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夜空さくら
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ふたりで過ごす、全裸の夏 ふんどし羞恥と村のお神輿

■ 再び、全裸の夏が始まる――。

■ 田舎と祭りで『露出もの』と来れば、ネタ的には裸であれこれする奇祭をでっちあげるのが一番無難な気もしますが、このシリーズでは「ふんどし」というあり得る範疇ですーw-ウム ……まあ、展開的には大体予想通りの展開になるんじゃないですかね0w0ニヤリ

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 田舎は過疎化が進んでいると言われているが、この村の祭りの日には想像以上に多くの人が集まっている。


 地域振興課の担当者さんが仕事熱心な人で、積極的にPRを打っているのが大きいらしい。

 近くの町と村を繋ぐ無料のシャトルバスも用意されているので、毎年かなりの人が集まっていた。

 普段は人っ子一人いない境内は人と出店で溢れかえり、油断すると人ごみに流されてしまいそうになる。

「れーい! こっちでこっちで!」

 独特のイントネーションで呼ぶなっちゃんの声に導かれ、私は人ごみを抜けて境内の裏手に回り込んだ。

 人ごみの熱に当てられてしまい、額に汗が浮かんでいる。

「ふぅ……去年もそうだったけど、今年はまたすごい人ね……」

「なんつーだか忘れたけども、あいどる?の人がきちょるやうで?」

 なっちゃんが首を傾げながらいう。

 イメージ通りと言ったらなんだけど、生粋の田舎ッ子のなっちゃんは時流に疎い。

 携帯電話は使いこなしているから、機械音痴というわけではないのだろうけど、テレビもネットも新聞もほとんど見ないのだとか。

 なっちゃんらしい様子に苦笑いで応えていると、準備を取り仕切っていた人が私たちに近寄ってくる。

「正確にはユーチューバーですね。全国の祭りを紹介してる人で、ぜひ取材しに来てくださいとお願いしたのですけど……正直ここまで影響があるとは思ってませんでしたね」

「にゃおさん! お疲れさんで!」

「お、お疲れ様です」

 なっちゃんがにゃおさんと呼んだその人は、村の役所で働くお姉さんだ。

 まだ三十にもなっていない若い人なのだけど、その敏腕ぶりはこの村に来て日の浅い私ですらよく知っているくらいだった。転出入の手続きの時に必ずお世話になるから、顔見知りで当然ともいえるけど。

 にゃおさん――尼八尾(にやお)珠江という名前で、とにかく『出来る人』オーラが半端ない。

 理知的な眼鏡をかけていて、ぴしりと着こなすスーツにはシワひとつない。

 スレンダーで背が高く、比較的背の高い方である私よりなお高い。学生時代にはバレーボールをしていたというのだから、その背の高さにも納得だった。

 暑いのににゃおさんは涼し気な顔をしていた。何かコツとかあるのだろうか。

 そんなことを思っていると、にゃおさんが私の方を見た。

「綿部さん。早めに準備を始めた方がいいと思いますので、衣装に着替えて来てください」

「待っとるでなー、れい!」

「……はい、わかりました」

 私は正直いまからでも辞退したい気持ちをぐっと堪えて、解放されている本堂内へと急いだ。

 本堂内に用意された更衣室というか、更衣スペースに入る。

 色々おおらかな村だけど、更衣スペースはちゃんと男女に分かれていた。

 それはいいのだけど、その空間を分けているのはカーテン一枚で、隣で男の人たちが話しながら着替えている声がハッキリと聞こえてくる。

 カーテンをちょっと手で退ければ見られてしまうような状況で着替えることに、私はドキドキ興奮していた。

 絶好のシチュエーションともいえる状況に、うっかり露出癖が顔を出しそうになる。

(他の女の人も入って来るかもしれないし、変なこと考えてないで、急がなきゃ……!)

 頭をぶんぶんと横に振って、私は着替え始める。

 ただこの時、私が着替えていた場所と照明の位置関係のせいで、カーテンにばっちり影が映っていた。

 男性の更衣スペースから見ると、シルエットだけとはいえ、着替える様子がハッキリ見えてしまっているわけだ。

 若干きまずいような、何とも言えない空気が男性側のスペース内には漂っていた。

 もちろん、当の私はそんな些細な空気の変化に気づくことは出来ず、ただ急いで法被に着替えて行った。

 法被に袖を通していくと、改めてこれからのことが心配になってくる。

(練習と同じように出来るかな……)

 ちゃんとリハーサル自体は行われていて、問題ないことは確認しているとはいえ、不安なものは不安だ。

 私はリハーサルの時のことを思い出していた。



 数日前。

 祭りの時の動きの確認がてら、リハーサルを行うということで、私はなっちゃんと一緒に境内にやってきていた。

 屋台もかなり準備が進んでいて、屋台の骨組みはほとんど完成しているところが多かった。

 祭りの前の賑やかな喧騒を肌で感じつつ、私は集合場所である本殿の前の開けた場所へと移動する。

 そこには祭りに参加する村の人たちが集まっており、神輿らしきものが広場の中央に置かれていた。

 私がその神輿に近づいていくと、私に気づいたにゃおさんが声をかけて来てくれた。

「綿部さん。五月雨塚家のお婆様から乗り手の推薦を受けていますが、間違いありませんか?」

(ほんとに推薦してくれてたんだ、なっちゃんのお婆さん……)

 あのお婆さんがどれくらいの発言権を持っているかは正直あまりよく知らないのだけど、役所の人がその発言を受け入れれる程度には、結構影響力は大きいようだ。

「は、はい。間違いない、と思います。……正直、不安しかないんですけど」

「あなたの運動神経などに関しては、なぎさからある程度話は聞いています。神輿の上で踊るのは無理でしょう。あれはやらないことになっているので安心してください」

 そう優しく言ってくれるにゃおさん。私はほっとしつつ、ついなっちゃんがどんな風に私の事を伝えたのか気になって、ちらりとなっちゃんの方を窺った。

 なっちゃんは目を逸らし、どことなく気まずそうにしている。

(相当な運動音痴だって風に話したっぽいわね……まあ、事実だから腹も立たないけれど……)

 むしろ今回に限ってはそんな風に言ってくれたことで、無茶を言われそうにないことの方が大事だった。

「でも……ほんとに私が乗ってもいいんでしょうか? 他にも乗りたい人とか、いるんじゃ……?」

 踊るのが無理となると、乗り手としては魅力が足りなさすぎるのではないだろうか。

 そう思ったけれど、どうやら神輿の乗り手になるというのは、この村では単なる賑やかし以上の意味があるようだった。

「この村で生まれ育った子たちは、必ず一度は神輿の上に乗るんです。神輿の上に乗って初めて一人前とされていた時代もあったくらいで」

「うちも乗ったで! 五歳の時に!」

 なっちゃんがえっへんと胸を張って見せる。そんな幼い自分にあの激しい動きの神輿に乗っていたとは、さすがなっちゃんというべきか。

(ん……? でも今のにゃおさんの話と、若干矛盾するような……?)

 そう思ってにゃおさんの方に伺う視線を向けると、にゃおさんは苦笑いを浮かべていた。

「一人前の証と言われていたのは昔の話ですから。今はそこまで儀式めいた話にはなっていません。ただ、なんとなく箔がつく感じはするので、村で生まれたものにとっては経験しておきたいことではあるんです」

 仲間意識というものですね、とにゃおさんは補足してくれた。その話を聞いて、なっちゃんのお婆さんが私を乗り手に推薦してくれた理由がわかったような気がする。

 このむらに本当の仲間として受け入れるという、意思表示のようなものなのだろう。

(だったらなおさら、みっともないところは見せられないわね……)

 せっかくのお婆さんの行為を無にしてしまうわけにはいかない。

 若干のプレシャーを感じながら私が問いかけると、にゃおさんは力強く頷いて見せてくれる。

「運動神経的に神輿の上で立つことができないのであれば――座って乗ればいいのです」

 そして、とにゃおさんはかなり太めのロープのようなものを取り出す。

 とんでもないことを言い出した。

「これで縛り付けてしまえば、不意に落下することはありません」

「し、しばっ!?」

 私は自分が神輿の上で緊縛されている光景を左往してしまった。

 神輿の上に立てられた一本の柱に、両手両足を絡めて縛り付けられている自分の姿を。

 縄から逃れようと体を捻っても捩っても、羊蹄と音が鳴るだけで外れない縄の締め付けを。

 縄によってくびり出された体を、周りの見物客たちに見られる想像をしてしまう。

 想像の中の私は全裸で、縄が胸やあそこに食い込む感触に身悶えて、羞恥に身を焦がしていた。

 あそこがきゅっと反応してしまっているのを感じる。

「れーい? ぼんやりしてどしたん?」

 そんな私を正気に戻してくれたのは、なっちゃんだった。

 私のすぐ側に立ち、上目遣いに見上げてくる彼女に、慌てて取り繕う。

「だ、大丈夫。なんでもない」

「ほうか? ほいじゃ、早速試そうかぁ」

「えっ、試すって……」

 なっちゃんが指で指し示した先には、立派な神輿があった。子供神輿とはいうものの、いわゆる本当の意味で子供だけが担ぐ小さな神輿じゃない。

 少なくとも人が乗って踊ろうと思えば踊れるだけのスペースは確保されている。

 そもそも大人神輿と子供神輿という名称だって、大きさの違う神輿をそう呼び分けているだけの話だからだ。

 今は地面の上に組まれた木枠の上に置かれているから、腰の高さくらいになっている。

 その上に私はよじ登った。

「れい、どない?」

「……作りはしっかりしてるから、これなら、まあそんなに……」

 怖くないかな、と思った。机の上に立ってるみたいで、ちょっと怖くはあったけれど。

「よし、それじゃあそこの棒に跨いで座って」

「棒……? これですか?」

 神輿の上には、細い丸太のようなものが固定されていた。

 それを縦に跨ぐようにして、腰を下ろす私。

 馬にでも跨っているみたいな感覚だった。その棒自体にも高さがあるので、正座するような姿勢だと股間にその棒が食い込んできて少し痛い。でもとりあえずは体を安定させることができた。

「その状態で、ロープを使うんです」

 にゃおさんが説明しながら、私の腰にロープを巻いて、そのロープの逆の端を、跨っている棒にくくりつける。

 そのにゃおさんの行動を見て、私はようやく縛り付けるがどういうことかを理解した。

(は、恥ずかしい……! 変な妄想しちゃってた……! っていうか、そうよね、それは、そうよね……!」

 いくらおおらかな田舎町だからといって、なんでもかんでも許されるわけがない。

 私は内心の動揺をなんとか抑え込みつつ、されるがままになっていた。

 そんな私を――周囲であれこれ話していた村の人たちが取り囲む。

「わっ?」

「それじゃあ、どんな感覚なのかを理解するためにも――体験してもらいましょうか」

 にゃおさんがそう声を描けると、私を取り囲んだ村の人たちが、一斉に神輿を手に取る。

「行くぞー!」

「おーっ!」

 声を合わせ、力を合わせて――私の全身を、浮遊感が襲う。

「〜〜〜〜っ!?」

 悲鳴すら上げられない、とはまさにこのことだった。

 私は慌てて上半身を伏せて、跨っていた棒にしがみつく。胸の谷間に棒が食い込む感覚がした。

「ちょっとおじいたち張り切りすぎ! れいー! 大丈夫けー!?」

 なっちゃんが村の人たちに向かって怒ってくれている。

 彼女は背が低いので、担ぎ上げられた神輿の上で私が伏せてしまうと、下にいるなっちゃんからは私の姿が見えないのだ。

 なっちゃんを不安にさせているわけにもいかず、私はなんとか上半身を起こしてなっちゃんに顔が見えるようにした。

「だ、大丈夫、大丈夫。なんとか……うん。意外と……平気、かも?」

 相変わらず微妙に浮遊感があって落ち着かないところはあるけれど、想像の十倍くらいは安定していた。

 さすがは普段肉体労働に従事している人たちというべきか、あまり不安な感じがなかった。

「おっ。大丈夫そうじゃな!」

「ほいじゃあ、軽く境内一周すっぺ!」

「習うより慣れろゆうしの!」

「ほいがいいほいがいい!」

 神輿を担いでくれている人たちはノリのいい人たちが多いようで、一斉に動き出した。

 揺れる神輿の上で、私は体を硬くして、跨っている棒にしがみつきそうになる。

「綿部さん! しっかり体を起こして! 前を見るようにしてください!」

 動く神輿に並走しているにゃおさんが、私にそう呼びかけてくる。

「は、はいいいっ……!」

 言われるがままに背筋を伸ばして、体制を保つ私。

 胸を張ると自分の大きな胸が強調されてしまってあまり好きではないのだけど、そんなことを気にしている余裕はなかった。

「いいですよ! その調子! 本番では旗や破魔矢などを手に持ってもらいますから、そのまま手を上げる練習もしてみましょう!」

「はいいっっ!?」

 初めて聞く内容に驚きつつ、私はにゃおさんに言われるまま、しばらく神輿の上での動きを練習したのだった。

 ほんの数十分のことだったけれど、汗だくになってしまったくらいには、結構きつい練習だったと思う。



 そんなリハーサルがあって、早くも本番だ。

(別に失敗しちゃいけないってことはないけれど……やっぱり不安だなぁ……練習通りに行くかなぁ……)

 ハッピを着込んだ私。もちろんその中にはTシャツを着ているし、運動する時には邪魔にしかならない胸はスポーツブラを着用して押さえている。

 ちょっと息苦しいけれど、祭りの激しい動きでうっかりおっぱいをポロリしてしまうということは確実に防げるはずだ。

 ただ、そちらよりも問題に感じているのは、どちらかと言えば下半身の方だった。

 この祭りでは伝統的に、男も女もふんどしを身につけることになっていた。

 一応ふんどしだけでなく、白い下履きのようなものを履いてはいるのだけど、パッと見てふんどし姿に代わりはないわけで。

 定期的に丸出しにしておいてなんだけど、お尻が丸出しになっているような感覚には、なかなか慣れなかった。

(やっぱりこれ……恥ずかしい……!)

 ふんどし姿になった私は、更衣室の鏡を見てそう感じ、一層顔を赤らめるのだった。

 そんな私を、なっちゃんが呼びにくる。

「れいー。そろそろ時間やで!」

 祭りの空気に当てられてか、いつもよりニコニコと楽しそうななっちゃんも、私と同じ法被にふんどし姿だ。

 私と同じ服装にも関わらず、なっちゃんが着ると普通に健康的で活動的なだけの服装に見えるのだから、不思議なものだ。

「な、なっちゃん……変じゃ、ないかなぁ……?」

「んー? 大丈夫やで! 色っぽくて素敵やん!」

「い、色っぽ!?」

「それより、れい! 行くで!」

 私はなっちゃんに手を引かれ、神輿のところに向かったのだった。


つづく


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