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夜空さくら
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女の子にされる話 後編

■ とりあえず書きたいところだけを書いて終わりです。

■ この二人の話はまた書くかもしれませんが、予定は未定ですーw-ペコリ

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 西園寺さんに手渡された女装道具一式は、結構な量があった。

 ショーツやらブラジャーっぽいものといった基本的なものから、ぱっと見ではどういう道具なのかわからない物もある。

「まず全身タイツから着てもらおうかな。大城くんは肌が白いから化粧でも行けそうだけど、手っ取り早く劇的に変わるならこれが一番だ。

「はぁ……全身タイツってこれ、です、か……!?」

 思わずぎょっとしてしまった。それは全身タイツと言って僕が思い浮かべるのとは全然違う形状と質感をしていたからだ。

 首から両手両足の手首足首あたりまでの全身を覆う形の人皮――そんな感じ。

「うわぁ……なんというか……すごい、ですね」

 そこそこの大きさの乳房までちゃんとある。

 ちょっと恥ずかしく感じるくらいのレベルだ。

「……? あれ? 西園寺さん、これ……チャックとかはないんですか?」

「タイツだからね。想像以上に伸びる素材で出来ているから、こうして……」

 そういって西園寺さんはその全身タイツの首元を掴んで、左右に引っ張った。

 するとまるで冗談みたいにそのタイツが伸びる。

「ひぇ……っ、た、確かにこれなら着ることは出来る……のか」

「ある程度伸縮には強いけれど、あまり極端に引っ張り過ぎないようにね」

「は、はぁ……」

「じゃあ服を全部脱いで」

「はぁ…………」

 僕は思わず目を点にしてしまった。

「ぜ、全部ですか? パンツも?」

「もちろんじゃないか。ああ、大丈夫。その全身タイツは都度きっちりメンテナンスしているから、他の人の体液が付着してるとかそういうことは気にしなくて大丈夫だよ」

「…………」

 それはあまり気にしていなかったのだけど。

 どちらかというと、いまさっき会ったばかりの人の前で肌を晒すことに対する抵抗感というか、羞恥感の方が強い。

 僕はちらりと西園寺さんの様子を窺ってみたけれど、西園寺さんはわくわくとし表情を浮かべているだけだった。

 これはもう、覚悟を決めるしかなさそうだ。

(はぁ……なんだってこんなことに……)

 僕はさっさと済ませるに限ると考え、服を脱いでいった。

 お風呂場でもなければ自分の家ですらない場所で、素っ裸になるのは実に変な気分だ。

 ちょっと肌寒くてチンコ……ペニスが縮こまってしまっている。

 僕はその肌寒さから解放されるために、急いで全身タイツに体を通していくことにした。

 ぐいっと両手に力を入れて首のあたりを広げ、そこに足を通していく。

 全身タイツの内側は、思ったよりもサラサラしていて、わりとすんなり足を入れていくことが出来た。

「腰をかがめた体勢で、まずは一気に片足を通してしまおう。細かい位置調整はあとでやればいいから」

 西園寺さんのアドバイスに従い、言われた通りに足を下まで突き抜けさせる。

 その上で、もう片方の足も全身タイツに通していった。

「うわ……っ、なんというか……すごく、独特な感触ですねこれ……っ」

 普段タイツすら履いたことがないから、体に張り付いて来る全身タイツの感触が不思議に感じた。

(これは……なんというか、体に密着するタイプの水着とか着てる感じ……かなぁ)

 ぴっちり体に張り付いてくるタイプの衣服というと、それくらいしか経験したことがない。

 水着と違うのは、しっかりとした強度がありながら、その薄さは水着以上というところだろう。

 足首から順番にスーツをフィットさせていく。弛んで皴になっていた部分を伸ばすようにして着ていくと、僕の足は妙にすらりとした見た目になった。

「結構締め付けられる、ような……」

「そうやって締め付けることで、女性らしいフォルムを実現できるってわけさ」

 得意げに西園寺さんが説明してくれる。

 確かにスーツに覆われた自分の足を見下ろすと、なんだか普段と変わっていないように見えて、妙に女性っぽい感じがする。

 そのままスーツを腰まで引き上げていくと、ペニスが一瞬抑えつけられ――そこに存在していた割れ目から外に出てしまった。

「うわっ……! こ、これこのままでいいんですか?」

 タイツの外にはみ出したペニスを咄嗟に手で庇っていると、西園寺さんはこくりと頷いた。

「ああ、それはあとで女装用のパンツがあるからほっといて大丈夫。それより、早く両手も通してしまってみなよ」

 ワクワクと明らかに弾んだ声で西園寺さんが求めて来る。

 何がそんなに楽しいのかはわからなかったけれど、とりあえず言われるまま腕も全身タイツの中に入れていく。

 そうして一気に全身タイツを引き上げてみて――僕は全身がタイツに包まれていく感触を覚えた。

「う……っ!」

 胸に接している部分にある乳房が揺れるのが見える。

 袖に完全に手を通した後でお尻を触ってみると、妙に柔らかかった。

「こ、これは……っ」

「お尻の形も女性に近付くようになってるのさ。うん、サイズがぴったりで良かった。オーダーメイドというわけにはいかないからズレはあるかもだけど……十分、許容範囲っぽいね」

 それは確かに西園寺さんの言う通りだった。

 完全フィットとまではいかなくても、十分すぎるくらいぴったり沿っているように見える。

 僕は自分の体を見下ろしてみて、そこに乳房があることに激しく動揺していた。

 手足の先は全身タイツに包まれていないのだから、当然見慣れた僕の手足なのだけど、逆に言えばそこ以外の体は女の子のものに見える。

 股間からはみ出したペニスがかなりの異物に見えた。

 鏡を見て見たくなったけれど、姿見らしきものはなぜか横を向けられている。

 視線でそれを察したのか、西園寺さんが首を横に振った。

「まだ早いよ。どうせならいきなり完璧なものを見た方がいい。絶対楽しいから」

「……それ、楽しいのは西園寺さんでは?」

「さて次はこれにしようか。これはペニスを抑えて、目立たなくさせるショーツだ」

 露骨に話を逸らされてしまった。

 とはいえ、ボクもペニスがぶらぶらしているのは落ち着かなかったので、そのショーツを受け取る。

「……これ、普通のショーツとはかなり違いますね」

 実物なんて家族のものくらいしか見たことがないけれど、さすがに普通とは構造が全然違うということくらいはわかった。

 なにせそのショーツには内側に妙な膨らみがあったからだ。

「その膨らみの谷間にペニスを収納しながら身に着けるんだ」

「なるほど……」

 さっき西園寺さんが脱ぐところを見せてもらったので、なんとなく着方はわかった。

 ペニスがちょうどその膨らみの真ん中に納まるようにショーツを履き、しっかり上の方まで引き上げる。

「ん……っ。うわ……すご……」

 ちゃんとショーツを身に着けてみると、本当にすごかった。

 ペニスの盛り上がりもほとんどわからず、ショーツの奥にちゃんと割れ目があるような、そんな外見になっている。

 全身タイツのおかげもあって、僕の胴体は見た目完全に女の子になっている。

 見下ろす視界の中で揺れるおっぱいが妙に気になる。

「ほんとは最後でもいいんだけど、落ち着かないだろうからはいこれ」

 そう言って西園寺さんが渡してくれたのは、ショーツと対になったデザインのブラジャーだった。

「ぶ、ブラジャー……」

 生涯自分には縁がないだろうと思っていたそれを、四苦八苦しながら身に着ける。

「よし、次はこれだ」

 淡々と西園寺さんは次のモノを薦めてくれた。

 それは膝上丈のソックスだった。生地は少しぶ厚めのようだ。

 身に着けると、露出していた足先が隠れ、ますます僕自身の男の体が見えなくなっていく。

「続いてはグローブ!」

「うわっ」

 僕は思わず声をあげてしまっていた。

 そのグローブはなんとも本物っぽいもので、一瞬本物と見間違うほどだったからだ。

 大人しくそれも身に着ける。僕の手が見えなくなり、女性の手っぽくなる。

 なお、つなぎ目はあったけれど、全身タイツの色とグローブの色が完全に一致していたので、注視しないとほとんどわからないくらいの状態になっていた。

 これで僕の体は、首から下がほぼ完全に覆われていることになる。

 どくん、どくん、と心臓が激しく高鳴るのがわかる。

「さて次だけど……どれがいい?」

「どれ、って……うわっ」

 西園寺さんが示したのは、人間の生首だった。

 正確には、人間の頭の皮――さっき説明されたフィメールマスクというものだ。

 髪の毛とセットなのか、胸像みたいな置台に取り付けた状態で並べられている。

 どれも一見同じように見えて、少しずつ鼻の高さとか、眉毛の形などが違うようだった。

「どれがいいかって言われても……じゃ、じゃあ、これで……」

 僕は何を基準に選んだらいいのかわからず、並んだマスクのうちのひとつを指し示す。

 それは肩に届くくらいのおさげ髪のマスクだった。

 背中に届きそうなポニーテールのものと迷った。どうせなら男の自分がしようもない長い髪型にしてみたかったのは。あるかもしれない。

 僕が選んだそれを手に、西園寺さんが僕の傍に立つ。

「それじゃあ被せてあげよう。少ししゃがんで」

 言われるまま、頭の位置を下げる。

 僕の頭にマスクが被せられた。

「うっ……!」

「大城くんは髪が短いからマスクだけで十分収まりそうだね」

 そんな西園寺さんの声が聞こえていたけれど、僕は頭全体を覆ってくるその感触に堪えるので必死だった。

 ぐいぐいと西園寺さんがマスクを引っ張り、マスクの位置をきっちり合わせる。

 ぎゅうぎゅうと頭全体が締め付けられるような感じがした後、不意に口が開くようになった。

「うぁ……っ、お……おぉ……?」

 思わず自分で自分の顔を抑えてしまう。鼻からもちゃんと呼吸が出来る。

 口も開こうと思えば開くことが出来た。ただ、なんとなく全体的に突っ張るような感覚があって、違和感も感じる。

 眼球の周りの圧迫感が消え、目を開くことが出来た。

「…………出来た、んですか?」

 僕が恐る恐る瞼を開き、見えた西園寺さんに問いかけると、彼はとても満足そうな顔をしていた。

「うん。上出来! さすがに完全フィットとはいかないから、目の辺りに違和感を感じるかもだけど……十分だね!」

 確かにほんの少しだけど、視界の端に何かがあるのがわかる。マスクの縁が見えているみたいだ。

 僕が思わず顔を左右に振ると、それに伴って頭が引っ張られた。

「とっ……!」

 おさげになっている髪が揺れたのだと遅れて気付く。

 さっき見たものが動くのは当たり前だった。

「いよいよあとは服を着るだけだね。とりあえず……これを着てごらん」

 やたらと薄いシャツ――正確にはキャミソール――を手渡され、言われるがままに着る。

 キャミソールの裾がするりと背中を滑り落ちていくのが感じられ、思わず身を震わせてしまった。

 次に手わされたのは、紺色のスカートだった。

 女の子の象徴ともいえるそれに、ドキドキしながら足を通す。

 横のホックをかけてチャックを締め、スカートがずり落ちないようにした。

 そして、最後に手渡されたのは。

「それって……! せ、セーラー服じゃないですか!」

 なぜ気付かなかったのだろう。

 スカートはセーラー服のものだった。

「ボクたち男からすると、セーラー服は女の子の象徴だろう?」

「ええ……」

 セーラー服を着て女装するというのは、あまりにも変態チックではなかろうか。

 いまさらながらそんなことを思う僕を、西園寺さんは容赦なく急かす。

「ほらほら、いいから着てみてて。凄い出来栄えだから」

「……はぁい」

 いまさら引き返す方が恥ずかしい。

 僕はいままで見たことはあっても着たことなど一度もなかったそれに、袖を通した。

 脇にあるチャックを締めれば、着替え完了――と思ったら、スカーフを西園寺さんが取り付けてくれた。

 着る前からわかっていたことだけど、そのセーラー服は材質的にもまさに本物だった。

 いままで同級生の女の子たちが着ていたのを見たことしかなかったそれが、僕の体を覆っている。

 自分の体を見下ろせば、男の僕らしい痕跡はどこにも見当たらなかった。

 そんな僕の前に、西園寺さんが満を持して姿見を引っ張って来てくれる。

 鏡のカバーをかけたまま、西園寺さんは僕の元に戻って来て、姿勢を正してくれた。

「露骨じゃなくていいから、足は内股気味にしよう。それから、背筋は伸ばして、肩幅を狭く見せようとして背中を丸めるとかえって大きく見えてしまう。背中は沿って肩甲骨を締めるイメージで……うん、いい感じ。手は体の前で、片手をもう片方の手で握っておこうか。顔はまっすぐ正面を……そうそう」

 まるでこれから写真でも撮られるかのようだった。

 それはあながち間違いではなく、西園寺さんは僕に「一番女子に見えるポーズ」を取らせていたのだ。

「さあ、いくよ……これが今の大城くん、いや――なるちゃんだ!」

 西園寺さんが姿見のカバーを剥がす。


 そこには、一人の女子高校生が映っていた。


 表情は乏しいものの、その顔立ちは綺麗に整っているため、違和感は少ない。

 僕は目を丸くしてその姿を見つめていた。

「こ、これが……僕……?」

 思わず口に出してしまった。なぜかその言葉を聞いた西園寺さんがガッツポーズをしていたのが気になったけれど、それを気にしているどころじゃない。

 鏡の中に映っているのは間違いなく僕なのに、僕じゃない女の子にしか見えなかった。

 手を動かしても、足を動かしても、首を傾げても。

 鏡の中のその子は僕と同じ動きをする。

 僕は確かに、そんな女の子になっていた。街中ですれ違っただけでは、まさかこの子の中に男がいるなんて思いもしないだろう。

 心臓が激しく高鳴っている。

 西園寺さんはやり切ったといった満面の笑みで、そんな僕の様子を眺めていた。

「どうだいなるちゃん。女装っていいもんだろ?」

「そ、それは何とも言えませんけど……こんな世界があったんだな、とは思います」

「もっとこの世界を知りたくないかい? 実はいまボクはサークルメンバーを募集していてね……ここまでしてくれた君にぜひ入って欲しいんだ」

 サークル勧誘の一種であることはわかっていた。

 だからそのこと自体に驚きはなかった。勧誘の言葉を聞いてますます心臓の鼓動が高まる。

「か、考えさせてください……」

 僕はかすれた声で、辛うじてそう応えた。

 ただ、考えたところで、答えは決まっているようなものだった。


 なにせ僕は、見事に『女の子』にされてしまったのだから。



おわり(つづく?)


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