経営不振で廃業したラブホテルをそのままビジネスホテルに。
○○○号室に泊まる客の「シャワーが夜中に勝手に出た」というクレームが相次ぎお祓いの後、件の部屋は従業員以外の使用が禁止に。
従業員が使用する際、四つ程注意される事があるという
・部屋に泊まるのは男である事
・絶対に目を合わせない
・決して自分から触れない
・接吻だけは拒否する
その四つを守る限りは安全であるという。
■最初に泊まった従業員は20代前半の若者だった。
高校卒業後から勤めていたビジネスホテルでの幽霊騒ぎに嫌な心持になった、
彼自身が怪奇現象など信じていない上にラブホテル時代に事件があったなどという話も
聞いた事が無かったからだ。
胡散臭い生臭坊主の御祓いが済んだ後に誰かがここに暫く住むと言う話になった。
昔、事故物件になったマンションを安い料金で数ヶ月住まわせ前居者を更新してしまえば「ここはもう事故物件ではないですよ」…っと誤魔化せる仕組みがあると何かで聞いた事がある。
ホテルの一室でその理屈が通用するとは思えないが彼はその類の話だろうと思った。
実際、オーナーも従業員も幽霊や怪奇現象など半信半疑だったが体裁もあるので御祓いを頼んだのかも知れないが、それでも自分で確かめる度胸は無かったのだろう。
だが泊まってる間は仕事を休めて手当てが出るというので彼が立候補する事になった。
関東○○ホテルは元はラブホテルな為にシャワー室にはカーテンが一応あるが基本的にガラス張りでその名残が色濃く残っている。しかしアメニティやサービスに手を抜いてないしっかりとしたビジネスホテルであり立地は駅から10分もしないという良いホテルだ。
S県は東京に近いという事もあり外に仕事帰りの酔っ払いや都内の高い宿代を避けてわざわざS県にまで来た観光客がまばらではあるがおり孤独感は無かった。
期間は一週間、初日の彼は降って湧いたその有給に感謝しながら夜を向かえた。
■二日目の夜、『ジャー…ジャー…』っというシャワーの音で目が覚める。
勿論シャワーを絞め忘れた筈がない。ホテル勤めでその変は身に染みている。
彼は産まれて初めて幽霊という存在を意識した同時に(やっぱり生臭坊主だったか…)と
心の中で悪態を付いた。せめてもの気慰みだ。
おそるおそるシャワーの方へ足を進めシャワー室のカーテンを開ける、そこには
裸の女がいた。
彼は混乱していた、何故ならその姿は生々しく妖艶でまるで誘っているかのようで自分が想像していた幽霊象からかけ離れていたからだ。
それと同時に若者の性か、「この幽霊もしかしたら”デキる”かも…」と思い始めた。
今まで自分が見てきた”女”とはまるで違うこの世のものとは思えない美しさを目の当たりにして欲望を抑えられなくなってしまい服を着たまま乱暴に女の胸を揉みしだく、
まるで指が吸い着くような感触で指から零れ落ちそうな程に柔らかいのにずっしりと手の中にその重さがある。これも初めての感覚だった。
塗れた長髪に身体を委ねながら胸を掌に感じ肉壷に腰を打ちつける。
押し付ける度に”たわわ”に揺れる肢体に男に産まれた事への感謝と征服感を全身に感じながら果て、体位を代え今度はその吸い込まれそうな深い蒼の瞳を見つめながら果肉のような瑞々しい唇に自分の唇を重ねた。その美しい顔立ちはまるで物語に出てくる登場人物のような儚さがあり言葉を交わす変わりに口付けで応えてくれるその甲斐甲斐しさに自分の人生の絶頂は今この時なのだと認識した肉体と精神が、自身の全を溶かしてしまい捧げられるものを全て差し出したような終わる事のない長い射精をし、その間、全てを受け入れた包むような優しい抱擁と花のような香りに包まれ甘い幸福感に満たされそのまま気を失った。
■次の日の彼はその事を同僚に自慢していた。
同僚達はホラ話かと思ってはいたが後に彼の話を信じる事になる。彼はその後、約束の一週間ずっとその話をし続けていたが顔はまるで別人のようにやせ細っていったからだ。
約束の一週間が終わった後に彼は自宅で自殺をした。
その後もその話を信じていない従業員が泊まる事があり何人か死人が出たが死因バラバラだった。
1人は女性従業員、泊まったその日の夜に何故かホテルから素足で10キロも歩き倒れていた。その時は生きてはいたが退職後に喉に髪の毛を詰まらせて死んでいたらしい。
1人は御祓いに来た住職、一晩泊まってみたがどうやら彼女の目を見てしまったらしい。
「恐ろしい…恐ろしい…あの目はあってはならない…」と残し数日後に衰弱死した。
1人は清掃員、上の話を聞いてはいたが好奇心に負けて触れてしまったらしい。
この世の者とは思えない美しさに溺れそうになったが理性が勝ったがその後触った手を切断する大怪我をしたが生存はしている。
四つ目の接吻をしてしまったのは最初の彼だけだったが、御祓いも出来ないどうする事もできない部屋に好奇心に負けてしまった男達は口を揃えてこう言う、
「”あれ”に身を委ねる限りは何ともない上に寧ろ気持ちいいもんだから可愛いもんだよ。
ただね、危害を加えようとしたり、自分から触ったり、目を見ちゃ駄目だ。
あのおぞましい色香で口付けを求めてくるけどソレだけは絶対駄目だ。
アレはきっと最期の一線だ。散々気持ちいい思いしといて何だけど二度目はゴメンだね。
… 多分堪えられない。」