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夜空さくら
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女の子にされる話 前編

■ 息抜きに前後編で女の娘ものを書きました。

■ 女装に関して間違っているところも多々あるかとは思いますが、軽く読み流してやってくださいーw-ペコリ

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「キミも女の子になってみないか?」


 そんなことを美しい少女から提案されたとして、貴方ならどう答えるだろうか。

 ポーカーフェイスで有名なその彼女の言葉に、僕は本気でどう答えたらいいものか悩んだ。

「ええと……まず、僕とあなたは初対面ですよね」

「うん、そうだな」

 そう言いながら、彼女は僕の前の席に腰を下ろす。

 ふわりと漂って来た何とも麗しい香りに、ドキリとさせられてしまう。

 一瞬ここが学食だということを忘れてしまいそうになった。

 彼女の着ているフリルのついた服はいわゆるゴスロリ、というもので、あまりにも学食の気配にそぐわない。

「だが、キミを見てピンと来たんだ。キミには素質があると」

「…………宗教勧誘とか、怪しいサークルの勧誘は御断りですよ?」

 そういう厄介なものがあるということは、大学での友達がほとんどいない僕でも知っている。

 警戒を露わにすると、その人は涼しい顔で――というかあまり表情が変わらない――応じた。

「そういうものではないさ。ボクはあくまでキミも女の子になってみないか、と誘っているだけなのだから」

 ボクッ子だったのか。

 いや、それはともかく。

「十二分に怪しいんですけど……ん?」

 思わず流してしまっていたが、彼女の言葉に違和感を覚えた。

 まじまじと彼女の顔を見ていると、彼女も僕の考えに気付いたのか、事も無げにいう。

「ああ、ボクは男だよ? だから言っているじゃないか。キミ『も』女の子になってみないか、と」

「…………ええ……?」

 とんでもないカミングアウトだ。どこからだって、どこからどうみても、彼女は女の子にしか見えない。

 膨らんている胸や括れた腰は、詰め物とかコルセットでまあなんとか誤魔化せるとして、問題はその顔立ちだ。

 どこからどうみても女の子である。表情は乏しいけれど。

(まてよ……? 表情が、乏しい?)

 ある可能性が頭をよぎった僕の思考を読んだように、彼女が立ちあがる。

「興味があるならついて来るといい。特別に――ボクが男に戻るところを見せてあげよう」

 そう言いながら、彼女は颯爽と歩き始める。

 ついて来るか来ないかで線引きをしているようだ。

 ここでついて行かなければ、恐らく二度と彼女は僕に話しかけてはこないだろう。

 そんな妙な確信があった。

(……ええい、ままよ!)

 好奇心、猫を殺す。

 そんな言葉が頭をよぎったが、どうせ暇をしていたのだ。

 それならいっそ、冒険に出てみるのも一興じゃないか。

 僕は大学生活に慣れて来て、暇を持て余していたこともあって、その怪しい彼女の後について歩きだした。

 ついて来た僕の気配を感じたのか、彼女は振り返って微かに笑う。声だけで。

「ふふっ、やっぱりついて来てくれたね」

「やっぱり、ってなんですか……」

「いや、こういう勧誘をしているとね、なんとなくついて来てくれるかどうかはすぐわかるようになるのさ」

 そう言いながら、彼女は立ち止まり、振り返った。

「そういえばまだ名乗っていなかったね。ボクは西園寺兼久だ。ひらちゃんと呼んでくれ」

 男を自称するだけあって、名前は完全に男っぽい。

 だがこれほど完璧に女性に見える彼女が、本当に男性なのだろうか。

 僕が何とも言えない違和感に顔を顰めていると、西園寺さんは僕をじっと見つめて来ていた。

 まっすぐ見つめられてドキリとしたが、こっちが名乗るのを待っていると気づいた。

(この流れで名乗りたくないな……)

 なんとなくそんな気持ちになってしまいつつ、僕は名乗る。

「えっと……大城なる、です」

 ごくごく普通の男子についているにしては、妙に女子っぽい名前。

 漢字で『成』とかもあるから殊更に女の子というわけではないけれど、最初に『なる』という名前を見たら、どちらかといえば女性をイメージする人の方が多いんじゃなかろうか。

 実際、僕の名乗りを受けた西園寺さんは――何とも形容しがたい唸り声を上げていた。

 西園寺さんが抱いた感情の全ては、ぽつりと零れた呟きに全て集約していた。

「……妬ましい」

(でしょうねー)

 好んで女性の姿をしている西園寺さんが、僕の名前を聞いてそう感じるのは自明の理であろう。

 とはいえそれを気にし続けるほど、西園寺さんも拘りはしなかった。

「うん、まあ名前なんて飾りだからね! それじゃあ行こうか、なるくん!」

 気持ちを切り替えるように呟いた西園寺さんは、僕を逃がさないようにか、手を取って歩き出す。

 手を掴まれて一瞬ドキリとしたのだけど、その掌の感触がなんとなく奇妙な感じがした。素手のはずなのに、まるでグローブか何か越しに触れられているような。

 その理由は、すぐに判明することになる。



 僕の目の前で、西園寺さんが脱皮していた。

 それは恐らく正確な言葉ではないのだろうけれど、少なくともその時の僕にはそうとしか言い表せない現象だった。

 西園寺さが頭の皮を脱ぐと、水泳の時に身に着けるような、丸い帽子で髪の毛を全て覆って隠していたことがわかる。

 頭髪も含めた頭全体の皮は、正に人間から剥ぎ取ったかのような精巧な作りをしていたけれど、こうして顔から外れてみると、ちゃんと作り物なんだということがわかる。

(先入観って恐ろしいなぁ……)

 そんなわけがないと思っていたからこそ、西園寺さんの顏が作り物だなんても全く思いもしなかった。

 西園寺さんが、被っていた頭の皮――俗にいうマスクだ――を脱いで、髪の毛を抑えていた帽子も脱ぐと、思ったよりも短い髪が露わになる。

 マスクの下から現われた西園寺さんの顔立ちは、正直想像していたより整っていた。

 軽くタオルで汗を拭うと、彼の顏がこちらを見る。

「……ふぅ。どうだい?」

「いや、なんというか……すごい、技術ですね……こんなマスクあるんだ……」

「フィメールマスクというんだよ。よくよく見れば違和感に気付けると思うが、キミがそうだったように、初対面の人間の顏をマジマジ見る者は中々いないからねぇ」

「……口とか瞼もちゃんと動いてましたよね?」

「その辺は化粧……というか、特殊メイクの技術を使って、境目をわかりにくくしてるのさ」

「っていうか……声まで変わってません?」

「ああ、それは単に僕が女声を出すのをやめたからだね。不自然じゃない程度になら誰でも意外と出せるもんだよ?」

 そう言いながら、西園寺さんは手を後ろに回し、うなじ辺りからゆっくりと手を引き下ろしていく。

 じじじ、と音がするところを見ると、どうやらそこにファスナーがあったようだ。

 頭だけでなく、体全体がボディストッキングのようなもので覆われていたらしく、彼の指先が柔らかく歪んで皴が入り、皮が脱げていく。

「……指先とか、どうなってるんですか、これ……本物の爪……?」

「それっぽいだけでさすがに本物じゃないよ。でも、ぱっと見じゃわからなかっただろう?」

「わかりませんよこんなの……」

 確かにまじまじと見つめてみれば、生身との違いはハッキリしている。細かな産毛もないし、皴の寄り方も不自然だ。

 だけど、肌が特別白くて綺麗なだけだと思っていた。

 触れられてようやく違和感を覚えたくらいだからとんでもない。

「……骨格とかは、どうやって誤魔化してたんですか?」

「やはり胸の詰め物と腰のコルセットがメインだね。それから肩や股関節に関してはちょっとしたコツがあるんだ」

 それをしていない今と、さっきまでの西園寺さんを見比べれば、確かにそれは明白だった。

「……てっきり凄いテクノロジーか何かで誤魔化してるのかと」

「ボクの場合は完全にテクニックだねぇ」

 快活に笑いながら、西園寺さんは更に皮を脱いでいく。

 女の子の皮を脱いだ彼は、平たい胸といい、筋肉質な身体付きといい、どこからどうみても男だった。

 貧弱な僕と比べると、むしろ西園寺さんの方が男らしいかもしれない。

 身長はブーツで高くしていたように見えたけれど、むしろ逆で、ブーツを履いているから背が高く見えるようにしていたらしい。

 そのブーツを脱いだ西園寺さんは、一般平均的な僕と同じくらいだった。

「身長だけはどうしようもないからねぇ。色々背が低く見えるような着こなしとか、そういうので誤魔化すしかないんだよね」

「はぁ……なるほど……」

 僕は西園寺さんの話を聞きながらも、視線をどこに向けたらいいのか悩んだ。

 なにせ現在西園寺さんは上半身裸の状態なのだ。

 いや、もちろんそれも作り物なのだということは十分わかっている。

 わかっているのだけど、あからさまに胸の膨らみが曝け出されているのを見ると、どうしても目が泳いでしまう。

 こっちの気持ちをわかっているのか、西園寺さんはとても楽しそうだ。

 両手でバストを庇って見せる。

「これはいわゆるシリコンスーツというものなのだが……そんなにマジマジ見られると恥ずかしいな」

「まっ、マジマジとは見てないでしょうがっ」

「あはは。ごめんごめん。冗談だよ」

 そう言いながら、西園寺さんはそのシリコンスーツも脱ぎ始める。

 わかっちゃいたけれど、その柔らかそうなバストごと体から離れ、垂れさがるのを見ると、改めて本当に全部作り物だったんだということが付き付けられる。

 本当の裸の上半身を晒した西園寺さんは、得意げに腰に手を当てて胸を反らして見せて来た。

「さて……どうだい? ここまで完璧に女の子になれるってことに、興味が出て来たんじゃないかい?」

「……いや、まあ、その……興味が皆無かっていうと、嘘になりますけど……」

 正直な心情を吐露する。

「ふむ。なら……こうしよう。試しに一度着てみてくれるのであれば、このままボクが下半身も裸になるところを見せてあげよう」

「は!? なっ、なんでそうなるんですか!?」

「だって、ここがどんな風になってるか、見てみたいだろ? でもさすがにボクも恥ずかしいからねぇ」

 キミが試しに女の子になってくれるというのなら、その代わりに見せてあげよう、と西園寺さんはニヤリと笑う。

 フィメールマスクを被っていた時には表情が乏しいと思っていたが、思っていた以上に表情豊かな人だ。

「ぐ……っ、うう……っ」

 確かに気になるところではある。

 そこまで完璧に女性に成り切れるのであれば、それはかなり凄いことだ。

 どんな風にしているのか興味がある。

 だけどその代わりに、女装しなければならないというのは――それもただ服を着るとかではないレベルで――かなりハードルが高い。

 悩む僕の気持ちを理解しているのか、西園寺さんは言葉を重ねてくる。

「この部室はボクとキミしかいないし、このことは他の誰にもいうことはない。秘密にしてあげよう。あくまで無理強いはしないけれど……どうする?」

 そう言いながら、西園寺さんが自分の体の前に垂れさがっている脱ぎ掛けのシリコンスーツを、スカートの裾ごと持ち上げる。

 露わになりそうになる秘境の気配に、僕は思わず息を呑んでいた。

「……っ、こ、今回限り……にしますからっ!」

 毒を食らわば皿まで。

 そんな気持ちで、僕はそう告げた。

 西園寺さんはなぜか嬉しそうに笑い――いきなりそのスカートのホックを外して、するりと脱ぎ落とした。

「それじゃあ見せてあげるよ……ボクの全てを、ね」

 上半身はすっかり男性に戻っているはずなのに、その時の西園寺さんの笑みはとても女性的な妖艶さを感じさせられた。

 スカートが脱ぎ落とされ、その股間が露わになる。

 西園寺さんの股間は、女子らしいショーツに覆われていた。

 てっきりその部分はそこにあるものでもっこりしているのかと思ってたけれど、想像以上に普通の女性みたいなフォルムだった。

「言っておくけれど、ボクのもののサイズは平均的だよ」

「……っ、そ、そんな風には思ってませんでしたけどっ。でも、じゃあ、どうやって……?」

「色んな方法があるけど、ボクの場合はシリコンスーツが股間部分まで覆ってるんだよ。男性器を収納し、女性器らしい膨らみになるようになってるのさ。やはり可愛いショーツを履くには、そういうフォルムにしないと厳しいからね」

 そう言いながら、西園寺さんはそのショーツまでずり降ろしてしまう。

 すると女性らしい股間が露わになった。

 それはとても良く出来ていた。

 けれど、本物を見たことがない僕でもさすがに作り物だとわかる程度には、作り物らしかった。

 ショーツやらスカートやら履いていたら、多少チラ見えする程度で、全くわからないだろう。

「はぁ……すごい世界ですね……」

 素直にそう思った。少なくともいままでの僕が想像することすらなかった世界だ。

「そういう感想はとても嬉しいね」

 嬉しそうに言いながら、西園寺さんは全てを脱ぎ去り――完全な男性へと戻る。

 手早くTシャツとズボンを履いた西園寺さんは、軽く髪をかき上げながら、僕に笑みを浮かべて見せる。

「さて……それじゃあ、約束通り――キミに女の子になってもらおうか」


 西園寺さんはそういうと、部室の一角にある箱を開き――女装用の道具を取り出した。


後編につづく

Comments

Thank you for reading! I would be happy if you could enjoy it even a little.

夜空さくら

di-ski kuuuuuuu!

goremz


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