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夜空さくら
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百合学園の特別指導プログラム⑤

■ 百合学園で、特に生活態度などが悪い生徒に対して行われる、特別指導プログラムに関するお話。

■ この世界では、必要な指導として行われていることに関しては、周りの理解がありますので、拘束姿のまま学校の外に出ても騒ぎにはなりません。親も了承済みで入学させていますので、罰を受ける方が悪いというスタンスですねーw-ウム

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「今回取りつける拘束具は次で最後です」

 満里奈が淡々と道具を取り出してくるのを、大葉は絶望的な表情で見つめる。

「まだあるのぉ……?」

「これが最後です。今後貴女には首輪を常に装着してもらいます」

「うぇえ」

 この指導室まで連れて来られるときに首に巻かれた首輪のことを思い出し、大葉は顔を顰める。

 まともに呼吸も出来なくなって、かなり苦しかったことを覚えていた。

「……あんなの着けてたら、授業に集中できないよ」

「先ほどあなたが着けていたものとは違いますよ」

「え、そうなの?」

 その満里奈の言葉に、大葉は少しの希望を見出した。

 違うものであるならば、苦しみも少しはマシなのではないかと思ったからだ。

 だが、大葉の淡い希望に反して、満里奈が取り出して来た物は、明らかに楽なものには見えなかった。

 金属製の首輪だったのだ。

 幅も広く、厚みもある。首全体を覆うような構造をしていた。

「……こ、これ?」

「持ってみますか?」

 満里奈に言われ、恐る恐る首輪を手にする大葉。

 持った手にずしりと重さがかかった。

「おも……っ、い、けど、思ったよりは……軽い、かも……っ」

 見た目の重厚感に比べれば、ずいぶん軽く感じる。

 金属の塊というわけではなさそうだ。

「かなりハイテクな機械が仕込まれています。装着すればわかりますよ」

 満里奈はそう言って、大葉の首にその首輪を取り付ける。

「んっ、くっ……お、お姉さま。これ……かなり、邪魔、なんだけど……っ」

 首を動かそうとすると、その首輪が邪魔になって上手く動かせない。

 まっすぐ前を向いている限りは特に問題ないが俯こうとしたり、見上げようとすると途端に首輪の存在感が増す。

「これじゃあ、ノートとか取れなくない……?」

「授業の基本は話を聞くことですから、大きな問題にはなりませんよ。それに、姿勢を正していればいまあなたが思っているほどは邪魔にもなりませんしね」

「肩凝りそう……」

「実際凝ります。我慢するように」

「むちゃくちゃ過ぎない!?」

 根性論のような満里奈の言い分に大葉は呆れてしまうが、彼女はいたって真面目だった。

「首輪は特定の時間には外れるようになっています。入浴中や就寝中ですね。それ以外は基本ずっと身に着けることになるので、覚悟しておくように」

「…………ちょっと待って、通学中や休みの日も!?」

「基本的には貞操帯と同じです」

「うそぉ……」

 学校内では皆わかっているものばかりだからいいが、街中で首輪をつけているのを見られたらどう思われるか。

 大葉は絶望的な気持ちになってしまう。

「ちなみにこの首輪には居眠り防止機能として、微弱な電流を流すことがあります」

「拷問器具じゃん!」

「痕にはなりませんし、死ぬほどの電流にはなりません」

「そういう問題じゃなくない!?」

「居眠りをしなければいいのです」

 しれっと告げる満里奈の言葉に、ぐうの音も出なくなってしまう大葉。

「うぅ……無茶苦茶だぁ……」

「だから散々言ったでしょうに」

 満里奈は非難するような目で、大葉を見ていた。

 連帯責任で彼女も同じものを身につけなければならなくなっているため、そんな目をしてしまうのも無理はなかった。

 大葉は気まずそうに目線を反らす。

 満里奈も同様に首輪を巻き、ようやく二人の装着が終了する。

「これで今回は終わりです。教室に戻りますよ」

「はぁい……」

 大葉はいまから、これからの学校生活がどうなるのか不安だった。



 三年の教室に向かう満里奈と別れ、大葉は一年の教室へと向かっていた。

 歩く度に、首に巻き付けられた首輪が存在感を示し、その度につい手をやってしまう。

「んん……っ、気になるなぁ……」

 首にぴったり密着しているため、重量感はそれほどでもなかったが気になるものは気になる。

 首を痛めた時に身に着けるコルセット程度には動きを阻害してくるので、大葉は視線を動かすために体ごと動かさなければならなかった。

 特に問題になるのは、自分の胸元が見れないことだ。

(胸が光ってても、自分ではあんまりよく見えないんだよね……ああ、気にしないようにしないと……!)

 むずむずする感覚を意識してしまうと、ますますそこがむず痒くなってしまう。

 大葉の胸は、視界に問答無用で入り込んでくるほど大きくないため、首輪によって首の可動域が狭まると、視界の端にわずかに映るのみとなってしまう。

 光っていてもそれを目視できないというのは、別の意味で恥ずかしいことであった。

 取り付けられた拘束具に辟易しながらも、どうにか自分の教室に辿り着く。

 休み時間中で思い思いに動き回っていたクラスメイトたちが、大葉が現れたのを見て、一斉に近づいてきた。

「やっと来たー! おはよー!」

「もうお昼近いけどね」

「うわぁ、それが新しい拘束具?」

「首輪だぁ。おもそー」

「手とか足にもなんか増えてる?」

「ほんとだ。それってタイツ?」

 わらわらと集まってくるクラスメイトたちを、大葉はしっしっ、と手で払う仕草をする。

「見世物じゃないんだから、退いて退いて!」

 じろじろと見られることへの羞恥心もあった。

 大葉は野次馬を振り切って、どうにか自分の席に到着し――座ろうとして、首が回らず難儀した。

(うぅ……慎重に座らないとなのに……っ)

 恐る恐る腰を下ろしていく大葉。

 貞操帯を身に着けているため、下手に勢いよく座ると大変な目にあうのだ。

 なお、すでに何度かやらかしており、それもあって慎重になっていた。

「よいしょ……っ、と……っ」

 ゆっくりと腰を下ろすことに成功する。

 どうにか無事に座ることが出来、ほっとする彼女に、仲のいいクラスメイトが前の席に座って話しかけてきた。

「ずいぶん大変そうだねぇ。一気にきつくなっちゃって」

「……居眠りしたら電気が流れるんだって」

「拷問器具じゃん」

「だよねぇ!?」

 クラスメイトの率直な感想に、大葉は大いに賛同して何度も頷く。

「どう考えてもおかしいよねぇ!? ちょっと遅刻しただけなのに!」

「いや、一時間目丸ごと遅刻するのはちょっととは言わない」

 ばっさり切り捨てられ、大葉はがくりと首を――項垂れることが出来なかった。

「ぐぇ」

 俯こうとすると、その首輪が喉に食い込んでしまうからだ。

 慌てて姿勢を正す大葉を見て、そのクラスメイトは笑う。

「姿勢よくなってるし、躾としてはいいんじゃない?」

「ひ、他人事だと思ってぇ……っ!」

「まあ他人事だし。……ん?」

 そのクラスメイトはちらりと視線を下に動かす。

 目線の先に何があるのかを察した大葉は、自分の胸を腕で咄嗟に庇ってしまう。

「な、なによぉ」

 大葉の心臓はドキドキと激しく高鳴っていた。

「ああ、いや、やっぱりそっちも仕込まれたんだなぁって思っただけ」

 同情するような目で大葉を見るクラスメイト。

 その視線から、大体のことは彼女も知っているのだと理解し、大葉は顔を赤くする。

「う、うるさいなぁ! ほっといて!」

 恥ずかしさのあまり、どうにかなってしまいそうだった。

 それは躾としては十分な効果を発揮しているという、確かな証拠でもあった。



 授業中、大葉はよく船を漕いでしまう。

 意図して居眠りをしようとしているわけではないのだが、純粋に授業が理解できず、眠りの呪文を聞かされているような気分になってしまうからだ。

 そんな大葉だったが、その日の彼女はしっかり目が冴えていた。

 強制的に覚まされていると言った方が的確ではあるが、結果としては同じようなものだ。

(うー……だんだん辛くなってきた……)

 常に姿勢を正しておかないと、首に首輪が食い込んで苦しくなってしまう。

 ゆえに彼女は背筋をぴしりと伸ばし、まっすぐ前を向いて授業を聞いていた。

 姿勢だけを見れば、この上なく真面目な生徒という様相だ。

 だが、いくら正しい姿勢で聞いていたとしても、大葉の理解力が向上するわけではない。

 現在教壇に立っている教師は、数式の解き方を解説していたが、それを理解しているとはとてもいいがたい状態だった。

(全然わからない……どうしてこの式がその答えになるの……?)

 頭を悩ませることしか出来ず、思考は停滞していた。

 その結果、大葉はぴしりと姿勢よくしている状態にも関わらず、眠気が襲ってくるのを感じた。

 ぐらりと体が揺れて、慌てて立て直す。

(やば……っ、ねむく、なって、きた……っ)

 慌てて深呼吸をしてみたり、手の甲を摘まんでみたりもしたが、効果はほとんどなかった。

 いよいよその意識が薄れかけた時――首輪の装置が作動してしまう。

 首の側面あたりに、ちくりとした痛みが生じる。それ自体は、尖ったもので肌を突かれるくらいの、大したことのない痛みだった。

 だが次の瞬間、そこからビリっとした痛みが全身を駆け巡った。

「んギャッ!?」

 ビクンと反応した大葉の体が、机と椅子を揺らして大きな音を立てる。

 教室中の目が一瞬で大葉に集中した。

 自分に注目が集まっていることを感じ、大葉は羞恥に顔を赤くしてしまう。

 気まずい沈黙。それを破ったのは、授業を行っている教師だった。

「おいおい、装着一日目でもう居眠りかー?」

 呆れ気味に、やれやれと言わんばかりだった。

 クラスメイトたちもそれに乗っかり、くすくすと笑う。

 大葉は顔から火が出そうなほど、恥ずかしく感じていた。

「うぅ……すみません……」

「目は覚めただろ。この問題を前に出てやってもらおうか」

「はぅっ」

 ろくに理解していない問題をやれと言われ、大葉はますます追い詰められた。

 結局、ろくな解答をすることが出来ず、大葉は重ねて赤っ恥を掻いてしまったのであった。



 その日の夜。

 帰りの道のりでも、通行人から好奇の視線を向けられ続けた大葉は、ようやく家に帰って来られた。

「あんた……また拘束増えたの? 仕方ないわねぇ……」

 親も学校の躾の方針は理解しているので、大葉が拘束を増やされていても、その程度の反応しか示さなかった。

 姿勢がよくなるみたいでよかったじゃない、と評価する始末である。

 ぐったり疲れた大葉は、身支度もそこそこに、ベッドに体を横たえる。

「んぐっ……」

 俯せに倒れ込んだ大葉は、その際に首よりも胸の方が苦しくなるのを感じた。

 体を反転させ、仰向けになると少し楽になる。

(うぅ……貞操ブラ……ほんと邪魔……)

 手を胸に翳してみると、わずかにその掌が赤く照らされているのが、視界の端に見えた。

 ちょっとした刺激で、乳首が固くなってセンサーが反応してしまっているのだ。

「生理現象だから仕方ないじゃない……」

 大葉はぶつぶつとそのことについて不満を漏らす。

 そんなことを考えていた大葉は、ふと自分の世話係である満里奈のことを思い出した。 

 正確には、彼女の大きな乳房のことだ。

(……お姉さま、マジででかかったよね……あれだけでかいと、どうなんだろ。息苦しさとか、増し増しなんじゃないの?)

 想像するしかないがそう感じられた。

 そしてふと、自分の罰に巻き込んでしまっていることに、罪悪感を覚える。

(お姉さま、真面目そうだし、本来ならこういうの絶対ないんだろうなぁ……でも、そう考えると真面目な人が私みたいなのと組まされるって、真面目な人にメリットなくない?)

 大葉はそう感じた。一方的に足を引っ張られているだけで、得るものがないんじゃないかと。

(なんか、メリットあるのかな……明日、お姉さまに会ったら聞いてみようかな……)

 大葉はそう考え、うっかりそのまま微睡んでしまい――居眠り防止装置が作動して飛び起きる羽目になるのだった。


つづく


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