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夜空さくら
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ヒトネコライフの裏話 後編


 あたしは、見てはならないものを見てしまった。

 だから徹底的に拘束され、性的に虐め抜かれ、気が狂って価値観が変貌して、天景院様の言うことをなんでも聞く性奴隷になってしまうまで責められ続ける――というような展開にはならなかった。



 呆然とするあたしの前で、瑞紀と天景院様が朗らかに話している。

「いつ二人にバラすのか気にはなってたんだけどな。まさかこんなにあっさり見つけられるとは……あんたがそう仕組んだのか? 志津久さん」

「いいえ。基本的には偶然ね。とはいえ、今日このタイミングで見つかるのは私としても意外だったわ。たまたま私がいる日で良かったというべきかしら」

 そこには館の主人とその従者というよりは、まるで友人同士のような気楽さがあって混乱した。

 なにせ瑞紀は全身を拘束されたままなのだ。

 作業台の上に磔にされた姿だけを見れば、これから拷問にでもかけられて殺されてしまいそうに見えるのに。

 そんな厳重な拘束と道具を取り付けられているのに、瑞紀はあたしと遊んでいる時と同じ、いつもの気風のいい態度のままだった。

 だからこそ、その状態とのギャップが際立つ。

(瑞紀っていつもスポブラだったから分からなかったけど、結構胸大きいんだ……)

 そんなどうでもいいような新しい発見をしてしまった。

 まあ今回の場合、金属で出来たブラジャーのようなものを付けられているから、余計に大きく見えるのかもしれない。

 あたしが二人の会話にどう口を挟めばいいのか分からず、オロオロしていると、瑞紀の視線があたしの方を向いた。思わず背筋が伸びる。

「あんまじろじろ見んなよ。恥ずいだろ」

「ご、ごめんなさい……?」

 あまりに瑞紀の態度がいつも通りで、かえって頭が混乱する。

 確かに声と態度は瑞紀のものなのだけど、そのあまりにも『女体』を強調させられた姿が、普段のボーイッシュな服装を好んで活動的な瑞紀と重ならない。

 混乱するあたしの前に、天景院様がタブレット端末を持ってきて画面を見せてくれた。

「瑞紀ちゃんったらあんなこと言ってるけど、ほら見て。心拍数も上がって膣内の圧力も上がってて……あなたに見られてすごく興奮しちゃってるのよ♡」

 画面には瑞紀の体に取り付けられた道具から送られている、瑞紀の体の情報が表示されていた。

 それによると確かに心拍数も高くなっているし、体温の上昇も見られるようだ。膣内の情報に関しては愛液の分泌量みたいな項目もあって――瑞紀の情報が赤裸々に示されていた。

「あっ、テメェっ、余計なことを……!」

 自分の状態をあたしに知られたことを知った瑞紀が、拘束具を軋ませて暴れた。

 もちろんそれで拘束が解けるわけもない。

(あ……頬のあたりの温度が上昇してる……恥ずかしいんだ……)

 あたしがそう思いながら全頭マスクの穴から覗く瑞紀の目元を見ると、確かに少し赤くなっているように見えた。

 しかし最初からわかっていたことではあるけど、瑞紀はこれを自分から望んでやっているらしい。普段の彼女からは想像もできない性癖に、あたしはなんと言ったらいいのか分からなかった。

 そんなあたしの肩に、天景院様が手を置く。

「ふふっ。興味ある?」

 思わず瑞紀のことをじっと見てしまっていたようだ。

 あたしは慌てて首を横に振る。

「い、いえ、そういう、訳では……誰だって、友達がああなっていたら見ちゃいますよ……」

 あたしはそう言いつつも、瑞紀のことをチラチラ見るのをやめられなかった。

 その視線をどう思ったのか、天景院様が瑞紀の寝かされた作業台の横に立ち、彼女に取り付けられた装置について懇切丁寧に説明し始める。

「まず前提として、瑞紀ちゃんは昨日まで銅像ちゃんとして中庭の像の中に入っていたの」

「いやちょっと待って何その前提」

 思わず素でツッコミを入れてしまった。いきなり話がぶっ飛びすぎてて訳がわからない。

「あの銅像、芸術作品にしてはポーズが変だと思わなかったか?」

 瑞紀に指摘され、あたしは思わず頷く。

「あれは内側が空洞になっていて、その中に入れるようになってるんだよ。何日かおきに出してメンテナンスは受けてたけど、実はお前が働き始める前からずっといたんだぜ?」

 なんということでしょう。

 あたしはとんでもない屋敷で働かされていたようだ。

「……もしかして、内側から外が見えてたりした?」

「もちろん見えてたぜ。外側に受けた刺激を内側で再現する仕組みもあったから、大変だったんだぜ?」

 瑞紀はそう平然と言うけど、あたしは知らない間に瑞紀の全身を弄りまくってたのだと知り、なんともいえない気分になった。

 身動き一つ取れない状態で、全身を弄られる。

 それはーー果たしてどんな感覚なのだろう。

「話を元に戻すわね。瑞紀ちゃんにはそんな感じで色々な完全拘束の方法を試して貰っているの。ある意味それが仕事のようなものね」

「壁に埋め込まれたりもしたよな。まんことおっぱいだけ外に露出させてさ」

「あれは弄りやすくて良かったけど、準備が大変だったわねぇ……」

 さっきからさらっといかにもついでにみたいに投げ込まれるエピソードが、全然ちょっとしていない。

「次の完全拘束のお仕事もあるけど、その前にちょっと休憩がてら、軽い拘束で楽しんでもらおうと思って♡」

「か、軽い拘束……?」

 どう見ても厳重に拘束されているのだけど、この程度ではまだ軽い拘束らしい。頭が変になりそうだ。

 そんなことを考えていると、天景院様は瑞紀の胸を覆う金属製のブラジャーを指先でツンツン、と突いた。

「このブラジャーの内側は無数のブラシと吸盤で出来てて、外から見ても形馬全然変わらないけど、内側では揉んだり擦ったり舐めたり摘んだり……色々な感覚が味わえる仕様になっているわ」

「実はさっきから揉む動きで動いててな……結構気持ちいいんだわ、これが」

 どこか熱の篭った声は、すでに責めが始まっていたからのようだ。でも外から見ると何をされているのか全くわからず、恐ろしい道具だと思った。

(今はコードらしきものが繋がっているように見えるけど……もし単独で動かすことができるなら……日常生活でもつけたままにできるってことじゃない?)

 歩いていても座っていてもどこにいても。

 装置を動かされれば胸を責められるというのは、なかなかえげつない話だ。

 さらに、天景院様はブラジャーに触れていた指を動かし、お腹を通って下腹部の方へ滑らせていく。

「ん……っ」

 その際、肌に触れられた瑞紀が、今まで聞いたことのない、女の子らしい声で喘いだ。天景院様はそれを受けてクスクスと笑う。

「銅像の中に入ってもらっていた時は、特殊なラバースーツに身を包んでもらって、外からの刺激以外は全部遮断してたから。肌がとても敏感になってしまっているのね」

「しょ、しょーがねーだろ……あっ♡」

 またピクッと体を震わせて瑞紀が反応する。

 ここ数日、美里ちゃんや藤原さんのヒトネコ姿を見慣れたおかげで、友達のそういう姿を見ても怯まなくて済んだ。恥ずかしいのは恥ずかしいけど。

 天景院様の指先が、瑞紀の股間を覆う金属の貞操帯に触れた。

「これは見たまんま貞操帯ね。でも、見てわかる通り三つの穴にそれぞれ道具が差し込まれているわ」

 見てわかる通り、というのは、明らかにそこにつながっているのだろうな、というでっぱりや管が貞操帯から突き出していたからだ。

 そのうち、一番細い管を天景院様は指先で挟む。

「これは尿道に差し込まれてるカテーテルね。一本に見えるけど、排出用と注入用の二本があって、入れるのも出すのも自由自在ってわけ♡ ちなみに先端部分が膨らんで固定されるようになってるから、勝手に抜けたりお漏らしすることはないのよ」

 とても軽く言うけれど、とんでもない仕掛けだった。

 天景院様は次に、カテーテルよりも遥かに太いけど、突き出している部分の長さ馬ちょうど手に持てる程度のものに手にかける。

 そして、それを捻るとずるずると引き出した。

「!?」

 悲鳴をあげなかったあたしは褒められていいと思う。それはテラテラと何かの液体で光りながら、その全貌を露わにする。

 それは、ひどく禍々しい形をしたディルドだった。

 長さ的にわかっていたけど、その大半は瑞紀の膣の中を満たしていたようで、そんな物をいきなり引き抜かれた瑞紀は目を白黒させて呻いていた。

「んぎぃ♡ ……お、おい、こらぁっ、いきなり、何しや、がるぅ……♡」

 そういつもの口調で抗議する瑞紀だったけれど、言葉の端端が明らかに快感の余韻に震えていた。天景院様は手に持ったディルドを楽しげに振りながら、ニコニコと笑っている。

「こうして見せた方が理解が早いかなって思って。……これは膣に差し込んでいたディルドね。この通り、抜いたり挿したりできるの。この形に飽きたら別の形のものを入れることもできるわ」

 そう天景院様は説明してくれたけれど、あたしはそれよりも瑞紀の貞操帯にぽっかり空いた穴に意識が吸い寄せられていた。

 今の今までディルドを差し込まれていた瑞紀のそこは、ぽっかりと開いた穴を覗かせていたのだ。

 ローションなのか愛液なのか、ドロドロになって糸を引いている。グロテスクで気味の悪いそれ。人によっては気分が悪くなる光景かもしれない。

 それなのに――とてもエッチだった。

 そう感じてしまったことを読まれたのか、天景院様がますますいい笑顔を浮かべている。

「うふふ……やっぱりあなたもなかなかの逸材ね♡」

「っ……ち、ちがっ……!」

 咄嗟に否定しかけたあたしの肩に手を置いて、優しく微笑む天景院様。

 皆まで言うな、とでも言いたげな天景院様の態度に、余計に恥ずかしくなってしまった。

 天景院様は手に持っていたディルドを、また瑞紀の体の中に差し込んでいった。

 引き抜いていた時の大きさは衝撃的だったけど、柔らかい素材である程度圧縮が効くのか、瑞紀の穴は大きなディルドをあっさりと飲み込んでしまった。

「んぎゅぅううううっ♡♡」

 ただ、快感は大きさ相応に強いらしく、歯を食いしばって耐えなければならないほどのもののようだ。

 瑞紀の甘い声はやっぱり聴き慣れない。

 天景院様の説明は続く。

「それから……肛門にはそれなりの大きさのアナルバルーンが差し込んであるわ。どれほど息んでも抜けないようにね。浣腸機能及び洗腸機能もあるから、尿道のカテーテルも併せて、瑞紀ちゃんはおトイレにいく必要もなく楽しめるってわけ♡」

 天景院様はそれらを全て覆う股間の貞操帯を手の甲で叩いた。

「そしてそれらを固定するのがこの貞操帯よ。丈夫でしなやかな金属で出来ているから、何日でも装着して問題ないわ。ブラジャーもそうだけど、隙間から水を流し込めば体を洗えるようになっているから、衛生的にもバッチリなのよすごいでしょ」

 それはいいことのようだけど、逆に言えば取り外す必要がないと言うことで、延々と解放しないと言うことも可能だと言うことだった。

 恐ろしいほどに徹底した拘束っぷりに、背筋が震える。

「そして……責め具はこれで終わりじゃないわ。ララ、残りの道具を持ってきて」

 部屋の中で忙しなく働いていた小柄な影の一人にそう命じる天景院様。

 その言葉を受け、道具を持ち出している間に、天景院様は作業台の上に唯一置かれていた、ディルド付きマスクのような物を手に取った。

「これは口に入れる用の口枷兼喉奥を犯すディルドね。呼吸はできるようになっているけど、これが喉奥まで達するとめちゃくちゃ苦しいのよ。瑞紀ちゃんはこれのプロだから大丈夫だけど、普通の人に無理やりつけたら嘔吐物が喉に詰まって死ぬわね」

 拘束されるプロってなんだろう。と言うか、瑞紀はプロだったのか。

「いや、プロじゃねえし。慣れてるだけだし。普通に苦しいからな? 決して平気じゃねぇぞ」

 さすがの瑞紀も、それにはツッコミを入れずにはいられないようだった。

「うふふ。ごめんごめん。あと、このディルドには流動食を胃に直接流し込む機能もあるの。数日はつけっぱなしにすることを想定しているのよ」

 楽しそうに説明を続ける天景院様は、ララさんが持ってきた道具の数々を受け取る。

 そしてそれらのことをあたしに対して説明しながら、実際に瑞紀の体に取り付け始めた。

 小さな補聴器のような物を瑞紀の耳に入れ、耳を覆う耳当てを上からかぶせる。

「今のは小型スピーカーよ。耳当ては完全に外の音を遮断しちゃうけど、今のがあれば必要に応じて周りの音が聞こえるの。ね、瑞紀ちゃん」

「ああ、聞こえてるぜ」

 次に細長い管のような物を手に取った。

「これは鼻の穴に刺して呼吸を確保するためのものね。喉は塞がないようになっているとは言え、口から呼吸することはできないから、完全拘束状態で鼻が詰まったら死んじゃうのよ」

 さらっと恐ろしいことを言いながら、天景院様がその管を瑞紀の鼻の穴に差し込んだ。

「んごっ……こればっかりは慣れねえなぁ」

 鼻が詰まったような――実際詰まっているようなものだ――声で瑞紀がぼやく。流石に鼻の穴は性感帯にはなっていないようだ。

 次に目を覆う目隠しが手に取られた。

 瑞紀の目を覆い、その上から太いベルトのようなもので完全に頭に固定される。目の部分は丸いクッションのようなもので覆われていて、眼球に負担はかからなさそうだったけど、もう光も感じられないだろう。

「そして最後に……口を開けて咥えてちょうだい。瑞紀ちゃん」

 どう天景院様が命令をすると、瑞紀はその口を大きく開いた。自ら、あの凶悪な大きさのディルド付き口枷を受け入れていく。

 しかし流石に太いディルドは慣れている瑞紀でも辛いのか、拘束された体を痙攣させながらそのぶっとい物を喉の奥に受け入れて行った。

「うぐっ……グェッ……っ」

 本当に大丈夫なのか心配になったけど、瑞紀はそれを受け入れ切った。

 後頭部でそれが固定されると、瑞紀は完全に触覚を除いた五感を奪われ、ただ拘束されて横たわるだけのただの肉袋と化す。

 そんな瑞紀の体を愛おしげに撫で摩りながら、天景院様が指示を出す。

「さあ、一週間分のご褒美をあげないとね。やっちゃって♡」

 天景院様の号令に従って、作業員の三人が一斉に何かを操作する。

 その瞬間、作業台を揺らす勢いで瑞紀の体が暴れた。

「ングっ、ン、うううううウウウウウウウッ!!!」

 見ているこっちが心配になる激しい呻き声。瑞紀のお腹が異様に大きく膨らんでいく。

「浣腸機が作動して大量の浣腸液を挿入してるの。すぐ排出が始まるから大丈夫よ。ほら」

 そう天景院様が言う通り、膨らんでいた瑞紀のお腹がまた萎んでいく。まるで風船みたいな扱われ方に、背筋がゾクゾクした。

 それが恐怖によるものだったのかどうかは――あたしにはわからなかったけれど。

 ふと気づいたら、瑞紀の下腹部が不自然にぽっこり膨らんでいた。

「ああ、あれは膀胱が膨らんでるの。排泄用と注入用の二本があるって言ったでしょう?」

 それは確かに説明してくれていたけど、膀胱とはあんなに膨らませていい器官だっただろうか。

「ンギィいいいいいいい! う、うう、うううウウウウ〜ッ!!」

 ギシギシと拘束具を軋ませながら瑞紀が悶え苦しんでいる。破裂寸前まで膀胱を膨らまされたのに、自分の意思で出すことはできないとなれば、その『出したい』という衝動は並みの衝動じゃないはずだ。

 口や鼻が塞がっていて苦しいだろうに、全力で叫んでいることからもそのことは明白だった。

「だ、大丈夫なんですか……?」

 流石に心配になって聞くと、天景院様は安心させるように微笑んでくれた。

「大丈夫大丈夫。物凄く苦しいとは思うけれど……瑞紀ちゃんはそう言うので興奮しちゃう変態さんだから♡」

「ウゥツ、ウウゥッ……!♡」

 抗議するような呻きの中にも、確かに感じているような喘ぎ声が混じっていた。

 天景院様に開発された結果、そんな風になってしまったのか、それとも最初から瑞紀はそんな性癖だったのか――あたしには判断できなかった。

 そうしてひとしきり暴れたあと、彼女の動きは緩慢になり、そして静かになった。

 胸が上下しているのと、身体が彼女の意思に反してぴくぴくと痙攣していることから、生きているのはわかったけど、相当な絶頂を繰り返したのはなんとなくわかる。

 天景院様は手元のタブレットを見て、たぶん数値に問題ないことを確認したのだろう。

 部屋で作業していた三人に瑞紀を運ばせ始めた。作業台にはキャスターがついていて、瑞紀を乗せたまま移動できるようになっていたのだ。

「ど、どこに連れて行っちゃうんですか……?」

「瑞紀ちゃんにはしばらく楽しんでもらうから、彼女の部屋に運ぶのよ。まあ、彼女の部屋といっても、大体は拘束されたままだから倉庫みたいなものなのだけど」

 作業台に乗せられたまま、部屋の外に運び出されていく瑞紀を呆然と見送っていると、不意に背後から天景院様があたしの身体を抱き締めて来た。

「はひっ、ふぇ、天景院、様……?」

 一体何をするつもりなのか。

 咄嗟に相手の出方を窺ってしまったことが、運のつきだった。

 天景院様は目にも止まらない早業であたしのスカードのジッパーを下げ、そうして開いた隙間から手を挿し込み――あたしの股間に、性器を覆う下着に指を這わせたのだ。

「ひゃんっ!? だ、だめぇっ!」

 抵抗しようとした時にはすでに遅く、天景院様の指はあたしの下着の下まで潜り込み、そして、そこの状態を確かめていた。


――くちゅり……


 そしてその場所は、いやらしい水音を立ててしまった。

 友達の、瑞紀の痴態を見たあたしの身体は、性的に興奮してしまっていた。

 あたし自身知らないことだったけど、あたしにはそういう素養があったのだ。それが、あの瑞紀の姿を見たことによって目覚めてしまった。

 それを天景院様に知られたと悟り、羞恥に顔が真っ赤になる。天景院様がくすりと笑うのがわかった。

 いつもと変わらない優しい声で天景院様があたしの耳元に囁く。

「ねえ、留衣ちゃん。貴女も……拘束に興味があるのね」

「ち、ちが……っ、ひゃぅっ!」

 否定しようとしたあたしの言葉を、天景院様の指の刺激が掻き消す。

 あたしは天景院様に抱き締められた体勢から逃れられなかった。

 蛇に絡み付かれた哀れなネズミのように、あたしの命運はもはや決まっていたのだ。

「大丈夫、最初から瑞紀ちゃんみたいな激しい拘束はしないから♡ 最初はそうねぇ……アームバインダーってわかる? それで後ろ手に縛るくらいにするから、ね♡ 嫌だと思ったらすぐに止めるし、お試しだと思って」

 それは文字通り悪魔の囁きだった。

「ほんっ、と、です、か……っ?」

 そしてあたしは、まんまとそれに乗ってしまったのだ。

 天景院様が嬉しそうに表情を歪める。

 それからほんの数日後――あたしは全身を余すことなく拘束具に覆われ、しかもその姿をヒトネコとして屋敷内を散歩していた藤原さんに目撃されることになるのけど。


 それはまた別の話だ。



ヒトネコライフの裏話 後編 おわり







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