人格ゼリーと化しても、抗う勇者 スライム勇者①
Added 2023-04-10 14:59:42 +0000 UTC■ 人格排泄もののシリーズです。人格だけになった勇者はスライムと化しました。最弱モンスターとなった彼女は這い上がることが出来るのか。乞うご期待0w0クワッ!
■ 人格排泄させられてしまった勇者が、どうにかこうにか自分の体に戻って、魔王に復讐しようというストーリーです。一応ハピエンになる予定ですが、バッドエンドルートとかも書くと思いますーw-ウム
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魔王がその女勇者に用いた人格排泄薬。
その効果は、服用した者の人格をゼリーと化し、肛門から排出させるというもの。
通常これを用いられた場合、服用させられた者に抗う術はほぼない。
例え人格ゼリーの排出を我慢したとしても、遅かれ早かれ排泄をしなければ肉体は死ぬからだ。
人格を元に戻すには、その排泄したゼリーを口から摂取するだけで可能だが、人格ゼリーが排泄され切った時点でその体を自由に動かせなくなる。
つまり単独で行動している者では、この人格排泄薬に対応のしようがないわけだ。
排泄された人格ゼリーの状態では行動出来ないため、そこから反撃や反抗など出来るはずもない。
そのはずだった。
下水槽に堕ちた勇者の人格ゼリーは、汚物の中に塗れつつも、その意志を保っていた。
(わた、しは……まだ……っ、おわら、な、い……っ)
人格そのものが異物によって汚染されそうになりながらも、勇者の人格はまだハッキリと残っていた。
意志の弱いものであれば、人格だけの状態に耐えられない。ほどなく自我が霧散し、ただの抜け殻のようになってしまう。
だが勇者は時間が経っても、汚物に塗れても、その人格を維持し続けていた。
そんな勇者の落ちた汚物水槽には、堕ちて来た排泄物を処分するためのスライムが存在していた。
スライムはどんな環境にも適応できる優秀なスカベンジャーである。
人間や魔物の糞尿などは全く問題なく食することが出来るため、人間も魔物もスライムを汚物の処理要員として活用していた。
魔王城の下水槽にも、当然の如く導入されている。
大抵のものを食すことが出来るスライムは、当然勇者の人格ゼリーにも興味を持って、そのゼリーを包み込む。
消化液を出して溶かし、それを舐め取っていく。
勇者は自分の輪郭が解けていくのを感じ、今度こそ死を覚悟した。
しかし、勇者に死は訪れなかった。
ふと気づいた時、勇者は周囲の様子がわかるようになったのだ。
(こ、れは……一体……?)
突然の変化に戸惑う勇者。
霧散しそうになっていた意識が安定し、ひとまず消滅の危機は脱したようだと少し安堵する。
(……おかしい、意識はハッキリしたけれど……全然、体を動かしてる感じがしな……い……?)
自分の体の輪郭がハッキリしないことを感じていた。
両手を目の前に持ってくるイメージで、自分の体を見ようとする。
その彼女の視界に、ヌメヌメした半透明の物体が映り込んだ。
(これは……スライム……?)
思わずそれから後退ると、スライムの身体が遠ざかる。
(もしかして……私、スライムになってる……!?)
勇者はスライムと融合してしまっていた。
正確にはスライムが勇者の人格ゼリーを消化吸収し、その体に勇者の人格が宿ったのだ。
うねうねと体を動かして見ながら、勇者は考える。
(……とにかく、自由に動けるようになったのは大きいわね……これなら、まだなんとか出来るかも……!)
スライムに意志はないと言われている。
基本的に近くにあるものを消化吸収しようとする本能しかなく、例えモンスターテイマーであっても、スライムを飼い慣らすことは出来ないとされている。
勇者の人格がその体にあっさり宿ったのも、人格と競合する意識がなかったためだ。
(それにしても、酷い場所……っ、匂いがわからなくてよかったわ……)
下水槽には魔物の死骸なども放り込まれているようで、人間の身体のままであったなら気絶するほどの悪臭が立ち込めているだろうことは明白だった。
スライムの体には嗅覚が存在しないらしく、匂いらしきものは感じなかった。
(でも、スライムが餌の匂いを嗅ぎつけて、街中に入って来たりすることはままあることのはずだけど……)
勇者はスライムの生態を思い出しながら、体を動かす練習を始めた。
自分の体の輪郭を意識し、その端の部分を広げては狭め、尺取虫が這うように体を動かしていく。
遅々として進まない動きではあったが、それでも体を動かせるということに勇者は喜びを覚えていた。
(ん……体中を何かが這い回るような……いえ、体が這い回っているような……変な感じではあるけれど……これなら……!)
自分の体を取り戻すことが出来るかもしれない。
そんなことを考えながら、勇者は体を動かす練習を続けた。
元々勇者は類まれなる才能を持つ。それはおおよそ人間離れした体を動かすということにさえ発揮された。
スライムの体で下水槽の中を這い回り、徐々にその動きが早くなっていく。
(……スライムの中にも、すごい逃げ足のものがいたけれど……こんな風に徐々に速くなっていたのかしら)
勇者にとってスライムという魔物は特に恐れるものではなかった。
強力な酸を放つスライムがいないわけではなかったが、勇者は魔力を体に纏わせることが出来る。
無詠唱で魔法を使えることもあって、仮に全くの不意打ちで全身を包み込まれたとしても、容易に吹き飛ばすことが出来る。
そんな勇者でも倒せないスライムはいて、それが逃げ足の速いスライムだった。
とにかく早い。魔法を放ってもその魔法よりも素早く逃げるのだから性質が悪い。
無論早いだけで何の攻撃力もないため、脅威にはなりようもなかったが、スライムの様々な可能性を感じることではあった。
ともあれ、そんなスライムのように徐々に動きが早くなっていったスライム勇者は、ふと虚脱感に襲われた。
(これは……お腹が空いてる……ってことかな……?)
勇者のような精神の強い者でなければ、全く動けなくなりそうな強い虚脱感が襲ってくる。
激しく動き回ったのだから、そうなるのは必然だっただろう。
(何か食べるもの……食べるもの、かぁ……)
勇者は一瞬躊躇ったが、躊躇っている場合ではないと考え、下水槽に次々補充されてくる汚物に近付いていく。
スライムの体がそれを栄養として吸収できるのは明白だ。
ゆえに勇者はその汚物に覆いかぶさるようにして触れる。
幸いなのは、スライムの体では味も臭いも全くわからなかったことだろう。
触れていた汚物が消滅し、勇者を襲っていた虚脱感がなくなっていく。
そして代わりに充足感が湧き上がり、動こうという気力が湧いた。
(よ、よし……! とりあえずこれで消滅の危機は免れたかな……あとは……)
その下水槽からどうやって脱出するか、であった。
人間の町でもスライムを用いた下水槽には、スライムが勝手に外に出て行かないための処置が施されている。
勇者は試しに自分の体を下水槽の壁にこすり付けてみるが、想像通りにその壁はスライムの消化液程度ではびくともしない。
(確か魔法が施されているんだったかな……? となると、脱出するべきは……)
スライムにとって下水槽の中ほど安全かつ快適な場所はない。
放っておいても勝手に餌が落ちて来るし、外敵もほとんどいない。
ただ、その分、ある程度増えた段階で間引きされてしまうのだが、スライムたちは快適な場所を手放そうとまではしなかった。
(……魔王城であっても、定期的な間引きは必要なはず……となると、その時のどさくさに紛れて脱出する……? いえ、それじゃあ時間がかかり過ぎる)
下水槽の中に魔法を叩き込まれて、乱暴に間引きする方法である可能性もあるため、座して待つのは得策ではなかった。
時間をかけてしまえば、奪われた自身の体が何をされるかわからないこともある。
(となると自力で脱出しないと……それにはやっぱり……あそこかな)
魔王城の至る所から流れて来る汚物。それが流れているパイプを遡れば、繋がっているその先に出られるはずだった。
そうと決まればやることは簡単だ。
勇者は汚物を食らって力を補充しつつ、スライムの体を動かす練習を続ける。
勇者ならではの適応能力の高さで、その動きはどんどん洗練されていった。
(よし……! いける……!)
下水槽の中を高速で駆け巡りながら、勇者は確信と共に壁を駆けあがる。
勢いのまま天井にあるパイプに取りついた。ぎゅるぎゅると回転しながら、パイプの中を遡って出口を目指す。
程なくして、勇者スライムは小さなトイレの中へと飛び出した。
「ギッ!?」
それと同時に聞こえて来た声に、勇者は背筋が粟立つのを感じる。
その方向を窺えば、トイレの中に入って来るところだったゴブリンが、勇者スライムを見て目を見開いていた。
(まずい……! 見られた!)
勇者の判断は早かった。
ゴブリンの体に覆いかぶさるようにして、スライムの体を広げ、その頭に取りつく。
「――ッ!」
叫び声を上げられないように、というつもりの行動だったが、効果は抜群だった。
ゴブリンは手で顔を覆うスライムを掴もうとする。
だが不定形のスライムの体を掴むことなど出来ず、ただ藻掻くことしか出来ない。
「……ッ、……ッ、っ……!」
(よ、よし、予想外だったけれど……これで……あれ?)
ゴブリンが大きく口を開け、スライムの体を口の中に含んだ。噛み千切ろうとしたらしく、勢いよく口を閉じた。
ぬるり、と勇者スライムの一部がゴブリンの喉の奥へと落ちていく。
次の瞬間、ゴブリンの抵抗が止んだ。
(……? 気絶した……わけじゃないよね……?)
勇者は不思議な感覚を覚えて、一端ゴブリンの頭を解放した。
ゴブリンは解放された後も特に反応することなく、ぼーっとした様子で立ち尽くしていた。
(これは、一体……いや、待てよ……このゴブリンの状態……何か、どこかで見たような……)
勇者は自分の記憶を辿ろうとして、またも不思議な感覚に気付く。
ゴブリンがどうしてここに来たのか、何をしていたところだったのかの映像が、頭の中に流れ込んできたからだ。
(もしかして……)
勇者は自分の一部がゴブリンに吸収されたことにより、その精神の一部を乗っ取ったのではないかと仮定した。
(それなら……ええと、その場でくるくる回転して!)
伝わっているかどうかも分からなかったが、勇者はそうゴブリンに命令してみた。
するとなんと、ゴブリンはその場でくるくると回転し始める。
(やっぱりだ……! どういう理屈かはさっぱりわからないけれど……こうすれば、相手を操ることが出来るんだ!)
それは勇者にとって希望だった。
なにせこれが出来るのであれば、自分の体に自分を摂取させることが出来れば、実質的に自分の体を取り戻すことが出来る。
(そのためにも……出来るだけ強い魔物を支配した方がいいわね……)
勇者の体は現在魔王の手のうちにある。
正面から挑む必要はないとはいえ、魔王を一時的に足止め出来る程度の戦力は必要だ。
(私は、必ず私の体を取り返して見せる……! 首を洗って待っていなさいよ、魔王……!)
そう決意した勇者の前で――ゴブリンがばたりと床に倒れた。
どうやら勇者が命令してからずっと、グルグルと回転し続けていたらしく、目を回したようだ。
(かなり強制力が高いみたいね……気を付けないと、下手な命令をさせたら殺してしまうかも……)
勇者が魔物相手に容赦をすることはない。
だがいまの勇者にとって、支配できた魔物は大事な戦力だ。無暗に消費していい存在でもなかった。
そんなことを考えていた勇者は、ふと倒れたゴブリンを見て、呑めない息を呑んだ。
床にひっくり返ったゴブリンの腰布が捲れあがり、ゴブリンならではの生殖器が露わになっていた。
勇者はこれまでの冒険で幾度となくゴブリンにも出会って来た。
時には、ゴブリンに襲われた集落を救援に訪れたこともあり、その度に酷い光景を目の当たりにしてきた。
強姦種族と呼ばれるほど性欲の強いゴブリンたちは、捕まえた村娘たちを犯し、弄ぶ傾向にある。
だから勇者もゴブリンがペニスを露わにして、女性を襲っているところは何度も見て来た。
その時は嫌悪感しか感じず、容赦なく切り捨てて行ったものだった。
だが、いま。
スライムの身体となってゴブリンのそれを見た勇者は――なぜか、心が湧きたつのを感じていた。
つづく