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夜空さくら
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ヒトイヌ公園の裏事情 プロローグ

■ 久方ぶりにヒトイヌ公園シリーズを書きます!0w0クワッ!

■ 今回は利用者ではなく、ヒトイヌ公園で働く職員側のお話となります! ただ、職員側といっても、そこは当然ヒトイヌ公園ですのでーw-ムフフ……今後の展開にご期待ください。


※このシリーズは支援者様向けになります。100円から支援は行えますので、余裕のある方はぜひご支援くださいませ。頑張ります!0w0クワッ!

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 その巨大な有料公園は、『ヒトイヌ公園』と呼ばれている。

 ヒトイヌプレイが公に――といっていいのかはわからないが少なくともその施設内に限っては――行える場所である。

 酔狂な出資者が資金を提供しており、とても一般の有料公園とは比べ物にならないレベルの施設や設備が充実しており、それはこの公園の特徴であり、メインでもある『ヒトイヌ』に関してもそうだった。

 ヒトイヌ公園には全国各地からヒトイヌプレイの愛好家が集まっているとされているが、毎回参加者が都合よく集まるはずもない。ヒトイヌとしての利用者が来るのに頼っていては、ヒトイヌ以外の形で入場する客を満足させることなど出来るはずもない。

 ヒトイヌと触れ合えることが売りであるのに、ヒトイヌそのものがいないというのは問題だからだ。

 そのため公園では、『野良のヒトイヌ』という枠で、公園内に一定の数のヒトイヌを用意していた。

 いずれはロボットで代用することも可能かもしれないが、まだそこまでのレベルのヒトイヌロボットは存在しない。

 テーマパークでいうキャストとして、ヒトイヌを用意する必要があった。

 だが都合よくヒトイヌ適性を持ったキャストが集められれば苦労はしない。


 そこでヒトイヌ公園の運営者たちは――多少荒っぽい方法で、ヒトイヌとなるキャストを調達していた。





 私はその倉庫のような建物の前に立って、深く溜息を吐いた。

 これからのことを思うと、とても憂鬱だ。

(ああ……せめて私を買った人が殴ったり蹴ったりして来ませんように……!)

 私は借金のカタに売られてここに来ていた。

 ろくでなしの親のせいだ。親の借金を子供が背負う必要がないのは常識だけど、生憎その両親がお金を借りた相手にはそんな常識は通用しなかったようだ。

 私には妹がいて、妹を見逃すという条件で私はここにやって来ていた。

(まあ、せめて美海だけでも幸せに生きてくれたら、私が生まれた甲斐もあるでしょ……)

 頭も体もろくなものじゃない私に比べて、妹の美海はとても優秀だし、愛嬌のある顔をしている。

 今頃はきっと養子として迎え入れられて、幸せな人生を謳歌出来ているはずだ。

 私は深く溜息を吐いた後、その倉庫の入口へと移動した。

 倉庫の入口には強面のサングラスをかけたおじさんが立っていた。明らかに堅気じゃない。

 私は心底ビビり倒しながら、その人に声をかける。

「あ、あのぅ……ここに来いと言われて来た、冴島というものなのですけど……」

 警備員と思われるおじさんは、無言で私の顔を見て、なぜか訝し気な表情をした後、ドアを開いてくれた。

 入れ、ということらしい。

「あ、ありがとうございます。へへへ……」

 ぺこぺこと頭を下げながら、私はその建物の中に入る。

 そこは何とも独特な場所だった。てっきり大きな空間になっているのかと思っていたけれど、思った以上に最新の研究所のような造りになっている。

 この工場で働かされるのだろうかとぼんやり思いながら、私は周囲を見渡す。

 とにかく誰かに話を聞かなければならないと思い、受付か如何にも研究者らしい人物を探していた。

 すると、どこからともかく一人の男性が現れた。

「おや……逃げずにやって来たんですね。感心感心」

 私は思わず顔を顰めてしまった。

 その人に見覚えがあった――というか、私にここに来るように言って来た張本人だったからだ。

(私が逃げられないことなんて、あなたはよく知ってるでしょうに……)

 妹がまともな生活を送れることと引き換えに、私に自分の身を売ることを薦めて来たのはこの人だ。

 まあ、顏も頭も体もない私が、どんなに頑張っても妹にまともな生活を送らせてあげられるとは思えない。

 だから、この人の提案はありがたいと思うしかない。

「……寺沢さん。お世話に、なります」

 私はせめてもの皮肉を込めて、そう挨拶するのだった。

 これから自分の身にどんなことが待ち受けているのか知る由もなく。

 私の挨拶に対し、寺沢さんは実に悪魔的な――私の心境がそう見せたのかもしれない――笑みを浮かべたのだった。





 あたしの両親は、糞の中の糞だったらしい。

 色んなところに借金をこさえて首が回らなくなった挙句、あたしたちを置いて夜逃げしたのだとお義母さんに教えて貰った。

 まあ本当の両親についてはどうでもいい。どこかで苦しんで野垂れ死んでいろとは思っているけれど、心底どうでもいい。

 あたしの心に唯一残っているのは、その両親にあたしと一緒に捨てられた姉のことだった。

 両親はどちらも再婚で、あたしもその姉さんはそれぞれの連れ子だったので、血の繋がりはない。

 でも姉さんは私とよく遊んでくれた。実の姉さんのように慕っていたのだ。

 だけど糞な両親のせいで生活が崩壊し、姉さんとあたしは別々に引き取られてしまい、連絡も取れていない。

 面倒を見てくれているお義母さんたちにお願いしたこともあったけれど、姉さんがどこに引き取られて行ったのかはわからずじまいだった。

 あたしもつい先日お酒が呑める歳になったし、同じ親に苦労を掛けさせられた者同士、色々喋りたかったのだけど。

 いつか再会できればいいなと漠然と思っていた。

 成人したあたしは、早く働きたかった。早く自立して、育ててくれた両親にお礼をしたかった。

 だけど社会情勢の悪化などが重なり、中々普通に就職することも難しい状況だ。

 あたしはそれなりに優秀な方だと思うけれど、中々縁というものは難しく、何社にも落とされてしまっていた。

 そんな折に、お義父さんがあるコネクションを持って来てくれた。

「ちょっと特殊な仕事なんだが……いま丁度募集があるらしくてな。美海ならまず間違いなく採用されると思うんだが……どうする?」

「どんな仕事でもいいよ! 今は贅沢言ってられないし!」

 働くことさえ出来れば、ゆくゆくはそこから転職してもいいし、とにかくキャリアを積むことが重要だと思えた。

 こうしてあたしは、ある仕事場を紹介して貰えることになった。

「ところで……どんな仕事なの?」

「あー、それは実際に行って説明を受けた方がいいと思う。その上で断っても構わないが、そこで知ったことは絶対に誰にも言っちゃだめだからな」

 そう言ったお父さんが見せてくれた資料には『ヒトイヌ公園』という文字があった。


 この公園であたしは、思いがけない出会いをすることになる――。


つづく

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