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夜空さくら
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ヒトイヌ公園の裏事情 ~ヒトイヌ公園が繋いだ縁①~

■ ヒトイヌ公園シリーズです。今回は利用者ではなく、ヒトイヌ公園で働く職員側のお話となります。姉妹の視点を交えつつ、ヒトイヌ公園の裏事情を描いていきます。

■ ヒトイヌ公園で再会した姉妹。なし崩し的に、そのままヒトイヌプレイを行うことになるのでした(ΦωΦ)フフフ…

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 あたしには、かつてお姉ちゃんがいた。

 再婚した親の連れ子同士で、血の繋がりはなかったけれど、十歳年上のお姉ちゃんはあたしの面倒をよく見てくれていた。

 優しくて、柔らかくて、温かくて。

 あたしには実のお母さんに愛された経験がなかったから、お姉ちゃんが親代わりみたいなものだった。

 あたしはお姉ちゃんにとても懐いていたし、お姉ちゃんもあたしを大事に思っていてくれたと思う。

 けれどある時、糞みたいな両親たちがあたしたちを残して行方をくらまし、あたしとお姉ちゃんは別々の家に引き取られることになった。

 当時のあたしにはどうすることも出来なかった。

 お互い無事に暮らしていくためには、そうするしかないというくらいのことはわかっていたからだ。

 お姉ちゃんと連絡を取りたかったけれど、あたしと違ってお姉ちゃんがどこに引き取られたかはわからなかった。

 あたしを引き取ってくれた両親も協力してくれたけど、どうしても辿れなかったらしい。

 いつかどこかで出会えたら――共に本当の両親に苦労を掛けさせられた者同士、お酒でも酌み交わしたいとは常々思っていたのだけど。

 それがまさか。


「ヒトイヌ公園で再会することになるとはねぇ……」


 色んな感情を込めて呟く。

「ほんと、こんな偶然ってあるのね……」

 お姉ちゃんは困ったように顔に手を当てて溜息を吐いていた。あたしも似たような気分だ。

 嬉しいのだけれど、場所が場所で、状況が状況で、格好が格好だけに、なんとも複雑な気分だ。

 あたしはぴっちぴちのラバースーツ姿だし、お姉ちゃんはヒトイヌ拘束用のラバースーツを身に着けているところだった。

 一端着替えを中断し、更衣室をそのまま使わせてもらって話をしている。

 あたしとお姉ちゃんが知り合い――というか元家族――ということが判明し、寺沢さんが特別に時間を作ってくれたのだ。

「今のところ来園者はいないみたいだからな……でもいつか来るかわからないし、休憩を前倒しってことで一時間くらいで切り上げるようにしてくれ」

 そう告げた寺沢さんは気を利かせて席を外してくれている。

 割とフレキシブルに対応してくれる職場で助かった。

 いや、決してまともな職場ではないのだけど、そういうところはホワイト運営で助かる。

 あたしたちはヒトイヌ公園に来た経緯をお互いに話し合い、あたしは初めてお姉ちゃんが十年前からここで働いていたことを知った。

「……じゃあ、あの離れ離れになったすぐ後から、お姉ちゃんはずっとこの公園で働いてたの?」

「ええ。一応、従業員としてなんだけど……事情が事情だったから、暫くは外との連絡とか、外出は禁止されてたの。私としても、美海が普通に暮らしていけてるなら、それでいいと思ってたし……」

 それに仮に連絡が取れたとしても、『ヒトイヌ公園で働いているから大丈夫』とは言えないだろう。

 当時のあたしはまだ未成年だったし、成人したてとはいえ、ちゃんと大人だったお姉ちゃんは濁すしかなかったはずだ。

(よかったぁ、実は嫌われてたとかじゃなくて……うん、そういう事情なら連絡できなくても仕方ないよねぇ)

 あたしは内心うんうんと頷いていた。

 お姉ちゃんと連絡出来なくなって、繋がりが切れてしまったように感じていたけれど、実際はずっとあたしのことを想っていてくれたのだ。こんなに嬉しいことはない。

 それに、あたしとはヒトイヌ公園に辿り着いた事情が違うとはいえ、お姉ちゃんが酷い扱いを受けていたわけではないこともわかったのだから。

(無駄に色々ホワイト環境だもんね、この公園……それに……)

 あたしはじっとお姉ちゃんの顔を見つめる。

 視線を感じたのか、お姉ちゃんはその頬を可愛らしく朱に染めた。

「な、なぁに? 美海。私の顔に……何かついてる?」

「ついてるっていうか……お姉ちゃん、あんまり変わらないなぁと思って」

 お姉ちゃんと離れ離れになってから、およそ十年ほどは経っている。

 その間にあたしも成人したけれど、別れた時点で成人していたお姉ちゃんは、いまは三十路に差し掛かる年齢のはずだ。

 けれど、お姉ちゃんは全くそんな感じには見えない。

 まだ十代……さすがにセーラー服は違和感があるかもしれないけれど、今年から働き始めた新卒の新社会人ですと言っても違和感がない。むしろ自然だ。

 そんな思いを込めてあたしが呟くと、お姉ちゃんはその若々しい顔に苦笑を浮かべた。

「美海、わかってるでしょ? その理由」

「……まあね。降旗さんのこと知ってるし」

 五十歳を超える降旗さんですら、あたしたちとそう変わらない、若々しい美貌を保っているのだ。

 三十歳そこらのお姉ちゃんが、ヒトイヌ公園の技術を用いて若く見えないわけがない。

「ほんと、めちゃくちゃよね……あたしとほとんど年齢変わらないように見える」

「美海はすっかり大人っぽくなったわよね……お姉ちゃん、感動しちゃう」

 ほろりと涙を流すお姉ちゃん。見た目は若々しくても年相応に涙腺は弱くなっているようだ。

「美海?」

 思考を読んだのか、お姉ちゃんがニッコリと笑顔を浮かべる。

 年齢の話は、お姉ちゃんといえど軽率に触れてほしくないらしい。

「な、なんでもないよ! それより……これなら、双子コーデとか映えそうじゃない? 外出制限とかはまだあるの? ないなら今度一緒に出掛けようよ!」

 誤魔化しで口にした提案だったけれど、行きたいのは確かだった。

 お姉ちゃんもそう思ってくれているのか、嬉しそうに笑ってくれる。

「いいわね。申請は必要だけど、外出も自由に出来るようになってるから、行きましょ。最近流行してることとか教えて欲しいわ」

 公園に泊まり込みでずっと務めていると、どうしても世間の情報に疎くなってしまうようだった。

 あたしとお姉ちゃんは暫し話に花を咲かせる。

 そんなあたしたちのところに、寺沢さんが戻って来た。

「二人とも。すまないがそろそろ準備に取り掛かってくれるか? いま初来園の客が来たらしくてな。ヒトイヌ入園希望だから入園まで時間はかかると思うが……」

「あ、はい。わかりました」

「はーい」

 せっかくヒトイヌ公園に来たのに、自分以外のヒトイヌが一頭もいないのでは、公園に来た甲斐がない。

 そういうことを防ぐために『野良のヒトイヌ』の役割があるのだから。

 あたしは寺沢さんにそう答えつつ――ふと、お姉ちゃんと目が合った。

 いまさらながら、これからお姉ちゃんを拘束しなければならないのだということに思い至り、ドキリと心臓が跳ねるのを感じた。



 まさか美海がヒトイヌ公園で働くようになっていたとは、想像もしていなかった。

 別れた時はまだ結構小さかったように思うのに、いまではすっかり大人の女性だ。

(幸せに暮らせていたみたいでよかった……)

 美海を引き取ってくれた人が良い人で助かった。

 私は美海が引き取られた先のことを知っていた。連絡は禁止されていたから出来なかったけれど、何年かごとに美海の近況については教えて貰っていたのだ。

(写真とかじゃ、確かなことは何もわからなかったものね……それにしてもまさかヒトイヌ公園に就職しに来るとは思わなかったけれど……)

 縁というのは奇妙なものだ。

 私はしみじみとそんなことを考えていた。

 寺沢さんの計らいで、美海と十年ぶりにゆっくり話すことも出来た。

 今後は会おうと思えばいつでも会えるかと思うと、こんなに嬉しいことはない。

「そろそろ準備に取り掛かってくれるか?」

 戻って来た寺沢さんにそう促され、私は頷く。

(美海と気兼ねなく遊ぶためにも、仕事をしっかりこなさないと…………あ)

 いまさらながら、私はそもそも美海がこの地下室に降りて来た理由を思い出す。

 ヒトイヌ拘束は一人で行うのは難しい拘束だ。

 だから補助が必要になる。美海に求められているのは装着の補助だ。

 そう、装着を補助してもらわなければならない。

(義理とはいえ、妹にヒトイヌ拘束をしてもらうの……?)

 しかも放流するだけの野良と違って、美海には公園の中まで着いて来て貰うことになる。

 美海がラバースーツを着ているということは、そういう趣向だからだ。

(…………さ、さすがに恥ずかしいんだけど……!)

 美海に色々大事なところを見られることにもなる。

 果たして美海はどう思っているのか――こっそり様子を窺ってみると、美海もかなり気まずそうな様子だった。

(やっぱり、戸惑うわよね……っ、寺沢さんにお願いして、今回は別の人に……)

 そう考え、求めようとした私の前で、美海が道具入れの方へと向かう。

「えっと、ここの奴を使えばいいんだよね……ですよね?」

 躊躇なくそう尋ねる美海に対し、寺沢さんは頷いた。

「どの程度の拘束度合いにするかは、二人で決めてくれて構わないが、時間をかけすぎないように頼むよ」

 そう告げた寺沢さんは、そのまま部屋から出て行った。

 私と美海が再び二人きりになる。

「み、美海……その……」

「えっと……し、仕事だし? あたしにこの係が回って来たってことは、ほんとに手が足りてないんだろうし」

 美海はそういって、道具を漁っていた。

「お姉ちゃんは、あたしに補助してもらうの、嫌?」

「嫌、というか……」

 純粋に恥ずかしいだけなのだけど。

 けれど美海から「仕事だから」と言われてしまうと、私から強く拒否するのもおかしい気がする。

(し、仕事だからっていうのは、まあ、その通りよね……)

 恥ずかしいことさえ目を瞑れば、それで済むことではある。

 私は覚悟を決めることにした。

(美海がこう言っているのに、私が拒否するのも……変かしら)

 なんとなく空気に流されているような気もしつつ、私は美海が拒否しないのならと、美海の補助を受け入れることにした。

「そ、それじゃあ……お願い、ね」

「う、うん。任せて! ……でも、あんまり自信ないから、どれから付ければいいのか、教えてくれる?」

 それは、自分が身に着けるヒトイヌ拘束具のことを説明しながら、美海にそれを着せてもらうということ。

(め、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……! が、我慢、我慢……っ)

 私は顔が赤くなるのを感じつつ、美海に説明することになった。

 美海もまた恥ずかしいという気持ちはあるのか、赤い顔をしつつ私の説明を真剣に聞いていた。





 カメラ越しに、寺沢と降旗は二人の様子を眺めていた。

 降旗はニヤニヤと楽し気に、二人がやり取りをしているのを観察している。

「まさか二人が義理とはいえ姉妹だったとは……これは実に面白いことになったねぇ。一応聞くけど、仕込んでないんだよね?」

 降旗がそう寺沢に確認を取ると、彼はしみじみと頷く。

「仕込むのなら、もっと劇的な再会を演出しますよ。どっちかがヒトイヌになっている時に、その世話役として配置するとか、両方ヒトイヌになるようにして、見ず知らずのヒトイヌ同士として絡ませるとか」

 その方がお互いの正体を知った時の驚きにも繋がるし、見世物としてはよいインパクトを与えるものになるだろう。

 そう告げる寺沢に対し、降旗は「だよねぇ」と同意して呟く。

「そう考えると、再会のシーンが映像に残ってないのは悔やまれるね……うむむ。再現映像を撮ったらやらせっぽくなっちゃうしな……」

「というか、二人は正式に雇用している従業員なんで……勝手に撮っちゃダメですよ。訴えられますよ?」

「固いことはいいっこなしだよ! いまはともかく、いずれそういう売り出し方もすることになるかもしれないし……映像に残しておくのは悪いことじゃないさ!」

「後々二人に怒られても、私知りませんからね」

 寺沢がそうため息交じりに忠告する。

 降旗はその忠告を軽く受け流しつつ、二人の様子を記録し続けていた。


 画面では丁度、美海がアナルプラグ付きの尻尾飾りを手にしているところだった。


つづく


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