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その⑩ ヒトイヌ公園の裏事情 ~ヒトイヌ公園が繋いだ縁④~

■ ヒトイヌ公園シリーズです。今回は利用者ではなく、ヒトイヌ公園で働く職員側のお話となります。姉妹の視点を交えつつ、ヒトイヌ公園の裏事情を描いていきます。

■ サクラとして振る舞っているつもりが、ずぶずぶ深みに嵌っていく……(ΦωΦ)フフフ…こういう『フリ』をするプレイとしては王道な展開ですよねぇ。

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 体育館のような屋内遊技場に入る前に、利用者さんに倣ってお姉ちゃんの手足を拭く。

「……よし、綺麗になったよ」

「ンぅう」

 お姉ちゃんは唸り声でそう応えると、早速屋内遊技場の方に進んでいった。

 一緒にやって来たヒトイヌ利用者の人は、すでにその中に入って、柔らかいクッションの山の中にダイブしていた。

 本当の犬みたいに無邪気だなと思ったけれど、どうやらクッションの山に突っ込むついでに、体を休めているらしい。

(なるほど……犬らしく振る舞うのと同時に、そうやって体を休めてプレイを長く楽しんでるわけだ……)

 お姉ちゃんも同じように体を休めていた。

 あたしはその後について行きつつ、お客さんと話をする。

「ここにはよく来るんですか?」

「ええ。ここは一口と他の施設の間にあるから、休憩スポットとしても丁度いいのよね」

「へえ……確かに、便利そうではありますね……」

 色々道具も置いてあるし。置いてある道具の中に、いかにもなアダルトグッズがあるのには、気付かないふりをしよう。

(……そういえば、そういうのも使うことがあるのよね……お姉ちゃんに使う気はしないけれど、でも、お客さんに扮するならちょっとくらいは使った方がいいのかな?)

 そんなことを考えながら話をしていると、ふとどこからともかく視線が向けられているような気がした。

 監視カメラで降旗さんが見ているのかと思ったけれど、カメラがある方向とは違う方向から視線は向けられているように感じる。

(……なんだろう? どこから……?)

「……あ、来てるわね。観客が」

 お客さんが見ている視線の方向を見てみれば、確かに体育館の二階席的な場所に人影が見える。

 硝子越しなのでいまいち姿は見えないけれど、数名はいるみたいだ。

(あの人たちはどういう立ち位置の人なんだろ? わざわざ、人のヒトイヌを見るためだけに来てる……ってわけじゃないと思うけれど)

「あの人たちのことは気にしなくていいと思うわよ」

 視線を辿ってみていることに気付かれたのか、お客さんがそんなことを言い出す。

「どうしてですか?」

「あそこにいるあの人たちは、いわゆる一般入園の人たちだから……全員との触れあいOKと主張していない限り、関わってくることはあんまりないの。あの人たちが求めているのは、フリーで触れあうことが出来る野良のヒトイヌだからね」

 こそこそとそんなことを話して聞かせてくれるお客さん。

 どうやらそういう常識というか、マナーみたいなものが徹底しているようだ。

「野良、って言っても、実際は公園が雇ったりとかして用意してるヒトイヌなんだろうけどねぇ」

 ドキリとした。サクラとして潜り込んでいるあたしたちのことを理解しての発言かと思ったからだ。

 だけど、お客さんは特にこっちのことを言及しようとする様子はない。

 どうやら、公園内をうろついているヒトイヌの中に、そういう雇われた野良がいるというのは、お客さんの間でも暗黙の了解になっているようだ。

(……まあ、それはそうか……よっぽど察しの悪い人でもない限り……そういう裏事情があるのは察することが出来そうだもんね)

 毎回人が入園する度に、都合よくフリーのヒトイヌがいるなんて、普通に考えて怪しすぎる。

 公園側で用意していると考えるのは凄く自然だろう。

(だとすると、こっそり用意する意味なんてないんじゃ……いや、だからこその、あたしか)

 完全な運命の出会いを提供することは叶わなくとも、あたしのような存在がいれば、少なくともお客さんの目を楽しませることは出来る。損させた感じがしないというのは、とても重要なことだ。

(……でも通りでさっきからずいぶんあたしに視線が向けられているわけね……むずむずする)

 あたしは自らこんな格好をしているのだと主張するため、体を隠したりしていなかった。

 なので、ラバースーツに包まれた乳房の揺れや、スーツがぴっちり張り付いた股間などに視線が向けられているのを感じている。

 じっと見つめられているのがわかって、むず痒い。

「…………ん」

 あたしは胸がドキドキして、激しく高鳴っているのを感じていた。

 一緒にいるお客さんと何気ない会話を繰り広げている間にも、じーっと見られているのがわかる。

(……少しは、動いて見せた方が、いいのかしら)

 細かい指示は一切出されていなかったから、どうすれば正解なのかがわからない。

 あたしは恥ずかしい気持ちを押し殺し、遊んでいるお姉ちゃんの方に向かって歩いて行った。

「おね……んんっ。えーと……そ、そろそろお水飲んどいたほうがいいんじゃない?」

 そう呼びかけつつ、致命的なことを忘れていることを思い出した。

(お姉ちゃんって呼ぶのはさすがにまずいよね!? 呼び名とか、決めとかないとだった……!)

 かといってこの場で確認し合うのも変だ。あたしは内心冷や汗を掻きながら、お姉ちゃんに近付いてその頭を撫でる。

 お姉ちゃんは不審そうな顔でアタシを見上げて来ていた。口枷があるからお姉ちゃんは喋れない。

 あたしが何とかするしかない。

(かといって……いますぐ思い付きはしないし……名前を呼ぶ機会がないように祈ろう……)

 そう思いつつ、あたしはお姉ちゃんが体を足に擦りつけてくるのを、大人しく受け入れる。

 そんなお姉ちゃんが、吸水ポイントらしきところに連れて行ってくれた。

 ここで用意されている水分補給のやり方は二つある。

 一つはヒトイヌが一人でも水分補給が出来るタイプの給水所。

 口の中にその管の先端を突っ込み、口内のギミックによって水分補給を行う。

 もう一つは、ヒトイヌの飼い主が水を与えるために作られた、哺乳瓶型のものを使うこと。

 中身は効率的に水分その他を補給できるよう、特別な水になっているらしい。

 あたしは吸水ポイントに置かれていたその飲み物を取り出す。

(お姉ちゃんにはあたしがついているわけだし、まあ、こっちだよね……お姉ちゃんなのに赤ん坊にミルクあげるようなやり方をするのはちょっと抵抗があるけれど……)

「ンぅ?」

 足元にすり寄って来ているお姉ちゃんが、そう呻き首を傾げながら問いかけて来る。

 あたしは何でもないよと答えつつ、その哺乳瓶状のそれを持ってしゃがみ込んだ。

(……やっぱり犬と言えば、これでしょ……!)

 これはあたしの趣味じゃない。趣味じゃないけれど、野良としての役割を果たすのであれば、このやりとりは必須だと思う。

「おねぇ……っ、んんっ! お、おてっ!」

 お姉ちゃん相手に何をやっているんだろう。

 そんな気持ちにもなりつつ、あたしはお姉ちゃんに芸をさせる。

 人間の腕が半分に折り畳まれた『前足』を、お姉ちゃんはあたしの掌の上に置いてくれる。

「よし、おかわり!」

 今度は反対の前足だ。

「おすわり!」

 お姉ちゃんは器用に体を動かし、その場にお尻を突く。

「伏せ!」

 そのままぺたりと上半身も地面に密着させるお姉ちゃん。

 豊かに膨らんだ胸が潰れて、苦しそうだったけれど、なんとかやり切っていた。

 そんなお姉ちゃんのヒトイヌとしての動きを見ていたら、なんだかすごくムラムラして来た。

(んん……どうもなんだか変な気分になるなぁ……)

 あたしはそんなことを考えつつ、お姉ちゃんの口にその哺乳瓶の先端を差し込んだ。

 挿し込んだ先端は、口枷と接続され、お姉ちゃんの喉がごくりごくりと嚥下する。

 すでにかなり喉が渇いていたのか、かなりの勢いで飲んでいた。それだけ水分を欲していたということだろう。

 あたしは全てを飲み干したお姉ちゃんの頭を自然と撫でてしまう。

「よしよし……偉いよ、お姉ちゃん」

 後半は誰にも聞こえないように声を絞って、お姉ちゃんだけに伝える。

 お姉ちゃんは恥ずかしそうに体を捩り、ぷるぷると震えていた。ぶんぶんと尻尾が左右に触れているのは、嬉しさを表しているのだろうか。

(お姉ちゃん、可愛いなぁ……)

 ポーズなのだろうとは思うけれど、それにしてはお姉ちゃんは可愛すぎた。

 そんな風に思いながらついお姉ちゃんの頭を撫でていると、一緒にここに来たお客さんが、連れているヒトイヌを仰向けにひっくり返し、そのお腹を撫で摩ってあげていた。

「よーしよしよし。ここまでよく頑張ったわね」

 頭だけを撫でるより、よほど犬に対する振る舞いに見える。

 あたしがちらりとお姉ちゃんの様子を見ると、お姉ちゃんは少しの間逡巡した後、恐る恐るあたしの側でころんとひっくり返る。

(な、撫でろってこと? お姉ちゃん……)

 そういう主張をして見せているお姉ちゃんは、こくりと頷いた。ぶんぶんとお尻に刺さった尻尾飾りが揺れている。

 もう一頭のヒトイヌの振る舞いを見て、自分もそうして欲しくなった、というアピールだろう。芸が細かい。

(お姉ちゃんがそういうなら……!)

 あたしはひっくり返ったお姉ちゃんのお腹を掌を広げて撫で回し始める。

 よしよし、と撫でていると、お姉ちゃんはくすぐったそうにその身を捩った。

「んぅう……っ、んぅ……ッ」

 お姉ちゃんはお姉ちゃんだけど、そんな風に可愛らしく体を捩っているところを見ると、いけない気持ちになって来る。

 ふと、お客さんの方を見ると、健全にお腹を撫で回していただけのお客さんが、その撫でる範囲を広げて、胸や股間までも撫で回していた。

「きゅぅっ……! くうぅつ……っ!」

 微かに聞こえて来るヒトイヌの声音が、妙に甘ったるく耳に響いた。

(くぅ……っ! なん、だろ……すごい、変な、気分……っ)

 あたしの場合は、自分もラバースーツを着ているというのが影響しているのかもしれない。

 無性にむずむずして、体の芯が熱くなるような感覚があった。

(こ、これはあくまで、利用者を装うためだから……っ)

 本物のお客さんの真似をするのは、とてもそれらしい行為だろう。

 あたしはそんな風に自分に言い訳をして、お姉ちゃんの体に手を這わせ始めてしまった。

 最初はゆっくりおっかなびっくり、お姉ちゃんの胸に手を伸ばす。

「ンゥっ……!」

「わっ……! ご、ごめんっ」

 柔らかい双丘に触れた途端、お姉ちゃんがびくりと反応して体を丸めた。

 その反応にこっちまで驚いてしまい、慌てて手を引っ込める。

 けれど、お姉ちゃんもあたしがどうしてそこに触れようとしたのかは理解しているらしく、すぐに大人しく体を開いて、あたしの手にその身を委ねてくれた。

 あたしはドキドキする気持ちを抑えながら、お姉ちゃんの胸に改めて触れる。

 ラバースーツ越しとはいえ、その胸の柔らかさは余すことなく伝わって来た。

(や、やわらか……っ、お姉ちゃん、こんなに、だっけ……!?)

 お姉ちゃんと一緒に暮らしていた頃は、こっちはまだ幼かったから、正面から抱き着いたことは何度もあった。

 その時はこんな感触がしていたように思わない。

(……いや、単にあたしが意識してなかっただけ、かな?)

 その頃からお姉ちゃんの胸は結構大きかったように思う。

 幼い頃のあたしは、そういう風に感じていなかっただけで。

 つまり、あたしも大人になってしまった、と言えるのかもしれない。

(で、でもこれは仕事、だから……っ! 興奮しちゃだめでしょ、あたし!)

 あたしは自分にそう言い聞かせつつ、興奮しすぎないように注意してお姉ちゃんの体を撫で回し続けた。

 それにしても、お姉ちゃんの体は柔らかくて、気持ちいい。

 いけないことをしている気分も相成って、興奮しないでいることは不可能だった。

(おまたも……触った方が自然、だよね……?)

 恋人という設定で来ているのだし、そこにも触れないわけにはいかない。

 さすがにお姉ちゃんのそこに触れたことはいままで一度もない。というか、そもそも人のそこに触れたことがない。

 心臓が口から飛び出しそうなほど激しくビートを奏でているのを感じつつ――あたしはお姉ちゃんの秘部に触れた。

「ンゥッ!」

 すると、思った以上に激しい反応があった。

 腰がびくんと跳ね上がってきて、びっくりした。

「わっ、ごめん! 痛かった?」

 そうお姉ちゃんに問いかけたけれど、お姉ちゃんは涙目でぶんぶん首を横に振っていた。

 じゃあなんでそんな激しい反応を――とプチパニックを起こしかけていたら、お客さんが囁いて来てくれた。

「あの……もしかしてなんだけど」

 恋人のフリをしているのがバレたのかと思ったけど、そうじゃなかった。

 いや、いっそその方が良かったかもしれない。

「その子――おしっこに行きたいんじゃないかな?」

 お客さんの指摘に、お姉ちゃんは真っ赤な顔をして頷く。


 どうやらあたしがよかれと思って飲ませた水は、そういうプレイのために自然とヒトイヌを催させるための小道具だったようなのだ。

 つまり、あたしは普通の水を取ったつもりで、利尿剤入りのものを手に取っていたのだ。


つづく


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