百合学園の特別指導プログラム⑦
Added 2024-06-24 14:58:07 +0000 UTC■ 百合学園で、特に生活態度などが悪い生徒に対して行われる、特別指導プログラムに関するお話。
■ 二十四時間拘束指導が必要と判断された生徒たちが入寮する学生寮に、大葉は足を踏み入れます。大葉は、そこでの『制服』を身に付けることになります。
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大葉が満里奈に呼び出された学生寮前にやってくると、そこではすでに満里奈が待っていた。
「お姉さま、速いね。あたしも出来る限り急いだはずなんだけど……」
「指導を受けている年季が違いますからね。褒められたことではないです」
クールに大葉の賞賛を受け流した満里奈は、彼女に向けて命じる。
「大葉。ご家族の方に『寮生活体験を受けることになったから外泊する』と伝えなさい」
「え? 体験?」
「そうです。貴女には寮に入った場合にどんな生活を送ることになるのかを体験してもらいます」
淡々と、しかしきびきびと指示を出す満里奈。
大葉は目を丸くしてその指示を聞いていた。
「ちょっと待ってお姉さま……それ、初耳なんだけど」
「貴女が言ったのでしょう? なぜ私が拘束が必要なくなってからも寮生活を続けているのか。それは一定の拘束指導を受けたことがある者は、希望すればこの寮で暮らすことができるからです。私はその制度を利用して、自分から寮生活を続けています」
「えええ……マジで?」
大葉にしてみれば、自分から拘束を望むという心境がよく理解出来なかった。
ドン引きする大葉に対し、満里奈は事も無げに続ける。
「そう思うのも無理はありません。だからこその体験です。この寮での生活を味わってみて、貴女がどう感じるかを知っておきなさい。そうすれば、どちらであっても良い結果になるでしょう」
要は、試しに寮生活をしてみて、それが嫌だと思うのであれば、今後の生活を引き締めることにも繋がる。
「ちなみに貴女もすでに一定の拘束指導を受けているので、希望すればそのまま入寮することもできますよ」
逆にそれが良い、と思うのであれば、自分から寮に入る選択肢もあると満里奈は告げているのだ。
それは、満里奈なりの優しさである。
そのことは大葉にも過たずに伝わっていた。
「……分かった。体験してみるよ、お姉さま」
いずれにしても、大葉にとって悪いことではない。
万が一寮生活を強要されることになっても、事前に覚悟出来れば感じ方も違ってくるだろう。
少なくとも、大葉が本気で逃げ出すなどの、より悪い方向にはいかないであろうという満里奈の信頼が感じられたのである。
(まあ、自分から寮に入りたいっていうことはないだろうけれど……知っておけば、絶対に寮に入らない、と思えるかもしれないし……)
大葉はそう考え、携帯を使って親に連絡を取る。
彼女の両親は、この学校での指導に元々納得して通わせているため、あっさりと了承の返事が返って来た。
「『そのまま寮生活になっちゃってもうちは問題ないからね』って……少しは寂しがってよねぇ……」
軽い返事の言葉に大葉は溜息を吐きつつ、待ってくれていた満里奈に笑顔で頷いて見せる。
「お姉さま、許可取れたよ! そのまま寮に入ってもいいだって。酷いよねぇ」
「すぐに連絡取れるだけ良いのではないですか? 仲が良さそうで羨ましい限りです」
それまで通り淡々と、しかし確かに羨んでいるような調子で満里奈はそう大葉にいう。
かつて満里奈が荒れていた原因が家庭環境にあったということを思い出した大葉は、何も言えなかった。
「ついてきなさい、大葉」
「はーい。お姉さま」
かくして、大葉は学生寮に足を踏み入れた。
一歩寮の中に入ると、静かな空気がその中に満ちていた。
普通の学生寮であれば、例えどんなに注意していたとしても、寮生の生活音や話し声などが聞こえてくるものだが、この寮にはそれが一切ない。
(病院……いや、図書館? 美術館、とか? そんな感じの静けさだなぁ……)
大葉がその異様な雰囲気に呑まれている間に、満里奈が寮の受付に声をかけた。
「帰寮いたしました。また、体験入寮の申請を出していた岸大葉も同行しています」
その満里奈の言葉に、その受付の中から一人の女性が出て来る。
若々しいが、明らかに学生ではない。その女性は、寮母を務めている管理人のような存在だった。
「あー、私が学生寮を管理している西澤だ。私のことは西澤さんと呼べ」
「は、はい! 西澤さん! よろしくお願いしますっ」
大葉は思わず勢いよく頭を下げてしまう。
(あっ、しまっ――)
重い首輪をつけていることを大葉は忘れていた。
勢いよく頭を下げた拍子に、体が前に大きく傾く。そのままだとうつ伏せに倒れてしまっていたかもしれない。
西澤は少し離れた位置にいたはずだが、勢いよく踏み込み、大葉の首輪を掌で受け止める。
彼女がそうやって支えてくれたおかげで、大葉は前のめりに倒れずに済んだ。
「うぇっ! す、すみません……」
「……ふぅん。態度に問題はなし……となると、怠惰系の問題児か」
大葉のお礼は特に気にすることなく、合点がいった様子で西澤はパチンと指を鳴らす。
その西澤の予想に、満里奈はこくりと頷いた。
「個人的には、私のようなタイプより、大葉のようなタイプの方が、ここでの生活には向いていると思います」
「ははっ、まあ、根が真面目なら、物理的に問題を起こせないようにするのが手っ取り早いからなぁ。まあ、とりあえず体験してみりゃ適性があるかどうかわかるよ」
「そ、そうですか……よろしくお願いします」
平然とそう告げる西澤に対し、大葉は言葉を濁すしかなかった。
(入寮したくはないんだけどなぁ……)
そう思っていることを言うことはせず、殊勝に頷くだけに留める大葉。
そんな彼女に、西澤は守衛室の隣の部屋を示す。
「そこが寮生活を送るための更衣室だ。ついてきな。ここでの『制服』を着せてやるよ」
(制服……って、つまり、そういうことだよね……)
恐らくそこで拘束具が待っているのだろうと予想した大葉は、こっそり溜息を吐くのだった。
更衣室というだけあって、そこには大きなロッカーがいくつも並べられていた。
体験用と書かれたロッカーの扉を西澤が開く。
「ちなみに、寮生にも段階があるんだ。一番きついのだと、指先一つ動かせなくするんだけど……ここは中間くらいでいっとくか?」
西澤が確認すると、満里奈はそれを肯定する。
「はい。それでお願いします。いきなり全身を拘束するのは辛いでしょうから」
「はいはいっと……それじゃあ岸。こっちに来て」
言われるまま、西澤に近付く大葉。
大葉が西澤に近付くと、西澤はその大葉の手首から肘辺りまで、アームカバーのような物を被せる。
普通のアームカバーより厚みはあるが、それほど重くはない。
「これって……」
「はい、後ろに手を回してー。重ねて-」
西澤に言われるまま、手を後ろで組む大葉。
「はい、固定っと」
「えっ……あ、あれ? 全然、動かな……っ!」
大葉は上下に重ねた自分の両腕が、全く離せないようになっていることに気付く。
左右のアームカバー同士が互いを引き寄せ合い、その状態から動かせなくしているのだ。
「大葉、昼に説明したでしょう? それが電子手錠です。ちなみにいまの拘束の仕方は一番楽な状態です」
「そ、そうなの……?」
淡々と説明され、大葉は疑問符を浮かべる。
一番楽な状態と言われても、それ以外にどんな方法があるのかわからなかったからだ。
「そうですね……西澤さん、試してみてあげてくれますか?」
「ああ、いいよ。それじゃあちょっと苦しさをあげて――」
西澤は大葉の背後に回り、一端そのアームカバー同士を離す。
そして今度は、両手をまっすぐ伸ばした状態で、腕先をくっつけた。
「んひっ!?」
一見するとただ両腕を真っ直ぐ揃えて伸ばしているだけだが、実際にやらされてみればかなりきつい状態であることがわかる。
背後に回した左右の腕の肘をくっつけようとすれば、特別体が柔らかい者以外は、非常に苦しい姿勢になるからだ。
大葉は体が硬い方ではなかったが、柔らかいわけでもない。
結果、胸を大きく逸らして、常に肩の関節が決められているような状態になる。
「ぐ、ウゥ……っ!」
「他には――」
「ま、まだある、のぉ!?」
両手を捻り上げられ、腕先がペケの形を作るように 固定される。
緊縛でいう『高手小手縛り』のような状態だ。
「いだだだだだっ!! 折れるッ、折れちゃうからぁッ!」
その状態にされた大葉は、盛大に悲鳴を上げた。
かなり柔軟性に自信のある者でなければ、厳しい姿勢であるため、無理もない。
ギリギリと肘と肩の関節が悲鳴を上げ、大葉は息も出来ないほどの激痛に晒されていた。
「……と、まあこのように、腕の拘束一つとっても、段階があるわけさ」
西澤はそう言いながら、ニヤリと笑う。
「ちなみに、そこの黒田はこの拘束方法を自発的に選んでるぞ」
「ええぇ……」
自分の肩を撫で摩りながら、大葉は思わず満里奈を不審者を見る目で見てしまう。
そんな視線を向けられても、満里奈は特に気にしている様子はなかった。
「……自分を戒めるのに、それくらいの厳しさが必要だというだけです。私にとっては、ですので、あなたがそれを踏襲する必要はありませんよ」
そういう満里奈に、大葉はそういうつもりの視線ではないとは思いつつ、強くツッコミを入れることは控えるのだった。
「んじゃまあ、まっすぐ伸ばすくらいにしとくか」
「え、あっ、出来れば最初の一番楽な奴が――んぎいっ!」
大葉は咄嗟にそう言いかけたが、西澤は容赦なく両腕を真っ直ぐ伸ばした状態で固定してしまう。
胸を必要以上に強く張らなければならなくなった大葉は、後ろに向けることになった肩が悲鳴をあげているのを感じる。
「うぎぎ……っ、こ、これ、苦しいんだけど……っ」
「少しすれば慣れる慣れる。次に……と」
西澤は大葉の片方の足首を掴むと、そこに足枷を嵌める。
そしてもう片方の足首にも足枷は嵌められ、肩幅程度の鎖が繋げられる。
「寮内ではよちよち歩きで歩くように。慌てて足を大きく動かそうとすると転ぶからな」
「は、はいぃ……」
早くも手と足が拘束され、自由に動かせなくなってしまった大葉。
さらに西澤は寮生活で重要な要素であるものを持ってきた。
「よし、次はこれだ。寮内は私語厳禁。必要な時の合図は決まってるから、覚えるように」
そう言いながら、西澤は大葉の口に口枷を嵌めていく。
その口枷は口を開きっぱなしにする類のもので、円筒形の部品が大葉の口にすっぽりと嵌ってしまう。
「ふがっ……ん、が……っ」
呻き声をあげる大葉。口を常に半開きにしておかなければならないという辛さはあったが、想ったよりも穴は大きく、口呼吸することも可能だった。
(……んー。顎が疲れそうかなと思ったけど……しっかり噛んだ状態で固定されてる感じで、意外と平気かも……)
そう思っていた大葉だったが、その口枷が首輪と連結し、大葉は口どころか顔を向けたい方向に自由に向けることさえ出来なくなってしまう。
「フガッ!?」
「歩く時はまっすぐ前しか見れないから、曲がる時は九十度直角に曲がるように。下手に横着しようとすると痛い目を見るぞ」
西澤は事も無げに告げ、大葉の口の穴に栓を嵌め込んだ。
「ンッ……!」
(口が塞がれた……っ、呼吸は、鼻で出来るけど……ちょっと、息苦しさが、嫌な感じ……っ)
ゴムで出来た栓は、しっかり大葉の口枷の穴に嵌め込まれており、大葉が息を口から吐こうとしても、びくともしなかった。
どんどん大葉の自由が奪われていく。
「場合によっては目隠しとか耳栓もするんだが……今回はいいだろ」
西澤はしっかり大葉の拘束具が装着されていることを確認すると、大葉の首輪にリードを取りつける。
「寮内を案内してやる。ついてこい」
「ンぅ……」
大葉は西澤に誘導されるまま、百合学園の寮内を歩き出した。
そこで大葉は、とんでもない光景を多数目にすることになる。
つづく