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夜空さくら
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カゴノヒト 第3話「カゴノヒトとその意味というもの」

■ あらすじ:拘束プレイ愛好者の十和野カゴメは、ある日自縛プレイのミスにより死んでしまう。その寸前、異世界の神によって加護を経て異世界転移を果たした。異世界で冒険しながらも、貰った加護で拘束プレイの追及に余念がないカゴメ。その周りには徐々にその意思に賛同する仲間が集まって行って――ありがちというにはあまりに異質な異世界冒険奇譚。


■ 本編は全体公開で連載していく予定ですが、それ以外で書きたくなった「おまけ」シーンは支援者様向けに公開予定です。そちらも合わせてお楽しみいただければ幸いです。


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 トワノカゴメがこの世界に来て最初に発揮した加護は、人型特攻とも呼べるものだ。

 なにせカゴメに敵意を向けた相手の四肢を問答無用で拘束してしまうのだから、敵が戦士や弓使いだけの構成である場合――そして往々にしてゴブリンやオークの集団はそういった構成であることが多い――彼女にその力を使われればその時点で終わりである。

 カゴメ本人も動けなくなるが、そんなことは彼女の他に攻撃を担う者がいれば全く問題にもならない。

 つまり。

「ほい、終わりさね」

 その魔法使いが手を叩くと、動きを止められて怒り猛っていた周囲のオークやゴブリンたちの首がぽろりと落ちた。氷の魔法で両断され、切断面が凍っているため、血も噴き出していない。

 首が落ちた敵の中には、剣の扱いに優れた個体であるオークナイトもいたが、まるで普通のゴブリンのようにあっさり首を落とされていた。

 中心に立っていたカゴメはそんな周囲の状況に構わず、魔法使いに労いの声をかける。

「ご苦労様です。サマンサさん。相変わらず無駄のない、良い魔法ですね」

 カゴメからまっすぐな言葉で褒められ、魔法使いのローブを着た魔法使いらしい魔法使い――サマンサは照れたようにつばの広い帽子で顔を隠す。

「カゴメが動きを止めてくれるからこそさ。私は大したことをしてないよ」

 もしも真正面からオークナイトと戦うことになった場合、魔法を撃たせてもらえるかどうかもわからない。相手も魔法の危険性はよく理解しているため、何よりもまずサマンサを潰しに来るためだ。

 仮に上手く魔法を放てたとしても、当てるためには速度重視にするしかなく、いまやったような、十分な威力を練って首を一撃で落とすということは出来ないのである。

 カゴメの加護あってこその蹂躙ではあった。

 それを理解してかしないままにか、カゴメはサマンサに提案する。

「サマンサさんが私の加護付きの装備を身に着けたら、もっと強力な魔法も自在に使えるようになると思うのですけど……」

 カゴメはキラキラした眼で――実際には目隠しでみえないが気配が明確にキラキラしている――サマンサを勧誘するが、彼女は首を縦には振らなかった。

「やめとくれ。わたしゃもう歳だからねぇ……さすがにカゴメみたいな格好はちとね……」

 そう応えるサマンサは三十代半ばくらいの歳で、カゴメとは倍近い差があると思われた。

 カゴメの身に着けているラバースーツは、この世界に元々存在しないものである。

 そのため、実際のところ判断は難しいが、体のラインを強調してしまうため、体に自身のない者が身に着けるには少々過激すぎた。

 サマンサが拒否するのも仕方のないことなのだが、カゴメからみればサマンサの体つきは十分に魅力的で、ラバースーツを身に着ければより映えるものだと感じていた。

「そんなことはないと思うのですけど……」

 カゴメは食い下がろうとしたが、それを彼女たちの前に立っていた重戦士の男――『三日月』のリーダー・リオルが諫める。

「そういう話は街に戻ってからしてもらえるか? ここは戦場なんだからな……とはいえ、いまので最後のようではあるが」

 リオルが視線を向けた先では、忍者のような格好をした斥候の青年・クルナエルが一足先に進んで手を振っている。隠れて罠の有無や敵の存在を先行して探っていた彼がそうして姿を表しているということは、すでに敵はおらず、姿を表しても大丈夫だと判断出来たのだということがわかる。

 リオルとサマンサの緊張が少し解けたのを感じたのか、カゴメは再度話を蒸し返した。

「リオルさんは、サマンサさんが強化されるのは歓迎ですよね?」

「んー……まあリーダーとして、戦力的に考えればもちろんそうだが……カゴメ嬢みたいな格好でサマンサにうろつかれると、俺は正直目のやり場に困るなぁ……」

 なおこれはサマンサの年齢的に、という意味ではなく、リオルがサマンサを憎からず想っているためである。

 もっともリオルの片思いであるため、その意図は通じない。

「ほら、やっぱりダメだろう? ……それにそのローブ……じゃなかったスーツだっけ? それを着たらそれ以外の服は受け付けなくなるんだろ? 私はお洒落もしたいしねぇ」

 だから遠慮させてもらうさ、とサマンサは断る。

 カゴメは少々不満そうだったが、これ以上は無理強いしても仕方ないと思ったのか、渋々引き下がった。

「……より多くの人にラバースーツを着てもらうには、このラバースーツのパターンだけじゃダメということですね……うん……色々なラバースーツのパターンを考えてみないといけませんね」

 この時のやりとりが、かえって彼女の『ラバースーツを普及させたい』気持ちに火を点けてしまったのだが、それはまた別の話となる。

 三人の元に、斥候のクルナエルがやってきた。

「向こうに攫われた被害者たちがいる小屋がある。リオル、あそこは俺たちだけで――」

「サマンサさん、私の鎖を引いて連れて行ってくださいますか?」

「あいよ」

 クルナエルの言葉を遮るようにカゴメが言い、サマンサは言われるままにカゴメの鎖を手にした。リオルは少し苦い顔をする。

「カゴメ嬢、あそこは……」

「わかっていますリオルさん。お気遣いありがとうございます。でも、ゴブリンやオークに攫われた方々がもしもまだ生きているのなら、救命には私の力が必要になるかもしれません。それに……冒険者として活動する上で、『そういう現実』は避けては通れないでしょう?」

 カゴメはきっぱりとそう言った。

 リオルとクルナエルは顔を見合わせ、頷き合う。

「そうだな。無駄な気を利かせて悪かった」

「無理はするなよ。……こっちだ」

 先導して動き始めるクルナエルに、残りの三人も続く。

 カゴメの歩調に合わせて歩きながら、サマンサが口を開いた。

「別に見なくてもいいもんは見なくていいと思うけどねぇ。私はもう慣れたけど、はっきりいってあんまり気分のいいもんじゃないよ」

「ありがとうございます。でも、だからこそ……私も慣れないといけませんし」

「真面目だねぇ。転移者……おっと。あんたの事情なら冒険者のいいところだけ見ても許されるだろうに」

 冒険者は血生臭く泥臭い職業でもあるが、果敢に未知に挑んだり人々の危機を颯爽と救ったりする英雄的側面も同様にある。

 国の上層部としてはなんとしても彼女をこの国に繋ぎとめておきたいのだから、彼女が望みさえすれば、冒険者のいいところだけ味合わせてもらうことも可能だろう。

 それなのにカゴメは、あえて冒険者が遭遇しうる、汚いところや厳しいところも見ようとする。それは誠実であるとも言えたし、愚直であるとも言えた。

「私はこの世界にとって、存在としては異分子ですが――心まで異分子になりたくはありませんから」

 カゴメはそう応えるのであった。

 いずれは自分の冒険者パーティを持つと決めている以上、そういったことも背負うのが自分の責務だと彼女は考えているのである。


 そして、四人はこの世の地獄のひとつを見た。


 小屋の中は汚物と血痕塗れで、まともに生きていける環境になかった。

 その小屋は種付け小屋であり繁殖小屋だったのか、攫われた女性たちはそこに乱暴に繋がれて犯され、孕み、忌まわしきゴブリンやオークを産んでいたのだろう。

 ゴブリンやオークと言った別種族の雌を攫って繁殖する魔物は、妊娠と出産までが恐ろしいほど短時間で行われる。一匹の魔物として動けるようになるまでの時間が恐ろしく早いのだ。

 その代償に母体には多くの負担を強いるため、あっという間に使い潰してしまう。

 極めて悪魔的な生態を有しているのだ。

 その小屋の中に繋がれていた女性たちも、ほとんどがその地獄のサイクルに耐えられず、すでに絶命していた。

「……相変わらず、あいつらの生態は胸糞悪いな」

 リオルがそう吐き捨てる。クルナエルも同様の思いを感じているのか、いつもの仏頂面がより渋面になっていた。

 リオルとクルナエルが女性たちの亡骸を埋葬するために動こうとしたとき、小屋の中を見渡していたカゴメが、ひとりの女性を見て声をあげた。

「皆さん! 左から三列目の隻腕の方! その人だけまだ息があります!」

「なんだって!?」

 慌ててリオルがその女性に駆け寄る。

 片腕が半ばから斬り飛ばされてなくなっている彼女は、他の女性たちと同じ悲惨な状態ではあったが、確かにまだ息があった。

 すぐにリオルは彼女を柱に縛り付けている縄を切り、小屋の外へと運ぶ。

 明るいところで見ると実に無残な姿ではあったが、確かに胸が上下して動いている。

 リオルは彼女の状態を確認し、眉を潜める。

「確かに生きてはいるが……これは、もう……」

 普通の方法では助からないだろう、とそう口にするリオルを制し、カゴメが彼女の傍に膝を突く。

 そしてその頭にラバーに包まれた手を優しく置いた。

「聞こえますか? 単刀直入に聞きます。貴女はまだ生きていたいですか?」

 彼女の様子を見る限り、すでに何度もゴブリンやオークの出産を経験しているようだった。

 攫われた直後に救われたならばともかく、すでに何度も魔物に犯され、人ならざる者を産み落としてしまっている。

 その者の考え方次第ではあるが、世を儚んで自殺しても誰も責められない状態だ。

 だからカゴメは彼女に尋ねた。生きたいかと。

「生きたいのならば――私が得た加護をお裾分けできます」

 どうしますか、と問われた彼女は。

 息も絶え絶えで、いつ息絶えてもおかしくなかった彼女は。


 微かに、しかし確かに――「生きたい」と叫んだのである。





『……という経緯で命が助かって、スーツが脱げるようになるまでの間、ひとまずうちのパーティの用心棒になってくださったのが、こちらのナギさんです』

 カゴメにそう紹介されたポニーテールの女性・ナギはペコリとワジムに頭を下げる。

 彼女はテーブルにはつかず、カゴメの後ろにずっと控えていた。話にあった通り右腕は半ばから別の素材に変わっており、義手であるということが見て取れる。

 彼女もカゴメやマリエッタと同じくラバースーツを身に着けていた。

 比較的豊満な、女性らしい体格をしているカゴメやマリエッタとは対照的に、彼女はスレンダーな体躯をしていた。胸部や臀部の隆起も控え目だ。すらりとした長身を、着くべきところについた筋肉が彩っている。ラバースーツが筋肉の筋も強調し、体のラインが非常に優れていた。

 その腰には大小二本の剣を帯びており、武術の心得があることが見て取れた。

 ゆえに単なる仲間ではなく、用心棒なのだろう。

「そ、そうなんだ……ええと、元気そうでなにより……って言っていいのかな?」

 部外者の自分がデリケートな話を聞いてよかったのだろうかと思いつつ、ワジムがそう尋ねると、ナギはこくりと頷いた。

 その頑なに喋らない様子を見て、心の傷はまだ深いのだろうとワジムが思っていると、カゴメがクスクスと笑う。

『安心してください。無口なのはナギさんの元々の性格です。ナギさんは流離いの剣士の方で、修行のために世界を回っておられたそうです。魔物相手に敗北すれば、ああされることも覚悟の上だったようですから』

 彼女だけが地獄で生き残れたのも、その覚悟と元々の体力の差があったのだ。

 村娘とは鍛え方も心構えも全く違って当然であった。

『それにナギさんは普段は無口ですけど、ベッドの上では意外と可愛らし――ムグッ』

 言葉を続けようとしたカゴメの口をナギが塞いでいた。

 素早く机の上に置いていた張り子付きの回工具の蓋を、カゴメの口に押し込んだのだ。

 太くて長い張り子が、手品のようにカゴメの口の中に収まっていく。

 その蓋には念話を封じる効果があるらしく、頭に直接響くカゴメの声までもが不自然に途切れる。

「ングッ、ムゥーッ、ウ、ウー」

 喉奥を犯され、声を封じられたカゴメが、困ったような顔をナギの方に向ける。残念ながらほんど体の自由がないカゴメでは、彼女の方をちゃんと振り向けなかったが。

 ナギは素知らぬ顔でカゴメのうめき声をスルーしている。

 慣れた調子の二人に、ワジムはなんといっていいのかわからなかったが、カゴメがこの世界でもほどほどにやれていけていることは彼にも伝わったのだった。

「あー……まあナギさんの話はそれくらいにして……その話でもカゴメさんの格好は普通……ではないけど、少なくとも俺たちと一緒に依頼をこなしていた時と変わらなかったのに、なんでいまは全然違う格好になってるの?」

 話題を元に戻すワジム。

「んぅー」

 唸るカゴメの求めに応じ、ナギは再びカゴメの口から蓋を取って、喋れるようにする。

 その際、どうしても零れる唾液の処理も手早く済ませていた。手慣れている。

『ふぅ……そうですね。その話もしておきましょうか。といっても……単純に、拠点を得て必要になったから、なのですけど』

 そう言いつつ、カゴメは説明を続ける。





 拠点を得た日の夜。

 カゴメは拠点内で自由に行動できるように、新しい加護付きの拘束具を作り出していた。

 そうして出来上がったものを見て、マリエッタは首を傾げる。

「これは……車輪付きの椅子、かしら?」

 この世界にも車椅子自体はあるが、あまり有名なものではない。

 街道の整備も発展途上なこの世界では、そんなものに載って過ごせるのは極わずかな上流階級が自らの屋敷の中のみのことであるためだ。

 一村人でしかなかったマリエッタには、縁の遠いものだった。

 カゴメは生み出したそれを説明しながら、ゆっくりと腰かける。

「これは車椅子というものです。本来は足の不自由な方が自由に行動できるようにというものですが、人を座ったまま移動させるということも出来ます」

 カゴメが車椅子に座ると、その首から垂れさがっていた鎖が背もたれに吸い込まれるようにして接続され、深く座って背もたれに身体を預けた状態になるまで鎖が短くなった。

 車椅子から立ち上がれなくなったカゴメは、上手く出来ていますね、と呟く。

「これで魔力を持たないマリエッタさんでも、拠点の中だけなら自由に動かすことが出来るようになったはずです。後ろの取っ手を持って動かしてみていただけますか?」

 マリエッタが素直に従って車椅子の後ろに立ち、背もたれから飛び出している取っ手を握って押す。すると軽い力で車椅子は動き出した。

「あらまあ……ほんとね。すごく軽いわ。車椅子はとても重そうに見えるのに……それも加護のうち?」

「ええ。この車椅子には『どんな悪路でも走行できる』加護が宿っています。ぬかるむ街道であろうと、険しい山道であろうと同じ力で動かせるんです」

 マリエッタは関心していたが、話を聴いていたナギは眉を潜める。

「……代償は?」

 ただ車椅子に縛り付けられる、というだけならさほど重い代償ではない。ナギのような剣士なら重いと言えなくもないが、例えばある程度の魔法使いなら座りっぱなしになることは代償にならないだろう。

 そのことを指摘され、カゴメは苦笑気味に笑う。

「やはり気付かれますよね……お察しの通り、車椅子に縛り付けられるだけが代償ではありません」

 そういうカゴメの四肢を戒めていた枷が外れる。光の粒子になってそれらが消えてしまったかと思えば、車いすから太いベルトのようなものがカゴメの身体に巻き付き、ラバースーツに包まれた乳房や腹部、ふくらはぎ等を締め付けた。さらに両腕は自分の体を抱くように、両足は百八十度近く股を開くようにして固定される。

「……っ」

 いくら気の知れたパーティメンバーしか目の前にいない状況とはいえ、大股開きの姿勢は恥ずかしいのか、カゴメが微かに呻く。

 そのカゴメの股の下、お尻が着いている座面が蠢き、太い棒の先端が顔を覗かせた。

 マリエッタとナギが固唾を飲んで見守る中、その棒はカゴメの股間を覆う貞操帯を押しのけ、ラバースーツを引き伸ばしながら、彼女の体内へと明らかに入り込んでいく。

「ん、ぁ……っ、ああっ……!」

 さすがのカゴメもその棒の挿入には声をあげてしまっていた。身体が中心から割り割かれていくような、凄まじい衝撃が彼女を襲う。

 外からはどれほど奥まで入り込んだのかわからなかったが、カゴメの体感では子宮口が押し上げられているような、そんな圧迫感を覚えていた。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 荒い呼吸を繰り返すカゴメ。その足が閉じられ、見た目上はただ座っているだけのようになる。だが見ていた二人は、彼女の体の中に太い棒が挿し込まれたままなのを確信していた。

「……っ、ぷは、ぁっ。こ、このように、ですね……拘束に加えて、性的な責めも追加され……ひゃふっ」

 言葉の途中で、びん、とカゴメの背筋が伸びる。その頬が赤く染まり、恥ずかしがっているのがわかった。

 マリエッタも少し恥ずかしそうに顔に手を当てる。

「あらあら……これは……結構な代償ね」

「……人前に出れなくない?」

 ぐちゅぐちゅ、とカゴメの体内をかき回す音がする。

「んっ……あぁっ、も、もう少し……慣れれば……っ、態度に、出さないくらいは……っ、出来るかと……っ」

 本当だろうか、とマリエッタとナギは顔を見合わせる。

 カゴメの嬌声が響いていた。

「んっ……でも、思ったより……刺激が強い……っ、ですねっ、これは……この対策も、しないと……っ」

 さらに自分を戒めるものを、カゴメは追加しようというのだった。





『……というわけで追加したのが、この口枷というわけです。これで呻き声も消せますから、全くわからなかったでしょう?』

 嬉々としてそんな話をされて、ワジムはなんと応えればいいのかわからなかった。

「あー、うん。全く気付かなかったよ……」

 とりあえず事実を事実として伝える。

 先ほどからあまりにも自分に伝えていい類の話ではない気がしていた。

『すみません。ワジムさんの戸惑いもごもっともですが、不特定多数に接する前に、人格がはっきりしている方にご意見を聞いておきたかったので』

 転移者であるという事情がハッキリわかっている関係であることもあり、口の堅さは明確だったからだ。

「……無暗に広めたりは、そりゃしないけれど……わかってる? 俺、君に関することはギルマスに報告する義務が一応あるんだからね?」

 いくらワジムの口が硬いとはいえ、転移者の情報は上に報告する義務が生まれる。それを怠ると厳罰に処されてしまうため、ワジムは黙っているわけにいかないのだ。

 そんな彼の言葉に、カゴメはひとつ頷いた。

『もちろん理解しています。遠慮なくご報告ください。今後は加護に対してそういった代償も増えていくと思いますし……最初から決めていたことではありますが、うちのパーティメンバーは女性限定にするつもりです』

 やっぱり男の人の前で喘ぐのは恥ずかしいでしょうし、とカゴメは言うのだった。

 なお、ワジムからすれば「そういう話を男の俺にするのは恥ずかしくないのか」とツッコミを入れたかったが、藪蛇を突かないように黙っていた。賢明な判断である。

 その後、ワジムはマリエッタが入れたお茶を御馳走になった後、帰っていった。

 異世界人の思考はわかるようでわからない、と内心想いながら。





 親交のある冒険者グループのリーダー・ワジムが帰ったあと、カゴメはひとつ息を――開口具をしているため、その穴から吐くことになったが――吐いた。

『……これで良かったんですよね? シャーティさん』

 そう彼女が屋敷の奥へと呼びかけると、物陰から一人の女性が現れる。

「ええ。あの情報は早めに渡しておいた方がいい。これから先、無用な混乱を生まないためにもね」

 彼女は他の三人と違い、ラバースーツを身に着けていなかった。

 極普通の町娘のような格好をしながら、その動きに隙はなく、先ほどまでワジムが腰かけていた席に優雅に腰かける。

「人の口に戸は立てられない。今後、転移者である貴女の元には転移者の持つ加護の庇護に入ろうと多くの人がやってくることになるわ。大抵の者は街の門番やギルドに弾かれるとは思うけれど……それでも、貴女に縋ろうとする人は多いでしょうね」

 この世界は人間が支配しているわけではなく、魔族との争いや人間同士の諍いも耐えない。

 そんな中、転移者というのは神の恩寵をその身に宿している場合が多く、上手くその庇護に入れれば労せずして安定した生活を送れるのだ。

 ストレートな彼女の発言に、カゴメは苦笑せざるを得ない。

『その筆頭である貴女がそれを言います? 酔っ払ったふりして屋敷の前で倒れて、私に取り入ろうとした最初の人は貴女じゃないですか』

 それが演技であるということはカゴメに見破られてしまった。カゴメの観察眼が特別優れていたというわけではなく、彼女の目隠しがシャーティが泥酔していないことを見通したためである。

「ふふふ。だから早々に情報屋という真の身分を明らかにしたでしょ? 貴女がこれからこの世界で生きていく上で、私は損をしない拾い者だと思うわよ」

『それはそうなんですが……拾われに来た人がいうと、なんだか胡散臭いですねぇ』

 くすくすと笑いあう二人。

 なおマリエッタとナギは、自分たちがその領分に立っていないことを自覚していたため、何も口を挟まなかった。

 ひとしきり笑った後、シャーティは話を変える。

「ところで話は変わるけれど、まだパーティの名前は決まらないの? 名前はとても重要よ。情報の伝わりやすさや正確性も、固有の名前があるのとないのとでは雲泥の差が生まれるわ」

 そう、カゴメはまだ自分のパーティ名を正式に決められていなかった。

 転移者であるという事情や、早めに拠点を構築しておいた方がいいという薦めを受け、ひとまずパーティを作って拠点を得たのはいいが、パーティ名に関してはいまだ空白なのである。

 今後ずっと背負っていく名前になると思えば、適当な名前にするわけにもいかず、カゴメは頭を悩ませているのである。

『うーん、それが悩ましいんですよね……転移者・カゴメのパーティ、とかじゃダメでしょうか』

「転移者は禁止されてるからダメよ。あたしが決めてあげてもいいけど、さすがにそれは裏方の領分を超えてるわ。加護の人の貴女が、責任を持って決めることね」

 そうさらりと口にしたシャーティの言葉に、ぴくりとカゴメが反応する。

『……いま、なんと?』

「え? ああ。貴女、巷では加護の人って呼ばれてるのよ。まあ見た目からして普通じゃないのは明らかだし」

 シャーティはマリエッタがいれてくれたお酒を啜りながら続ける。酔っぱらいのふりをしたのは演技だったが、実際に酒好きなのである。

「転移者って言葉を使うのは禁止されてるから、加護を授かっている人、つまり加護の人ってわけ。神様から加護を授かるのは別に転移者だけの特典じゃないから、そう呼ぶことで目くらましにしてるわけね。まあ、人間の間じゃ公然の隠語みたいなもので意味ないけど」

『……それをパーティ名に使うことは可能でしょうか?』

「それは、まあ、転移者と違って禁止用語ではないけれど……本気?」

 それは例えるなら冒険者に『英雄』という呼び名を着けるようなものだ。別に事実として間違ってはいないが、他の大多数も示す言葉になってしまう。

 しかしカゴメの気持ちは変わらなかった。

「カゴ、には三つの意味が籠っているんです。私の名前の『カゴ』、授けられる者としての『加護』、そして、檻にも似た意味での『籠』。冒険者のパーティ名にマイナスイメージを持つ檻や拘束という言葉は使いづらかったので……籠なら他の意味にも取れます」

 そう考えると、それしかないとカゴメは感じていた。


 こうして、冒険者パーティ・カゴノヒトは生まれたのである。

 

 



 そして、もうひとつ。

 カゴノヒトが相応しいとカゴメが思った理由があった。

 まだ彼女がこの世界で会った誰にも告げていないその秘密。

 神様から授かった彼女の加護には、彼女に対して大きな制約が課せられていたのだ。


 彼女が身に纏う拘束具は『より拘束度合いを増す方向にしか変更できない』という、厳しい誓約が存在しているのである。


 身体の自由を失いつつある彼女だが、まだ自由にどこでも行ける。

 けれどもいずれは――身体も意識も拘束され、籠の中の鳥のように、完全に自由を失うことが定められていた。

 そんな未来を彼女は見据えて動いていたのだ。



第4話につづく



Comments

コメントありがとうございます^^ そうですね。少なくともまだ鼻と耳が自由なのでそれと、全身を箱詰めなどして身じろぎひとつできなくようにしたり。加えて性的な責め具に関してはまだ追加する余地がありますなーwーウム あと呼吸とか。排泄に関しても言及してないのでその辺と……結構ありますね!0w0クワッ!(鬼畜の発想

夜空さくら

これ以上何を追加できるの?

はやて

コメントありがとうございます。 現実世界の問題は難しくそして軽々には口にし難いものですが、少なくとも私の書く創作世界においては本人の意思で選び歩んでいます。 表現に気を付けて今後の話を書いていきたいと思います。

夜空さくら

喜んで腕や脚を切り落とされ、自発的かつ永久的に性奴隷として生きている現実世界の女の子たちの状況を思い出させてくれます。

c933103

これは彼女自身の究極の追求のことをわかるですけど、私はこの話に少し泣きました

c933103


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