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夜空さくら
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カゴノヒト 第5話 「拘束愛好者カゴメの同類」

■ あらすじ:拘束プレイ愛好者の十和野カゴメは、ある日自縛プレイのミスにより死んでしまう。その寸前、異世界の神によって加護を経て異世界転移を果たした。異世界で冒険しながらも、貰った加護で拘束プレイの追及に余念がないカゴメ。その周りには徐々にその意思に賛同する仲間が集まって行って――ありがちというにはあまりに異質な異世界冒険奇譚。


■ 本編は全体公開で連載していく予定ですが、それ以外で書きたくなった「おまけ」シーンは支援者様向けに公開予定です。そちらも合わせてお楽しみいただければ幸いです。

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 ある日、カゴノヒトの拠点に、一人の娼婦がやって来た。

 拠点持ちのパーティでも依頼はギルドを通して行われるため、入団希望でもなければ街の者が直接拠点にやってくることは少ない。

 個人的な繋がりがある人物であれば定期的に拠点に訪れることもあるが、カゴノヒトはまだできてからそれほど時間が経っておらず、その娼婦と特別な繋がりがあるわけでもなかったため、本来は訪れることのない相手だ。

 ひとまずは拠点内に招き入れ、カゴメが応対して話を聞くこととなった。

 娼婦は突然訪れた非礼を詫びつつ、遠慮がちに話をし始める。

「――うちとしても別に文句を言いたいわけじゃないの。……でも、たまにうちのお客さんに言われるのよぉ。あそこのギルドみたいな衣装はないのかって」

 娼婦の視線はカゴメやナギの着ているラバースーツを示していた。

 この世界にもゴムは存在するが、ラバースーツに加工するほどの技術はまだない。ゆえにカゴノヒトにしかラバースーツはまだ存在していなかった。

 それがないのかと問われても、娼婦たちとしては困るだろう。

『それは……なんというか、すみません』

 気怠げに告げられた文句――というには攻撃的な響きはなく、愚痴というべきだろうが――に、カゴメは思わず謝っていた。

 なお用心棒として念のため脇に控えていたナギは「やっぱりこの服はそういった職業の者が身に着けるようなものだと見られるのだな」と、半ばわかってはいた事実を改めて突きつけられ、羞恥を感じたのか頬が少し赤くなっていた。

 表面上は平静を保っていたが、人の顔色を読み取るのに長けた、経験豊富な娼婦には見通されているようで、彼女はナギに対して少し申し訳なさそうにしつつ、話を続ける。

「リーダーさんは悪くないわぁ。冒険者の装備について詮索するのはよくないってわかってるから、秘密を教えて欲しいとかそういうつもりは一切ないのよぉ」

 カゴメの謝罪に対し、取り成す娼婦。

 彼女はカゴノヒトが所属する街の一角の風俗街で、いわゆる顔役として働いている娼婦の一人だという。

 妖艶な雰囲気を身に纏っている彼女は、胸を強調して背中も大きく開いた、性的な魅力を醸し出す服装をしている。

 体つき自体も出るべきところが出て、締まるべきところが引き締まった体つきである分、男女問わず思わず目が惹きつけられてしまう。

 カゴメはその性癖上、人前で性的な話をすることにも性的な格好をすることにもなんら躊躇いを持たない。ゆえにその顔役の娼婦と真正面から対峙していたが、普通の感性を持つ人間であるならば、その人物の性的魅力に思わず心を乱されていたことだろう。

 むしろカゴメの場合、彼女の方がよっぽどおかしな格好――車椅子に拘束され、目隠しと円筒形の穴が空いた異様な口枷を施されている――をしているため、経験豊富な娼婦の方が心乱されているくらいだった。

 彼女にとって「困った風な笑顔」は客を意のままに転がすための一つの武器でしかないのだが、カゴメを前にした彼女は本心からその表情を浮かべていた。

「秘密を探ろうとかそういうつもりはないんだけどぉ……傍からみても、その……どうみても、その装備には性的な意図があるわよねぇ?」

 言葉を選びながら発された言葉。

『そうですね。特に、この口枷などは本来は男性器への奉仕を強制するための拘束具ですから』

 カゴメもその意図があることは素直に認める。

 そもそも隠しようのないことであったが。

『ただ、私はその目的で使用してはいません。喉奥まで拘束するという目的です』

「……どうして、わざわざそんなことを?」

『厳しい制約を課せば課すほど、より強い加護が得られるためです』

 表向きは、実際そうなのである。

 より強大な加護を、力を得るために、カゴメは自由を投げ打って加護を得ている。

 いわば儀式における生贄のような、自己犠牲の精神を発揮していた。

 命あっての物種、とはこの世界でも――あるいは魔物などの脅威が身近なこの世界だからこそ――よく言われることだ。

 身体の自由を代価に魔物などを一蹴できる強力な加護が手に入るのなら安い代償であり、それを一部の人間が支払うことで他の人間たちが救われるのなら、支払った者に他の者たちが感謝するのは当然である。

 これまでにも数こそ少なかったが、異質な見た目で強力な効果を持つ装備を着た冒険者、というのは皆無というわけではなかった。カゴノヒトのように全てのメンバーが共通して同じような装備を持つということはなくとも。

 だからこそ、見た目はとても異質なカゴノヒトメンバーの姿も、自然と街に受け入れられているのだ。

 自分たちの自由を犠牲に、魔物に立ち向う力を得た、聖女のような心根の女性たち。

 公的には、カゴノヒトとそのメンバーはそういう立ち位置になっている。

 の、だが。

『ですが、実の所――こういった拘束をされるのを楽しんでいるから、ですよ』

 カゴメは娼婦に向かって、あっさりと裏の意味を明かしてしまった。

 すぐ近くに控えていて、口枷をしているカゴメがどうしても垂れ流してしまう涎を拭いてあげていたナギが驚愕する。

「カゴメ殿!?」

 彼女の反応で、カゴメは誤解が生まれていることに気づき、補足した。

『ああ、すみません。純粋に拘束を楽しんでいるのは、今のところ私だけです。それに表向きの理由も決して間違ってはいません』

 カゴメにとってはあくまで拘束を楽しむことが目的の九割であり、それによって得られる加護の恩寵はおまけだ。

 この世界で生活していくために有用だから利用しているが、それ自体はあくまで副産物なのである。

 そのことをおおよそ把握した娼婦は、なんとも言えない顔になる。

「そ、そうなの……まあ、人の趣味はそれぞれだものねぇ。人には言わないから、安心してちょうだい」

 後半の言葉はナギに向けて発されたものであった。

 ナギはなんとも言い難い顔で頷き、非難する目をカゴメに向ける。

 拘束されることを性的に楽しんでいる、というのは性的行為に比較的寛容なこの世界においても、あまり外聞がよろしくない話だ。

 無論、街にもたらされる利益に違いが出るわけではないから、弁えている者は内心何を思っていても、何も言わないだろう。

 だが、今後ずっとこの街で活動していくことを考えれば広めるよりは黙っている方がいい真実であり、少なくとも今日初めて会った相手に軽々に明かしていいことではなかった。

 ナギに非難の視線を向けられていることを感じたのか、カゴメは彼女に大して小さな声で謝る。

 その上で、本心を吐露した。

『今のメンバーは必要だからこの装備を身につけてくれていますし、徐々に馴染んでいってくれているのは、嬉しいのですけど……私としては、自らこういう装備を身につけたい、と言ってくれる、そういう意味での同志が欲しいところなんですよね』

 瀕死の状態から生き残るために装備を身につけたナギやマリエッタはもちろん、自分から装備を身につけたシャーティがそうしたのは、単純にその装備が有効だからだ。

 マリエッタは順応してくれているし、なんだかんだナギも慣れて来ている。シャーティに関しては利益がある限りは特に気にする様子もなく、楽しめるのであれば性的な誘いにも乗ってくれる。

 そんな仲間たちの存在を嬉しく思う反面、カゴメは自分と本当の意味での同類の仲間も欲しく思ってしまう。

 自ら「拘束されたい」と言ってくれるような――「こういう拘束はどうだろう」と提案してくれるような、仲間を。

 娼婦に裏の意味を明かしたのも、そういう方向の仕事をしている彼女であれば、そういった性癖の者に心当たりがあるのではないか、と考えたためだった。

 果たして、娼婦は少し考え込んだのちに口を開いた。

「……もしかしたら、貴女はあの子と気が合うかもしれないわねぇ」


 カゴメの目論見通り――彼女にはそういった人物に心当たりがあったのである。





 あくる日の午後。

 指定された娼館に赴いたカゴメとナギは、その館で働く娼婦や召使いの視線を一身に浴びていた。

 もっとも、注目を浴びもするだろう。拠点内ではないが、現在カゴメは車椅子に拘束された状態のまま、ナギに車椅子を押してもらってやって来ていた。

 全身を覆って怪しくテカるラバースーツといい、完全に目を覆って視界を遮断している目隠しといい、顔の下半分を覆っている謎の蓋付きの口枷といい――見るからに異様な雰囲気を醸し出している。

 一方、ナギの方は変わらずのラバースーツ姿であったが、今はその上から胸を覆う金属のブラを着け、貞操帯を履いていた。

 ぴっちりしたラバースーツのみだと、胸の突起や股間の隆起・割れ目までハッキリと見えてしまうため、拠点外に出るときはそれらの装備を身につけているのだ。

 それらの装備は、覆った部分の性感帯を鋭くしながらも自慰を制限する代わりに、ラバースーツよりも強力な防御の加護を生んでいる。

 ラバースーツのみではオーガレベルの一撃に吹き飛ばされてしまうが、それに加えて貞操ブラと貞操帯を身につけることで、真正面から受け止めても耐えられるほどの防御力を発揮している。

 魔法に対する抵抗力なども高まっているので、防御力としてはこの上ないものを発揮することができた。

 最も、防御力を発揮すればするほど性器の疼きも大変なことになるので、加護に頼りすぎると敵の目の前で行動不能になりかねないリスクもある。

 それを身につけてきたのは、見た目を少しでもマシにするため――なのだが、代わりに継続的な発情は止まらず、ナギは無言で体の疼きに耐えていた。

 そんな二人を出迎えに、顔役の娼婦・ワレリアが現れる。先日カゴノヒトの拠点に来た時にはかけていなかったメガネをかけていた。

「カゴメさん、ナギさん。よく来てくれたわぁ。とりあえず、ここじゃ落ち着かないでしょうから、奥に入ってちょうだい」

 ワレリアの勧めに従い、ナギはカゴメの車椅子を押して娼館の奥へと移動する。

 応接室らしい部屋に通されたところで、ナギがカゴメの口枷の蓋を取り外す。

『んぅ……ふぅ。こんばんは、ワレリアさん。ご依頼のラバースーツをお届けに参りました』

 カゴメの言葉に従い、ナギが背嚢からラバースーツを取り出す。

『こちらのラバースーツには一度着ると数時間脱げないという軽めの制約をつけておきました。娼婦の方が使うということを踏まえ、着用している間、精子が着床しない……いわゆる避妊の加護がついています』

「まあ、それはとてもありがたいわねぇ。避妊魔法はあるけれど、百パーセントじゃないし、いちいち使ってたら魔法使用料が馬鹿にならないしねぇ。その点加護なら安心だし、これさえ着ておけば大丈夫っていうのはとてもありがたいわぁ」

 なお、普通の娼婦は物理的な、コンドームのようなものを使って避妊する。

 避妊魔法はそういったものを使って貰えなかった時や使用中に破れてしまった時など、緊急時のための奥の手、という認識だった。

『ただ、加護は一定期間が経ったら付与し直さないといけません。今回はお試しと初回サービスということで無償でお渡ししますが、継続してご依頼になるのであれば、相応の代価をいただくことになります。それと、本当に加護が存在するかどうかと、加護が切れた時の確認方法ですが――』

 立て板に水の如く説明を続けるカゴメ。

 まるで商人のようなカゴメの説明口調に、ワレリアは思わず苦笑してしまった。

「しっかりしてるわねぇ。安心してちょうだい。こっちも商売だからねぇ。使わせてもらって、利益が見込めれば次からは相応の代価を支払わせてもらうわ。加護の有無についても心配ご無用よ。こういう商売だからね。魔法の鑑定具は常備してあるのよぉ」

 そう言ってワレリアは眼鏡をくいと持ち上げる。それが非常に貴重な魔道具であることは、カゴメにもわかっていた。

『ワレリアさんは魔力を扱えるんですね』

「顔役を務めるにはこれを使えないといけないから、マジックアイテムに魔力を注ぐ方法だけは必死に覚えたのよぉ。魔法は唱えられないし、魔力を使って体を強化する、なんて芸当もできないわぁ」

 そんなことが出来たら、それこそ冒険者になっているという話だった。

「さて……こっちの要求には間違いなく応えてもらったことだし、約束通り、あの子に会わせてあげるわ。ついてきて」

 そう。

 軽いものとはいえ、加護付きのラバースーツを娼館に提供したのは、それが条件であるためだった。

 彼女の娼館で働いている娼婦の一人が、カゴメ同様拘束プレイを好み、その追求に余念がない人物なのだった。

 加護付きのラバースーツは、その娼婦を紹介してもらう見返りにカゴメが用意したものであった。

「……それにしても、さっきの説明はずいぶん手慣れた感じがしたけど、カゴメさんは元は商人だったの?」

『本職は違いますが、アルバイト……いえ、そういう仕事をした経験もあるだけです』

 さらりと応えるカゴメ。昔取った杵柄、というものであった。

 そんなカゴメは、この世界に来て初めて会う自分の同胞に心を躍らせていた。

 本来なら彼女の同胞というのは同じ転移者となるはずなのだが、彼女はそちらに関しては全く興味がなかった。それもまた彼女らしいと言えるかもしれない。

 ともあれ、ワレリアの案内で、カゴメは娼館の一室に通された。

「本来なら、ここはお得意様にしか案内できないプレイルームなのだけど……カゴメさんは特別ね。……まあ、実はあの子の要望でもあるのだけど」

 類は友を呼ぶ。

 カゴメが会いたいと思ったように、相手もカゴメに会ってみたいと思っていたのだ。

 ワレリアの手で、扉が開かれる。


 その部屋の中央に、小さな箱が存在していた。


 部屋自体は極普通の娼館によくある、シンプルなベッドが置かれている寝室といった様子で、過度に豪奢なわけでもなく、むしろ必要以上にシンプルにまとめられているようにも思える。

 そんな部屋の中で、中央に置かれた箱が異彩を放っていた。

 どこか歪な立方体。眩しいくらいに白さが際立つが、確かに肌色だった。

 大きさは人の首と同じくらいのサイズで、細い円柱のスタンドのようなものの上に――否、正確にはその円筒形の先端に突き刺さっているような状態だった。

 底面に当たる部分に穴が空いているのか、円筒の先端が箱の中に入り込んでいる。

 部屋には人影らしい人影はなく、窓もカーテンで閉じられていて外の光は入ってこない。灯された朧げな明かりが部屋を薄く照らしており、中央の箱を怪しげに浮かび上がらせている。

 ワレリアに部屋に入るように促され、ナギがカゴメの車椅子を押して中に入る。

「……?」

 ナギはキョロキョロと周囲を見渡した。剣士として鍛えている彼女は向けられる視線に敏感だ。カゴメが目隠し越しに視認してくる視線ですら察知することができる。

 しかしそんな彼女をして、特に視線は感じられず、人の気配も感じなかった。

 人に会わせると言って案内しておきながらどこにもその人の姿が見えない。後からこの部屋に来るのかと思ったがそういう様子でもない。

 どういうことかとナギが不思議に思っていると、カゴメが中央の箱をみながら呟いた。

『なるほど……そういうことですか』

「ちょっと待っててね」

 ワレリアがそう断って部屋の棚から何かを手に取り、中央の箱へと近づいた。

 肌色の箱は正確な四角ではなく、微妙に歪な形をしている。

 その箱を左右からワレリアが挟むようにして持つと、想像以上に柔らかいのか、ワレリアの手のひらが若干箱の表面にめり込む。撫で摩るようにワレリアが手を動かすと、箱全体がピクっ、と反応した。

 その様子を見て、ナギは目を見開く。

「カゴメ殿……もしやあれは……」

『しー、ですよナギさん。少し静かに待ちましょう』

 そんなやりとりをする二人の前で、箱を弄り続けるワレリア。

 箱はさらに細かく痙攣し、反応を示したかと思うと、不意にその正面に当たる部分に亀裂が入った。

 面の中心に5センチほどの長さの切れ目が出現し、貝の如くパカりと開く。その生々しい割れ目は、カゴメやナギといった女性であるならば、必ず見覚えのあるものだった。

 なにせそれは、自分たちの股間にあるものと全く同じものだったからだ。

 出現した割れ目を、ワレリアが指でなぞると、箱はさらに痙攣し、その割れ目からとろりとした透明の液体を滲ませ始める。

 そこをなぞっていたワレリアの指に液体が付着し、離すと透明な糸が引いた。

「あらあら……まだ本格的には触ってないのだけどね。本当にいやらしい子」

 呆れたような言葉とは裏腹に、慈愛に満ちた声で箱を煽るワレリア。その声を理解しているのか、箱から滲み出る液体の量が増した。

 さらに、その割れ目の上部にある一部分が、むくむくと大きくなり存在を主張する。

 その小さな突起をワレリアが指で擦り上げると、割れ目から勢いよく液体が噴射された。

 それを予想していたのか、ワレリアは体をかわしていたため、液体がかからずに済んだ。

「全く、もう……仕方のない子ねぇ」

 そう呟くワレリアは、棚から取り出していたものの、その先端を割れ目へと向ける。

 彼女が手にしていたそれは、どこからどう見ても男性機を模した張り子だった。

 ただ、太さは通常のそれより、かなり太い。割れ目の大きさに対して、ほぼ同じくらいの太さがある。

 もし仮に、ナギが同じものを入れろと言われたら、涙目になりそうなくらいには、挿入するのに無茶がありそうなサイズ感だった。

 そんな張り子を、ワレリアは容赦なく箱に生じた割れ目に挿し込んでいく。

――ぐちゅ、ぐちゅっ、ぐちっ……ぷしッ!

 生々しい音を立てて張り子が押し込まれていったかと思うと、激しい音を発しながら大量の透明な液体が割れ目から噴き出した。

 溢れたその液体はだらだらと垂れ落ちて箱の下部へと伝い、箱を中空に支えている棒を伝って床まで広がっていく。

 カゴメとナギが固唾を飲んで見つめる中、ワレリアは挿し込んだ張り子をぐりっ、と勢いよく半回転させた。まるで鍵を回すかのように。


 それと連動して、箱の側面から人間の腕と足が生えた。


「ひぇっ――」

 ナギが思わず悲鳴のような声をあげたが、彼女を責めることは誰にも出来ない。

 瑞々しい輝きを持つ手足が急に箱から生えれば、誰だって同じような反応になるだろう。

 なお、カゴメの方は目隠しの加護で、ある程度目の前で起きていることを認識していたが、自前の眼で直接見るよりはかなり簡略化された映像であるため、ナギほど驚きはしなかった。

 そもそもカゴメの視界では、箱が人間の形を変えたものであることは自明のことだったということもあるが。

 箱の側面から生えた――正確には箱が変化して形作られた手足は、さらにその形を人間らしいものに変えて行く。

 ぬるぬるとした液体に塗れ、白い肌が怪しげな輝きを増していた。例えるならばローションに塗れているかのようだ。

 箱自体が粘土のように形を変え、人の形を作っていっていた。

 腕が生え、足が生え、頭が生まれ、腰や胴体の形が出来、胸の膨らみが生まれる。

 瞬く間に箱は人型になっていた。

「……ん、ぁ、おぉ……うぁ……んぅっ♡」

 身体の形が整っていくのと同時に、その人型が呻き声を発し始める。

 どこか官能的な響きを持った、そんな甘い声だ。

 肉の中に埋もれていたのか、頭部から金色の髪の毛が広がり、セミロングくらいの長さで広がった。

 箱の下部に突き刺さっていた円柱の先端は彼女のアナルに刺さっているようで、彼女の身体を空中に少し持ち上げていた。爪先を伸ばしてようやく足が床に着くレベルだ。

 最後にワレリアがその彼女のあそこ――秘部に挿していた張り子を抜き取ると、箱だった彼女の身体がびくん、と大きく跳ね、閉じていた瞼が開かれる。

 瞼を開いてすぐは意識が茫洋としていたのか、瞳の視点が定まっていなかったが、ほどなくしてその焦点が定まる。

「――んぁ。おはよう、ワレリア。……それと、ようこそ。お客さんたち」

 円筒のスタンドに身体を貫かれたまま、というある種異様な状態で、彼女は平然とカゴメやナギに向かって挨拶をする。

「ボクはヤロスラワー。ラワちゃんでいいよ♡」

 気さくにそういう彼女に、カゴメはにこやかに言葉を返す。

「ではお言葉に甘えまして――初めまして、ラワちゃん。私はカゴノヒトのリーダー、トワノカゴメです。カゴメとお呼びください。こちらは用心棒のナギさんです」

「……」

 ぺこり、と頭を下げるに留めたナギ。

 そんな二人を見て、ヤロスラワーは楽しそうに顔を綻ばせた。

「カゴメちゃんにナギちゃんね。うん。よろしくね」

「……とりあえず、スタンドから降りたらどう?」

 ワレリアにそう促され、ヤロスラワーは自分がまだアナルをスタンドに貫かれている状態であることを思い出したのか、少し慌てる。

「うわっ、ほんとだ。もっと早く言ってよぅ、ワレリア。恥ずかしいじゃんか」

 そのことに気付かない程度に慣れ親しんだ状態だと暗に示していた。

 それはいつものことなのか、ワレリアは呆れ顔だ。

 ヤロスラワーは身体を逸らし――逸らし過ぎて後ろに倒れていくかのように見えたが、スタンドは床と一体化しているようで、びくともしなかった。

 背中とお尻がくっつくほどに身体を逸らしたヤロスラワー。まるで身体が折れてしまったかのようだが、本人は何でもないことのように、身体を逸らした体勢のまま、スタンドの棒を両手で掴んだ。

 そして、ゆっくりと身体を持ち上げ、アナルに突き刺さっているスタンドをゆっくりと引き抜いていく。

 その姿勢といい、抜き方といい、スタンドの先端が徐々に抜けていく様をカゴメとナギに見せつけているかのようだった。

 実際、二人の位置からはヤロスラワ―の肛門に突き刺さっていたスタンドの先端部が徐々に抜けていく様子がよく見えた。

 スタンドの先端部分はただの円柱ではなく、歪な形をしていた。形状としては傘のようなもので、一度挿し込むと返しがあるために中々引き抜けないであろうことがわかる。少なくとも自力で力むだけでは抜けないだろう。

 そんな凶悪な形状をしているものをお尻の中に入れていて、さらにそれを曲芸師もびっくりな体勢で引き抜いていっているのだから、驚愕の一言である。

 傘状になっていた部分から先も相当長く、直腸は間違いなく満たしていただろう。下手をすればS字結腸を超えてさらに奥まで挿し込まれていたのではないかというくらいの長さのものが、彼女の身体から引き抜かれた。腸液なのかなんなのか、張り子は全体的にどろどろになっており、怪しげなテカリを生んでいる。

 ずぼっ、と音を立てて最後の膨らみが排出されると、彼女のアナルはポッカリと大きな穴になってしまっていた。

 開きっぱなしになっていた肛門はすぐにきゅっと引き締められ、ヤロスラワーはくるりと身体を回転させ、足から床に着地する。

 床に普通に立つと、彼女は非常に均整の取れた体つきをしていた。

 ワレリアほど女性らしい体つきではなかったが、緩やかな曲線を描く胸部といい、しなやかで相応の柔らかさを感じさせる手足といい、一種の理想的なモデル体形に近い。

 背も高く、比較的高身長のナギよりもさらに高かった。

 ヤロスラワーは全裸を惜しげもなく晒していたが、部屋の片隅に向けて指を振ると、そこに仕舞われていたナイトガウンのような服が彼女の元に飛び、その肩に自動的にかけられた。一応裸を隠そうという意思はあるようだ。

「ふふっ、カゴメちゃん。会いに来てくれて嬉しいよ。君の話を噂で聞いてから、会ってみたかったんだよね」

『それは、光栄ですね。私もお会いしたく思っていました』

 ヤロスラワ―とカゴメ。二人の視線が――カゴメは目隠しをしていたが――交錯する。

 そして、二人は同時に思った。

 奇しくも同じことを、全く同時に。


 この人は同類だけど同志ではないな、と。



第6話につづく


Comments

近付いてよく見たら、あるいは慣れてきたら、なんとなくはわかる感じですね。 でもどんなに頑張っても細かい模様(特に文字とか)は見えないでしょうし、見える色も宿る魔力によって異なるので、「赤いリンゴ」を見ても「リンゴ状の青いオーラを纏ったもの」としか見えないかもしれません。

夜空さくら

人の顔や表情などが見えないの?

c933103

そういえば正確に書いたことありませんでしたねーw-;モウシワケナイ 例えるとサーモグラフィーの映像みたいな感じです。大まかな輪郭とかはわかる感じで。 その映像の中に補足として情報が表示されるので、目の前の「四角いもの」が「箱」ではなく「人間」であることがカゴメにはわかっていたのです。

夜空さくら

そういえば、カゴメの目隠しはどういう設定ですか?かなり簡略化された映像って

c933103

魔法がある世界なら、そういう性癖の人がいてもある意味当然かなと思います^w^

夜空さくら

さすが魔力と魔法の世界

c933103


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