SamSuka
夜空さくら
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少し未来のヒトイヌ公園 プロローグ

■ タイトル通り、少し未来の時間軸のヒトイヌ公園のお話です。割と現代編からしてそうなんですが、謎の超技術で行われるヒトイヌプレイをお楽しみください^w^

■ 以前に書いた「ヒトイヌ公園」と設定的に繋がっていますが、これ単体で読んでも正直問題ありません。『ヒトイヌプレイが単独でも行える有料公園』でのお話しだということさえ理解していただければ十分です。


■ 『プロローグ』は全体公開、この後は支援者様限定公開となります。ご了承ください。

■ この作品には疑似四肢切断・疑似獣姦描写などが含まれます。苦手な人は回避をお願いします。

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 ヒトイヌ公園というヒトイヌプレイを合法的に体験できる遊戯施設が出来てから、早いもので何十年もの年月が過ぎようとしていた。

 設立当初はニッチ過ぎる性癖専門の施設なんて長続きするのか、などと言われながらも、なんだかんだヒトイヌ公園を愛好する客が途絶えることはなく、様々な技術の進歩などに後押しされたこともあって、すっかりその筋の者には定着した施設となっていた。

 そんなヒトイヌ公園には、今日もヒトイヌ入園希望のとある女性を受け入れていた。



 その女性はヒトイヌ公園の受付に来るや否や、勝手知ったる様子で受付嬢に会員証を掲示し、今日分の入園費を支払う。

 きらきらとした目は期待に満ち溢れており、一刻も早くヒトイヌになりたい、という想いを全く隠していなかった。

「手早く手続きをお願いいたしますわ!」

 歳は二十歳前後であろうか。すらりと足の長いモデル体型で、自信満々な態度も相成って存在感たっぷりな女性だった。

 胸は過度に大きくはなく、形のよい美乳というところであろうか。

 長い髪を編み込んでまとめており、相当お洒落に気を遣っているのがわかる。それはまるでデートに挑もうとしているかのように見えた。

 背の高い彼女を思わず見上げるようにしてしまいながらも、受付嬢の女性は念のため確認を取る。

「ええと、ヒトイヌ公園へお越しくださりありがとうございます。山外撫子様。本日もいつも通り、『四肢交換型』のヒトイヌ入園で……『遊導犬』の同行を希望する、ということでよろしいでしょうか?」

「よろしいですわ! すぐにでもジョン様にお呼びになってくださいませ!」

 わくわくそわそわ、と身体全身で表現する撫子。

 そのあまりに待ちきれないという様子に、受付嬢は半ば呆れながらも、手早く手続きを済ませてあげた。

「はい、確かに。それではすぐにジョン号を呼びますね」

 そういって受付嬢は受付の中にかけられていた犬笛のようなものを手に取り、それを吹き鳴らす。人間には聞こえない周波数の音が建物中に響き渡り、そしてほどなくして建物の奥から一頭の犬が現れる。

 現れたその犬は、セントバーナードのように大きな身体をしていたが、その姿は日本でよく見かける柴犬に見えた。中型犬であるはずの柴犬のサイズではなかったが、それはある意味当然であった。

 そのデカすぎる柴犬を見た撫子は、目を一層輝かせて、その場に膝を突き、自ら犬の目線に高さを合わせる。

「ジョン様!」

 撫子の呼びかけに、大きな柴犬――ジョン号が反応する。

『ウォン!』

 妙な金属音が混じった鳴き声で吠えたジョン号が、撫子に駆け寄った。

 そしてその大きな身体をぶつけるようにして、撫子を仰向けにひっくり返してのしかかる。マウントを取られる形になった撫子だが、むしろ嬉しそうに身体を開き、身体を擦り付けてくるジョン号に抱き着くのだった。

「ああ、ジョン様! こんなに激しく求めてくださって……撫子は嬉しく思いますわ!」

『ウォン! ウォンウォン!』

 機械的に同じような鳴き声を響かせるジョン号だったが、その唸りにはどこか嬉しそうな音が混じっているように感じられた。

「……あ、あの~。スミマセン山外様……そういうことは、公園の中に入ってからにしていただけると……」

 受付嬢が何とも言えない顔でそう促すと、撫子は名残惜しそうな顔をしながらも、身体を起こした。

「そうですわね……わたくしもまだヒトイヌになれていませんし……しばし我慢していただけますか? ジョン様」

『ウォン』

 特に外見上の変化はなかったものの、ジョン号は渋々、といった様子で撫子から離れた。

 撫子はすぐさま立ち上がると、受付嬢から更衣室の鍵を受け取る。

「では参りましょうジョン様。わたくしがヒトイヌになるところを、一番近くで見ていてくださいまし♡」

『ウォンウォン!』

 楽し気に言葉を交わし合いながら、撫子とジョン号は建物の奥へと向かう。

 それを見送った受付嬢は、やれやれ、と小さく溜息を吐いた。

「仲睦まじいというかなんというか……アンドロイドと人間の恋なんてもう珍しくもないけど、さすがにあれは特殊すぎるわよねぇ……」

 科学技術の進歩により、人とほとんど変わらない人工知能はいくらでも存在する世の中になった。機械が人に近付いていたのだ。

 機械が人と変わらぬ存在になれば、かつて多くの人が夢想した通り、人と機械の恋愛といったものは何も珍しいものではなくなっていた。

 ただ、その場合でもあくまで機械側は人間と同じものとして作られたものであることが多かった。人よりも外見が弄りやすい分、人よりも自分好みに整えた機械人形と恋愛しようとする者がいるくらいだ。

 ただ、そんな時代であっても、ヒトイヌ公園の愛好者である彼女――山外撫子は特殊な部類に数えられる。

 なぜなら彼女は、この公園でヒトイヌ希望者を案内するために造られた――犬型ロボットのジョン号に本気で恋をしていたからだ。



 ヒトイヌ公園への入園の仕方には、ヒトイヌ入園と見学者入園、そして飼い主入園という三つがある。

 単独で来た場合でもヒトイヌ入園は出来るが、その場合一人でも楽しめる施設に行ったり、あるいは人間として入園している者と偶然出会うなどしたりしなければならない。

 公園側もヒトイヌ入園をしてくれる客を特に大事にしたいため、出来る限りヒトイヌ参加者が楽しめるように様々な方策を打ちはするのだが、ヒトイヌ入園者一人に何十人もの人員を常に割くのはコスパが悪すぎる。そのことはかねてより問題視されていた。

 そこで昨今の科学技術の急速な発展に合わせ、ヒトイヌ参加者を専属で案内するヒトイヌ公園らしい存在――ロボット犬を導入することになった。

 ロボット犬は様々なセンサーを備え、ヒトイヌ入園者のバイタルを常に把握することが出来る。危険なことが起きればすぐに助けることが出来、なおかつヒトイヌとして振る舞う客の傍にいても世界観を壊さない。

 また、単独でヒトイヌ入園したいという者の中には、本物の人間相手では中々素直な本性を曝け出すことが出来ない、というような見栄っ張りな者も多かったため、ヒトイヌ公園のロボット犬、通称『游導犬』は評判のいいサービスであった。

 ただ、そのロボット犬相手にガチ恋してしまう客が出ることは、ニッチな性癖を扱っているヒトイヌ公園でも予想出来ないことだったのだ。

「でも昔から猫やら犬やらにガチ恋しちゃう人っていたみたいですし、あの人がジョン号に本気で惚れても不思議ではなかったのでは?」

 そう受付嬢に尋ねたのは、同じく公園の受付嬢を努めている女性だった。

 ただし彼女はまだ見習いで、基本的な業務をこなしながら常連客の特徴や好みを把握している最中である。

 山外撫子という特殊な客が来たため、その指導のために呼び出されたのであった。

 撫子を案内した受付嬢は、記録を付けながら見習いに話をする。

「それはまあ、そうなんだけどね。ジョン号って、基本的には業務のことしか出来ないタイプのロボットなのよ。わかる?」

「あー、つまりそういうための人工知能じゃないってことですか?」

「その言い方するとあれだけどね」

 人工知能にもグレードが存在する。

 人間よりも特定の分野に向いた機能を持つ『特化型』、人と変わらない思考回路を持たされた『人間型』、そして特定の範囲での判断能力を持たせた『機能限定版』などが存在するのだ。

 そして多くの場合、人間と恋愛関係に発展するタイプは、人間と同じようになるように造られた『人間型』の人工知能なのである。

「ジョン号に積まれている人工知能は、この公園内での案内が出来るだけの判断力があればいいってことで、そこまで複雑な感情の動きや突発的事象への対応に特化したものじゃないの」

「つまり機能的ではあっても、感情的な部分においては本来の犬とか猫よりも劣っているってことですか」

「感情に流されないってことでもあるから、劣っているかどうかはともかく、普通は恋愛関係に発展するようなものじゃないわね」

「でもおかしいですよ。さっきのジョン号とお客さんの様子を見る限り、いかにもそれっぽい感じに見えましたけれど……」

「そこが不思議なところでね。普通ジョン号はあんな風にお客さんに飛びついたりしないのよ。実際、他のお客さん相手だとああいう行動はしないでしょ?」

「……言われてみれば」

 見習いの彼女が見た限りでは、ジョン号が撫子にしたような行動を取ったことはなかった。

 少なくともジョン号は撫子を特別な相手として認識しているということだった。

「でもそれっていいんですか? ジョン号はあくまでヒトイヌ公園の備品なわけですし……特定の相手と特別な間柄であることを許容するのは不味いのでは?」

 その見習いの言葉に、受付嬢は肩を竦める。

「それが、山外様も山外様で、どういうわけだかジョン号を見分けることが出来るのよ。うちには案内役のロボット犬が全部で五台いるでしょ?」

「犬種は違いますけど、中身は全部一緒ですよね?」

「そうなの。中身の人工知能は一応全部同じってことになっているわ。だけど、以前山外様が来た時、普段ジョン号のボディに搭載されている人工知能が、定期メンテナンスのために不在だったことがあったの。でもジョン号のボディはあったから、別のロボット犬の人工知能を載せて、案内に当たらせたことがあったんだけど……」

「見抜かれちゃったんですか?」

「そうなのよ。行動にそうおかしなところはなかったと思うんだけど、『これはジョン様じゃないっ!』って、それはもう凄い剣幕で怒ってね。『游導犬』はジョン号でお願いするって要望を出されていたのに、それを誤魔化したみたいな形になってしまって」

 その時は返金と次回の入園を無料にするというお詫びで事なきを得たが、危うく公園の信頼に大きなヒビが入るところだったのだ。

「ああ、だからあの人要注意顧客のリストに入ってるんですね」

「ええ。『客の要望を誤魔化して対応しようとした』なんて噂が広がったら公園の信用に関わるからね」

 ヒトイヌ公園は特殊性癖を扱う施設である。

 長い間営業してきた実績と多数の常連客を抱えている分、その基盤は盤石ではあるが、そういう施設であるからこそ、信頼というのは非常に重要なものだ。

 他の何を犠牲にしても、それが損なわれることがあってはならない、というのが経営陣の方針であった。

「彼女に対しては『もう二度と失礼があってはならない』という意味で要注意顧客になってるの。貴女があの人を対応することは暫くないと思うけれど、もし対応しなければならない時が来たら、ジョン号に関してのことは全て正直に伝えるように。メンテとかで本来のジョン号を動かせない時にはそう伝えて構わないから」

 騒動があった時も、ジョン号のメンテのことを最初から正直に伝えていれば、撫子が怒ることはなかった。残念には思っただろうが、普通に日を改めて出直して来ていたはずなのだ。無論普通は外観だけが問題になるのだから、その時の公園の対応が完全に間違っていたというわけでもない。

 ふたりの結びつきを甘く見たことに、問題はあったのだ。

「それにしても……どうやって同じ水準の同系統の人工知能が違う、なんて見抜いたんでしょうね?」

 機能的にも能力的にも、人工知能が入れ替わったくらいで、普通はわかるはずもない。

 だからこそ、ロボット犬のボディのメンテナンスと、それに搭載する人工知能のメンテナンスは別々に行われているのだから。

 見習いの受付嬢の凄く当然な質問に、受付嬢は半ば以上理解を諦めた顔で両手を広げた。

「さあ……それは私にはわからないわ。あるいはそれこそが、愛の力――なのかもしれないわね」

 若干投げやり気味に、受付嬢はそう話を締めくくったのであった。

 受付嬢たちにそんな話をされていることなど全く知らない――知ったとしても気にはしないだろうが――山外撫子は、その頃。


 更衣室で、四肢を取り外されていた。



つづく



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