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異世界メス嫁~女侍ギンコ、盗賊の体臭に心を盗まれお嫁堕ち

「──盗賊! 盗賊がいるのですか!?」


 花魔法使いのミコは、時どき月鍔ギンコの“スイッチ”が入ることは知っていた。

 しかし彼女の琴線については誰にも判別が出来ず、勿論ミコは“盗賊”の話でどうしてギンコが爛々と眼を輝かせ始めたのかが、まるで分からない。

 ギンコは少しだけ赤みがかった茶髪を“ざんばら”にまとめた、整った顔立ちの女剣士である。サムライ……そう呼ばれる存在なのだと彼女は自称しており、どうも別の世界から転移をしてきたと思わしい節が幾つもある烈女だ。

 ミコ相手だと最初に助けてもらった時からずっと優しいのだが、それはそれとして魔物という共通の敵がいるこの世界で、彼女は“人と魔物の命に別無し”という異端が過ぎる価値観の持ち主であり、強者との戦いの果てに死ぬことのみを異様なほど羨望している面があった。


「えっと、確かにいるけど……あの、ギンコさん、話聞いてた? その盗賊は、色んなものを盗み出していく凄腕で」

「分かっておりますとも。某とて、ミコ殿を始めこの世界の価値観に触れて参りました。この世界の強者は、世の希望。易々と切ってはならぬものだということを」

「いや、重たい理由があっても切っちゃダメだからね?」


 ミコの言葉を聞いているのかいないのか、ギンコはますます鼻をすぴすぴと鳴らし、ヒートアップしていく。一見すると綺麗なお姉さんなのだが、その目の奥に闘争の炎が燃えているのがミコには見えていた。


「逆に言えば……大した理由もなく他者を傷つけ、いたずらに相手の財を奪うが悪徳なのは、某の世界もこの世界も同様。そして、某の世界では賊は釜茹でか獄門と決まっておりました!」

「ゴクモン……?」

「分かりやすく説明すれば、晒し首ですね。通常の晒し首とは、死体を刀の試し切りにするのが違っておりますが」


 魔物という絶対的な脅威を前に、人もドワーフもエルフも亜人も同胞として協力しあっているこの世界では、刑罰というのはほとんど機能することが無い。故に死した後も死体を辱め、傷つけるという行為の意味が理解できず、ミコは口元を抑えて黙り込む。

 ──そして、それがいけなかった。


「つまり、この世界でも賊であれば、無礼打ちも許されるというものでしょう! ましてや市井に強者や魔法の使い手がいるこの世界で盗みを働くのは、相当の実力者にしか不可能です!」

「──!?!? ま、待って、ギンコさん待って! 何か誤解してるよ、ギンコさ──」

「熱く燃えるような果し合い……下賤な賊が相手というのは少々気が萎えますが、それでも久しぶりに加減の必要なく力を振るう機会! 忽ちに賊の首を持ち帰り、近隣に安寧をもたらしましょうぞ!」


 いつの間にか言い訳が上手くなってしまったギンコは、そのまま酒場を凄い勢いで飛び出していってしまう。

 ミコが必死に「ギンコ!? ギンコさーん!?」と呼び掛けても、うっかりと漏らしてしまった東の山……盗賊の拠点へと突っ込んでいってしまう。


「あわわ……どうしよう! ギンコさん、絶対なにか勘違いしてるよ! え、なに? ボク、何を間違えたの!?」

「そうだねぇ。可能性があるとしたら、ギンコちゃんの世界では“盗賊”が元の意味で使われてるのかも知れないね」


 ヒスイ教のシスターであり、ミコの育った孤児院の院長でもある元“槍の勇者”ギブリール=ルーは、ギンコの背中を見送りながら呟く。彼女自身はまだ六十歳と“年若い”が、長命で知られるエルフである故、もう今は伝承にしか残っていない知識を多く持っているのだ。


「元の意味って、何なんですか?」

「もう一万年も前に人と人の争いは絶え果て、魔物との絶滅闘争が始まった訳だけど……それ以前までの“盗賊”はコソ泥とか野盗とか……要するに“人の財を奪い取る盗人”って意味で使われたんだ。ギンコちゃんの世界は未だに人間同士がやり合ってるらしいから、そういう盗賊が普通なんじゃないかな?」

「そ、それじゃあ……ギンコさん、絶対に襲い掛かるじゃないですかー!? 先生、どうしましょう!?」


 ギンコの異常な強さ……どんな魔物も両断し、遠く離れた魔物は弓で粉砕する……を知っているので、焦りまくるミコ。

 対して、ルーもギンコの恐ろしい力を知り、友情を抱きながらも警戒しているのだが、何故か少しも慌てる様子は無い。


「落ち着きなよ、ミコ。いくらギンコちゃんでも、あの“盗賊”には敵わない……絶対にね。いい機会だ、あたしはギンコちゃんを信用できてないが、好きなのは間違いない。ここらでギンコちゃんには“この世界に”馴染んでもらおうじゃないか……」


 飄々とした口調で呟くルーに、ミコはひたすら案じるような視線を東の山を見つめることしか出来なかった。



「──ここが賊の拠点ですね! 思ったよりも質素なようで!」


 てっきり洞穴の中に迷路のようなアジトでも作っているものかと思いきや、東の山にはポツンと一軒家が立っており、ギンコはそこが盗賊の住処だと一目で理解できた。

 何故ただの山小屋だと判断しなかったのか……裏手に無数の魔物の頭骨が、建物よりも高く積もっていたからだ。この山で魔物の脅威を物ともせず活動している者がいるとすれば、件の盗賊に間違いない。


「頼もう! 某は月鍔ギンコ、非道卑劣の賊を成敗に参った! 尋常に立ち会われい!」


 自身の愛刀に手をかけながら、朗々と小屋に向かって声掛けするギンコ。

 ワクワクと待ち受けていると……扉が開かれ、小屋から一人の麗人が姿を現した。

 そう、麗人だ。ギンコは勝手に、落ち武者狩りを仕掛けてくる武装した農民や、泥棒ひげを生やした牢人崩れを想像していたのだが、現れたのは美しい乙女であった。

 本来は長いであろう髪を紅い頭巾(※バンダナのこと)でまとめており、賊という言葉に纏わりつく品性下劣な様子はまるで見られない。身に着けているのは、貧のいい中性的な印象の召し物であり、なんならギンコよりも身なりが整っていた。


「──随分と可愛い娘が来たのね。けれど、卑劣非道っていうのは何の話? まるで覚えが無いわ」

「いいですね、こういった惚け方! これでこそ斬り甲斐のある賊というもの! それと、某に対して女のへ向けるような褒め言葉は無用です! 某は、疾うに女を捨てておりますので!」

「ふぅん、話が全然通じない……でも、いいわ。好みだから──要するに、あなたは私をぶっ飛ばしたいってこと? あいにくだけど、こなさなきゃいけない盗賊仕事がまだまだあるの……そうだわ、腕に自信があるのなら私を手伝ってくれないかしら?」


 くるくると、何処からか取り出したナイフを空中に躍らせながら、盗賊は妖艶ですらある笑みを浮かべてギンコに語り掛けてくる。

 ギンコはギンコで、まるで御馳走を前にした時の餓狼のような表情を浮かべ、凄絶ですらある美しさを湛えて微笑んでいた。


「私は“盗賊勇者”──名はトルティ・タクティス。よろしくね、ギンコちゃん?」

「某は日の元の侍、月鍔ギンコ! いざ尋常に……ん? 勇者?」


 ギンコの顔いっぱいに?マークが浮かんだ次の瞬間──トルティは風よりも早く、ギンコの間合いに飛び込んできていた……。



「んんん~っ♥」

「ほら、ギンコちゃん♥ ちゃんと息をしないと、このまま窒息死しちゃうわよ♥ サムライの熱い生きざまっていうのは、お姉さんの胸に顔を突っ込んで窒息することなの? ふふふ、サムライってエッチなのね♥」

「ふ、ふぁっ……な、なにを勝手なことを……ふほぉぉっ♥ 匂い、甘ぁぁぁっ……♥」


 壮絶な死線を夢見たギンコであったが、残念ながらトルティとの勝負は一方的なものだった。

 これまでのように圧倒的な技量や独特の死生観でギンコが圧倒した……の、ではない。

 むしろ逆──ギンコは徹底的にトルティを相手に追い込まれ、まともに一撃も与えられないままに武器を奪われ、こうして胸に顔を埋められて成すすべなく……それどころか、へこ♥ へこ♥ と腰が勝手に前後に動いてしまっている。


「(こ、こんなっ……♥ す、少しばかり甘い女人の香りを嗅がされただけでぇ……♥ 自らの顔に刃を引き、女を捨てた時のことを思い出せ、ギンコ!)」

「ほら、ふぅぅぅ……♥ フェロモンたっぷりの吐息、嗅がせてあげる♥」

「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁ……へっ♥ おへっ♥ おひぃぃぃっ……♥」

「ほらほら、嗅げば嗅ぐだけで、私に“ハート”を盗まれてしまうわよ♥ このままじゃギンコちゃん、私のお嫁入りしちゃうかも♥」


 ニヤニヤと笑いながら、柔らかい胸を左右から押して、ぱふぱふと胸で頬を揉み上げるトルティ。

 それだけでギンコの身体から力が抜け、修羅となってまで求めた争いへの尽きせぬ衝動が薄れてしまう。自分が自分で無くなる感覚……自分の大切なものが奪われ、そこにトルティへの好意を流し込まれていくのは、あまりにも甘やかな略奪だった。


「私は何でも盗むことが出来る……武器だって、財だって、時には命すらも……そして、人の心もね♥ 勿論、心を奪う時はこうやって、相手にしっかりと向き合って解きほぐしてからだけど……♥」

「あへぇぇぇっ……♥ そ、それで某の愛刀がすっぽ抜けて……ひ、卑怯なぁ……♥」

「何が卑怯なの? 持てる力を全力で使い、成すべきを成す……それが私の盗賊としての誇りよ♥ それとも、ギンコちゃんは手を抜いて欲しかったの?」

「そ、そんにゃ、こと……んひぃぃぃぃーっ♥」


 ギンコの袴に指が滑り込み、つぷっ……と秘所に指がねじ込まれる。

 元居た世界では鉛玉で昏倒したことはあるが、それ以降は圧倒的な武芸の技量によって敗することはなく、このような敗北の後の辱めの経験も無い。

 自分が侍として恥ずべき行いに引きずり込まれており、捨てたはずの女であることをわからされている……その事実がますますギンコを興奮させてしまい、彼女の腰は「もっと触って♥ 女の子の快楽ほちい♥」と甘えるようにヘコつき続ける。

 ……トルティの戦い方は、とにかく変幻自在で、かつギンコと相性の悪いものだった。

 真っ先に“武器を盗”まれて刀を奪い取られ、しかし慌てることなく徒手空拳で撃殺せんとしたのだが、体技だと圧倒的にトルティの方が速くて鋭い。

 打ち合っている最中に急に胸の谷間を見せられたり、腋を見せるように髪を搔き上げたりという奇妙な動きが入るのだが、ギンコはそれを「弄っているつもりですか!」と一蹴することが出来なかった。

 攻撃されるほどに……正確に言えば、その度に汗の匂い、髪の芳香、体臭……それらを嗅ぐたびにギンコの心は少しずつトルティに染められていき、顎を打ち上げるような強烈な一撃で朦朧としたところに胸の谷間を開いて誘惑ハグされ、そこに自分から鼻先を突っ込んでしまったのだ。

 サムライとして実の父をも切り殺し、しかして戦で死ぬこと敵わず、剣鬼とかして武芸者たちと手合わせても置いて行かれ、御仏にすがった末にこの世界にやって来た。

 そんなギンコは確かに戦いの果てに死ぬことを望んでいるが、それは母の早世によって父娘ともに異様な方向に歪んでしまった結果という一面もあったのだ。

 そんな無意識に求めている安息と母性が、全てトルティからは与えられている……盗まれているのに、与えられているのだ。


「あっ、あっ、あうぅぅ……♥ こ、こんな……こんな安らぎ、などぉぉ……♥ さ、侍には、不要ぅぅ……んほぉぉっ♥」

「もう、しつこいなぁ、ギンコちゃん♥ こんなに可愛い女の子なのに、女の子と触れ合う喜びを知らないなんて寂しいことだと思わない? 楽しいことや気持ちいいことを経験せずに『誉れある死』なんて、単に経験不足なだけじゃない♥」

「そ、某は女ではありません……んへぇっ♥ こ、この顔を、見られよ……自ら刃を引き、女としての生き方を否定した顔で……」

「ぺろっ♥」

「くひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ♥」


 ギンコがある意味、間違った誉れにしてしまっている顔の傷……己が女ではなく侍だと証明する為に付けた傷をトルティに舐められ、そこからびりびりと全身に快楽が走ったことで、ギンコは己のアイデンティティを完全に消失する。女を否定する為の傷が、女の歓びを伝えてくるのだ。もう、逃げ場がない。


「ぴちゃっ、れるぅぅ……♥ この傷がギンコちゃんを気持ちよくするのを阻んでいるのなら、このまま性感帯に変えてあげるわ♥ 顔舐められながら、手マンでイッちゃいなさい、ギンコちゃん♥」

「あっ、あぁぁぁっ♥ お、女に、女に戻されるぅぅぅっ♥ 雌になって、しまいますぅぅぅっ♥ んほぉぉぉぉぉっ♥ い、イクっ……♥ あっ、あひっ……達するぅぅぅっ♥ んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ♥」


 袴を貫くほどの勢いで激しく潮噴きし、どろどろに愛液で色濃くしながら腰をヘコつかせて達するギンコの表情には、懸命に否定してきた雌の悦びが灯っている。

 トルティが腕を上げて、むわっ……と雌の匂いが漂う腋を開き、ギンコの顔にぱふっ……と被せる。

 ギンコは「んんんっ♥ んふぅぅぅぅっ♥」と甘い匂いでイキ狂いながら、完全にトルティに心を盗まれてしまったのだった……。


「ギンコちゃん、あなたは一生、私のモノよ……ふふふ♥」

「は、はひぃぃ……そ、某はぁ♥ さ、侍である前に♥ トルティ様の、お嫁さんですぅぅっ……♥」



 ──魔物たちに街ごと占拠されていた地域を“盗み”返し、歓声を受けながらトルティは傍らに佇むギンコを見つめる。

 彼女は立身出世や人からの羨望にまるきり興味が無いと話していたが、しかし大歓声と感謝の声には、なんだか面映ゆそうな顔をしていた。


「ギンコちゃんがいたお陰で、すごく今回は楽だったわ♥ ありがとうね、私のお嫁さん……♥」

「んぁぁ……ほ、頬に接吻されるだけで……んっ♥ 軽く達するぅぅ……♥ そ、某は……まだ、この歓声がどれだけ価値あるものか、わかりません……戦いの果ての死よりも、これが価値あるものなのかが、判断つかないのです……♥」


 トルティに寄り添うギンコの目には、これまでのアイデンティティが崩壊して寄る辺ない光と、狂気から解き放たれつつある救われたものの光が同時に宿っている。

 トルティはぽんぽんとギンコの頭を撫でてやると「私の隣で、どちらか選んでいけばいいわ」と微笑みかけた。

 一度、王都アヴァロンに戻り、ギンコが置いてきた仲間たちにも挨拶しなければいけない……そう考えつつ、ギンコがへこ♥ へこ♥ と物欲しげに腰へこマン媚びするので、トルティは軽々とギンコの身体を抱き上げ、「きゃっ♥」という悲鳴以上の雌声を聞くために、宿屋へと向かうのだった。




今回の攻め役

※トルティ・タクティクス

・盗賊勇者。魔物たちによって奪われたものを奪還、失われた以上のものを人へともたらすことを目的に戦う勇者であり、この世界には存在しないか忘れ去られた概念だが、いわゆる“義賊”に近しい。長い髪をバンダナでまとめ、中性的で身なりのいい恰好をした長身お姉さんの為、勇者マニアからも人気が高い。

・盗賊勇者の由来はもう一つあり、あらゆるモノを“盗む”ことができる特殊能力者であり、武器を奪い取り、経験を奪取して相手を弱体化させ、心を盗んで魅了して同士討ちさせると、とにかくできる事が多すぎる。

・モデルは『ファイナルファンタジータクティクス』のシーフだが、あちらが直接戦闘力に長けていないのに対して、こちらは流石の勇者であり身体能力もすさまじい。

・ギンコの死生観を否定することはないが、彼女自身は成すべきことは生きている間にしかできないことであると任じているので、ギンコの言う「熱い生きざま」を「逃避なんじゃないの?」と内心では思っている。まあ、実際武士道って少数のサディストと大多数のマゾヒストで構成されるなんて言うし……。

・ちなみに彼女の拠点に魔物の頭部が大量に並んでいたのは、大抵の魔物は人間を傷つけることを絶対の目的としている為に“牙”や“角”を持ち合わせることが多く、これらを“盗む”と頭骨ごと引っこ抜いて即死させてしまう為。実は対魔物技能がえげつないほど高い。

異世界メス嫁~女侍ギンコ、盗賊の体臭に心を盗まれお嫁堕ち

Comments

ギンコちゃん、戦闘狂キャラなんですけど、切腹できなくて泣いてるシーンとか見ると、マジで女の子様にお嫁入りして幸せになってほしいです…

屋根が高い

ギンコちゃん、本編でも微妙に父親の洗脳っぽいというか、母親亡くなって箍が外れた感があちこちにあるので、幸せになれてよかった……

とろがけ


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