というわけで、直接的な性描写なし、男性皆無、純然たる百合小説を書いたよ!
すごく難しかったですが、楽しかったです! 全5本、ご覧ください!
【ヴァンパイア・レイド】
(『アサルトリリィ』より、王雨嘉×郭神琳)
──今のこの姿を、誰かに見られたらどんな風に思われるんだろう。
王雨嘉はそんなことを考える。
「あっ……ゆーじ、あ……さっ……」
強く、強く、強く。
加減をしないようにと頼まれているから、精一杯の力を込めて。
私の歯が……神琳の肩に食い込んでいく。
吸血鬼という怪物が、ヒュージの出現するまでは、恐怖の象徴として存在していたそうだけれど、彼女たちはどうやって乱暴に噛みつくだけで、血液を摂取していたんだろうななんて思う。
歯が肉に食い込んだ感じはあるのに、血の味はしない。屈強なリリィの体は、CHARMを使わないとリリィでも傷つけるのは困難だ。
こんなことを言うと、CHARMは人に向けるものじゃないって、話の流れも考えずに自分の話しする人が出てきそうで、嫌だな……目の前の神琳とのやり取りとは、関係のないことさえも薄っすらと考えていた。
「雨嘉さん……も、大丈夫です……」
神琳から言われて、私は唇をつぅと離す。神琳の肩と銀色の橋が繋がって、なんだかとてもドキドキした。
歯の痕は、真っ赤になって薄く血を滲ませている。全然、血の味なんてしなかったのに。
神琳は、さっきまでの弱々しい表情から、いつもの強くて格好良くて落ち着いたリリィに戻っていて、「シャワーを浴びましょうか」とにっこりとほほ笑んで、誘ってくれた。
──あの日、台北のお兄さんたちの仇のヒュージを討ち取った後、神琳は時どきこうしておかしくなる。
私に肩や首を噛んでほしいと願ってきたり、太腿や二の腕を強くつねってほしいと頼まれたり……キスをする時に、軽く舌を噛んでほしいと頼まれたり。
理由も分からないままに、神琳に言われるがままに従ってきたけれど、ある時、彼女の喉から漏れている小さな声で気づいたんだ。
「ごめん、なさい……ごめっ、なさ……ゆー、じあ……さっ」
謝られることなんて、何にも無いのに。すべては、丸く収まったのに。
理詰めで他人を私を追い込んで、自分の復讐を正当化して、一人で突っ込んで負けて、私と鶴紗の協力を得て復讐を果たして。
そして、一柳隊のみんなは、私を含めて彼女を責めなかった。指摘や、諫めることはしなかったけど、神琳は悪者になる機会を失った。
それからだ。神琳は私に、時どきこうやって……神琳の熱が伝わるように接触しながら、痛みを与えてほしいと願ってくる。
私は神琳を傷つけるのなんて嫌だけれど、これをしてあげないと彼女はこの世の終わりみたいな顔をして震えだすので、いつも仕方なく……神琳をなぶる。
そのたびに、彼女は安心して、にこやかに日々に戻っていくんだ……戦いの、日常へ。
「いいよ、神琳……これが、私に与えられた、恩返しの手段なら……それで、いいよ」
少し前に誰かに言われた、私は神琳に感謝しないといけない、どんな気持ちで彼女が私のそばにいるかを配慮しないといけないという、そんな言葉を思い出す。
神琳に凄惨な過去があって、生え抜きのリリィとしての栄光を楓との対決で失って、苦悩した過去があるから私を見ていてくれる。そこまでは、分かる。感謝もしている。
でも、それは朋友という関係が、一方的に神琳の譲渡で完成しているんだと言われているようで、正直なところ私は、あんまり気分がよくない。
「相手の事情を鑑みれない方は、全自動で関係性として下」って、それはもう、結果的に対等な関係に上下を持ち込んで、それを構築しようとした者の意図の方を、踏みにじっているって、みんな気付かない。
「私は──神琳に感謝して、そして、神琳を肯定するよ。神琳も、少しだけでいいから……私に、感謝してくれると嬉しいな」
もちろん、言葉には出さないけれど。
一緒にシャワーへ向かう中で、神琳の肩に視線をもう一度飛ばす。
リリィの再生力で、そこはもうほんのりと赤らむ程度になっていて……だからこそ“次”があることを私に予測させて、喉から低い笑い声が漏れた。
【黄泉が辻と焦熱地獄】
(『はやて×ブレード』より、静馬夕歩×久我順)
──熱を出すのが、嫌いだ。
好きな人なんていないとは思うけれど、特別に嫌い。
体が怠くなって、喉が痛くなって、意識が朦朧として……そんな“大変な状況”の中で、順の“いやなところ”がよく見える。
明るく笑って、看病なんてしてくれて、入院するほど大げさなものじゃないから、日常の延長のようなものなのに。
ふっと……順の目に“死の影”が過ることがあって、腹立たしい以上に、怖く感じる。
「ねえ、いざとなったら……一緒に、死んでほしい?」
それはまだ、私の体が快方に向かう前のこと。
冗談めかして言ったつもりだったんだろうけど、順の目には必死な光が宿っていて、頬が震えるようにひくついていた。これを笑みだなんて、どれだけ私が鈍感でも感じたりしない。
──やめとこうよ、とそんなことを言った気がする。
いいとか悪いとか、して欲しいとかするなとかじゃなくて、中止の提案。
順は「本気にするじゃん!」とか言って笑っていたけれど、こっちはまったく笑えない。
「(ああ、順ってもしかして、一人ではもう生きていけない命なのかな)」
そのことに気付いたのは、そんな提案をされてしばらく経った頃。
私がそうしてしまったのか、それとも順の本来の性質が表に出てきたのか、判断はつかないけれど。
でも、順はきっと──私が死んだら、死ぬ。
彼女のことだから、後追いに見えないようにしばらくの間は「夕歩の分まで懸命に生きるよ!」とかやった上で、怪しまれないように事故に見せかけて死ぬとか、そういう小賢しい真似をすると思う。
そのことを想像すると、本当に本当に……嫌になる。
順の性格的に、私が同じことをしたら怒る癖に。ものすごく狼狽して、何一つ肯定してくれなくて、泣きながら怒鳴って、謝って、抱きしめてくる癖に。
私には、完璧な肯定と同意を求めてくるのが、本当に猪口才だと思う。
だから……私は、熱を出すのが嫌い。
体の中で燃えている病の熱が、心の中の不満に燃え移る気がするから、嫌いだ。
「夕歩ー、膝枕していい?」
「……どうしたの、突然に」
「いや、ちょっとしてみたいなーって。ほらほら、私の膝は今、ひんやりと冷えていて気持ちいいよ!」
「いや、体冷やしたくないし」
無言でその場で競歩を始める順。温めるな、温めるな。
放っておくと、外部刺激で温めるとかやり兼ねなかったので、私は仕方なく順の膝枕を受け入れる。
内心、このパターンはちょっと新しいなと思っていた。
もしかしたら、順の中の弱さとは違う、“共鳴”とでも呼ぶべき、私を起点にした死が力を弱めた結果かと思ったのだ。
「夕歩、髪がごわごわだねー。不健康の極みって感じ」
「……」
「無言でつねるのやめない? あたた……ギャーッ!」
失礼なことを、言うからだ。髪は真っ先に健康の影響が出る。熱を出しているだけで、少しパサ突く気がして、嫌い。
バカと有名な友達に相談したら「じゃあ、剃る?」とか言われた。剃らない。
「ねえ、夕歩──」
膝の上に乗せられて、上から覗き込まれて。
その時になって、ようやくこの姿勢は……ちょっと、脱出ができないぞと、そういう事実に気付く。
ああ、これ、もしかして……新展開じゃなくて、延長なのだろうか。
私が熱でうだる意識の中で、精一杯に胡乱な目つきを向けると……順が熱くなっている私の耳を左右から触って、こう呟いた。
「長生き、してね。できるだけ、長く」
不意打ち。
想像していたのとは、別の言葉を投げかけられて、むせてしまった。トドメを差してどうする。
慌てる順を睨みながら、言葉にしてハッキリ伝えてあげた。
「順が心配で、死んでなんてられないよ」
【拝啓、愚かしくも懸命な先祖たちへ】
(『機動戦士ガンダム 水星の魔女』より、ノレア・デュノク×ソフィ・プロネ)
「──知ってる? 恋愛って“”発明をしたのは、アーシアンなんだよ」
後ろからぴったりとくっついて、その熱を伝えるようにしながら主張してくるソフィ・プロネに向かい、ノレア・デュノクは「そう」と軽く一度流してから……すぐに「ん?」と引っかかりを覚えて振り返る。
肩口にソフィは自分の顎を乗せているので、キスしそうになった。したところで、困る関係でないけれど。
「発明って、なに? 恋愛なんて、大昔からあったんでしょ」
動物に興味のあるノレアは、虫などになると怪しいものの、高等な知能を持つ動物には情愛の類が備わっていることを知っているし、猫などは同性愛に走ったりもするということも聞いたことがある。
同性愛嗜好の、猫。まるでソフィのようだ。
「へへー、そう思う? 実際は宇宙世紀が来るよりもずっと前、文化の幾度目かの習熟期に、子孫繁栄の為でも家の発展の為でもない愛情に名前を付ける必要ができて、今の“恋愛”の原型が出来たんだ」
「……そんな話、どこで見たの?」
「ゲームの蘊蓄で」
それは何処まで信用できるのかと正直思うのだが、ソフィは得意げな顔をしているので、わざわざ突っ込むのは止めることにした。
それに、多分ソフィはこれを「アーシアンはすごい」という意味合いで語っているのだと思うけれど、逆に言えば発明以前は恋愛感情無しで不気味な発展を遂げていた生物のように思われて、ノレアは“恋愛前夜”の人類にあまり好意を持てそうにない。
「恋愛といえば──こういう勉学を第一義とする場所って、何故か恋愛ごとに発展することが多いらしいよ」
「それも、ゲームで見たかも」
話題を変えてやると、ソフィはあっさりと食いついてきた。
“フォルドの夜明け”が拠点として使っている、廃校の一室……学校と言い切るには少し難があるかも知れないが、話題を変えられればなんでも構わない。
「お姉ちゃん……スレッタも、恋愛してるのかな、学校で」
「……してるんじゃない。花婿さんらしいし」
地雷を踏んだ。完全な自爆。
スレッタの話題を、今は出したくなかった。
ソフィはスレッタ絡みになると興奮して、あの“水星の魔女”の話題しかしばらく語らなくなる。
目の前に、ノレアがいるのにだ。
露骨に嫌そうな顔をするノレアの姿に、流石にソフィも何かを察したらしく、彼女は「怒るなよぉ」と言って、後ろから頬ずりしてきた。それが、怒りを鎮める効果があると思われていることが、実に腹立たしい。
それ以上にノレアが腹立たしく感じるのは……まんまと、逆立っていた気持ちが凪いでしまっていることだが。
「スレッタの話題がダメならさ、私たちの話題に終始するしかない訳じゃん」
「なに、不満なの?」
「いやいや、そうじゃなくてさ──」
廃校の教室には、当然ながら本来は椅子も机も残っていない。
この部屋の中にあるのは、ソフィとノレアが腰かけるために、まるでパズルのようになっていた積まれた椅子を崩したものだ。二人は何ともなかったが、きっと次に椅子を引き出す者は圧死するだろう。
そんな椅子を、ノレアの前に動かしてきて、ソフィはまるでそこに机があるみたいに、優雅ですらある動きにで存在しない机の上に頬杖を突き、片方の手を伸ばしてノレアの髪を掻き上げてきた。
「こんな風な距離で迫られたら、簡単に“恋愛”しちゃうのかなぁ……って思って」
「……人によるでしょ」
なんだか、ソフィのペースなのが気に入らない。
かといって、やり返すのも子供っぽいなと思っていたら、ソフィの肩に何かキラキラと輝くものがあった。
何処かで盗聴器でも貰ってきたのなら、一大事だ。そう思って前のめりになり、肩からそれを取ってやる。
「(なんだ、何かの包装の欠片か。紛らわしい……?)」
見れば、ソフィが目を閉じて何かを待っていた。
顔はほんのりと赤らみ、何かとても重大な決断が下されるのを期待して、自分が生み出した闇の中で待っている。
「(え、なに、待って? そういう意味だって、取られた?)」
……残念ながらと言おうか、ノレアとソフィはキスをしたって、ちっともおかしくない関係で。
恋愛なのかなんなのか、待たせた分、少しだけ深く口づけて、茶番の終わりを告げるのだった。
【Eat Kill All】
(『がっこうぐらし!』より、丈槍由紀×恵飛須沢胡桃)
──遠ざける為に告白をしたら、何故か距離感がゼロになってしまった。
「どうして、こうなった……」
「なにがこうなの、くるみちゃん?」
恵飛須沢胡桃は、いずれ自分が“彼ら”になってしまうかも知れないと、丈槍由紀に語った。
ただ低いうめき声を上げながら、生者の肉を求めてさ迷う存在。
当然ながら、これまで守ってきた仲間のことを犠牲にしたくなくて、だからこそ素直に告白をした……自分が怪物になるかも知れないと明かしたのに。
何故かその日から、由紀はぴったりと胡桃にくっついて寝るようになってしまったのだ。
「ゆき、お前な……あたしがどういう状況か、わかってるのか?」
「“彼ら”になって、私たちを襲っちゃうかも知れない」
「予想以上にしっかり理解してたな。というか、あたしでもちょっとボカしておきたい部分にも余裕で突っ込んでくるじゃん……」
由紀は訳も分からず不安になって、胡桃にまとわりついている訳ではない。
大切な人が作ってくれた幻想の檻から抜け出して、現実逃避を止めた後の由紀は、むしろ聡明だ。最後の部分は感情論で動くが、そこまでの道筋を立てるのは今となっては学園生活部で一番上手かも知れない。
胡桃としては、正直なところ由紀にくっつかれるのは嫌ではない。というより、かなりいい。正直、学園生活部のメンバー内で由紀の取り合いのような状況である為、一歩リードしているような気持ちになれる。
けれど、それはそれとして……真っ先に犠牲になるのが由紀なのは嫌だ。他の誰かならいいという意味ではなく。
「くるみちゃんが、もし“彼ら”になっちゃったら……くるみちゃんに襲われるかどうかは別にして、私たちってそれ以上は生きていけないよね?」
ずっと目を反らしていたことを、由紀が笑顔のままで突きつけてくる。
下がっていく体温に怯えて、夜中に勝手に暴れださないように手錠なんぞ付けて。
けれど、そこから先……胡桃から無事に逃げおおせたとして、学園生活部内の“暴力”のほとんどを担当していた胡桃が抜けた後、今まで道理にずっと暮らしていけるか、危機を回避していけるか。
最後の一瞬まで、学園生活部の面々ならば努力するだろうが……展望は暗い。
そんなことを笑って言われては、責められている気にすら慣れず、ただ由紀の体を抱きしめ返してやることしかできない。
「だからね、確実に……くるみちゃんが“彼ら”になってしまったら、くるみちゃんの手に確実にかかれるようにって、ここにいるんだ」
それは、生きることを諦めた選択ではなく、真剣に命に向き合っているからこその“選択肢”。どこで終焉を迎えるか、理不尽な普通が吹き荒れるこの場所で、数少ない自分で選び取れる場所。
「残さず食べてね、くるみちゃん」
「……バカ。あたしの意識なんて、もう残ってないんだよ。ゆきは半端に喰われて、私の近くでうーうーうなってうろつくだけになるんだ。めぐねぇに、申し訳が立たないよ……」
「それでも、残さず食べてね」
最後の最後は、感情論。
理論武装もかなぐり捨て、最後を一緒にしたいと懇願してくる由紀。
生きることに貪欲な由紀だから、これは自暴自棄になった結果ではないとは思っていたけれど……あまりにも重い、最後まで共に生きてくれと言う告白だった。
「あたしは、少しだけでも長くゆきに生きてほしいのに、こっちの願いは完全に無視するのな」
「長生きしよ? 二人で一緒に」
由紀が甘えるように、胡桃の胸へ顔を埋めてくる。
そこから屍臭がするんじゃないかとふと思ってしまい、胡桃は表情を歪ませた。
「くるみちゃんの匂い、とっても落ち着くね」
由紀に直々に“まだ猶予はある”と知らされて……結局、胡桃は今夜も由紀を受け入れる。
一人で怯えて過ごす夜に比べて、あまりにも齎された眠りは穏やかなものだった。
【記録は続き、誰かを満たす】
(『ポケットモンスター』シリーズより、リーフ×コトネ、アオイ×ネモ)
「どうやったら、先輩トレーナーを落とせますか!?」
新人トレーナーであるアオイの言葉に、コトネは口に含んでいた飲み物を危うく噴き出しかけた。
コトネに落とされた先輩トレーナー……リーフはコトネがむせている背中を、あまり表情を変えることなく撫でてみせている。
「けほっ……い、いきなり過ぎる。ポケモン関係の質問がくるものかと思ったら、いきなり恋愛で切り込んできたってことね!?」
「あ、ごめんなさい……その、私、ポケモン関係はネモちゃんに全部聞くって決めてるもので……」
「濃厚なノロケが……最近のトレーナーは積極的だわ」
「……コトネも、よくヒカリやユウリにやる」
「え!? マジで!?」
どうやら「リーフ好き好き惚気」を意識せずやっていたらしく、コトネが軽く顔をひきつらせて「
そっかー。やってたかー」と呟いている。
その独特なノリも、今は正に“そういった”姿を求めているアオイにとっては、眩しく頼りがいのあるものとして映っていた。
「どうして、そんなに先輩トレーナーと仲良くなれたんですか? 遠慮とか、しなかったんですか?」
「遠慮はあまりしなかったわね……トレーナーって、みんな対等みたいなところがあるじゃない? 下手な謙遜は人間関係の得にならないってことね!」
「……コトネはヒカリに昔、ボコボコに負けてからガチ勢引退してた時期があったから、礼儀に疎かっただけ」
「さっきから、どうして黒歴史をバンバン開示していくんですかぁぁぁっ!?」
遂に悲鳴を上げてしまたコトネだが、リーフはずっとコトネを後ろからだっこし、まるで「あげないからね」と言わんばかりの視線でアオイを見つめてくる。
「……私たちに、あなたへのアドバイスは難しい。私がコトネを好きで、口説き落としたから。私は、この通り……あんまり、表情が豊かじゃない。森でポケモンたちに囲まれてる方が、人といるより楽しい……けれど、コトネがいると『感情を表に出すのって、楽しいな』って思える。自分が、普通に思えてくる」
「自分の分の黒歴史も開示したら、許されるってことじゃないからね……でも、アオイが誰のことを好きかは分からないけれど、相手も好いてくれてるなら、それを前提にお話した方がいいってことね」
リーフがコトネをだっこしている時、コトネの手はいつもリーフの頬に触れている。
あまり表情が豊かでないリーフは、コトネやヒカリといった他のトレーナーに混ざる時、ひそかに頬をつねっていることがあった。
──どうして、私は笑えない?
多分、コトネがリーフを意識したのは、その時から。彼女の分まで大げさに感情を表象し、彼女の“顔”になりたいと願ったのが最初。
ほとんどアドバイスらしいアドバイスをできなかったのに、アオイは何故か二人の姿を見てキラキラと目を輝かせ「参考にします!」と叫ぶと、ミライドンを呼び出して走り去っていってしまった。
「……誰が好きかは分からないけれど、うまくいってほしいってことね」
「セレナみたいに、あまり上手くいかない方がいい関係もあるけれど……」
「いやー、パキラみたいなのは、そんな無体いないでしょ……いないよね?」
二人は“特に反省した様子の無い秘密結社の団員”という、割とグレーな相手に惚れこんでいる後輩、セレナのことを思い出していたが……アオイの相手は、流石にそこまで悪辣ではないが、危険度ではあまり変わらない相手だったりした。
※
「今日は、ちょっと頑張りすぎちゃったねー。無理はダメだよ? 私は、君とだったらいつまでも、那由他の果てまでだってバトルできるけれど……君は、まだその過程。最後まで付き合えなくても、気にしないでね?」
「はっ……はっ……は、い……」
何故か今日は、いつもよりもずっと……倍くらいの時間はバトルに付き合ってくれて、ネモは大いに満足しながら、汗だくになったアオイのことを後ろからだっこしていた。
初めて見た時から、いずれ自分と同じ場所までやって来るという、確信があった。
楽しくて、楽しくて、楽しくて、楽しくて、戦うのが楽しくて。
この地方から「目を合わせただけでの対戦は禁止」というルールまで発信させたのが、ネモという少女だ。
体力はむしろアオイの方があるのに、ポケモンバトルになると脳内麻薬が出ているのか、果てるということを未だ知らない。
そして、アオイは現状、懸命にネモに食いついてきてくれている。
「(でも、こうやって穏やかな時間を過ごすのも、本当は私は好きだよ)」
アオイのお腹に手を当てて、そこから返ってくる鼓動を感じながら、もしもアオイが完全に自分に追い付いたら……それはそれで、この時間が失われて寂しいかも知れないなと、身勝手なことを想う。
「(君の前だと、私はどんどん我儘になるね)」
懸命に追いかけているつもりなのだろうけれど、本当はずっとここで立って待っている。
そのことに気付いてくれるまでは……きっと、この時間も確保できるだろう。
「ネモさん、何か嬉しいんですか?」
「んー……アオイは、どう思う?」
ネモを悦ばせたい癖に、自分がネモを喜ばせている自覚がない少女の熱に、孤独を溶かされながら。
戦場の女王は……まるでどこにでもいる子童のように、笑った。
屋根が高い
2023-04-05 08:04:07 +0000 UTC屋根が高い
2023-04-05 08:02:31 +0000 UTCはち
2023-04-05 07:59:35 +0000 UTCお塩
2023-04-01 14:05:43 +0000 UTC屋根が高い
2023-04-01 12:23:12 +0000 UTCまりね
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