※本作の早乙女の性格は100~120巻前後の、磯鷲早矢によるセラピー効果を受けていない頃を想定しています。
──潮風の吹き抜ける港で、175cmという長身の少女が背筋を伸ばしてみせている。
妙に尖ったポニーテール、口元を隠すカラスマスク、長いスリットの入った独特の露出の少ない制服。
どこからどう見ても古のスケバンといったいでたちの彼女が、由緒正しきお嬢様学校の生徒だと想像できる者は、果たしているのだろうか。
「──それじゃあ、明日の船の時間にまたここで」
「ああ。楽しんで来なよ」
「ありがと、ザキ。ゆかりさんへのお土産は、私の方で買っておくから」
日本全土を巻き込むような、大きな事件を共に解決した事もあり、深い絆を結びあっている風間あきらと港で別れ、ザキこと姫崎葵は久しぶりのシャバ……それも本土の空気を楽しんでいた。
何しろ彼女の通う聖純女学院と来たら、お嬢様学校にも関わらず絶海の孤島に位置しており、家族や親戚に無理やり入学させられてからというもの、滅多にこちらへは帰って来られない。
今回も、あきらが元居た学校の仲間たちと会うということで、それにくっついてくることで漸く渡航が許されたのだ。
「ちゃんと家に連絡しておかないと、またオリセの奴を仕掛けられたらことだからね。あの娘もアタイなんかを相手にホイホイ出向いてくるんじゃないよ。さて、と……流石にレディース仲間に連絡する時間はないし、和菓子屋でも回るかね」
元は中学生にして5000人規模のレディースを率いた伝説のスケバンのザキだが、こういう時の時間の潰し方は意外と普通というか、割と渋い感じである。
聖純女学院に通うことを許されるだけあり、こう見えても名家の出身であるのは確かなのだ。
「そうだ。学校にぶち込まれる直前くらいに、葛飾に自家製餡で有名な“銀のあん”が支店を出した、なんて話があったね。いいじゃないか、今日の昼はそこのおはぎにしよう」
あきらとおしゃべりしながらの渡航だったのもあって、比較的機嫌のいいザキは、葛飾へ向かうべき駅を目指す。
結果的に、おはぎに関しては紛れもなく絶品だったのだが……ザキの機嫌はこの後、急降下することになってしまう。
※
「──なんでここ、未だに看板が『派出所』のままなんだい」
ザキが見つめる交番の看板には「葛飾区亀有公園前派出所」の文字が躍っており、1994年の名称改名から此処だけ取り残されているかのようだった。
金町駅で降りて“銀のあん”のおはぎを堪能したザキは、ついでとばかりに亀有前の名店“伊勢屋”にも足を延ばし、あんころ餅を楽しんだ後で、ここにやって来た。
警察関係者とはあらかた相性の悪いザキだが、聖純女学院へとブチ込まれる前に彼の「関東男連合」の初代総長が、この交番へ出入りしていると聞いたことがあった。
1人で暴走族1000人を潰して見せた「レジェンド・オブ・ダークネス」が警察官……多少の興味があって覗いてみたが、モデルみたいな美形の警官が男女1人ずついるだけで、目当ての相手は居ない様だった。
「というかアレ、中川家のボンボンと飛飛丸のオッサンの娘じゃないかい? 交番なのにプリクラの機械が設置してあるし、なんだか色々とぶっ飛んでるねぇ」
レジェンド暴走族だけでなく、ザキの実家にも勝るとも劣らない名家の令息・令嬢まで警官をやっているとは、いつの間に官憲はそんな人気の職業になったのだろうか。
ザキのような見た目の者がじろじろと見ているのも迷惑だろうと、通り過ぎようとしたのだが……そこで、いつの間にかミニパトが交番横に停車しているのに気付いた。
交通課らしき府警が、大仰なチェーンカッターまで持ち出して、設置されているプリクラ台を持ち去ろうとしているらしい。違法に設置されたものだったのかと最初は思ったが、流石に交番横で違法プリクラを置く馬鹿は居ないだろうと思い直す。いや、プリクラを置くこと自体、どうかとは思うけれど。
「オマワリサン、何をやってるんだい?」
「えー? あの原始人が生意気にもプリクラでお金取ろうとかしてるから、このまま寮に持ち帰って無料で使い倒そうと思って!」
「……聞き間違えたか? 眩暈がしそうな位の無法が聞こえた気がする」
髪を中央で分けたような髪型の、なかなかに美人な婦警……交番の中の2人には流石に劣るが……が口にする言葉のえげつなさに、ザキはマスクの奥で顔をしかめる。
話しかけてきたのが、ミニパトに同行してチェーンカッターを渡していた、もう1人の女性警官だと勘違いしていたのだろう。婦警は「ほら、早く運ぶの手伝って! 両津が帰ってきちゃうじゃない」と振り返り……クラシックスケバンスタイルのザキを見て「わぁっ!」と驚きの声を上げた。
「な、何よ、あんた!? しょっぴかれたいの!?」
「ただ歩いてるだけで捕まるほど、この国の正義の暴走は極まってんのかい。まあ、婦警さんが窃盗するような時代だからねぇ」
「人聞きの悪いこと言わないでよ! 私はただ──あの不潔な猿人にお金を払うのが嫌なだけ!」
無法極まる言葉が次から次に出てくることに、衝撃を受けるザキ。
かつて交流を持った有名な不良校・外道高校の生徒たちや、敵対した暗黒生徒会の連中だって、ここまで何の理も立てず我欲を押し通しては来なかった気がする。
「それよりもあなた、学校はどうしたのよ? さては外道高校の生徒で、サボってるんでしょう!」
「ゲド校は男子校だろ。創立記念日だから、それを利用して来てるのさ。何にも後ろ暗いところはないよ」
「はい、うそー。ほんと、あんたたち不良ってテンプレみたいに同じ言いわけばっかりするわよね。凄んで黙らせようとするよりはマシだけど。そうだ、学校に警察から連絡なんて嫌でしょ? これ、車に乗せるの手伝ってよ」
トドメとばかりに話も聞かずサボりと決めつけ、脅してコキ使おうとまでしてきた。
流石にここまで来ると何かの冗談なのではないかと、カメラの類を探して周囲を見回してみるが、顔を出した警官たちが苦い表情をしているばかりで、どうやらドッキリの類でもなければ、洗脳などを受けている訳でもないらしい。
「はあ……ここまで下らない大人は、久しぶりに会う気がするよ」
「なんですって!? 社会の底辺予備軍の癖に好き勝手言って! 葛飾署の早乙女リカの名前、聞いたことないの!?」
「あぁ? ……思い出した。市民の血税使って、御殿みたいな女子寮建てた主犯が、そんな名前だったって黛が言ってたっけね」
「誰よ、それ! というか、何よ、その噂! 事実無根にも程があるわ!」
実際、女子寮が御殿みたいな大きさになったのは、プリクラ機の持ち主でもある両津という警官が主導でやったことなので、その主犯のように言われて嫌がる気持ちもわかるが、元の計画をリカが進めていたのも事実である。根っこはバンバン生えている。
「……ジャス学の連中が暴走したり、暗黒生徒会の奴等が暴れたり、そういうのも仕方ない気がしてくるよ。こんなバカ女が堂々と官憲やってるようじゃあね」
「いい加減にしなさいよ! 馬鹿みたいに古臭い不良の格好してイキり倒して、警官は口だけで手を出してこないとでも思ってるの! あたしはね、あんたみたいなクズは容赦なくお仕置きするわよ!」
平手を振り上げ、リカはザキに向かって振り下ろす。
ザキはそれを軽くかわしてみせると、チェーンカッターで無残に切り落とされた、防犯用の鎖を拾い上げる。陳氏太極拳の達人のあきらと組み手をしているザキからすれば、スローモーションかと思うほどすっとろい動きであった。
「あっ、凶器を持ったわね! 暴行罪と公務執行妨害、それに侮辱罪もつけて人生潰してやるんだから!」
「そうかい、そうかい。好き放題に吠えるがいいさ、ただ──」
ザキの目がギラリと危険に輝く。彼女は口は非常に悪いものの、暴力を気安く行使するタイプではないが、しかし平和主義者とは程遠い気質の持ち主だ。そうでなければ、レディースの総長などできはしない。
「──おイタが過ぎるね!」
ザキがチェーンをびしぃっと音を立てて張り詰めるのと同時に、警棒を振りかざしたリカが襲い掛かっていく……。
※
──一応、結果について触れておくと……瞬殺であった。
「──いぎゃんっ!?」
公園まで引きずられてきたリカは、チェーンで体を拘束された状態で地面に投げ出される。
柔剣道を習っており、非常に強気なリカであるが、所詮はそこらの暴走族にも勝てない程度の実力であり、伝説のレディースであるザキを相手にするのは無謀過ぎた。
蹴り一閃で特殊警棒を根元から切断され、何が起きたか分かっていない間にチェーンで拘束され、電撃を流されて気絶。勢いよく一般人に暴力を行使するべく飛び掛かっておきながら、まるで見せ場もない敗北であった。
地面に投げ出されてようやく正気付いたリカは、冷たい目で見下ろしているザキを見て、自分の無様なやられぶりを思い出したらしく、赤面してぶるぶると震えだす。
「ひ、卑怯よ……これだから不良は嫌なのよ……! 喧嘩でスタンガンなんて持ち出して!」
「あの電気は自前だよ」
「嘘つきなさいよ! 気絶するくらいの電気を放てる人間なんて、いる訳ないでしょ!?」
実際はブラジルのストリートファイター・ブランカや、KOF常連の日本代表・二階堂紅丸など、幾らでも生体電流を操れる者などいる。
ザキのこれも中学生時代に修得した純然たる技術であり、知り合いには火を出す奴やビームを出せる奴もいる為、そこまで特別なものとも思っていない。
「うるさい婦警さんだね。もう1回、黙らせようか?」
「ひぃっ……!? あ、あなた、とんでもない目に合うわよ! 逮捕されて、死刑だってあり得るんだから! すぐに葛飾署の警官が駆けつけてくれるわ! その前に、この拘束を外しなさい!」
「今度は虎の威を借り始めるとか……幻滅する理由でビンゴゲームができそうだね」
リカと一緒にいた女性警官は、電気ショックで気絶した時点でミニパトに乗って逃亡してしまい、てっきり応援が呼ばれるものだとザキも思っていたのだが、今もって誰も駆けつけない辺り本当に見捨てて逃げただけなのだろう。葛飾署の婦警たちのリーダー格を気取っているらしいが、なんだか哀れに見えてくる。
「はぁぁ……アタイはね、あんたみたいな下らない大人がこの世で一番嫌いなのさ。レッテル張りして、自分の後ろ盾を自分の権威だと勘違いして、無法を通そうって輩が一等許せない。不良らしく、バイクにでも括り付けて引きずり回してやろうかい?」
「ひえぇぇぇぇっ……や、やめて、許してっ! あ、謝るから……そ、そうだ! お金、お金をあげるわ!」
居丈高な態度は成りを顰めたものの、今度は別方向で最低のプライド放棄を見せつけてくるリカ。偉そうな態度もムカついたが、それでも誇りを売り渡す所作よりはマシだ。
チェーンを引いて無理やり引きずり下ろすと、ザキはじろりとリカの顔を睨めつける。
「レディースを率いてた頃は、気合の足りない奴を仕置きするにはこれが一番だった……自分が安全だと思って腑抜けてる奴に、あんたがいるそこは荒野なんだよっておしえてやるにはね」
「ひぎゅっ♥ ちょっ、ちょっと、あなた……ま、まさか……んひぃぃぃぃぃっ♥」
ザキの指がリカの股間へと延ばされ、ぐちゅぐちゅと激しく指が動かされる。
レディースを率いていた時代、ザキが中学生であるということや、顔立ちが整っているのを馬鹿にして向かってくる敵、あるいは「ザキがいるから自分たちは後ろでイキッていればいい」とか考えている馬鹿は、こうやって自分がどんな危機を抱えている存在なのかわからせると、二度と調子づくことはなかった。
本当に最初の数瞬だけ、リカは同性に愛撫される忌避感を浮かべたが、速攻で真っ白な喉を見せてのけぞり、ぷしゅっ♥ と潮を軽く噴き出す。
「んはぁぁぁっ……♥ う、うそぉっ……か、軽くイッちゃった……♥ いくら、最近男日照りだからって、こんなのぉ……ほぉぉっ♥ んひっ♥ あぁぁぁっ♥」
「いいかい、相手が女子供だと思って油断してかかると、こういう目に合わされるのさ。理解しておくことだね。おっさんだろうと、老人だろうと変わらないよ。相手に礼儀を尽くせない奴は三下さ」
「だ、誰が三下っ……えひぃぃぃぃっ♥」
愛撫する箇所に胸が加わり、優しく揉み込んだかと思えば、ぐいと押し込んで掌で乳首を押しつぶし、ぎりぎりと強く引いたかと思えば、こすこすと指が乳首を擦る。
レディースはやたらと女の武器をふるうつもりでもないのに露出が激しいのが大勢おり、これで自分が急所を晒しているのだと教えてやることが多々あった。
リカも本人の申告通り、男との付き合いが切れて長いようで、お前は女だと教え込むようなペッティングは、その体に電気を流したかのような快楽を継続的に与えていく。
「ひぃぃっ♥ あっ、あぁぁぁぁっ♥ イッ、イッちゃったぁぁぁ……♥ は、はひぃっ、すいませんっ♥ わ、私が間違ってましたぁ♥ 自分は、早乙女リカは三下の雑魚雌ですっ♥ どうか締めあげて発散してくださいぃっ♥」
「やれやれ、従順になったと思ったら、またなんだか分かっていないようなことを言い出すね」
あきれたようにやれやれと首を左右に振るザキだが、流石にこれ以上リカを傷付けるつもりはなく、痛みもなくトドメを差してやろうと腕に力を籠める。
チェーンがぐるり、じゃらりと回転し、リカの陰核と乳首を鎖で締め上げた状態になる。
「っほぉぉぉぉぉっ♥ あぁぁ~っ♥ 刺激、強すぎるぅぅぅっ♥ あぁっ……こ、こんな姿、誰にも見せたくないぃぃっ……♥」
「さあ、トドメを差してやるよ。こいつはアンタの為さ、ろくでもない輩に取り込まれないために……お仕置きだって必要だろうさ!」
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♥ ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~っ♥」
乳首や秘所へ同時に電気を流されたことから、リカはもくもくと白い煙を噴き出して、しょろしょろと失禁しながら崩れ落ちる。
これまで女であることを武器にし、過激な行動をとり続けてきたリカだが、ザキの前ではすべてが無駄であり、そのまま失神して動かなくなった。
ザキはチェーンの拘束を解除すると、リカに向かって「もう一度、三下からやり直しな」と言い放ち、そのまま背を向けて歩き出す。
その堂々たる背中を見つめながら、リカは「さん、したぁぁ……♥」と小さく呻いていた。
※
──翌日。
「ザキ……乗船の時は、離れて座ろうか」
「あきら、ちょっと事情を聞いておくれよ、これは誤解なんだよ!」
行きの船ではあれほど仲睦まじかった親友から距離を取られ、ザキは懸命に弁解を行っていた。
それというのも、朝になってザキの元に姿を現し、それから離れていこうとしない第三者のせいである。
「姉御ぉ♥ そんな連れないこと言わないでほしいッス♥ 自分、姉御の下ではじめっからやり直しますからぁ♥ 三下のパシリだと思って、なんでも命じてください♥ も、もちろん、昨日みたいにエッチなことでも♥」
「あれは、そういう意味で言ったんじゃないよ!」
ザキにまとわりついているのは、それなりにスタイリッシュなアレンジのされているザキに対して、100%クラシックスタイルの古いスケバン姿に身を包んだ早乙女リカ、その人である。
リカの年齢を考えれば、うわキツの領域に余裕で突っ込んでいるのだが、昨日の電撃攻めで完全にザキにほれ込んだリカは、羞恥心を亀有公園に置き去りにしてきてしまっていた。
「へぇ……私とゆかりさん以外とエッチしたんだ。ふぅ~ん」
「あ、あきら、だから誤解だって言ってるだろ!」
「別に恋人じゃないんだから、言いわけしなくてもいいけどね。つーん、だ」
あきらは完全に嫉妬してます、ジェラってますという顔で背中を向け、さっさと船に乗り込んでいってしまう。リカが勝ち誇ったような表情で、ザキのスリットから覗く美脚に足を擦り付けてくる。
「公務員の副業は禁じられてるけれど、学生は職業じゃないからOKッス♥ ザキの姉御ぉ、3年間みっちり指導して欲しいッス~♥」
「ああ、もう! どうしてこうなるんだい! やっぱり警察なんかにかかわるとろくなことがないよ!」
悲鳴めいた困惑を口にしながら、ザキは天を仰ぐことしかできなかった。
……なお、過激派のリカが姿を消したことで、葛飾署の男女対立はあっという間に解消され、女子寮も早々に解体されて区に提供されたということだ。
屋根が高い
2023-08-30 08:48:26 +0000 UTCとろがけ
2023-08-30 08:38:59 +0000 UTC