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ヒトイヌ公園の裏事情 ~地下の飼育室①~

■ ヒトイヌ公園シリーズです。今回は利用者ではなく、ヒトイヌ公園で働く職員側のお話となります。

■ 姉妹の視点を交えつつ、ヒトイヌ公園の裏事情を描いていきます。ヒトイヌ公園もビジネスですので、色々工夫が凝らされているのですーw-ウム

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 ヒトイヌ公園。

 その入口に当たる建物の前までやってきたあたしは、一体どんな仕事が待っているのか、ドキドキしていた。

(こんな大きくて広い公園が、まさかヒトイヌプレイに使われてるなんて……世の中なんかおかしくない?)

 一応事前に『ヒトイヌ』とは何なのかということに関しては調べられるだけのことは調べて来ていた。

 SMプレイの一種であり、人が犬のように振る舞うプレイ、ということはわかった。

(まあ……アダルト業界とは正直思ってなかったけど……)

 お義父さんも中々思い切った紹介をしてくれたものだ。

 なんでこんなところにコネがあったんだと思ったけれど、どうやらお義父さんはアダルトグッズメーカーに勤務していたらしい。あたしが成人したから、教えてもいいだろうと思ったみたい。

(ちょっとびっくりしたけれど……まあ、そういうところで働くことに偏見はないし)

 そういう業界も世の中には必要だということくらい、思春期で潔癖な子供じゃあるまいし、理解している。

(まぁ……愛用してるクリバイブがお義父さんの会社で開発されたものだったっていうのは、ちょっと複雑だけど……別にお義父さんが作ったわけじゃないしなぁ……)

 メーカー名を聞いた時本当にびっくりした。

 親には内緒で買ったアダルトグッズだったから、偶然とは本当に怖い。

 さて、それはともかく。

 あたしは意を決して、その建物の入り口を潜る。

 中はホテルみたいな清潔で広いエントランスが広がっていた。

 受付があって、そこに座っていた受付の女の人が、私に向かって笑顔を浮かべる。

「いらっしゃいませ。初めてご利用ですか?」

「あ、いえ、すみません。あたし、面接をお願いしている、萩原美海です」

「……あっ。失礼しました。萩原様ですね」

 受付の人はそう言うと、電話で連絡を取り始めた。

「担当の者がすぐ参りますので、少々お待ちください」

「あ、ありがとうございますっ」

 あたしはそう応えながら、ドキドキし始めているのを感じていた。

(うー、こういうの緊張するんだよねぇ……ハキハキ喋れてて凄いなぁ……)

 大人しく待っているだけでいいんだろうか。何か話をするべきか。

 あたしがそんなことを思っている間に、建物の奥から面接を担当してくれると思わしき男の人が現れた。

「こんにちは。初めまして、萩原さん。いやあ、貴女のお父様には、随分お世話になっておりましてね。貴女の話もよく聞かせてもらっていましたよ。引き取って育てている子がとても可愛らしくてついつい甘やかしてしまうとか。写真なんかも頻繁に拝見しておりましてね」

 流れるような勢いで話し始めるその人に、あたしはちょっと圧倒されてしまった。

「そ、そうなんですか……ははは……ちょっと照れくさい、ですね……」

 愛想笑いでそう応えるのが精一杯だ。

「……っと。失礼しました。それでは早速ですが、この公園でどういったことを行っているのか、どんな仕事があるのか、ご案内いたしましょう」

「え? 面接……するんじゃないんですか?」

 思わずそう問いかけると、その人はニッコリと笑う。

「ああ、面接とはいいましたが、採用試験とは少し違うのですよ。なにせ、特殊な職場ですので、どちらかというと貴女がここで『働けるか』という方が大事です。なので、仕事の説明から始めます」

 どういうことだろう。

 あたしは不思議に思いつつ、面接しなくて済むならそれでもいい気がしてきた。

(面接苦手だし……うん。でも働けるかどうかってどうやって見極めるんだろう?)

 案内しようとしてくれた男の人は、「そういえばまだ名乗っていませんでしたね」といい、改めて名乗ってくれた。

「私はヒトイヌ公園の管理主任を務めております、寺沢と言います。どうぞお見知りおきを。萩原さん」

 こうしてあたしは、寺沢さんの案内に従って、ヒトイヌ公園の地下へと向かったのだった。





 私が寺沢さんに案内された私を待っていたのは、なんとも奇妙な空間だった。

 広い地下室に、様々な機械が置かれている。

「……寺沢さん、ここで私は何をすればいいんですか?」

 研究員らしき人たちが動き回っているのが見えていた。

 この様子だと、何かの人体実験に使われてしまうのだろうか。

(出来るだけ痛くなければいいなぁ……)

 そんなことを考えてしまう私だったが、寺沢さんは「すぐわかりますよ」と言って歩き続ける。

 私がその後ろについて行っていると、ある部屋の前に辿り着いた。

「さて……まずはこちらの部屋に入って、後のことは指示に従ってください」

「は、はぁ……」

 私はどういうことが待っているのか心の準備をさせて欲しかったのだけど、寺沢さんはそれ以上何も教えてくれなかった。

 立場上、尋ねることも出来ず、言われたままその部屋に入る。

 中は殺風景な部屋で、何やら着替えらしきものが机の上に置いてあった。

『まずはいま着ている服を全部脱いで、仕事着に着替えてください」

「……! 全部、ですか?」

『下着類も含めて全部です』

 淡々とそう告げられて、私は溜息を吐いた。

 早速来たという気持ちと、私の貧相な身体に需要があるのかという気持ち。

 色々と思うと事はありながらも、私は着ていた服を脱いでいく。

 幸いというべきか、更衣室で脱いでいるものだと思えば、そこまで恥ずかしくはない。

 十中八九カメラとかでは見られているだろうけど、直接見られていないだけでだいぶマシな気持ちだった。

 手早く服を脱いで、着るように言われた服を手に取り――目が点になった。

「服って……これ……なに……?」

 用意されていたものは、私の想像する『服』とはまるで違うものだった。

 まず材質がそもそも布じゃない。つるつる、てかてかしてるそれは、ライダースーツとか、ダイビングスーツみたいなものだった。

 おおよそ普通の服とは違う。

(これ……普通に着れるの……?)

 全身タイツみたいに引き伸ばして着るタイプみたいだけど、ぱっと見物凄く首の穴は狭い。

 素っ裸のまま、その手を前に暫くおろおろとしてしまう私。

 そんな私に、声がかけられた。

『着方がわかりませんか? 意外と引き伸ばせるので大丈夫ですよ』

 気遣ってくれているような、そんな優しい声だった。

 もっと怒鳴り散らされる扱いを想像していたので、少し意外だ。

「わ、わかりました……」

 とにかく着て見ないことには話が進まない。

 私は首の穴を大きく引き伸ばしながら、その不思議な材質の服に足を通していく。

 思ったより強い抵抗感があった。独特な材質が産む独特な感触は、いままで私が着て来たどんな服とも一致しない。

(こんなテカテカした服着たことないものね……っと……!)

 その服の内側には薄く潤滑油のようなものが濡れていたようで、体にそれが馴染み始めると、思ったよりも楽にその服を身に着けることが出来た。

 ピチピチした服に体が引き締められる。

(……なんだろう……すごく……エッチじゃない、これ?)

 肌に張り付いて来るせいもあって、体のラインが凄く浮き上がってしまっている。

 本来の私のスタイルはそう優れたものじゃないはずなのに、この服を着ると案外胸があるように見えるし、腰の括れもかなりあるように見え、お尻もかなりの張りがあるように見える。

 鏡はないから自分の体を見下ろすことしか出来ないけれど、かなり見た目はいい具合に整えられていた。

(うー……やっぱり、体を売ることになるのかぁ…………美海がここに連れて来られなくて良かったと思おう……)

 その覚悟はしていたから、私は特にショックではなかった。

 ただ、妹を巻き込まずに済んで良かったと思う。

『着れましたね。それではそのまま、隣の部屋に進んでください』

 寺沢さんの声がそう呼びかけて来る。

 私は言われるままに、入って来たのとは別の部屋に続くドアに手をかけた。

 その先の部屋には、たくさんの犬が――ヒトイヌが、いた。

「ひゃ……っ!」

 目に飛び込んで来た非現実的な光景に、思わず身を竦ませてしまう。

 そこはまるで牛舎のように、いくつにも区分けされた大きな部屋だった。

 ざっと見ただけでも、十人くらいのヒトイヌが、それぞれに割り振られた区画で思い思いの行動をしている。

 吸水装置のようなものから水を飲む者、区画の中でぐるぐる歩き回っている者、寝転がって体を休めている者、様々だ。

 私はさっぱりだったけれど、そういったジャンルに詳しい者であれば、『人間牧場』と称するであろう光景がその部屋には広がっていた。

 ヒトイヌたちは、それぞれ拘束具合に差こそあれ、皆拘束具を身に着けていた。

 まともに手足が使えるヒトイヌはおらず、場合によっては頭まで厳重に拘束具に覆われていて、顏どころか皮膚すらまともに見えない者もいる。

(わ、私もこんな風に扱われるのね……!)

 そして男の人たちの前に引きずり出されて、いいように扱われてしまうのだろう。

 人間扱いさえすらして貰えそうにないことに、胸中に絶望が広がっていく。

 そんな私の元に、寺沢さんが近づいて来た。

「冴島さん。こちらに来てください」

「は、はい……っ」

 私は男の人の前にこの姿で立つことに羞恥心を掻き立てられつつ、とにかくいまは従うしかなかった。

「はいこれを首に巻いてください」

(来た……っ!)

 犬と言えば首輪だろう。

 私はこれから人としてではなく、ヒトイヌとして辱めを受けることになるのだ――と覚悟していた。

 けれど、寺沢さんが私の手に置いたのは、普通の首輪ではなく、何やら識別タグらしきものが付いたネックレスのようなものだった。

 予想外なものを渡され、思わず尋ねる。

「こ、これは……?」

「職員を識別するためのタグですね。貴女の姿はとてもややこしいので、ヒトイヌとの区別をつけるために身に着けて置いてください」

「く、区別?」

 どういうことだろう。

 てっきりヒトイヌ扱いで辱められると思っていたのに、何やら風向きが違うようだ。

 私がハテナマークを大量に浮かべていると、寺沢さんはそれを察してくれたのか、説明してくれた。

「ああ、あなたにしていただきたい仕事は、ヒトイヌになることではありません。人手不足の時はそうしてもらう時もあるかもしれませんが、普段の仕事は別にあります」

 意外にも、私に求められているのはヒトイヌとしての役割ではなかったのだ。

「ここにいるヒトイヌたちは一般入場者……つまりはお客さんじゃありません。公園側で用意している『野良の』ヒトイヌたちなんです」

「野良……? 用意している……?」

 理解が追いつかない私に対し、寺沢さんは丁寧に説明してくれた。

「要はサクラという奴ですよ。貴女のように借金を背負ったり、自ら志願したり、境遇は様々ですが……公園に常に一定の数のヒトイヌがいるよう、用意しているんです」

 想像以上に、公園の規模は大きいようだった。


「冴島さん、貴女には彼女たちのお世話をしていただきます」


つづく

Comments

とても良いです!こんな話が大好きです。人間犬公園はとても良いです。

goremz


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