人格ゼリーと化しても、抗う勇者 スライム勇者 ⑦(終)
Added 2023-05-22 13:12:56 +0000 UTC■ 人格排泄もののシリーズです。人格だけになった勇者はスライムと化しました。最弱モンスターとなった彼女は這い上がることが出来るのか。乞うご期待0w0クワッ!
■ 「終」とありますが、シリーズが終わるわけではありません。最後まで読めばわかりますのでよしなにーw-ペコリ
■ 次回からは別のお話を更新予定です。
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勇者は悪の魔導士を倒し、その体を得て、彼が従えていた触手型の魔物二種を従え、そして捕らえられていた村娘を助け出した。
先に救出した女戦士を保護していた部屋に戻ってきた勇者は、その部屋の扉を塞いでいる荷物を、外から魔法で動かして扉を開く。
女戦士は相変わらず壁に背中を預け、放心状態のままだった。
(この人についてもどうにかしないといけないし……ああ、本当にどうしよう……)
ひとまず部屋の中に入って、入り口の前に触手型の魔物を番人として配置する。
いまだ気を失ったままである村娘を床に寝かせた後、勇者は魔導士の体から出る準備を始めた。
(魔導士の体はまだ生きてる……私が出た後、魔導士の意識が戻ったら、最悪なことになりかねない……)
魔法を使える体は惜しく感じたが、リスクと天秤にかけた結果、魔導士はここで始末をつけておくことにした。
触手型の魔物を制御するブレスレットを女戦士の腕に取り付け、自分の頭に袋を被せて視界を封じる。
そして、意識を自分の腹部に集中させ――その肛門から人格ゼリースライムの体を排出させた。
『うぅ……仕方ないとはいえ……ほんと、いや……』
排泄物になった気分でぼやく勇者は、そのまま移動し、女戦士の体を再び拝借する。
体を動かせるようになったのを確認して立ち上がった。
そして部屋に立てかけておいたゴブリンの粗末な武器を手にして――魔導士の首を切断する。
元より勇者は、盗賊などの犯罪者をその場で始末することも多かったため、その動きに淀みはなかった。
「できればちゃんと法の裁きを受けさせたかったけれど……仕方ないわよ……ね……?」
そう呟いて自分を納得させていた勇者は、首を跳ねて確実に絶命させたはずの魔導士の体がかすかに動いたのを確認する。
「まさか……! 何か仕込みが……!?」
死んだ後に発動する罠を、魔導士が体に仕込んでいた可能性に思い至る勇者。
普段であればそういう可能性も踏まえて警戒しているのだが、特殊な状況が続きすぎたため、それを失念していたのだ。
「まずい……!」
とっさに腕で頭を庇いながら魔導士の体から距離を取る。
彼女が緊張しながら見つめる先で、魔導士のローブの下から這い出して来るものがいた。
彼の改造されたペニスだ。触手の魔物の要素が加えられているためか、魔導士本人が死んでもなお、そのペニスだけが独立して動いていた。
広範囲が爆発に巻き込まれるような、そういった罠が仕込まれていたわけではなかったことを知り、勇者は思わずほっと胸を撫で下す。
(よかった……まあペニスの長さくらいなら、容易に仕留め……ちょっと待って!?)
勇者が安堵して気を緩めた瞬間、触手のペニスはその体をくねらせ、床に寝かされている村娘の方に近づいていく。
本能的に女体を求めている様子の触手ペニスを、勇者は慌てて止めにかかる。
触手ペニスが村娘に飛びつく寸前、勇者の手がギリギリ間に合った。
片手で鷲掴みにして、その動きを封じる。
そのまま握り潰そうと力を込めたが、触手ペニスも簡単には握り潰されてくれなかった。
先端からドロリと濃い液体を噴出する。
「ぐっ……!」
(き、気持ち悪い……!)
ドロリと滑りを伴った独特の感触に、思わず顔をしかめる。
できる限り腕を前に伸ばし、体にかかることは防いだが、掴んでいる手にかかるのはどうしようもない。村娘の体にも少しかかってしまっていた。
いったん村娘から引き離そうと後ろに下がろうとして――その足がもつれ、尻もちを突いてしまう。
「あいふぁ……っ、あふぇ?」
急に体の自由が利かなくなり、勇者は焦る。
(しまった……! 即効性の麻痺毒……!? こんなのまで分泌できたの!?)
触手ペニスがその体をくねらせ、勇者が掴んでいる手から逃れようともがく。
まだ手に力は入っているが、いずれそれも利かなくなることを本能的に悟る。
(こ、こうなったら……!)
勇者は一か八かの賭けに出た。
麻痺毒が浸透し、動かせなくなりつつあった女戦士の体から、人格ゼリースライムとして飛び出した。
女戦士の体がぐらりと傾き、床に倒れ伏す。
麻痺毒による効果が十分に浸透したと判断したのか、触手ペニスは緩んだ女戦士の手の中から脱出した。
そしてそのまま、女戦士の股間めがけて進んでいこうとしたが――それを、スライムと化した勇者の体が絡め取る。
ペニスはびくりと痙攣し、先ほど同様に麻痺毒を分泌するが、スライムの体は毒にめっぽう強い。排泄物などの中でも疫病にも何にもかからないことからもわかるように、スライムは過酷な環境に強いのだ。
(よし、思った通り……! これであとは、誰にも寄生しないように、抑え込み続ければ……!)
触手ペニスにも原動力が必要だ。おそらくは女性の膣に潜り込み、その体液から魔力などの必要な力を得るのだろう。
それをさせないまま、暴れ続けさせていれば、いずれはその力も尽きるはずだった。
最悪、スライムの体からも魔力を奪い取られればまずかったが、勇者が直観で察した通り、触手ペニスは女性の体からしか力を得ることはできないようだった。
(どれくらいかかるかはわからないけれど……このまま消化してしまえれば……んん?)
ある程度の長丁場を覚悟していた勇者だったが、ふと、触手ペニスとの間に繋がりが発生したのを感じ取った。
勇者はモンスターテイマーとしての能力も有している。
無論特殊な職業であるため、本職には及ばないものの、心穏やかだったり、従順だったりするタイプとはかなりの精度で意思疎通ができる。
その時の感覚が、勇者は感じ取れていた。
『もしかして……ゴブリンと同じ……?』
ゴブリンを操ることは実証済みだったが、それが触手型の魔物にも有効だとは思っていなかった。
触手ペニスは暴れるのをやめており、じっと動きを止めている。
『ゴブリンと同じレベルで従わせられるなら……!』
意外と役に立つことも多そうだと感じた。
勇者は試しに、触手ペニスに命じる。
『女性の体に負担をかけないよう、あなたが活動するのに必要な魔力だけを吸い出せる?』
悪いとは思ったが、転がっている女戦士の体を示してそう命じてみた。
触手ペニスはぺこりとその体を全体を頷かせ、女戦士の体に近づく。
そして、ペニスとしてはかなり太い部類だったその体を細く、長く引き伸ばし――女戦士の膣に潜り込ませる。
女戦士の体がぴくりと反応したが、特に苦しんでいる様子はない。
通常のペニスより細くなった関係上、かなりの部分がその穴から飛び出している。
その部分はどうするのかと勇者が見ていると、膣に挿入したのとは反対側の先端を、肛門に差し込んだ。
U字型となって女戦士の体に潜り込み、膣と肛門に同時に挿入しているのだ。
その状態で、触手は魔力をドレインし始める。戦士も多少は魔力を持っているため、それで十分動力を賄うことはできるようだった。
勇者はその様子をみて、一つ安堵する。
(これなら、この触手を生かしておいても大丈夫そうね……表の二体も同じように従えさせたりできるかしら……? ブレスレットをつけずとも指示を出せたら、いまの私にとっては結構いい戦力になるけど……)
そう考えていた勇者の前で、予想外のことが起きた。
ペニス触手が潜り込んでいた女戦士の体が、むくりと起き上がったのだ。
ぱちぱち、と瞼を瞬かせ、目が勇者の方をぎょろりと向く。
『え……』
「あぉ……お、あ……あー……」
まるで何かを探るように声を発する女戦士。
その動きが、徐々に自然なものになっていく。
「ます、たー。ます、たー。ますたー」
へにゃり、と女戦士の大人びた外見には少しに合わない、純真な笑みを浮かべる。
「えへ、へへ……うごかせ、た。ますたー」
『あ、あなた……!? そんなこともできたの!?』
「ますたー、みた。おぼえた」
どうやら勇者が女戦士の体を使うのを見て、それを真似たということらしかった。
(なんて危うい……でも……)
考えようによっては、役に立つ能力といえる。
どれくらいの長丁場になるのかはわからないが、その間保護している女性たちを、ずっと放置しているわけにもいかない。
操作することができるのであれば、それを用いて強制的に食事を摂らせることも出来る。
(体さえ健康的であれば……私の体を取り戻した後、最高位回復魔法で精神を回復させられる……!)
精神も肉体もどっちもダメになってしまった場合は勇者にもどうすることも出来ないが、どちらか片方だけでも無事であれば、あとから回復は十分見込めるのだ。
色々と思うところがないわけではなかったが、勇者はそう割り切って考える。
(私が動かすことでも可能ではあるけれど、毎回体を移動するのも怖かったし、任せられるならこの子に任せた方がいいわよね……)
そう結論づけた勇者は、触手ペニスを最大限に活用することを決める。
ゴブリンが死ぬまで勇者の命令に従っていたように、魔物に対する支配力はかなり強力なものであるため、それなりに信用できるという点も大きかった。
『そうなると、名前がないのも不便ね……そうね……』
勇者が考え込んでいる間、女戦士の体を動かしている触手ペニスは、従順に勇者の言葉を待っていた。
『……フレンド。あなたの名前は、フレンドにしましょう。わかった? フレンド』
よき隣人になってほしいという思いを込め、勇者は触手ペニスにそう名前を付けた。
女戦士の体を動かしている触手ペニス――フレンドは、無邪気に微笑む。
「わかった! フレンドは、フレンド! ますたー、ありがとう!」
無垢に慕ってくるフレンドの様子に、勇者は何とも穏やかな感情を覚えていた。
基本単独行動で冒険をして来た勇者は孤独に対する耐性は高かったが、自分の体という寄る辺を失った状態では、さすがに心細かったのだ。
そんな中で、魔物とはいえど普通に会話する相手が出来たことで、言いようのない安堵を覚えていた。
まだまだ問題は山積みだが、少し息をつくことが出来た。
『さて……それじゃあ、改めてこのあたりの探索をしないとね……』
まずは人間が食べても大丈夫な食糧などを探す必要がある。
スライムの体を持つ勇者はなんでも栄養にすることが出来るが、保護している女戦士と村娘はそういうわけにもいかない。
この部屋をフレンドに任せ、周囲の探索に動こうとした勇者を、フレンドが呼び止める。
「ますたー。あれ、たべないの?」
そういってフレンドが指さしたのは、地面に転がったままの悪の魔導士の肉体だった。
首とペニスがない胴体部分と、袋を被った――今は袋に入ったというべきが――頭部分が転がっている。
勇者はフレンドが動き出したことに気を取られ、その存在をすっかり忘れていたのだ。
(あー……このまま放置してると腐ってアンデッドになっちゃうかもだし……うん、処分しておこう)
『教えてくれてありがとう、フレンド』
フレンドを褒めつつ、勇者は魔導士の首なしの胴体に取りついた。死んで間もないため、まだ生暖かく感じられる。
最初は溶かしてしまおうと考えていた勇者だったが、ふと思いつく。
(あれ……? そういえばこの状態で入り込んだらどうなるのかしら?)
いまの勇者が同じ体を長く使い続けられないのは、長くその体に入り込みすぎると、消化されてその魂が体に――脳に定着してしまうためだ。
しかし死んだ魔導士の体は消化器官が動いていない。
思考自体はあくまで人格ゼリーの方で行っているため、頭部がなくとも問題はない。
頭部がなくなってしまっている体は動かせるのか、そしてその場合魂の定着は起こりうるのか。
(完全に人体実験だけど……倫理的に問題はあるけれど……)
勇者は試してみることにした。そもそも勇者は倫理的にいえばギリギリな行為を行ってきている。
清濁併せ呑む度量がなければ、強大で凶悪な魔王を討伐しようなどということはできないのだから。
勇者は魔導士の体に自身の体を纏わりつかせる。
その途端、勇者は魂に熱いものがこみ上げるのを感じた。
どう動けばいいのか、どうすればいいのか、本能が理解する。
この世界において、誰にでも稀に起こり得る『覚醒の機会』が勇者に訪れていた。
(こ、これは……!?)
勇者はその天啓に従って、魔導士の体を自身の体で包み込む。
その体が徐々に変質し、その姿を相応しいものへと変えていく。
頭の中が真っ白になる感覚に勇者は包まれて――そして、気が付いた。
体が、動かせるようになっている。
勇者は両手を広げて、自分の目の前に持って来た。その手が妙に青白く、細いものになっていることに気づく。
『これって……もしかして……!?』
次に自分の体に視点をずらす。
すると青白い炎に包まれた首の断面と、裸の女性の体が見えた。
『や、やっぱり……! もしかしなくてもこの体……デュラハンになってる!?』
首無し騎士。
アンデッドの魔物の体へと、魔導士の死体が変化していた。
スライム勇者編 おわり
デュラハン勇者編 につづく