──ずっとずっと、遠い昔の話。
まだ紅魔族の始祖が改造手術を受けてから時間がそう経っておらず、歴史の真実が伝えられつつも文化が成熟しつつあった頃の事である。
里にふらりと、紅魔族と同じ真紅の瞳に加え、雪色の髪を持つ少女が現れた。
大きな戦にでも巻き込まれたのか、幼い容姿にも関わらず全身は傷だらけで、左目には十文字の刻まれた眼帯をしていたという。
自分たちよりも属性過多だということで、何人かの里の者が戦闘民族らしく喧嘩を売ったのだが、比喩でもなんでもなく秒で瞬殺され、全裸で秘所を“くぱぁ……♥”と開いて、腰ヘコして命乞いをする羽目になった。
幸いにもと言おうか、不幸中の幸いというべきか、少女は紅魔族の文化を気に入ってしばらく滞在し、また紅魔族は改造手術が映えるようにと美形揃いである為、見目麗しい乙女たちを侍らせ囲まれることを好んだという。
しばしの時を紅魔の里で過ごした少女は、治りかけの左目から眼帯を外し、世話になった礼だと言ってもっとも寵愛していた乙女……当時の里で最強のアークウィザードだった女性であり、真っ先に少女にマン媚び踊りで媚びた相手……に手渡し、嘘か真かこんなことを告げた。
「この眼帯は時間を操る力があって、今はお姉ちゃんたちには使えないけど、あたしの血が混じってつよ~い子孫が生まれてきたら、その力を取り戻すはずだよ♥ あたしはもう自力で治すからいいけど、この世界があいつら……瑠璃宮に狙われたら、その眼帯を見せれば力の証明になると思うしねぇ♥」
今さらだが少女は両性具有者であり、乙女を始めとして何人かの紅魔族はパコり孕まされおり、その後に時おり強大なふたなりアークウィザードが生まれてくる要因となる。
どうやら彼の少女は“ルリイエ”なる「魔王軍など吐息で滅ぼせる妖女たち」と大戦争を繰り広げてきたらしく、最後に上記のような言葉を告げて、紅魔族を気遣って去っていった。
不思議とこれが今生の別れとなると悟った乙女は、ずっと聞いていなかった少女の素性を聞いた。
少女はそろそろ文化として根付き始めていた、紅魔族の名乗りを真似てこう返した。
「我が名は“なゆた”──この世で最も強き生命の起源にして、陰陽の始祖なり……なーんちゃって♥」
……結局“なゆた”の記録は、乙女たちの2代後くらいの紅魔族たちが「自分たちが負けた記録なんてダサい」として消してしまった為、この地が陰陽の始祖が死を賜る前に立ち寄った場所である事実は、永遠に失われてしまった。
その為、上記の経緯は別に覚えていなくいい。単に「なんでこんなことが起きたのか」というのを明かしたがる者が、納得する為に用意されている回答で、本編とはあまり関係が無い。
眼帯自体は「なんか格好いいから」と代々に渡って受け継がれ……そうして今代の所有者の少女がハッスルした際その効用を発揮し、とある2人の辿った経歴を丸ごと改変してみせたと、それだけ理解していれば十分である──。
※
──めぐみんは寝台の上で内股気味になって座りながら、何度も深呼吸を繰り返していた。
基本的に一族レベルの厨二病が蔓延しており、その影響で羞恥心というものが奇妙な方向に作用している紅魔族であるが、こと恋しい相手と結ばれる前となれば、やはり緊張を覚えざるを得ない。
なんなら、一般人よりも強く“運命”とか“縁”とか“絆”とかを意識して、テンパってしまう者もいるくらいで……めぐみんもその1人であった。
「(落ち着きなさい、私! こんな時は素数を数えるんです! 素数は1と自分以外では割り切れない“孤独な数字”! 私に勇気を与えてくれます! 3.1415926535897932384626433832795028841971693……)」
それは素数ではなく円周率だと突っ込んでくれる者は、めぐみんの脳内には存在していない。
だが結果として、めぐみんの待ち人……ゆんゆんが湯浴みを終えて戻ってきて、自分には無い発育を見ためぐみんが「ぱいっ!」と断末魔の如き鳴き声を上げたのに、奇妙なオチがつきはした。
「こ、こんな時に奇声なんてあげないでよ」
「あ、あなたがそんな無駄な肉を下げて登場するからでしょう!?」
「……本当に、駄肉だと思ってる?」
「……ごめんなさい、ゆんゆんの全部が好きです……」
お互いの気持ちを隠すことなく明かしあった2人は、互いへの好意に関しては極めて素直になっており、ゆんゆんはめぐみんの傍らへとぽすりと座ると「よろしい」と言って、その豊かな胸をぐいっ……とめぐみんに押し付けた。
「ふ、あぁぁ……ゆんゆんの全身、くまなく素敵な匂いがします♥ これも上級魔法の効果なんですか♥」
「そ、そんな訳無いでしょ……匂いを好ましく感じるのは、遺伝子の相性がいいからなんだって……」
「遺伝子……♥」
普段なら「格好いい響き!」的な反応をするめぐみんだが、今はゆんゆんと番であることを祝福されているような、何とも温かな気持ちになる。
ゆんゆんの柔らかな顔に頬を埋めても、怒られない。何故なら、ゆんゆんも喜んでいるからだ。とくんとくんとゆんゆんの心臓の音が聞こえ、めぐみんは「気持ちが落ち着くのに、頭が沸騰する」という、奇妙な感覚を味わった。
「……我が名はめぐみん、アークウィザードを生業とし──最愛の伴侶ゆんゆんを娶りし者……♥」
「この口上って、本当に絶対必要なの? うぅ……我が名はゆんゆん、アークウィザードにして未来の紅魔族の長──伴侶めぐみんをその番に迎えるもの……♥」
紅魔族らしい婚姻のラブコールが終わった瞬間、めぐみんはゆんゆんのことを寝台の上に押し倒し、その胸に顔を埋めながら左右から交互に揉み上げてみせる。
そうすると自身の両頬に柔らかな感触が伝わり、至高の感触が味わえるのだ……あれほど因縁をつけていた豊乳だが、今はもう大好きであった。
「めぐみん、ちょっと変態っぽい……」
「んなっ!? し、仕方ないじゃないですか、好きなんですから……一途に好きになってしまったら、みんなちょっと気持ち悪いんです!」
一般的な恋愛経験者たちは無言で首を横に振るところだが、そこは妙なところでチョロくて素直なゆんゆん、「それもそうかな……」と流されてしまい、めぐみんの身体を抱きしめて自分の柔らかボディに埋没させてみせる。
後にめぐみん探検隊隊長めぐみん氏は語る──甘いし柔らかいし、マシュマロかと思ったと。
「もっと、色んな所、触ってもいいよ……んっ♥」
「も、もちろん……全部、触れます♥ 私以外にはもう、誰にも触らせてはいけないところもありますからね……ちゃ、ちゃんと妻として覚えるんですよ……♥」
「うん……めぐみんも、ちゃんと覚えてね……?」
なんというか、さっきからゆんゆんの返し刃が強すぎる。めぐみんは毎回、血を吐きながらは復活し、更に婦婦の契りに没頭していくのだ。
互いのバーコードにも触れあって、特に意味も無いのに気分が盛り上がった後、めぐみんは思案する。
「(こ、ここに触れるのは……どのタイミングがいいんでしょうか?)」
そこは、ゆんゆんの大切なところ。ふっさりと年相応に陰毛の茂ったそこは、既にしっとりと濡れている感があり、準備を終えているように見えなくもない。
だがそこは処女オブ処女、それも自慰の経験すらほとんどなく、初めての自慰は爆裂魔法を使った後の倦怠感の中でゆんゆんを想ってという、経験値ほぼゼロのめぐみんにとって、どこまで踏み込むかは難問であった。
「(1回の過ちでレッドカード退場は無いはずですが、というか私たちは紅魔族なのですし積極的にレッドを集めるべきなのでは……? いえ、思考がそれましたね。ともかく……ゆんゆんを傷つけることなく、気持ちよくなってほしいんです……♥)」
めぐみんは探りを入れるように、ゆんゆんの柔らかな太ももに触れる。つぅ……と少しだけ汗で湿ったそこを撫で上げていくが、抵抗は無い。「んっ……♥」という小さな呟きで、頭の奥に灯された火が強く燃え上がる。
「(触れたい……ゆんゆんに、触れたい……♥ こうなれたのは、奇跡みたいな確率で……全部を伝え合えないまま道が分かれて、互いに男の子と付き合ってしまうような、未来もあったかも知れないんです……もう、そんなの耐えきれない! ゆんゆんは、私のです! 私の妻です! そのことを、刻み付けたい……♥)」
それでも完全に思いきることが出来ず、円を描くように秘所の周りを撫で回し、首筋にちゅっ……と音を立てて後を付ける、焦らすようなことしか出来ないめぐみん。
その手が、そっと柔らかい掌で覆われた。ゆんゆんのものだ。
ゆんゆんの手は、秘密の茂みにめぐみんの手を導き……くちゅっ♥ と蜜の湧き出すところへ、指を誘う。
「触って……♥」
どこか必死さを感じさせる口調に、めぐみんの最後の理性が爆裂した。
2人の身体の距離が更に縮まり、くちゅっ……じゅっ……と淫らな水音が部屋の中に響く。ゆんゆんが喉を反らして感じる様に興奮し、その白い喉にそっと……痛くないように気を遣いながら、優しく歯を立てる。
「(今、私はゆんゆんの命に触れている……♥)」
そんな傲慢かも知れない興奮がめぐみんの中に沸き上がり、ゆんゆんの少しだけかすれた声が「いじめ、ないでぇ……♥」と甘く響いた。
それを言葉通りに受け止めるほど、紅魔族は素直でも愚かでもない。
一番気持ちいいところ、ゆんゆんの芯……めぐみんの指がそこへと伸ばされて、きゅっ……と指の腹で強めに押し潰される。「あっ……♥」と“鳴いた”ゆんゆんが、めぐみんの肩を強めに噛み、その間もくしゅくしゅと指先の愛撫が続く。
爆裂魔法でなんでも解決しようとする脳筋ぶりはどこへやら、セックスにおけるめぐみんはなかなかに知性派のテクニシャンだった。しかし、紅魔の里で一番の秀才、ゆんゆんも負けていない。
お返しだと言わんばかりに、めぐみんの秘所に指を這わせ、まだ毛も生えていないそこにつぷり……と指を挿入する。
互いにお互いの中に触れあったまま、夢中で肌を寄せ合い、熱を交わしあう。お互いの初めてを捧げ合っているという興奮が、若い2人の理性を狂わせ、色ごとに溺れさせていく。
「ゆんゆん……ゆんゆん♥ もっと、もっと深く感じて下さいっ♥ 私を感じて……んんっ♥」
「めぐみん……めぐみんっ♥ もっと、強く……あっ、あっ……ああぁぁっ♥」
ぷしゃっ……とほとんど同時に達して、お互いの指がとろりと濡れた。
たまらない気持ちになって、めぐみんはゆんゆんに抱き着く。こんなに素直な抱擁は、幼い日以来であった。
「めぐみん、苦しいよ……♥ 少し、休もう?」
「ごめんなさい、ゆんゆん……なんだか、たまらなく嬉しくて……♥」
2人はお互いが眼前にいること、そして確かに2人で結ばれ合ったことを確認し合い、そのまま抱きしめ合って静かに眠りにつく。
あれほど妬んだ胸のふくらみは、身を寄せ合って眠るときには最高の寝具として機能を果たしてくれた。
※
「──私は、紅魔の長にならなくてはいけない。冒険はいつまでも、続けられないよ」
「分かってます、ゆんゆん……私は、私の可能性を試せるパーティを探します」
体は重なり合っても、行く道が交差するかどうかは、必ずしも分からないものだ。
めぐみんとゆんゆんは目指すものが違う、それ故に一時は身を離して、互いの道を歩む必要があった。
「……紅魔族とも思えないような陳腐な言い回しになってしまいますが、心は重なり合っていると、信じています」
「いいじゃない、陳腐な物言いでも。世の真理って、意外とチープなものよ」
分かれ道に差し掛かり、2人は別の道を行く。その足取りには迷いはなく、離れていくことにも不安は無い。
けれど1度だけ、めぐみんが振り返って、ゆんゆんに向けて大きな声で叫んだ。
「──我が名はめぐみん! アークウィザードを生業にするものにして、最強の爆裂魔法の使い手! いつか必ず、またゆんゆんを迎えに行く!」
ゆんゆんはその言い回しに苦笑しながら「普通に言えないの?」と呟く。
けれど、その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
屋根が高い
2023-11-04 08:41:15 +0000 UTC屋根が高い
2023-11-04 08:40:09 +0000 UTCとろがけ
2023-11-04 08:34:29 +0000 UTC邪バレンスタイン
2023-11-04 08:32:40 +0000 UTC