SamSuka
夜空さくら
夜空さくら

fanbox


ラバーシスター学園(仮)②

■ 淫魔に対抗するために作られた、シスターを育成するための学園でのお話です。

■ 時々脱線しつつも、ラバーシスターの一日を書いていきます。よろしくお願いいたしますーw-ペコリ

ーーーーーーーーーーーー


 ラバーシスターの朝は早い――というと語弊が生じるが、少なくともアリシアのようなラバーシスターの学生的立場の人間の朝は早い。

 言ってしまえばこの世界におけるラバーシスターとは退魔の人員であり、ラバーシスター学園に通う彼女たちは、スポーツ選手でいう育成所、軍人でいうところの軍学校に通う者である。

 つまり、朝から晩まで目的のプロになるための訓練をしているわけだ。

 ラバースーツを着ているのは、彼女たちの正装がそれであるためだ。

 彼女たちの場合は特にそのラバースーツに着慣れておく必要があり、普段の生活から何からラバースーツを着て過ごすことを義務付けられている。

 まだどうしても羞恥心が上回ってしまうアリシアの両手を、メリッサとメリーベルがそれぞれ握っているのは、三人が仲良しであるという意味ではなく、アリシアの両手を塞ぎ、体を隠せなくしているのだ。

「ほらほらいくよ!」

「早くしないと食べる時間が無くなってしまいますからね」

 二人にそう言われ、アリシアは体を隠すことも出来ないまま、連れていかれる。

 そうして辿り着いた先は、広い学生食堂だった。

 すでに多くのラバーシスター候補生たちが朝食を摂りに来ており、ラバースーツ姿のうら若い女性たちがその格好のまま食事を取っている光景は、ある種異常なものに見える。

 特にまだ学園に入って日の浅いアリシアにとっては――見回すだけで恥ずかしい光景だった。

 メリッサとメリーベルは慣れた調子で人ごみの中をすいすい抜けて、食事を受け取る場所までたどり着く。

 三人分の朝食が素早く提供された。ちなみに食事を提供する女性たちも皆ラバーシスターである。

 ただし、学生の身分にあるアリシアたちと違うのは――皆一様にその腹部を膨らませており、その顔の半分がラバー製のハーフマスクによって覆われているということだった。

 ゆえに食堂のラバーシスターたちは、言葉を一切発しない。唯一見えている目元のみで感情表現をし、黙々と調理や盛り付け、皿洗いなどを行っている。


 ラバーシスターの退魔術で、最もお手軽かつ強力な方法。

 それは、悪しきものを自分の子宮の中に封じ込める術であった。

 子宮が膨れ上がり妊婦のようにはなってしまうものの、それによって閉じ込められた魔物はラバーシスターの神聖な力によって徐々にその魔力を削られ、最終的には浄化されて消えてしまう。

 この退魔術は術者に長期に渡って行動に制限をかけるものの、行うに当たって素質や才能などが必要なく、未熟なラバーシスターでも強力な淫魔を退治しうる画期的な術である。

 食堂などで働いているシスターたちはその術を用いた者たちで、正に現在体内で浄化を進めているところだった。


 体内に魔物を封じたシスターたちに支給される専用装備が、現在彼女たちが身に着けているラバー製に見えるハーフマスクである。

 聖人の一人が作り出したと言われる封印浄化術の補助具であり、体内に巣食う魔物を装着者の体内に完全に閉じ込めることが出来るようになる。

 それを身に着けている間、飲食も不要になるという優れものだ。

 身体が封印した魔物の浄化に集中することが出来るようになり、かつては数年単位で必要だった魔物の浄化を僅か数か月に短縮することが出来る。

 その間発声することが出来なくなり、口も自由に使えないなどの制限も大きいが、それを上回るメリットがあるわけだ。


 腹部の膨らんだラバーシスターは、正しく現在進行形で魔物と戦っている証拠であり、ラバーシスターたちにとって尊敬すべき先達である。

 そんな先輩ラバーシスターから朝食を受け取った三人は、席を取って手早く食事を取る。

 学園の食事は決して美味しい方ではない。栄養補給が目的と言わんばかりのレシピが多いのだ。

 無論、それに対してアリシアは不満など抱かない。

 彼女もそれなりの覚悟をしてこの学園に来ており、自身の目的を果たすためには食事の質などに拘りはしないからだ。

「……メリーベル先輩。今日の訓練は何をするんですか?」

 ラバーシスター学園に決まったカリキュラムはない。

 教育係が各個人にあった課題などを提案し、ある程度それをこなして物になったと判断されたところで、昇格試験を受けることが出来る。

 その結果次第で、ラバーシスターとしての序列が上がり、実際の魔物退治を行えるようになるのだ。

 アリシアは早く実戦に出たかった。ゆえになるべく早く実戦の許可が得られるよう、特別厳しい訓練を課して欲しいと二人には頼んでいたのだ。

 そんなアリシアの意欲満々な気配を感じ取った双子の先輩シスターは、にこやかに告げる。

「まあまあ。訓練のことは訓練の時に、ね?」

「そうですよ。何事においてもメリハリは大事ですよ、アリシア」

 二人に宥められ、アリシアは気まずそうに体を引く。

 がっついているように見られてしまったと思ったのだ。

 双子は顔を見合わせ、怪しげに笑った。

「アリシアってば、そんなに訓練が楽しみなのかしらね……♡」

「それに応えてあげないといけませんね……♡」

 笑い合う二人の様子を傍から見ていたアリシアは、少し嫌な悪寒を感じて、そのラバースーツに包まれた体をぶるりと震わせた。



 食事を終えた三人は、礼拝堂でもある教会に移動する前に、顔を隠すハーフマスクを身に着ける。

 ハーフマスクはラバー製のような見た目だが、実際は神の加護によって生み出された聖道具であり、呼吸にはあまり苦労しないようになっている。

 出来る限り顔を隠すのは、ラバーシスターは世に蔓延る淫魔への対抗手段だからだ。

 下手に素性が知られることは避けなければならない。

 もしもそのシスターが誰かということがわかれば、搦手を得意とする淫魔は彼女たちの身内や親しい者を狙ってことを起こす。

 そうなった時、不利に陥ってしまうため、ラバーシスターは極力正体を隠すのである。

 さらに加えて、そのハーフマスクには訓練用の機能も備わっていた。

「それじゃあアリシアちゃん。マスクを起動させるねー」

「……っ、お願いします……!」

 アリシアがそう告げるのを確認し、メリッサとメリーベルはそれぞれアリシアの左右から神聖な力をアリシアのマスクに注ぐ。

 するとアリシアのマスクが反応して動き出し、まるでコーティングするかのように、彼女の鼻や口、さらには耳の中までをラバーのような何かが覆っていく。

「んぅっ……! ンッ……! フグぅ……ッ!」

 ピチピチと音を立てながら体の中まで覆われていくアリシア。

 まるで管を通されているかのように、彼女の鼻の穴の中をマスクから伸びた部分が隅々まで覆っていた。

 少し呼吸はし辛くなったものの、ちゃんと穴は確保されているのか、普通程度に呼吸することは出来た。

 マスクの浸食は顏の穴の隅々まで達し、アリシアは喉が刺激される苦しみを感じた。

「グッ……ぅ……ッ……!」

「我慢だよ、アリシアちゃん。実際の封印退魔術を使った時は、もっと辛いんだから」

「厳しいようですがその通りです。体内の魔物が暴れる分、マスクなどに振動が生じる場合があります」

 そういう意味では、震えもしない今のマスクは非常に優しいと言える。

「フーっ……フーッ……フーッ……」

 微かに開いた呼吸口から息を吐って吸い、アリシアはその刺激に耐えていた。

 そんな彼女の様子を見ていたメリッサとメリーベルもその顔にハーフマスクを着ける。

 二人は特に訓練用の機能を起動させることなく、アリシアの両手を再び掴んで、移動を開始した。

 長い廊下を歩いて、寮から直接繋がっている大きな教会に移動する。



 教会は一般市民も使うことが出来る礼拝の場であり、普通の服を着た町の住民たちが熱心に祈りを捧げていた。

 ラバーシスター自体は一般的に知られている存在である。

 この礼拝堂にはラバーシスターたちがよく現れるため、その姿も市民たちにとっては見慣れたものだ。

 ゆえに騒いだりじろじろ集中して見たりする者はいなかったが――アリシアは非常に恥ずかしい気持ちになっていた。

 自分の体や顔に視線が集中しているように感じ、上手く顔をあげられない。

 そんなアリシアを、メリッサとメリーベルは小さな声で左右から叱咤する。

「あんまり恥ずかしがってたらダメだよ」

「淫魔はそういう隙に付け込んできますよ」

 そうもっともな指摘を受け、アリシアは我慢して顔をあげ、礼拝の列に並ぶ。

 礼拝堂の一角には、かつて魔物との間で起きた大戦争で多大なる功績をあげた聖人の象が祀られている。

 十字架に縛り付けられ、目隠しや拘束具で空中に繋ぎ止められていた。

 それはもちろん石像だったが、実際にそういった姿で拘束され続けている者はいる。

 もちろん魔物にやられたわけではなく、超強力な魔王を封印浄化するために、体内にその魔王を封じ込めたからだ。

 魔王が浄化されるまでには何百年とかかるとされており、その間、封印が緩まないように自らの体を厳重に拘束させ、いまもどこかで魔王を浄化し続けているという。

 そんな聖人の像の前には、祈りを捧げているシスターの姿があった。


 ただしそのシスターは銅像ではなく――本物の生きたシスターが、祈りの姿勢で拘束されている姿である。


つづく

Comments

ハーフマスクには他にも色々機能がある想定です! 今後、色んな使い方がされると思いますので、乞うご期待です!ーw-ペコリ

夜空さくら

ハーフマスクの機能、素晴らしいですね! 付けると侵食されて管が通されてるのは、色んな話に応用できていいですね!

hinata_eva


More Creators