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夜空さくら
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軟体怪盗リィンツリーの受難 リィンツリーの軟体身体能力①

■ 現代の義賊・黒猫怪盗リィンツリー(本名:鈴木志保)は、とある資産家・渡部亜希子の罠に嵌って捕らわれの身となってしまっていた。体が訛らないよう、ストレッチやトレーニングの時間が取られるが……?

■ 一年越しのリィンツリーシリーズの更新です。と言いつつ、閑話的なお話です。軟体怪盗リィンツリーの身体能力のお話。2~3回くらいの予定です。

■ この作品には極端な軟体の描写が含まれます。苦手な人は回避をお願いします。

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 怪盗・リィンツリーは現代の義賊でもあり、あくどい商売をして儲けている商人からその資産を盗み出したり、本来あるべき場所から何らかの理由で奪われてしまったものを盗み出したりといったことをしている。

 そしてIT技術が発展した現代では、悪事の証拠となり得るデータを盗み出し、大々的に公開するといったこともやって退けていた。

 神出鬼没にして、例えどれほど警察などの捜査組織に追い込まれても悠々と逃げ出して見せていた。

 そんな彼女は、見た目十代半ばくらいの美少女であり、義賊という立ち位置も相成って、世界中に彼女を応援するファンが存在していた。


 実際、芸術品などを盗み出すこともあるリィンツリーではあるが――そんな彼女自身が、もっとも優れた芸術作品であると評価する者も、ファンの中には多く存在するのである。

 彼女のことを猫のよう、と表現する者も多い。

 実りに実った稲穂を思わせる美しい髪は毛並みの良さが伝わってくるし、その目は金色でそれ自体が宝石のように輝いている。

 細身の体にしなやかな身体。

 彼女は怪盗行為を行う際、黒いライダースーツのような、体に密着する者を着ているため、そのボディラインが際立って優れていることを余すことなく伝えていた。

 スーツに覆われているにも関わらず、その胸は柔らかく膨らんでおり、有識者の間ではスタイルも抜群に酔いだろうというのが定説である。

 そんな彼女が飛び回って警察や機動隊の手をかわし、逃げおおせる様は正に素晴らしいものだと、誰もが称えている。

 そんなリィンツリーは今――ある、資産家の元に捕まっていた。



 その資産家の名前は――渡部亜希子。

 一代でその財を築いた天才であり、おおよそ普通の感性をしていなかった。

 彼女はリィンツリーという現代のお伽噺を聞き、恐れるよりなにより、最初に思った感情が「欲しい!」であった。

 様々な手を駆使してリィンツリーをおびき出し、館そのものを檻とする豪快な手法を持って、リィンツリーを捕えることに成功していた。

 そして渡部は捕まえたリィンツリーを、自分の愛するものとして独占して、愛でていたのである。

 その愛情表現はかなり独善的で、独りよがりのものであるため、リィンツリーは全身全霊でドン引きしているのだが、渡部にとってそんなことは気にもならないことだ。

 ただ、自分の大好きで大事なリィンツリーの価値を落とさないように――そして、逃げられないように――最新の注意を払って、彼女はリィンツリーに接していた。



 リィンツリーはだだっ広い部屋のど真ん中に立たされていた。

 その部屋にはかなり高い位置に窓があり、そこ以外は全くドアも何もない。

 そんな部屋の中央に立たされたリィンツリーは裸であった。

 美しい野生動物のような、しなやかでシミ一つない素肌が晒されている。

 リィンツリーは僅かに恥ずかしそうな顔はしているものの、あまり恥じらいを見せて渡部を喜ばせるのが嫌なのか、つんと澄ました顔をして立っている。

 そんな彼女を、高い位置にある窓から見ている渡部は、マイクを手に取った。

『よし、準備完了だ! 初めてくれたまえ!』

 実に嬉々とした様子で告げる渡部。

 リィンツリーはそんな渡部の声を聞き、深々と溜息を吐いた。

「わかりましたよ……しかし、いい加減、服の一つくらい寄越してくれないんですか?」

 彼女が身に着けているのは、首輪だけだ。首輪には小さな鈴が付けられており、彼女が微かに体を動かす度にチリンチリンと音を立てていた。

 その首輪は渡部に着けられたものではあるが、同時にリィンツリー自らが付けていたものでもある。

 黒猫怪盗と呼ばれることがある彼女の由来にもなっている。 

 その首輪は本来、リィンツリーの怪盗のための行動を助けるためのギミックの一つだ。

 音をわざと鳴らし、その音がするところにリィンツリーがいると思わせる。しかし実際にはその鈴の音は調整が利き、別の場所に置いたスピーカーから鳴らすことも出来るし、全く慣らさずに動くことも容易だった。

 いまのリィンツリーが身に着けている首輪は、そのギミック付きの首輪を参考に、渡部が彼女に取り付けたものだった。

 その首輪には、リィンツリーの体の自由を奪い、彼女の意志で体を動かせなくする装置が組み込まれていた。

 それによって彼女は動きを封じられ、どんな手法をもってしても逃げられないようにされていた。

 捕まってからほとんどの時間、その首輪で体の自由を奪われていたリィンツリーだが、いまはその装置は切られている。

 その代わりに、絶対逃げられないその部屋が、織として機能しているわけだ。

 首輪以外の着衣を渡されていないリィンツリーは、不満げにそう渡部に問いかける。

 そんな彼女の睨む視線を、渡部はとても可愛らしいものを見る目で見返していた。彼女にしてみれば、それこそなつかない野良猫が威嚇して来ているようなものなのだ。

『ふっふっふっ、私は君のことを高く、高く、それはもう高く評価しているからねぇ』

 リィンツリーが現代の怪盗と呼ばれるのは伊達ではない。

 科学技術などが発展したいまの時代でも怪盗と呼ばれるだけあって、彼女の体術などの技術は普通ではない。

 絶対盗み出せないと言われている場所からあっさりと目当ての物を盗み出せる能力は、決して侮れない。

 だから渡部は、リィンツリーがどんな離れ業を用いても逃げられないような手段で彼女の逃亡を止めにかかっている。

 そしてそれは、服を与えるという行為でも同じだった。

 服程度があったところで、とても逃亡のための道具にはなり得ない――というのは、常識に囚われた考え方である。

 リィンツリーであれば、ボタンひとつ、ホックひとつからでも逃走を可能とする、かもしれない。

 一度逃げられてしまえば、二度と自分には捕まらないだろうことは、渡部は深く理解していた。死に物狂いで逃げることは想像に難くない。

 だからこそ、渡部は絶対にリィンツリーに逃走を許すわけにはいかなかった。

『いまはまだ、君を着飾らせるのは、私の役目ということさ』

「その役目を許した覚えはないんですけどねぇ……もういいです」

 リィンツリーはふぅ、と深く息を吐くと、軽く前屈をし始める。


 今回、完全閉鎖された部屋の中とはいえ、彼女が自由を与えられた理由。

 それは、彼女の身体が訛らないようにするためだった。

 常にずっと体を動かさないでいたら、どんな人間でも必ずその動きのパフォーマンスは落ちる。

 特にリィンツリーのような、神業めいた動きをする人間にとっては、一日二日動かないだけでもかなり致命的なものだろう。

 渡部はリィンツリーを自分のものに従っているが、それはリィンツリーという存在そのものなのだ。

 リィンツリーの身体だけあればいいだなんてことはありえない。彼女の神業めいた怪盗技術も踏まえて、全てを手に入れなければ意味がない。

 そのために、渡部はリィンツリーをいま自由にさせ、その体が固まらないように、ストレッチを行わせているのである。


 体を前に倒したリィンツリー。

 その体は真っ二つに折れたかのように、ぺたりと足に胸が付くほどに折れ曲がっていた。

 そこまでなら、体の柔らかさが自慢の人間なら出来るかもしれない。

 リィンツリーはそこから、両足を開いて、上半身を股の間を潜らせた。

『おぉッ』

 渡部の声が思わず漏れる。リィンツリーの頭は、再び上を向き、その顎が自分の丸まった体の上に乗るほどになっていた。

 まるで胴体部分が短くなってしまったかのような、ありえない軟体っぷりに、渡部は鼻息を荒くして興奮する。

『なんという……なんということだ……! さすがだ!』

「……まあ、これくらいは出来ないと」

『しかしなんというか……うん……まるで妖怪のようだな。どこかで似たような姿のマスコットキャラクターを見たような……』

 一人呟く渡部に対し、リィンツリーは体を元の状態に戻しながら、ぽつりと呟く。

「……妖怪扱いは、あまり嬉しくないですね」

『あっ……ああ! すまない! もう言わないから! 許してくれ!』

「いや、許すも何も、それを言うなら私を捕まえていい様に弄んでいること自体、許してないですからね?」

 リィンツリーが真っ当な指摘をすると、渡部は口を噤んで真横を向いた。

 あまりに子供のような誤魔化し方に、リィンツリーは深々と溜息を吐く。

「はぁ……」

 リィンツリーはその場に座ると、両足を広げて、開脚していく。

 九十度、百五十度、百八十度。

 両足をまっすぐ伸ばした状態で左右に開いた後、それを越えて彼女の足が広がっていく。

 二百、二百五十、三百。

 そしてそのまま、三百六十度向きが変わってしまった。

『んほぉっ!?』

 渡辺が興奮した様子で叫ぶのを、リィンツリーは聞き流した。

 両足が背中側でまっすぐ揃って伸びており、なんとも奇妙な状態になっていた。

 その足に向かって、リィンツリーはゆっくりその体を傾けていく。

『おおおおっ!?』

 渡部の興奮する声を鬱陶しく感じつつ、リィンツリーは体を後ろに倒し切り――真っ直ぐ伸びている両足の上に寝そべった。

 とんでもないことが起きているのだと、渡部にも理解することが出来る。

 さらにリィンツリーは、その状態で両手を使って体を起こして見せた。

 両手で体を持ち上げ、一本の太い棒のようになった体を逆立ちの要領で持ち上げる。

 股間を突き出すような格好であるため、かなり恥ずかしい体勢ではあったが、エロさを感じるより、ただ純粋に圧倒される光景であった。

 さらにリィンツリーはその体勢のまま、逆立ちで動くのと同じ要領で部屋の中を回り始める。

『な、なんと……!? 君の細腕のどこに、そんなパワーが……!?』

「白々しいですよ。とっくに調べて、私の体質についてはわかってるでしょう?」 

 リィンツリーがそう指摘すると、渡部はバレたか、と言わんばかりに頬を軽く指でかいた。

『君の身体はとても柔らかいが……脂肪ではなく、筋肉の質が酷く高いからだということがわかっている。驚きだよ。普通、強力な力を発揮する筋肉は太く、硬くなっていくものだが……君の筋肉はしなやかだ。力を発揮する時は凄まじい力を発揮するのに、脱力すると途端に柔らかく、柔軟になる』

 体質もあるが、リィンツリーはそれに加えて技術も優れている。

 恵まれた体質の体を、最大限に活かす彼女は、数十メートルはある高さの壁であろうと、ほんのわずかな突起さえあれば容易に上り、降りることが出来る。

『君の力なら、ここまでくるのも容易だろう――ね!?』

 そう軽口を叩いた渡部は、目の前のガラスの向こうにリィンツリーが張り付いたことに気付き、思わず仰け反った。

 渡部が気持ちよく話をしている間に、体勢を元に戻し、壁を駆けあがって渡部の目の前にまで昇って来たのだ。

「そうですよ。……強化ガラスであることが残念です」

 普通のガラスであったなら、リィンツリーは素手で粉砕して脱出していたことだろう。

 渡部が神経質なまでに対策を取っていたおかげで、リィンツリーは脱出の目を封じられた。

 だが、渡部をびっくりさせることが出来たのは確かなので、リィンツリーはニタリと揶揄うような笑みを浮かべる。

「ふふっ、少しは溜飲が下がりました」

 そういうと、強化ガラスから手を離して、リィンツリーは再び下に降りていく。

 そこでようやく、渡部はリィンツリーが何のとっかかりもないはずのガラスにしがみついていたことを知る。

 握力でしがみついていたのか、理屈までわからなかったが、とにかくそれが出来る何かがあるということは確かだった。

 十分高い評価を下していたつもりだった渡部だが、それでもまだ甘い評価だったことを実感し――笑みを浮かべる。

『……やっぱり君は最高だよ、リィンツリー』

 その渡部の呟きを無視して、リィンツリーはマイペースにストレッチを続けたのだった。


 リィンツリーに一泡吹かされた渡部は、彼女がどこまで出来るのかを探りたい衝動が湧き上がるのを止められなかった。


つづく

Comments

Thank you for reading! Sorry I made you wait

夜空さくら

I love リィンツリー series!


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