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秋刀魚
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四ツ谷あまねがまだオナホールじゃなかった頃の話





「お前、マゾだろ」


 高校生になって数ヶ月が経ち、始めての夏休みを目前に控えた日。退屈な式典も終わり、明日からは夏休みという、その日。

 金髪の、制服の下にパーカーを着た、いかにも一世代ほど前のステレオタイプな不良という風体の男に声を掛けられた。


 四ツ谷あまねはクラスで席が隣というだけが接点のその男に、己の秘めたる性癖を見事なまでに言い当てられた。


「ッ、は、はぁ!? なっ何を、どっ、どうしてそう思うんですか……ッ!」


 どうしてマゾだとバレたのか問う。

 その問い自体、自らがマゾで間違いないと認めているようなものであることに、四ツ谷はまだ気付いていない。


「マゾ、それも生半可なのじゃ抜けない生粋のヤツだろ。ドの付くマゾだ」


「自分から見て右より左の乳首の方が大きいが、敏感なのは右だな」


「ノーパンで登校したことがあるだろ、バレるのを期待して。ノーブラの方はまだ透けるのが怖くて出来てないが、冬服の時期になったら間違いなくやるだろうな」


「小さい頃に親父のAVとかを盗み見て覚えたタイプだな。そういう顔をしてる」


「彼氏は出来たことがないか、居ても過去に1人くらい。ヌルいセックスが物足りなくて別れただろうし、これから誰かと付き合ったとしてもお前はそうやって別れる」


「勉強机のカギが掛かる引き出しにディルドを隠してるな。それも日本人サイズじゃなくて、レジに持って行ったら店員にドン引きされるくらいのバカデカいヤツ」


「タイトルにドMとあるAV、大抵ヌルいプレイばっかりで気に食わないのに、見かける度に気になって買ってるだろ」


「そんで、今もコレだけで濡れてるな」


 問いへの返答はなく、代わりに捲し立てるような看破が続いた。全て事実だった。スカートの下は既に洪水の様相で、何度も甘イキを繰り返していて、ショーツから溢れた愛液が何滴も太腿に垂れている。幼少期にパパの書斎に忍び込んで密かにビデオを再生した日から救いようのないマゾだったし、ノーパンで登校した事も一度や二度ではないし、彼氏は今まで一度も出来た事が無いし、引き出しにはお気に入りの馬並みディルドが隠してある。

 四ツ谷あまねは紛れもなくドマゾだ。何一つの漏れなく、彼の口から出た言葉は全て真実を言い当てていた。


「────ッ、もう辞めてください! いったい何なんですか、貴方は!」


 その男の名は須藤慎二。

 四ツ谷は後に知ることになるが、どこぞの大企業創業者の御曹司だ。その「二」が示す通り次男であり、会社を継ぐ事叶わぬ身であり、それゆえに淫蕩非行に走る親不孝者だ。


「もし気になるなら、明日、この校舎の屋上に来いよ」


 やはり質問には答えないまま、それだけ言い終えると須藤は帰った。事の詳細、肝要なことだって何も告げずに。

 だが、四ツ谷あまねには日々の無様な妄想オナニーで鍛え上げた類稀な想像力があった。これまでの会話の内容等から推察して、明日の屋上で何が行われる予定なのか、分からないでもなかった。



 四ツ谷あまねは、その誘いに応じれば、自らがどういう目に遭うか理解していた。

 いや、期待していた。


◁ ▶︎


「来たのか。それは、同意って事でイイんだよな?」


 夏休み初日。部活動というテイで校内に立ち入り、屋上に続く長い階段を上る。一歩、屋上に近付く度、これから起こる事を想像して体が疼いた。胸の高鳴りを隠して、至って平静を装って、四ツ谷あまねは扉を開けた。

 屋上には先客が居た。転落防止フェンスに身体を預けて凭れる、須藤慎二が居た。


「脱げ」


「…………はいッ」


 須藤慎二の命令は、至って単純だった。


「俺はさ、無理矢理ってのは嫌いなんだよ。ウチは金があるから、肉オナホを用意するだけなら別に困ンないんだけどさ。人を金で好き勝手に動かすのって、正直言って、しょうもないじゃん。金渡せばそりゃ、皆言うこと聞くのよ。当たり前じゃん? でもそれじゃ親父と同じっていうか、なーんか気に入らねえのさ」


 四ツ谷あまねの乳首は、既に期待で腫れ上がり、シャツを押し上げて透けて見えていた。今日が初めてのノーブラ登校だった。来れば“こうなる”と想像、或いは期待していたから。そのシャツを、まずは脱ぎ捨てた。


「だから、お前みたいな生粋のドマゾを捕まえて雌奴隷にしてんの。俺はお前を使えるし、お前は俺に使ってもらえて幸せ。金に依らないイイ関係値だろ?」


 次にスカートも下ろした。当然、こちらも下着は無し。この時点で既に四ツ谷あまねは、靴と靴下を勘定に入れなければ全裸だった。たかだか2枚脱いだ程度で。野球拳なら事実上の最弱と言える。何よりこの格好で電車に乗りここまで登校してしまったという事実が、ずっと四ツ谷の中で燃え残り、発情のエンジンに火を焚べ続けていた。


「こっちに来い。もっとそのバカみたいにデカい乳をフェンスに押し付けろ」


 四ツ谷あまねは言われるがまま、転落防止用フェンスに身体を押し付けていた。乳肉に冷たいフェンスが食い込み、少し心地が良い。下を見下ろせば、グラウンドで部活に励む生徒達が見える。四ツ谷の位置から見えるのだから、当然向こうからも、見上げれば四ツ谷が見える。

 須藤はその背後に立って、四ツ谷がフェンスから逃げないよう、身体を密着させている。背中から尻の辺りに感じる熱くて固い何かに、四ツ谷は更に発情していた。


「ノーパン登校程度で満足出来るような低級マゾには少し刺激が強いか? ほら、何かの拍子にアイツらが上を向いたらお終いだな。例えばお前か俺が大声を出すとか、な」


 耳元で囁かれた言葉に、四ツ谷あまねは声を抑えながら軽く絶頂した。自らがアクメ声をだしてしまえば終わり、というのは勿論のこと、背後の須藤に声を出されても終わる。四ツ谷あまねという人間の人生が、終わる。新生活が始まってからこれまで、真面目な優等生として築き上げてきた社会的地位が一瞬で瓦解して、屋上で全裸を晒すイカれた露出狂マゾ女として全校生徒に認知されてしまう。そうなれば向こう3年間、いやそれ以上だ。先輩にも、いずれ出来る後輩にも、大学でも、就職先でも、きっと行く先々でドマゾビッチのイカれ露出狂として敬遠され、或いは奇異の目を向けられる。

 破滅だ、そうなればお終いだ。


「────ッ、ォ゛お゛ッ♡♡♡♡♡」


 だから絶頂した。

 破滅を空想し、人としての尊厳を踏み躙られるような未来を夢想し、絶頂した。

 四ツ谷あまねという人生が今更終わるまでもなく、四ツ谷あまねという人間は救いようのないマゾヒストで既に“終わって”いた。


「おいおい、言っただろ。あんまり大声を出すと下に気付かれるぞ」


 背後から退路を塞ぐこの構図、校庭から見上げた時に見えるのは手前に立つ四ツ谷だけだ。よしんば角度の都合などで四ツ谷の背後に立つ男の影が見えたとしても、そのシルエットはほとんど四ツ谷の姿に隠されてしまって、僅かな視覚情報から本人特定に至る可能性は低い。

 一方で四ツ谷は違う。女子にしては高身長な体躯に加え、校内で一番乳がデカく、頭から爪先まで全て金網フェンス越しに丸見えだ。特に今春Jカップを超えたデカ乳房が致命的で、この要素一つだけでも正体不明の露出狂候補は四ツ谷を含めた数人にまで絞り込める。


「お゛ォほッ♡♡ ンぉ゛オ゛ッ♡♡♡」


 四ツ谷は、救いようのないドマゾであるという致命的な欠陥を除けば、公私共に極めて優秀な生徒だ。これまで小中含めて無遅刻無欠席、成績も常に学年トップで、頭の回転も速い。例えば露出のスリルで甘イキしている最中であっても、上述のように自分が須藤に背負わされているリスクを冷静に分析出来るほどに。

 もっとも今は頭の良さという四ツ谷の数少ない長所も、自分に突き付けられた破滅を鮮明に妄想してしまうという欠点の一つに成り下がっているわけだが。


「分かってんの、バレたらお終いだって。もう少し声我慢しようよ」


「オ゛ぉ゛おッ♡♡♡ 分かっれ゛ッへ、ォ゛お゛オ゛ーーーーーーーッ♡♡♡♡」


 言われずとも分かっている。四ツ谷あまねの極めて明晰な頭脳は、もし眼下の生徒に見つかれば己がどうなるかよく理解している。理解しているから、こうなっている。声を出せば終わりだと、自らの終わり果てる無様な姿を想像すればする度、四ツ谷の矮小な頭脳は深い絶頂と絶え間無い快楽で埋め尽くされてしまう。


「お゛ひょ゛ッ♡♡ あッいぐッ♡ おォ゛お゛ッほォ゛…………ッ♡♡♡♡」


 目の前に差し迫った破滅を避けるべく、アクメを止めようと思えば思うほど、歯を食いしばるほど、より強く破滅を意識してしまう。こういう時に必要なのは無関心だ。とはいえ全く意識しないというのは、言葉ほど簡単ではない。どれだけ目を逸らしても、気を逸らしても、心の中で念仏を唱えようとも素数を小さい方から数えようとも、どうやっても甘美な“終わり”が視界の端でチラつくのだ。

 結局今の四ツ谷に出来るのは、アクメの根源である己の悪しき性癖を抑える事ではなく、ただ必死にアクメを我慢し続ける事だけ。それも日々のオナニーで鍛えられた極めて絶頂に至りやすい四ツ谷の身体には、今更もう焼け石に水といった有様だが。


「イけ」


 だから須藤に背後から口を塞がれて、そんな事を耳元で囁かれれば、貧弱な四ツ谷ダムは容易に決壊する。


「────ッ、ォ゛ッ♡♡♡♡♡」


(オ゛ぉ゛おッヤバッ♡♡♡ こッ、ォ゛おッ、こりぇ゛ッ、来るダメくるッくるくるッどこも触っでないのにッ♡♡♡♡ 甘イギじゃなぐてッ、本気のッ、ヤバいのくるッ♡♡♡ ォ゛ッほ、止まッ、止まっれ゛ッ♡ オ゛ぉ゛ほッ♡♡♡ オ゛ぉ゛お゛オ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ♡♡♡♡♡♡ やばッ止ま゛んなッイグッイクイクッ、ォ゛ほーーーーーーッ♡♡♡ バレるバレるばれるこりぇ゛手離され゛たら死ぬ゛ッ♡ 見つ゛かりゅ゛ッ♡♡ こえッ、ォ゛ほッ♡ 声抑え゛りゃれない゛ッ♡♡♡♡ オ゛ぉ゛お゛ーーーーーーーーーーーーーーーーッ♡♡♡ お゛ォ゛ッ、ほォ゛ーーーーーーーーッ♡♡♡♡)


 四ツ谷の本気アクメに合わせて、水鉄砲めいて、フェンスに押し付けるように無様に突き出されたワレメから潮が噴き出た。空は雲ひとつない晴天で雨の気配などなく、狐の嫁入りというにも極めて局所的で、この現象に言い訳の余地は無い。階下に人が居れば不審に思われるだろうし、見上げられた時点でお終いだ。そういう事を考えるからダメなのだと理解しているのに、脳裏が最悪の場合を勝手に想定してまたイキ散らす。腰を跳ねさせ、両手でフェンスを掴み、暴れるようにしてアクメを逃がそうとするも背後の須藤に身体を押さえ込まれる。バタバタ、ジタバタとフェンスを叩きながら必死に動くもその僅かな可動域にアクメを逃がせるような余地はなく、四ツ谷の脳は真っ向からこのアクメの衝撃を受け止める羽目になった。


「────ンぐぉ゛ッ♡♡ ん、ぎッ♡」


「イけよ。休むな、腰逃すな。手離されたくなかったら大人しくイけ。────はは、ヤバいなお前。こんなんでイキ散らかして、品性とか無いの?」


 耳元で囁かれる言葉が、その蔑視が、四ツ谷を絶え間無い絶頂へと誘い続ける。見下され、馬鹿にされ、貶されているという事実が四ツ谷の制御不能な被虐心を否応無く昂らせ、暴力的な絶頂を帯びて心のエンジンを唸らせる。終わり果てた性癖が、四ツ谷の心と空っぽの脳みそを歓喜で満たしていく。四ツ谷は破滅の直前に居ながら、心の底から幸せだった。


(ォ゛お゛おーーーーーーーーーッ!!♡♡♡ 効ぐッ♡ くるッこれくるッアクメくるッ♡♡ オ゛ォ゛お゛〜〜〜〜〜ッ♡♡♡♡♡ 罵倒効ッくゥ゛〜〜〜ッ♡♡♡♡ いぐッ♡ おまんこイグぅ゛ッ♡♡ オ゛ほォ゛〜〜ッ♡♡♡ お゛ッ♡ オ゛ぉ゛ほッ♡♡♡ お゛ッ、ひ゛ょお゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ♡♡♡♡♡ イぎッ、ひ〜ッ♡♡ 悔しい゛ッ♡ くやじッ、オ゛ぉ゛〜〜〜〜〜〜ッ♡♡♡♡♡ できればッ、目を見て゛罵っで欲じかった゛ッ♡♡ あ゛ッ、ォ゛おッ、やばッ、やッ、オぉ゛ひょ゜オ゛ぉ゛お゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ♡♡♡♡ あ゛ーーーーーッだめッダメダメッ♡ 想像したッ、しちゃ゛っだッ♡♡♡ コイツがッ、どんな顔で罵っれ゛るのがッ♡♡ ォ゛ほッ♡♡♡ やっぱ効く゛ッ♡ 蔑まれるの効くッ♡♡ 想像だけでイグッ、いぐッ、いぐっ♡♡♡ オ゛ぉ゛ほッ、オ゛ぉ゛お゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ♡♡♡♡♡♡♡)


「コレでもイくんだ、バカマゾがよ。そのまま俺が飽きるか脳みそブッ壊れるまでアクメ止めるなよ四ツ谷。イキ死んどけ。というか殺す、ここでイキ殺すからな。イき死ね、イけ」


「────ッ、お゛ォお゛ッ♡♡♡♡」


(はひっ♡ 死ぬ゛ッ、死にまじゅ゛ッ♡♡♡ アクメでこりょじてくら゛ざいッ♡♡ 私ッ、わッ、わだじッ、須藤ッ、ざまに゛殺ざれりゅ゛なら゛ッ、ォ゛ほッ、ほんもーッ、ォ゛おッ、本望ッ、れじゅッ♡♡♡♡ ォ゛お゛ッ♡ お゛びょ゛ーーーーーーッ♡♡♡♡♡ オ゛ッ、来るッ、くるッ、わら゛ひ死ぬ゛ッ♡ イグッ、いくッ、逝くッ、逝ぐ、逝ぎまずッ♡♡ アクメれ゛ッ逝がざて゛頂ぎまじゅッ♡♡♡ ッ、ヲォ゛おッ、ほォ゛おッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ♡♡♡♡♡♡ 逝く逝ぐ逝ッ、逝くッ、死ぬ゛ッ♡♡ アクメっ、アクメでッ♡ オ゛ほーーーーーッ♡♡♡ オ゛ぉ゛オ゛ォ゛ーーーーッ♡♡♡♡ オ゛ーーーーーッ♡♡ オ゛ォ゛オ゛ッ♡♡♡ ありがろ゛ござまじゅ゛ッ♡♡♡♡ あ゛りがとッござい゛まずッ♡♡♡ ッ、オ゛ォ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ♡♡♡♡♡)



 四ツ谷あまねは、意識を失った。



◁ ▶︎


 同日21時。

 須藤慎二の個人宅。

 その書斎にて、四ツ谷あまねは無様に乳を押し潰して全裸土下座を披露していた。正座の状態ならばともかく、上半身を倒そうと思うとデカ過ぎる乳が膝と胴体の間で行き場を失い、左右に拡がって形を崩してしまう。

 だが、それが良い。四ツ谷は比較的容姿の整っている部類で、特に乳は一級品。それがこうも無様に歪んでいるというのに、言い得ない優越感のようなものを感じる。


「改めて確認するけど、コイツは奴隷契約だ。日本は法治国家だから表立って公にはされないが、僕らみたいな富裕層には“お目溢し”がされてる。……分かる?」


 四ツ谷あまねの脳みそは既知を超えた絶頂ですっかり灼け焦げていた。もうコレを知ってしまったら、チャチな自慰行為で己を誤魔化すような退屈な日常にはとても戻れない。四ツ谷の披露する全裸土下座は、何も須藤が命令したものではなく、四ツ谷が自らで判断し、進んで行っているものだった。

 須藤は今日、性奴隷を何匹か飼っていると語っていた。自分もその1人にしてくれと、四ツ谷あまねは恥を承知で懇願していた。


「つまり、もし仮に今後なにか不都合が生じてお前が奴隷契約を解約したくなったとしても、国はお前の人権を保障しない。俺が解約を認めなければ自由の身には戻れない。……その事、よく分かってるな?」


「…………………………はいッ」


 品の無い話だが、土下座を披露し始めたところから数えて、四ツ谷は既にこの会話だけで四度ほど絶頂していた。愛液が滴って、高級そうな絨毯にシミを作っている。人としての権利を尽く奪われ奴隷として使い潰される己の姿というのは、どうも破滅を妄想するよりも些か派手に「効く」らしい。脳が幸せを訴えて、全身が軽く痙攣する。


 目の前に、バインダーに挟まれた一枚の紙切れとペン、朱肉が差し出された。


「母印で良いよ、印鑑より映えるしな」


 四ツ谷の目の前に差し出されたのは、契約書だった。人権を放棄し、己を奴隷の身に貶める為の契約書。押せば最後、人間では居られなくなる悪魔の契約。


「さっきも言ったがコイツは公的な契約じゃないから、契約書は飾りなんだが、好きなんだよ。お前らが人権を放棄してまでアクメを求めたマゾメスの証拠って感じがしてな」


 書斎には、似たような契約書が11枚、額縁に入れて飾られている。その全員が、今の四ツ谷と同じだ。

 性奴隷契約なんて普通の女は結ばない。どれだけの快楽でも、大抵は、人間としての自由な暮らしの方が優先されるものだ。こんな契約を良しとするのは、快楽に依存しきった救いようのないマゾメスだけだ。

 だから、証拠になる。この契約書に署名と母印のあるお前らは、全員が間違いなく救いようのないマゾメスであると。辱めの証拠、決して消えない烙印と同じ。この女はマゾメスだと、見る者に知らしめ続ける旗印になる。


「…………………………ふッ、ゥ゛♡♡」


 四ツ谷は身体を起こし、ペンを取った。


 四ツ谷あまねと、1文字、1文字ずつ、何の法的効力もない奴隷契約書に四ツ谷の手で名前が刻まれていく。その1文字ずつが、四ツ谷の人権放棄へのカウントダウンだった。

 四ツ谷は、人間で居られる残り僅かな時間を噛み締めながら、深く絶頂した。歯を食い縛り声を殺し、潮を噴きながら絶頂した。人権という唯一無二の権利、ただの一つしか持ち合わせのないソレを放棄する最初で最後の甘美な破滅に、倒錯的な歓喜を覚えて、四ツ谷はただ絶頂するしか無かった。


 最後の1文字まで、書き終えた。


「……ッ、ふぅ゛ッ♡♡♡ ォ゛ほッ♡♡」


 それで終わりではない。

 四ツ谷は次に、親指を朱肉に押し付けた。


 これがトドメになる。取り返しの付かない最後のマスターピース。これで契約書は完成し、同時に契約は結ばれる。四ツ谷は人を辞め、この男の性奴隷と成り下がる。それがやはりというか、四ツ谷は嬉しくて嬉しくて仕方が無かった。理性が辞めろと叫び、考え直せと吼えているような気がしたが、気にならない。本能が、マゾヒズムに傾倒した四ツ谷の本性が、これを良しとしているのだから。


 ああ、ゆっくりと、まるで己で己を焦らしているように、或いはそこで理性と本性がせめぎ合っているかのようにゆっくりと、親指が紙面へと近付いていく。


「────ッ、ゥ゛う゛ッ♡♡♡♡♡」


 奴隷契約書は最後の捺印で以て完成し、四ツ谷あまねの保有する人権はこの時刻付けで全て須藤慎二へと譲渡され、四ツ谷は深く深く今日一番に深い絶頂を味わった。飛び散った潮と本気汁が契約書の端に淫らなシミを作って、それも向こう永遠に、額縁に飾られ続ける。常人なら決して同意しないイカれた奴隷契約を結び、しかも捺印の瞬間に本気アクメで潮を噴いたバカマゾの記録として、契約書は残り続ける。


 四ツ谷あまねは、終わった。

 紛れもなく、確実に、無様に、僅かな救いようもなく派手に終わり果てた。そしてバカメスオナホ12号として、生まれ変わった。






「……はあ。凄く良かったから契約書をもう一枚書かせて欲しい? バカがよ」


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