続く。お腹を撫で摩られ、喉を擽られ、頭を撫でられて――徐々にわたしは奈津樹さんの存在に慣れて来た。
天景院さんという奈津樹さんにとってのブレーキがすぐ側にいることも、いい方向に働いた。それがなければ奈津樹さんは暴走して乱暴に触れ、わたしは泡を食って逃げ惑うことになっていたかもしれない。
慣れて来たおかげで、わたしの方からも彼女の手に体や頭を擦り付けるくらいの余裕が生まれた。そんな風に出来たことは今までなかったらしく、奈津樹さんはますます喜んで愛撫を続けてくれる。
不意に、奈津樹さんが仰向けに寝かせたわたしを持ち上げた。初日のように、わたしの両脇に手を入れて持ち上げるという、犬や猫を持ち上げるような持ち方だ。
今は下着を身につけているので、そんなに恥ずかしくはなかった。いや、恥ずかしいは恥ずかしいけど、胸もそれほど揺れなかったので耐えられた。
わたしを持ち上げて奈津樹さんがどうしたかったのかというと、あぐらをかいた自分の懐にわたしを座らせた。
交差した奈津樹さんの足首に腰掛け、奈津樹さんの胸に背中を預ける体勢だ。
奈津樹さんとは体格差があるから、すっぽり包み込まれるような感覚になった。
(ん……子供みたいで恥ずかしいけど……これは、ちょっと安心するかも……)
納まりがいいというかなんというか。ラバースーツに覆われた奈津樹さんの乳房は程よいクッションとなってわたしの身体を支えてくれている。
だいぶ奈津樹さんに慣れたこともあって、巨大な筋肉の塊が包み込んで守ってくれているような感覚になっていた。そう考えると、世界で一番安全な場所のように思えてくるのだから、自分の感覚というのも現金なものだ。
そんなくだらないことを考えていると、体勢を改めた奈津樹さんが、再び愛撫を再開する。
奈津樹さんの手が、わたしの乳房を鷲掴みにした。
「にゃ……っ!」
一瞬どきりとしたものの、乱暴な手つきではなかったのですぐ落ち着くことが出来た。わたしの大きな乳房でも、奈津樹さんの手からすればその手に収まるサイズでしかない。
柔らかく、しかし力強く。
奈津樹さんの手が動き出して、わたしの乳房を揉み始めた。
ブラジャーの上からだったけど、それがかえってよかったのかもしれない。与えられる刺激が程よく抑えられ、気持ちいいと感じられる範疇に収まっている。
「んにゅ……っ♡」
思った以上に、奈津樹さんは技巧派だった。
揉み方がすごく柔らかいのに、絶妙な力加減でわたしを高みに押し上げてくる。気持ちよさに、乳首が固くなっていくのがわかった。
奈津樹さんは両手でそれぞれ乳房を揉んでいたけど、ある程度刺激すると、右乳から手を離し、その手をそのままスライドさせて、わたしの下腹部――というかショーツの中に滑り込ませて来た。
「にゃ、っ……!♡」
触れられた感触でわかる。その場所はすっかり濡れてしまっていた。
それを奈津樹さんに知られたことに、羞恥心が湧き上がって顔が真っ赤になる。恥ずかしくて背後を振り返れなかった。
そんなわたしをどう感じたのか、奈津樹さんは両手でわたしを弄りながら、わたしの頬にキスをして来た。火照った頬に一瞬だけひんやりとした感覚が走り、すぐにもっと熱くなった。
思わず声を上げて悶える。
「んにゃ……っ♡」
それと同時に、股間に奈津樹さんの指が侵入してくる。すっかり濡れたそこは、奈津樹さんの指を容易く受け入れてしまったs。
処女膜が破れるんじゃ無いかと心配になったけど、そこはちゃんと考えてくれていた。指を入れはしたものの、ごく浅いところで止まってくれている。
けれど奈津樹さんの指には力強さがあって、存在感がさっき天景院さんに触れられた時よりも遙かに大きい。
さらに、奈津樹さんはわたしのクリトリスを親指で抑え、指の腹で擦り始める。
「にゃ……っ!♡」
十分に解されたわたしの身体はその刺激による快感を素直に受けてしまい、びくんと身体全体が跳ねてしまった。乳房を揉んでいる手も先端の一番敏感なところを狙って動き始め、わたしは下から上から激しい快感に翻弄されることになった。
優しくも執拗な愛撫はいつしかわたしの脳を蕩けさせ、わたしはすっかり発情した猫のように嬌声をあげることしかできなくなっていた。
「にゃぅ♡ うなぁっ♡ にゃぅぅっ♡」
奈津樹さんの唇がわたしの首筋に触れ、ぺろりと舌を使ってその場所を舐めてきた。
「ふにゃあっ♡」
ぞくぞく、と背筋を快感が走り抜ける。思わずのけ反ったわたしの身体を、奈津樹さんの腕がしっかり捕らえて離さない。
拘束されているよりも――実際拘束されたことはないんだけれど――遙かに動けない感じが強かった。
やがて奈津樹さんに導かれるまま、わたしは絶頂し、痙攣して、潮を噴いた。
「はー……♡ はー……♡ はー……♡ はー……♡」
呼吸すら甘い吐息になっているような気がする。天井を仰いで荒い呼吸を繰り返した。
絶頂したばかりで茫洋とする視界に、奈津樹さんの顔が入り込んでくる。
「にゃあ、ん……♡」
甘い声が自然と出た。その声に応じてか、奈津樹さんはわたしの唇にその唇を重ねてくれた。
熱くて深いキス。奈津樹さんの情熱が伝わってくるような激しいものだった。
角度上、わたしは上を向かなければならず、結構苦しかったのだけど、そんなことを気にしている余裕はなかった。
位置関係的にどうしても唾液がわたしの方に流れ込んで来て、自分の分も合わせてドロドロにされてしまい、集中していないと溺れてしまいそうだったからだ。
長いキスの時間が終わり、わたしはすっかり精魂尽き果てた状態で、奈津樹さんに身体を預けていた。
(うぅ……気持ち良すぎて、身体が動かせない……)
すっかり消耗してしまった。
そんなわたしを、奈津樹さんは優しい手つきで撫でてくれる。いつもこれくらい優しくすれば、動物に怯えられることもないだろうに。
そんなことを考えていると、わたしはふと美里たちがどうしているのか気になった。
途中まで奈津樹さんが暴走しないかどうか、天景院さんは見てくれていたけど、途中からそのことを気にしている余裕がなくなってしまっていた。
(ふたりもまた再開してるのかな……?)
そう思って、気怠い体を動かしてふたりの方を見やる。
そこではわたしの想像通り、美里と天景院さんが再び触れ合い始めていた。
けれど、その触れ合いは、わたしの思った以上に進んでいた。
美里と天景院さんは股間と股間を合わせて擦りつけ合う――いわゆる『貝合わせ』の体勢を取っていたのだ。
つづく