ヒトネコライフ!14
Added 2020-08-07 14:53:07 +0000 UTC背後に気配を感じて振り返ったら、三人の小柄なメイドさんたちがわたしを取り囲んで、見下ろしていた。
「ーー!? にゃぁ!?」
思わず悲鳴を上げて体を丸め、身を守るわたしを、三人のメイドさんたちは好奇心いっぱいの、キラキラした目で見つめてくる。
「ーー! ーーーーミサ?」
「ミヤーーーー? ーーーーーー」
「ーーーーーーーーーーーーー?」
三人は楽しそうに話しながら、わたしの方に近づいてくる。
わたしは逃げることも忘れて、その場にうずくまる事しかできなかった。
三人はメイド服を着ているので、間違いなくこの館で雇われているメイドさんではあるのだと思う。
けれど今まで屋敷の中で見てきたメイドさんたちとは、明らかに性質が違うような気がした。
三人は揃って身長が低く、わたしや美里よりかなり小柄だ。
メイド服のサイズが合っていないわけでもないのに、メイド服に着られている感じがする。メイドさんとして住み込みで働いているということは、少なくとも十八歳以上ではあるはずなんだけど、とてもそうは見えない。高校生どころか、中学生と言われても思わず信じてしまいそうだ。
ただ、メイド服の胸部を持ち上げる発育の良さを見ると、童顔なだけで同じくらいの年齢でもおかしくはない。
特に、三人のうち少し眠たそうな顔をしているメイドさんに関しては、わたしと同じ、いや、彼女の方が大きいくらいだった。
わたしが謎の三人のメイドさんに囲まれて怯えていると、そのうち一人の活発そうな子がわたしの前にしゃがみ込み、舌を鳴らしながら手を差し出してくる。
その仕草はまるで普通の猫に対するように自然で、わたしのことをヒトネコとして扱っている者の動きだった。
(多分、だけど……この子たち……天景院さんのお気に入り……とか?)
なんとなくそう直感する。そう思ってよく見てみたら、三人が身に纏っているメイド服の質がかなり違う。元々この屋敷で働いているメイドさんたちの服は、実用的で『仕事をする上でちゃんとした』メイド服だったけど、三人のメイド服はどことなく装飾が実用よりも少し過剰で、スカートの裾も若干短く、どこか『見る者を楽しませる』ためのメイド服な感じがする。
艶々の髪といい、珠玉のような肌といい、体の手入れも必要以上にきちんとされていて、屋敷の維持管理という仕事のためのメイドさんというよりは、観賞用というか、愛玩を目的としたメイドさんな気がするのだ。
その違いは態度にも表れていた。屋敷の中でよくすれ違うメイドさんたちは仕事で働いているという感じの人たちだけれど、この子たちはコロコロ表情が変わってわたしを見て楽しそうに話している。
こちらに向けて向けて手を差し伸べている活発そうな子の様子も、ただの珍しいものに対する興味というよりは、わたしみたいな立場の者との触れ合いを楽しんでいる様子が伺えた。
(わたしや美里と同じく、天景院さんの趣味を満たすための人員と考えれば……なんとなくしっくりくるわ)
冷や汗を滲むのを感じつつ、わたしはどうすればいいのかわからないでいた。
ペットプレイとかそういうのに慣れた人かも知れないというのはわかっても、かと言って思いっきりじゃれつきに行けるほどわたしはまだ恥じらいを捨てれていない。美里なら躊躇なく飛びつきに行くのだろうけど、わたしはまだそこまで振り切れていなかった。
(こんなことなら、美里と一緒に行動すれば良かった……!)
そう後悔しつつも、身動きが取れないわたし。
痺れを切らしたのか、活発そうな子がわたしに触れようと手を伸ばしてきた。
それを髪の毛を巻いている少しお嬢様っぽいメイドさんが厳しい顔で制止する。活発そうな子は唇を尖らせながら何か言い返し、その二人の間で睨み合いが始まってしまった。
(え、え、まさか、喧嘩!? 喧嘩するの!?)
まるで子供のようだ、とは思ったものの、険悪そうな雰囲気に飲まれてしまい、どうしたらいいのかわからない。
それは眠そうな雰囲気の子も同じなのか、わたしはその子と一緒になって、睨み合いを始めた二人のことをオロオロと交互に見ることしかできなかった。
二人が軽い言い争いらしきやりとりを続けながら徐々に距離がつまり、鼻先がぶつかるほどの距離まで近づいたかと思うとーーいきなり唇と唇を合わせた。
「へにゃ!?」
素っ頓狂な声が出てしまったけれど、無理もないと思って欲しい。
取っ組み合いの喧嘩でも始まるのかと思っていたら、急に見た目に似合わぬディープキス合戦が始まったのだから。何が起きているのか、目の前で一部始終を見ていたはずのわたしにもわからない。
活発そうな子とお嬢様ちっくな子の間で、舌と舌が激しく行ったりきたりしている。熱い吐息が交わされ、幼い見た目の二人なのに、艶を感じさせた。
思わず見入っていると、徐々に活発そうな子がお嬢様ちっくな子の方を押し、その体に手を回して抱きしめながらさらに押し、押しに押して。
気付けば仰け反ったお嬢様ちっくな子を、押し倒す勢いでディープキスを炸裂させていた。
「んぅ……、あっ、ぷあっ、んむぁっ」
お嬢様ちっくな子が圧倒され、その体から力が抜けていっているのがわかる。そんな彼女をしっかり抱きしめて支えつつも、活発そうな子の攻める勢いは止まらず、溺れさせようとしているかのように圧倒し続けた。
やがてすっかり脱力したお嬢様ちっくな子が膝を突き、崩れ落ちたところで、活発そうな子がようやく口を離す。
なぜだか彼女の勝利を告げる鐘の音が鳴り響いた気がした。
(どういうことなの……)
思わずそう思ったわたしに賛同してくれる人は多いと思う。
それはさておき、そのなぜか性的な行為で決着をつけたことからも、三人が普通のメイドさんと違う、天景院さんの性的嗜好を満足させるための人員であるということがなんとなく理解できた。
そうだとすると、そんな彼女たちがいるこの部屋で拘束されている大河原さんは、メイドとして雇われていたのではなく、実はわたしたちと似たような枠で雇われていたということだろうか。
(で、でもそれにしては……初日の雰囲気はおかしかったような)
もしこの三人のメイドさんと同じような立ち位置で雇われていたのなら、ヒトネコのわたしたちが仕事でやっているのかどうかを聞くのはおかしい気がする。
混乱しているわたしの前に、再び活発そうな子が立った。
さっきは制止してくれたお嬢様ちっくな子は、活発そうな子とのキス合戦で負けてへたり込んでいる。
邪魔する者がいなくなったその子は、蹲るわたしに向けて手を伸ばし、触れてこようとしてーー
「ーーーーーー、ララ!」
ババーン、と効果音がつきそうな勢いで、奈津樹さんが現れた。
この時ばかりは、奈津樹さんが救世主のように見えた。
活発そうなメイドさんーー多分、ララという名前らしいーーは、慌てて居住まいを正し、奈津樹さんの方に向き直っていた。
奈津樹さんは天景院さんの妹さんであり、多分彼女たちの雇い主というわけではないのだろうけど、それでも立場としては上なのだろう。
いつの間にか眠そうな気配を滲ませていた子もララさんの隣に並んでいた。
お嬢様ちっくな子はまだ腰が抜けているのか、立ち上がろうとしているけど、立ち上がれていなかった。
そんな彼女の側に立った奈津樹さん。軽く片手でメイド服の襟を掴み、引っ張り上げて立たせてあげていた。扱いが猫に対するそれなんだけどいいのだろうか。ちょっと乱暴な扱われ方はいつものようで、特にお嬢様ちっくな子は嫌がっていたりする様子はなく、メイド服の襟を正し、奈津樹さんに頭を下げていた。奈津樹さんが大きな手でその頭をポンポン、と叩いてあげている。
そして奈津樹さんがわたしの方にやってきてーー嫌な予感を覚えたけど遅かったーー有無を言わさず抱き上げられた。
「ふにゃっ」
安心させようというのか、逞しい腕で抱きながら頭をガシガシと撫でてくる奈津樹さん。豪快ながらも、こういう人だとわかっている分、不覚にも安心してしまった。
どういう人なのかわからない三人のメイドさんに弄り回されるよりは、まだ人となりがはっきりしている奈津樹さんに撫で回される方がマシだ。いや、それはそれで嫌だけど、比較として。
ともあれ、奈津樹さんが来たことによって三人のメイドさんの手から逃れられたことは、ありがたいことだった。
ありがたいことだった、はずなのだけど。
数分後、わたしはなぜか三人のメイドさんに全身を撫でくりまわされていた。
「んにゃあああああっ」
頭を撫でる手、お腹を撫でる手、胸を揉む手に、尻尾を握る手に、お尻を触る手ーーとにかく弄り回されていた。
あれからなぜか奈津樹さんはその場であぐらかいて座り、わたしをその上で抱きかかえて抵抗させないようにしてから、三人のメイドさんたちに触ってもいいと許可をだしたみたいなのだ。
活発そうな子、ララさん。
お嬢様ちっくな子、ルルさん。
眠そうな顔の子、ナナさん。
その三人はこれ幸いとばかりに、さっきはララさんが触ろうとしたのを止めてくれたルルさんまで、わたしの体に触れて来ているのだった。
わたしは今まで、さまざまな人と触れ合ってきたけれど、多人数に一斉に触れられたことはなかった。せいぜいがじゃれついてくる美里に加えてもう一人、くらいのもので、ここまで一斉に触れられることはそうなかった。
ナナさんがわたしの胸をぐにぐにと揉んでくる。同じくらい立派なものを持っているからか、そこに対する興味があるようだ。
ルルさんはわたしが身につけている猫耳や尻尾を重点的に触ってくる。どっちも飾りだからそれ自体に感覚があるわけじゃないのだけど、尻尾はアナルプラグと繋がっていて、結果的にそこに対する刺激となってしまう。
そして一番積極的なララさんは、わたしの股間に興味津々のようだった。足の間に割り込んできてわたしに足を閉じさせないようにしながら、執拗にそこを刺激してくる。
「んにゃああ……っ!」
三人のメイドさんに弄くり回され、恥ずかしくて死にそうだ。
何より恥ずかしいのは、その状況に少し興奮してしまっているという事実だった。
初日にこんなことをされたら、天景院さんにいって辞めさせてもらうことを考えていただろうけど、すっかりヒトネコとして飼い慣らされた今となっては、性的に触れられるということが、死ぬほど恥ずかしいけれど嫌ではない、という微妙な状態になっている。
触られること自体は嬉しくても、恥ずかしさは全く解消されていないから、どうしようもなく逃げ出したい。
(うぅ……奈津樹さんがいなかったら、さすがに逃げてたかも……)
奈津樹さんの自体には、例のじゃれ合いもあって、かなり慣れていた。
だから、わたしが本気で嫌がれば、奈津樹さんがどうにかしてくれるでろう、というある種の信頼感があった。
だんだん鳴らされているなぁ、という自覚もあったけれど、それ自体は嫌なことではなかった。
「ふにゃ、にゃ……にゃああ……っ!」
やがて、弄られて限界に達したわたしは、奈津樹さんと三人の前で絶頂してしまった。
三人のメイドさんがそんなわたしのことを見つめているのがわかる。恥ずかしすぎて顔から火が出そうだった。
わたしは体を捻って奈津樹さんの胸元に顔を埋める。抱きしめてくれている奈津樹さんは、そんなわたしの頭を優しく撫でてくれた。
一瞬安心しかけて、そもそも奈津樹さんが三人に触らせたということを思い出した。
「……にゃっ」
ちょっと低い声で鳴きながら奈津樹さんの手を叩く。
奈津樹さんは苦笑しながら、それを受け入れてくれた。
一瞬そのまま落ち着きそうになったけど、わたしは確認しておかなければならないことを思い出した。
(そうだ……! 大河原さんがなんであんなことになっているのか、聞かなきゃ……!)
「にゃうっ、にゃうぅ!」
奈津樹さんの腕の中から抜け出し、そして作業台の上で完全に拘束されている大河原さんの方に近づき、手で大河原さんを示す。
奈津樹さんと三人のメイドさんたちは揃って顔を見合わせーーそしてにっこりと笑った。
奈津樹さんがわたしに近づいてきて、そして優しく抱き上げる。
そして、なぜかわたしを作業台の上に乗せてくれた。
触れられるほど目前に、厳重に拘束された大河原さんがいた。
つづく