惑星強襲揚陸艦ミネルバの捕虜収容室に向かう足取りを、どう評すべきかがルナマリア・ホークには分からない。
ひどく気の進まない、重苦しい足取りのようにも感じられるし、逆にそれは必至で抑制している結果に過ぎず、ほとんどスキップするように向かいたいという気持ちも、無いではない。
今から会いに行く相手が正に、そんな相反する心を向ける対象であって、ルナマリアはどんな態度を取るかすらも決めかねている。
「会いに行くのか、彼女に」
「わぁっ!?」
背後から“赤服”の同僚であるシン・アスカに声をかけられ、飛び上がりそうになる。
何も後ろめたいことなどないはずなのに、こんな反応を示してしまうのは、きっと長らく自分が彼に淡い恋をしているのだと、そんな勘違いをしていたからかも知れない。
そう、勘違いだ。本当の恋を知った今は、それがとても強いものではあっても、親愛や尊重であることが分かっている。
「シン、驚かさないでよ。後ろから声かけなくてもいいでしょ」
「何も言わずに追い抜いてから、立ちはだかれって言うのかよ」
「そうじゃないけど……いや、そう言ってたわ、ごめんなさい」
「……緊張してるのは分かるよ。通信は、俺たちも聞いてたから」
ルナマリアの顔が、みるみる内に赤くなる。
それは恐らくミネルヴァの艦内にいる、すべてのスタッフに自分の気持ちがバレたということであり、地球に1つに縛り付けられていたいた時代ならまだしも、遺伝子制御が可能になったコズミック・イラに、その手の差別意識など無いと分かっていても、羞恥心が湧き上がってきた。
「……止めたりしないの? もしかしたら、捕虜を逃がしたりするかも。私なら、そう疑うけど」
「ルナはそんなことしない。あの娘を、より危険に晒したりしないさ」
シンは「それに……」と少しだけ言いよどんでから、言葉を紡ぐ。
「あの娘も、戦争の被害者だろ。俺だって、そういう相手には気を遣う」
「あ……ごめん」
「謝られることじゃない。ほら、早く行けよ」
シンは妹を戦争で失っている。そして捕虜室に今“保護”されている少女に、少なからず妹を重ねているのだろう。
ルナマリアも実妹がいるので、シンの悲しみは二重三重に理解できたし……同時に“彼女”へどう接するかも決められたかも知れない。
最後は「ごめん」ではなく「ありがとう」と告げて歩を進める。足取りは、重くも軽くも無かった。
それでも、捕虜室に一息に入ることは出来ず、軽く深呼吸はしたが、短く「入るよ」とだけ告げて、扉を開く。
金髪のショートカットの下で揺れる、紫がかったルビーの瞳が、ルナマリアを見上げてきた。
ぎゅっと心臓が痛くなる。また「お前なんて知らない」と言われたら、どうしようと逃げたくなる。
背後でぷしゅっと音を立てて扉が閉まり、退路を塞がれた気がした。「あ、あのね」と後に続く言葉を考えないままに口を動かしたところで──彼女の表情が変わった。
屈託のない、笑みだった。
「ルナ、また会えた」
「──ステラ!」
どうしようかなんて、まだ考えている最中だったのに。
ルナマリアは、彼女を……ステラ・ルーシェを、自分の胸の中で治めるように抱きしめていた。
「苦しいよ、ルナ」という少しだけ笑った声が、くすぐったく感じた。
※
──ルナマリアがステラと最初に出会ったのは、アーモリーワンでのことだったと記憶している。
思い返してみれば、地球連合軍のスパイとして潜入していたと思わしく、その後の格納庫襲撃にも関わっていたのだろうが……敵同士の関係だと気付かないまま、不慮の事故で思いっきりステラの胸を揉んでしまったという、馴れ初めは実に情けないものだった。
ステラは少しだけ顔を赤らめて「あっ……♥」と小さく声を漏らし、ルナマリアは土下座せんばかりの勢いで謝罪を繰り返して。
その内、ステラが「気にしてないから」などと言い出したので、今度は逆に説教モードに入ってしまった。
ルナマリアもたわわに実った胸をあちこちで揶揄われ、ナチュラルからは「それも遺伝子を弄った結果かよ」などと言われたことすらある。だから、安易に許したり流したりするのはいけない。可愛い女の子は自衛しなくてはと、強弁した記憶があった。
「……変な人。怒られたがってるみたい」
そう言って笑ってくれたステラの顔は、不思議とルナマリアの胸の中に残り続け……そして、ディオキアでの休暇中に再会した時、涙と絶叫と共に恐慌状態に陥る彼女を見て、笑顔の印象は恋に変わった……ずっと、笑みを浮かべていてほしいと。
今思うと、恐らくはある種のブロックワード──精神制御を受けた改造兵士には施されることがあるらしい──に抵触した結果だったのだろうが、ルナマリアは彼女が戦争で家族を亡くしたのだと思い、賢明に抱きしめ慰めて、何とか笑顔まで引き出したのだ。
ザフトの赤服として戦い続け、戦争を終わらせて、平和をもたらしてみせる。もう2度と彼女が傷つかないように、守って見せると約束した。
……結果として、その記憶がステラの生命をギリギリで救うことにつながった。
連合の軍人はステラたち「エクステンデット」の不要な記憶を抹消したり、封印したりを繰り返していたらしいのだが、そこは所詮は地球に縛られた旧人類。
ルナマリアとステラの交歓を「同性同士の他愛のないもの」として半端にしか消さなかったことから、制御不能の暴走を起こしたステラは強襲したロドニアの研究所で撃墜され、こうして保護に至ったのだった。
それでも、戦闘中にルナマリアのことを思い出して攻撃を停止するまでは、まるで別人のように好戦的で激高しやすくなっており、ルナマリアのこと「お前なんて知らない」と切って捨てようとしたことから、ミネルバで保護してからも会いに来るのが遅くなってしまった。
「私、ルナにひどいことをいっぱい言った気がする……謝らなきゃ」
「いいよ、そんなの、いいんだよ。ステラが無事で居てくれたなら、それで」
「ルナのこと、知らないって言った……大事な人なのに」
「いいんだってば。もう、ステラは真面目だなぁ。肩の力、抜きなよ」
最初はルナに抱きしめられて安心しきり、ニコニコ笑顔だったステラだが、今は目の端に涙をためて、ガイアガンダムに乗っていた時の記憶を朧に反芻しては「ごめんなさい」を繰り返してくる。
ザフトがステラのことを「貴重な“生きた”エクステンデットの検体」としか見ていないことを、ルナマリアは知っている。このままだと、本国に移送されて非合法な実験に晒されかねないことも。
謝るべきはこちらなのに、ずっと申し訳なさそうに笑顔を見せてくれないステラに、ルナマリアの中でむくむくと……よろしくない気持ちが湧き上がってきた。
そもそも、ステラの「好き」がルナマリアの恋と同じものなのか、それがまず分からない。「最適化」とやらのせいで、ステラの性格は見た目に反して酷く幼く、恋愛を理解しているのかも怪しい。
ならば逆に……今ならば、ルナマリアだけを「特別な好き」にできるかも知れない。様々な事件や、ステラを巡る重圧で、ルナマリア自身もかなり追い込まれており、思考がぶっ飛んでしまっていることに、まだ彼女は自覚症状がなかった。
「もう、それじゃあステラ……私は全然怒ってないけれど、ステラは申し訳なくて仕方ないのよね? それじゃあ、私がステラに罰を与えるわね」
「罰……こ、怖い……」
「大丈夫、痛かったり怖かったり、そういうことは絶対にしないから……むしろ、気持ち良いことなのよ?」
「ルナと、気持ち良いこと?」
子犬のように胸の合間で首を傾げられ、ルナマリアの理性は完全にぶっ飛んだ。ルナマリアの方には精神制御の類など、一切施されていないのだから。
※
「あっ……あぅぅっ……♥ る、ルナぁ……これ、恥ずかしい、よぉ……♥」
「恥ずかしいだけ? 気持ちよくないの、ステラ……♥」
「あぅっ♥ あ、はぁぁ……き、気持ちいいけど……はっ♥ あぁっ♥ ステラのお大事、ルナに触られて……んんっ♥」
服を脱がされたステラは、頭の後ろで手を組んで、ガニ股で腰を突き出すという、ものすごく煽情的なポーズを取らされていた。
本当はこのまま腰をヘコヘコ振ってもらって「ルナとエッチしたい♥」とか誘惑されたら最高だが、流石にそこまでは高望みと言うものだろう……これからじっくりと、教え込んでいけばいい。
金色の陰毛が控えめに生えている秘所を、くちくちと指で擦り、ほんの少しだけ先端を挿入する。
ステラが嫌がったら即やめるつもりだったし、逆に連合軍の非道の中で行為を強要されている胸糞展開も想定していたが、ステラの反応は知識のまるでない少女のそれであり、また秘所の締め付けもこれまで何物も受け入れたことのないそれだった。
ステラの、初めての女になれる……妹のメイリンとふざけ半分でレズセックスをした時、処女を無くしているルナマリアは、少しだけそのことを後悔しつつも、ステラのすべてを手にできるかも知れないと興奮が止められない。
「ここは、好きな人にしか触らせちゃダメなの……特別な人にね。つまり、ステラにとっては私……♥」
「あっ、あぅっ……♥ わ、わかったぁ……♥ スティングにもアウルにも……んんっ♥ 触れさせない……♥ ルナに、だけ……♥」
「んっ、よろしい……♥ ねえ、ステラ……ここ、ステラの大事なところ……キス、してあげようか♥」
本当に左右から触れる程度の繊細さで、陰核をつまみながら問いかける。
ステラは「あうぅ~っ……♥」と子犬のような声を上げて、潤んだ期待に満ちた目でルナマリアを見下ろす。
「だ、だって、汚いよ……♥ おしっこ、したりするし……」
「ステラの体に、汚いところなんてないって♥ すごい気持ちいいと思うよ……ほら、私の舌、見て♥ 真っ赤で、長くて……これでぞりぞりって舐められたら……ステラは、どうなっちゃうかなぁ♥」
敢えて陰核を摘まんだ指で舌をべぇ……と掴んで見せる。しょっぱさの中に、少女特有の甘い味を感じて、ルナマリアの秘所のとろりと愛液をこぼす。
ステラはもじもじとしばらく悩んでいたが、やがて意を決したようにルナにお願いをしてきた。
「さ、先に……普通のちゅー、したい……♥」
「……私としたことが、すっかり忘れてたわね♥ いいよ、キスしよう……恋人同士のキス♥」
「こ、恋人……♥ ステラは、ルナの恋人になるの……お、女の子なのに?」
「女の子同士だから、よ……おいで、ステラ」
ステラはそれこそ犬のように舌を軽く出して、はぁー♥ はぁー♥ と興奮を抑えられない様子で、唇をルナマリアへと近づけてくる。ステラの甘い、息の香りが鼻腔をくすぐる。
ステラがこのまま、キスをしてしまっていいのかと一瞬悩んだ瞬間、ほんの少し出ていた舌を巻き込むように、れるっ……とルナマリアの舌で以て絡め取り、一気にディープキスへと誘い込む。
目を見開いて驚いているステラの口内を、徹底的に嘗め回して唾液を啜り取り、酸欠で苦しくなるたびに少しだけ唇をズラして零れる涎と共に呼吸を許して、完全にステラのことを支配する。
「んむぅぅっ……♥ ふっ、ふあぁぁっ……る、ルナぁぁぁ……♥ ルナとの、キス……す、すごいぃっ……♥ こ、腰、抜けそう……足、ガクガク震えてぇ……♥」
「……これが今から、ステラのお大事にキスするのよ……♥ もう、私から絶対離れられなくなるわね……♥」
「あっ、あぁっ……こ、怖いよぉ、ルナぁ……♥」
「じゃあ、やめる? 私はそれでもいいよ……決めるのは、ステラ。でも、これを断っておいて、またごめんなさいって言ったら、その時は怒るからね?」
笑顔で圧をかけると、ステラは「うぅ~……♥」と涙目になる。悲しみや不安の涙ではない、気持ちよさが自分で制御できない、そんな悦楽の涙だ。
ステラは唇を離すと、また腋と秘所を強調するようなスケベなポーズに戻り……へこ♥ と一度だけ腰を動かして、秘所をルナマリアの方へと突き出してきた。その動きだけで、性に無知なステラとしては気持ちよかったらしく、軽く達してぴゅっ♥ とイキ潮を噴いてしまっている。
「る、ルナのキス、欲しい……♥ 私のお大事に……ちゅー、してぇ……♥」
ステラの懇願が終わった瞬間、逃げられないようにその細い腰をホールドして、ぷちゅっ……と秘所へと唇を沈ませる。その状態で舌を挿入し、指だけでも抵抗があったそこを、ルナマリアの形に変えていく。
「いぎっ、ひぃぃっ♥ あっ、あはぁぁっ♥ お゛っ♥ お゛ぉぉっ♥ へ、変な声、出ちゃうぅぅっ♥ は、恥ずかしっ……ルナ、聞いちゃダメぇぇっ♥ んあぁぁっ♥ あ゛はぁぁぁっ♥ へうぅぅっ♥ あ、頭おかしくなるぅぅぅっ♥ いらないこと、全部っ♥ 全部忘れちゃうぅぅぅっ♥」
ぼたぼたと涎を零しながら、愛液が止まらなくなってしまうステラの陰核を口で咥え、優しくクリフェラする。
ステラの喉からは「きひぃぃぃぃぃっ♥」と悲鳴のような嬌声が漏れ、その眼は完全に快楽に蕩けた、ルナマリアの女のモノになっている。
仮に今後ヘテロセックスを経験しようと、2度とルナマリア以外ではイケないだろうというくらいの、愛と言う名の呪縛……非道実験ごときでは消せないそれが、ステラの中に刻み込まれた。
「ルナ、ルナぁぁっ♥ 好き、好きぃぃぃっ♥ ステラ、ルナが好きなのぉぉぉぉっ♥ あひぃぃぃぃっ♥ あい、愛して……愛して、るぅぅっ♥ 恋人♥ ルナの恋人になるっ♥ うぅんっ♥ 奥さんっ♥ 奥さんにしてぇぇっ♥ ルナと結婚するぅぅぅっ♥ あっ、あぎゅぅぅぅぅぅぅ~っ♥」
「ステラ、ああ、ステラっ……♥ 私の、お嫁さんっ……♥ 絶対に、誰にも渡さないっ♥」
初めて本格的に達した際の、愛液も潮もすべて飲み干して、ルナマリアはにっこりとステラに微笑みかける。
もう、疑うことはない。ステラの目には爛々と恋人であるルナマリアへの恋慕の炎が燃えていて……それは、何よりも強い命の光だった。
※
「──ただいまー。これ、珍しい熱帯魚を見かけたから買ってきたわよー」
「……ルナ、何でもかんでも同じ水槽に入れるのはよくない。この前も、ザリガニをステラの水槽に入れようとした」
「あ、あれは反省してるったら。ちゃんと確認してるでしょ、ね?」
じとーっと見つめてくるステラだが、ルナマリアの手の中の熱帯魚を見てすぐに気に入ったらしく「水槽の準備、するね」とぱたぱたと動き出した。
ルナマリアにはよくわからないが、星の形をした石や砂を水槽の下にせっせと敷いている姿は、まるで宇宙を創造しているように見える。
戦争が終わって、数か月が過ぎた。ステラは、まだ生きている。
本来ならば「揺り籠」という施設で再調整を受けなければいけないはずのエクステンデットだが、ルナマリアとのセックスを経験した後、何故かステラの身体機能はすべて平常な値まで回復し、果てはブロックワードまで克服してしまった。
逆に言えばそれは、エクステンデットの検体としての価値がステラから失われたという意味でもあり、彼女の本国輸送は中止され、そのままミネルバの預かりとなった。
もっともルナマリアやシンは、ステラへの冷徹な態度からザフトへの不信感を募らせることになり、結果的に幾度も対立することになっていたキラ・ヤマトを始めとした独立戦力との交渉を選択することで、戦争の本当の元凶との戦いに当たることになった……。
まあ、その辺りは正直なところ、ルナマリアにとってはどうでもいいことだ。
ステラと平和な日常が得られたのなら、それが一番。スティングやアウルといった友人たちも、まだ彼らの寿命問題の解決はしていないものの、ステラとは交友が続いている。
「ステラー、結婚式の予定、考えてくれたー?」
「……ルナが決めてくれていい。考えてると、頭が痛くなってくる」
「だーめ。こういうのは、一緒に考えるのが楽しいんだから」
水槽の世話をするフリをして逃げようとするステラを後ろから抱きしめ、膝に乗せて逃げられないようにする。多分、途中で我慢できなくなって、セックスに移行してしまうだろうけど。
2人の愛の巣に並ぶ、無数の水槽を見つめながら思う。人は、生きていく場所は限られてしまう。真の自由なんてそこにはなく、誰もが水槽の中でしか生きていけない、熱帯魚のようなものだ。
けれど、その水槽自体は無数にあって、他人の手を借りれば新しい場所に向かうことは、きっと出来るのだ。そうして辿り着いた場所では、きっと見える月も星も形を変えるだろう。
「愛してるわ、ステラ……ずっと、ずっと守るから」
「うん、ルナ……大好き」
──命が例え運命に囚われ、限られた可能性の種だとしても、花開き星や月を目指すことは、きっと出来る。
少女たちの姿は、そんな未来を夢見させるには、十分な輝きを放っていた。
屋根が高い
2023-08-04 19:11:53 +0000 UTCまりね
2023-08-04 14:04:53 +0000 UTC屋根が高い
2023-08-04 08:08:53 +0000 UTC邪バレンスタイン
2023-08-04 08:04:41 +0000 UTC