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ディフェンダー戦隊レッド 2

北東、南西の両側から攻めてくる怪人達。


「ブルー、グリーン。南西のやつは頼むぞ。オレはピンクと北東の怪人を片付ける」

「分かった!!気をつけろよ!」

「ピンク!レッドから離れるなよ!」


ブルーとグリーンが逆方向に駆けていく。その姿を見送りながら、ピンクは手にした銃を握りしめていた。


手が震えている。


「……恐いか?」

「……はい」


ピンクは正直に答えた。

初めて感じる戦場の空気。遠くに聞こえる怪人のおぞましい叫びと足音。


「ちゃんと役に立ったな。怪人探知装置」

「そうですね…。後で開発部の方々にお礼言わなきゃ…」

「ピンク」

「なっ、何でしょう?」

「必ずオレが守る。不安か?」


そう言われて5秒後。ピンクは胸に手を当てて深呼吸をした。


2回、3回と息を吸い、吐く。

やがて呼吸が安定し、手の震えは止まった。


「…大丈夫です!」

「よし!その意気だ!」


レッドは力強く笑いかけた。

ふと、ピンクの腕に取り付けられた機器が電子音を奏でる。怪人探知装置だ。


間も無くここに怪人が来ると告げていた。


ばさっ、ばさっ……。


大きな翼が空を打ち、2m越えの巨体を宙に浮かせている。


「やっぱりあいつか……」


レッドが戦闘不能にした敵戦闘員を回収したあの鳥人だ。今回はディフェンダー戦隊と戦いにきたに違い無い。


「ピンク。オレが奴の相手をする。お前は下がっていろ」

「あ……わたしも……」

「ダメだ」


短く告げる。いつもとは違う、ともすれば冷たく聞こえる余裕の無い声。それがピンクに告げた。ここからは死の危険があると。


邪魔になる。

そう感じたピンクはひとまず建物の影に身を潜めることにした。


レッドは視界の端にピンクが退避した様子を捉え、目の前の相手に集中する。


飛んでるだけあって位置が高い。上空10mまで上がられたのではこちらも手が出せない。


「さて…どうするか」


戦いは静かに始まった。







「すごい……」


遠巻きにレッドを見るピンクは、目の前で繰り広げられる戦いに目を奪われていた。


怪人は鳥人型だ。2m越えの筋骨隆々の体躯と足の鉤爪、巨体をゆうに浮遊させるだけの巨大な翼、そして大きい体に見合わない高い機動性。どう見ても強敵だ。


対するレッドは近距離戦を得意とする。当然宙には浮けないし、鳥人型が接近して攻撃してくる一瞬を捉えて反撃するしかない。


鳥人は猛烈な勢いで降下しては翼や鉤爪での一撃を見舞い、即座に離脱している。風切り音がこちらまで聞こえてくる。1発貰えば大ダメージが予想される。

レッドは鳥人の動きをよく見切っている。相手の攻撃をすべて防いだりかわしたりして一度もダメージを受けていない。しかし反撃はできておらず、状況は膠着状態といえた。


「せめてグリーンさんがいれば…!」


グリーンは遠距離武器を持つ。彼がいればレッドのサポート役としては相性が良かったのだが…。


「まさか、怪人側はそれを知って……?とにかくレッドさんを援護しないと…!」


ピンクは腰から円盤のような道具を取り出し、もう片方の手に銃を構えた。







「くそっ!決め手に欠くとは思ったが、こうも速いとはな!!」


悪態をつきながら鳥人の一撃をいなす。パワーもスピードも大したものだが、それでも殴り合いなら勝てる。


しかし一撃を入れるタイミングがまるでない。鳥人は一撃離脱を徹底しており、しかもその速度は類を見ないほど速かった。


「まあいい。お前がいつまでそうしているつもりか知らんが、そろそろ動きも見慣れてきたぞ!」


僅かな癖、攻撃の軌道。


レッドは鳥人の攻撃パターンを観察し、カウンターの用意を整えつつあった。


またも鳥人が急降下してくる。鉤爪の一撃だ。まともに食らえばいくらレッドでもタダでは済まない。


「ふん……いい加減見飽きたぞ!」


しかしレッドは落ち着いて迎え撃つ。この攻撃を待っていたのだ。


足から突っ込んでくる鳥人の一撃を寸前でかわし、身を捻りざま手刀を胴体に叩き込む。


どずぅっ!!!


確かな手応え、しかしその瞬間膝をついたのはレッドの方だった。


「!?電撃か!!ぐぅっ…!!」


鳥人の体表に鎖帷子の如く張り巡らされていた薄型の鎧が電撃を帯びていたのだ。レッドの体から煙が立ち上り、一時的に意識が遠のく。


鳥人は弧を描いて飛び、再びレッドに襲い掛かろうとしていた。


「くそっ!こうなりゃ肉を切らせて…っ!かかってこい!!」


レッドは膝を付いてはいたが、毛ほども怖気てはいなかった。ダメージ覚悟で逆に倒そうと、必殺技の構えに入る。


「レッドさん!!」

「ピンク!?」


ピンクが物陰から飛び出し、こちらに駆け寄りながら鳥人にハンドガンを撃っている。


まずい。ヤツのスピードならあの位置は間合いだ。


「来るなっ!!」


まだ電撃のダメージが体内に残っている。叫ぶことしかできない。

鳥人は狙いを変え、ピンクの方に突っ込んだ。ハンドガンは硬い体毛に弾かれ、まるで意味をなさない。


鳥人の翼がピンクの眼前に迫る。


なんてことだーーー。

オレがついていながら守れないのか。


「起動!!」


地面が爆ぜた。

予め設置されていた罠が起動し、ピンクに襲い掛かろうとしていた鳥人の体をがっしりと捉える。

粘性に富んだガムのような液体が強く絡みつき、決して離れない。


「これは…!?」

「や、やった……!チャンスです、レッドさん!!」


後退りするピンク。レッドはなんとか立ち上がり、猛然と鳥人に突進した。


「でかした!後は任せろ!!」


右拳が発光し始める。輝きを増すそれは、悪しき怪人を焼き尽くす正義の光。

感電させられた恨みも込めて思い切り振りかぶる。


「爆散!レッドナックル!!」


周囲のビルを爆発の光が照らした。







『よくやったな、ピンク。新兵器のテストも含めお前の戦果だ』


会議室に響く司令の声。レッド達は基地に帰投し、スクリーンに浮かぶ司令のホログラムを囲むように今日の作戦を振り返っていた。


ピンクは珍しく司令が人を(それも新人隊員の自分を)褒めたことに驚きつつも、慣れない賛辞に赤面しながらしどろもどろになっていた。


「あ、いえ、私は…」

「そうだな。大仕事だったよ」


ブルーがピンクを見てニッと笑った。


「そんな…」

「そうだぜ。レッド1人じゃその鳥怪人に苦戦してたんだろ?ピンクが援護してくれたからどうにかなったんだ。助かったなレッド?はははは!」

「む……。確かに助かったし、怪人探知装置も無事役に立ったが、俺1人でも奴は倒せたぞ」


グリーンが冗談混じりにピンクを持ち上げ、レッドがムッとした顔で(口元しか見えないが)それに反論する。


「まあ…確かに助かった。礼が遅れたな。ありがとう、ピンク」

「あっ…その……はい!」


そう言って笑いかけるレッド。ピンクはそれを見て嬉しそうに笑った。


『これで作戦会議を終了する。引き続きピンクを護衛しつつ、全員協力して怪人退治にあたれ。今は苦しい戦いだが、正義は必ず勝つだろう』


司令のホログラムが消え、部屋に明かりが戻る。


「皆、よくやってくれた。今日は各々休んでくれ」


レッドは皆にそう告げた。ブルー達やスタッフ達はレッドに口々に挨拶して会議室を出ていく。

ピンクが視線を落とし、手元を見つめている。


「どうしたんだ?」

「あ!すみません。……今日、初めて戦ったんだなあって」

「…ずっと現場に出たかったのか?」

「はい。市民の皆さんを、遠隔でのサポートだけじゃなくて、この手で守ることができたらどんなにいいだろうって。そう思ってましたから…」


そう言って拳を握りしめるピンク。レッドはふと、ディフェンダー戦隊入隊時に提示された戦隊員の心構えを思い出していた。


市民を守るという熱い心を持ち、どんな苦難も乗り越えると誓うこと。


ピンクはその条件を満たす、本当の意味でのディフェンダーなのではないか。


「次の任務も頼むぞ」

「…!はい、レッドさん!」


レッドは会議室を出た。4人のディフェンダー戦隊となったが、彼女のサポートがあればこれまでより効率的に怪人達と戦える。彼女は頼りになる仲間だ。


……だが、最後は己が身が勝敗を決める。

俺が彼女を、ひいては仲間と市民を守ってやらねばならない。


レッドは気づいていなかった。

今のままの任務が続くと心底思ってしまっていることに。

そして、自分の内に湧いた自信が前向きな気持ちではなく、どこか黒ずんだ炎であることに。



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