「ハァ、ハァ・・・」
右側の顔に感じる熱とひどい圧迫感。
塞がった目で視界がおぼつかない。
眩暈がする。・・少し殴られすぎたわ。
「ひどい腫れ方ですね。あまりサウスポーと闘ったことないんですか?
ちゃんとガードしてくれないと・・
片手だけで闘うハンデの意味がないじゃないですか。」
イツキくんが得意げにステップを踏みながら、挑発を飛ばす。
紅のアマチュアグローブが視界の中で忙しなく動き、
私の顔に噛みつこうと機を窺っているようだ。
「おばさん、元プロボクサーなんでしょ?思ったより大した事なくてがっかりです。・・このままノックアウトできちゃうかも?」
(生意気・・っ!)
挑発に乗るように大きく一歩、思い切り足を踏み込む。
相手のリーチのなか。互いのパンチが届くその緊張状態。
フック、ワンツー、アッパーカット!
私のグローブが、その小さな顔を追い回す。
・・が、捕まらない。
青グローブの合間を、端正な幼い顔立ちが煙のようにすり抜けていく。
「・・そうだ。みてくださいよこのグローブ。
殴りすぎちゃって、おばさんの顔の皮脂がたっぷり染み付いちゃいました。
こうなると、しっかりパンチを当てるのが結構難しくなっちゃうんですよ・・ね!」
「くぅ・・っ!」
「って言っても、おばさんに当てるのは簡単でしたね。」
私のパンチを当然のようにあしらった、無慈悲で完璧なカウンター。
顔中の汗が飛沫をあげて、リングに飛び散る。
ぐらりと地面が揺れた。
『ダウン〜!!
持ち前の素晴らしいタフネスで持ち堪えてきましたが、
とうとう天才少年の前にその膝を屈しました!
若奥様、立てるか!?』
右の顔を覆う、痺れたようなジ〜ンとした余韻。
素肌のお尻に触れるマットの感触。懐かしい。
現役のプロボクサーの時もこうやって殴り倒されてばっかりだったな。
(悔しい・・・けど・・
久しぶりの生パンチは・・やっぱり気持ちいいわ)
右足に体重を乗せる。
まだやれる。
まだ、この夜を終わらせたくない。
「・・まぁまぁいいパンチだけど、なんか物足りないのよね。
重いパンチ、もっと打ってきてもいいわよ」
「・・面白いですね。
その腫れた顔面、もう2倍に育ててあげますよ。」
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いつもご支援ありがとうございます。
そろそろこの前寄稿した漫画投稿しようと思います!
Zikra rizki
2025-12-16 00:34:42 +0000 UTCNemo
2025-12-15 18:47:51 +0000 UTC