※SKEBにてリクエストを頂きました!
今回はかつて書いた作品のセルフリメイクの形になっております!
・井戸から戻ったチート怨霊が、逝けないエッチで美少女達を虜にして、悪い勇者から寝取っちゃうゾ!
(https://fallen02side.fanbox.cc/posts/6970708)
元の作品だとまとめて堕とされていたティナたちですが、今回は一人ずつ順番に……そして最後には?
どうぞ下記よりご覧ください!
「──どうしたの、二人とも。そんな変な顔をして。ほら、ガブリエラは今日が当番でしょう? 早くナッシュの元に行ってあげようよ」
勇者ナッシュ・ロウのパーティの一人であり、愛人でもある魔法使いティナ・オルステリアは、正妻争いをしているはずのミルフィナ・ホークウィンドとガブリエラ・ナイツに向かって、にこやかな笑みを向けてきた。
パーティーメンバーではあるものの、三人はナッシュから受ける寵愛を巡って争いあっており、他の誰かがナッシュに指名された時は、下手をすれば殺意すら感じられるような顔を向けるのが普通だった。
しかしティナは……最近のティナは、まるでナッシュに執着が無くなってしまったかのように、ミルフィナとガブリエラを微笑みを浮かべて送り出すようにしており、ミルフィナとガブリエラには不審がられていた。
そもそもティナは、ナッシュに抱かれる回数が少しずつ減ってきていることを、人一倍焦っていたはずなのに。
今はナッシュから誘われても、なんだかんだと理由をつけて断ることすらある。その時のティナの態度は穏やかなものだし、ミルフィナとガブリエラが居るので、性欲処理の方も問題は無いのだけれど。
「ほら、ガブリエラ。もう行かなきゃ……あまり待たせたら──殴り殺されちゃうかもしれないよ」
「なっ……ティナ、お前は……!」
「うふふ、冗談、冗談……ガブリエラやミルフィナが、まさか、ねえ? そんなことになる訳無いわ、ふふふふ!」
笑みの色だけは、まるで清らかな“聖女”のような性質のそれであり、恐ろしいほどに露悪的な言葉を口にしてみせたティナは、そのまま二人の前を通り過ぎて、宿の部屋へと戻って行ってしまった。
ガブリエラとミルフィナは、互いの顔を見合わせる。ティナがこんな風になるまでは、いつの間にか好意的な視線を向け合うことすら無くなるほどに殺伐とした関係へと変わっていたが……その視線には、互いに寄る辺ない不安のようなものが張り付いていて、お互いを頼りにしているように感じられた。
ティナも含めてだと、三人の気持ちが一つに通じ合ったのは、もう随分と前のこと……そう、逃れられない罪の記憶の夜以来。
ミルフィナは自然の民であるエルフとして、何かを感じ取ったように足早に部屋へ帰り、ガブリエラはしばらくティナの去った方を見つめていたが、やがてナッシュの部屋へ向けて歩き出す。
今や世界を救おうとしている勇者……確かな恋情を抱き、この身を捧げた相手の元へ向かっているはずなのに、驚くほどに足が重い。泥に足を掴まれているような。あるいは──井戸に沈んでいくような。
「──サマラ……」
罪の記憶を胸に、ガブリエラが小さく呟く。
その名を憎悪や身勝手な欲望に染めて忘却できるほどには、ガブリエラは悪辣な性格ではなく……そして、それはティナもミルフィナも同様であった。
自分たちが死体の処理をした、清く正しく、そして間違いなく優しかった、本物の勇者パーティに相応しかった人材……回復術師のサマラの名は。
※
──ガブリエラたちの前を通り過ぎた後も、ティナは真っすぐ部屋には帰っていなかった。
最近はすっかり、ティナは控えるようになっているのだが、死んでしまったサマラを除くと勇者パーティは散財癖のある者ばかりが揃っている。
しかし、ナッシュという男は外面に関しては異様なほどこだわる男であり、歓迎ムードの場合は街の好意を骨までしゃぶるが、貧しい村のささやかな酒宴などに関しては、後々でティナたちに品性を疑うような言葉で愚痴ることはあっても、無い袖を振れとは要求しない。
この宿も決して、世界に光をもたらす勇者パーティが宿泊する場所としてはふさわしい内装ではなく、宿の主人が夕刻になると自ら点けて回る蝋燭の火が燻って、却って怪しい空気を放っていた。
ティナはくすくすと、何故ナッシュから選ばれなかったのにそんなに楽しげなのかと疑わしい、笑みを浮かべて踊るように廊下を歩んでいたが……やがて彼女は妖艶な雰囲気を放つ顔つきに代わり、壁に向かって手を突いて尻を突き出す。
「部屋まで、我慢できないの……♥ 可愛い、可愛い……♥ 好き、好き……♥ そんなにアタシの体に夢中になってくれてるんだ……? ああ……ナッシュみたいに雑に扱われるのを“愛”だとか、勘違いしてた自分が情けない……望めばすぐに手が届いたかも知れなかったのに♥」
そこには、誰も居ない。ティナ以外の宿泊客も、宿の者の姿もなく、なんなら近くにまだ部屋もなく、壁越しに話しかけているという奇矯なことすら起こりえない。
ひゅー ひゅー
ただ、呼吸の音があった。
苦し気で、けれど、何かに焦がれているような、息遣い。
ティナのものではない。彼女は壁に手を突いた状態で、下穿きをするすると手で釣り上げて、下着を露わにして興奮したように荒く息を吐いているからだ。
居るのは一人。呼吸は二つ。
ティナは、恐らく少し前までの彼女なら「何なのよぉぉっ……!」と恐怖でパニックになった状況を、うっとりと享受している。
「あんっ……焦らさないでぇ♥ ごめん、ごめんなさいっ♥ だって、あなたのことをアタシ、一等苛めてたもんねぇ……♥ あなたが怖かったの……ナッシュが取られるかもって……あなたが本気になったら、きっとアタシは太刀打ちできないって思って……んんっ♥ あっ、あっ……はぁぁ……♥ 怖い、怖い……どこで覚えたの、都合の悪いことを、キスで黙らせるなんて……好き……♥」
存在しない誰かに話しかけ続ける、ティナの唇が歪む。何かを押し付けたように、ちろちろと唇の入り口辺りで舌がうごめき、ごくごくと“何か”を飲み干しているように喉が鳴る。
涎を口に端に流し、蕩けた表情で「来て……♥」と懇願するティナ。
直後、ティナの服の上から胸が湾曲し、五本の指を備えた手のひらの形に歪んだ。誰かに後ろから、胸を鷲掴みにされているかのように。
ティナの喉からは「あうぅぅっ……♥」と甘い喘ぎが漏れる。最近、どうやってもナッシュからの誘いを断れない時に見せる、嘘臭い喘ぎ声ではない。喜悦と、興奮と、熱狂の籠った甘い吐息……目の端には涙が薄く溜まっており、その異形の愛撫が嬉しくてたまらない、愛しくてしょうがない……そんな風に感じさせる。
「んっ、んふっ……あぁぁっ♥ いいっ……いい、のぉっ……♥ こ、こんな気持ちいいの、知らなかった……♥ アタシ、これまでどれだけ無駄な時間を過ごしてきたんだろぉ……♥ これが、本当の愛っ……愛、なんだねぇ……♥ あひっ、んくぅぅぅっ♥ ち、乳首、こりこりするのはぁぁっ……♥ アタシが弱いの、バレちゃってるじゃないぃっ♥ あっ、あっ、あぁぁっ♥」
その艶やかな体を仰け反らせ、真っ白な喉が見えるように。
舌を突き出し、涎を零して、快楽に耽り、甘い陶酔に酔う。
見えざる誰かとの、異形の……否、無形の交情。ぐっしょりと濡れて色濃くなった下着にも、指の跡が ぺたり ぺたり ぺたり と付着し、その度にティナはケダモノのように甘く、低く唸り続ける。
「あっ、あっ……♥ お願い、お願いよぉ……♥ このまま、気持ちよくして♥ ここで、イカせてぇ……♥ いいでしょ、ねぇ♥ ちゃんと、部屋に帰ってからも相手するから♥ 底なしだもんね、あなた……♥ だって、もう──死んでるんだし♥」
決定的な言葉をティナが口にした瞬間、下着がズレて割れ目に指一本分の空白が生まれた。
ティナはもう我慢できないとばかりに、ぼろぼろと快感の涙を流しながら「うあぁぁぁ~っ……あぎゅっ、んふぅぅぅ~っ……♥」と喘ぎ、喘ぎ、喘ぎ続ける。
その体は壁から離され、足をぴんと上にはね上げた状態で固定される。
明らかに一人では自重を支えられず、立てないはずの姿勢。ティナはその温もり……いいや、虚空に感じる“冷たさ”に心からの好意と恋情を込めて縋り付き、そして決定的な言葉を口にする。
「やんっ♥ あっ♥ あはぁぁっ♥ だ、誰かに見られたら、どうするのぉ……♥ ふ、ふふっ……そうね、どうせ悲鳴を上げて逃げていくわね……♥ あなたとアタシの逢瀬は、これからも続くの……誰にも秘密で……あぁっ♥ いい匂いっ……♥ 割れて、朽ちて、乾いているのに──ナッシュなんて相手にならない、蠱惑的な匂いがするのっ♥ 大好きなの、愛しているのよ、サマラぁっ♥」
ひゅー ひゅー
呼吸音が響き、ティナが涙を流しながら体をゆさゆさと震わせ、小さく痙攣をしながら「あっ……イクっ……♥」と呟く。
雲の悪戯か、ふと月の光の向きが変わり……足を跳ね上げた姿勢で、廊下の真ん中で一人喘いでいる、そんなティナの姿をまざまざと輝きが照らし出す。
そこには、ああ……そこには。確かにティナの体に寄り添う、もう一つの影が映し出されている……!
頭に特徴的な神官の帽子を被った、その影を──ティナは愛し気に、切なげに、サマラの名で呼んだ。
「あ、うぅぅっ♥ イクぅぅぅっ……♥ ああっ……ナッシュの自分勝手なセックスなんて、相手にならない……♥ サマラ、サマラ、サマラぁぁっ……アタシの愛の名前……♥ どうして、どうしてもっと早く気づくか無かったんだろう。あんな男に穢される前に、あなたを愛していれば、きっと……」
するんとティナの胸元から薬瓶が抜き出され、とぷっ……と口元に注がれる。
エリクサー。常用しすぎれば、禁断症状をもたらすこともある霊薬。しかし、量や用法を守れば、気分を高揚させ、魔力をその身にみなぎらせる。
今さら宙に薬瓶が浮くことは指摘する必要すら無いが、その中身が半分ほど虚空に消えたのは、尋常ならざる事態であった。
「はぁぁぁ……部屋に戻りましょう♥ アタシたちの、今日の愛の巣……早く本物の、アタシたちだけの場所が欲しいね♥ 大丈夫よ、まだ取り戻せる……いいえ、取り戻して見せる……アタシのサマラ、アタシの恋人……ナッシュのせいで失ったものを、全部、全部取り返すの……あはっ♥」
狂気に満ちたティナの髪が、さらさらと撫でられているように蠢き、それだけでティナは立ったまま「お゛っ♥ イグっ♥」と愛液を噴き出した。
※
「──回復術師サマラは、最後まで誇り高く魔王と戦い、差し違える形で勇者の勝利に貢献しました……! 千年に渡り、語り継がれるべき英雄です!」
ナッシュがサマラのことを……殴り殺して死体を遺棄しておきながら、セックスを拒絶された消えない恨みや怒りから魔王軍に寝返ったと申告しようとした瞬間、その言葉を遮るようにティナが彼女の両親へと朗々と語ってみせた。
口を半開きにしているナッシュは勿論、ミルフィナもガブリエラもそんな筋道は聞かされていない。そこまで貶められることは無いだろうとは思っていたが、しかし、それをナッシュに進言する勇気はどちらにも無かったからだ。
サマラの両親……宿屋を経営している父エデルと母ソフィアに、まるで恋人の義両親にでも寄り添うかのように抱き着き、涙を流しているティナ。
しかし王都プルトに響き渡る歓声は、これによって最大級まで高まり、サマラだけではなく矢張り最大の功労者のナッシュを賛美する声も高らかであったことから、結局ナッシュはサマラのでっち上げの悪行を口にすることは出来なかった。
そもそもサマラの心優しい行いは、旅の先々でも大変に評判になっていたのだが、ある時期からパーティにその姿が見られないことが増えていたのも手伝って、その喪失は劇的なまでに感情を揺さぶったのである。
「──パーティの仲間が裏切ったなんて、カリスマ性の無い勇者だって思われてしまうじゃない? それならばこうして……死を利用した方がずっといいと思うんだけど。レモラ姫の表情を見た? 傷心であろうあなたに寄り添いたいと、そう思っているように見えたわよ、ナッシュ」
怒り狂ったナッシュに対しても、ティナは立て板に水とばかりに都合の良い言葉を並び立て、そもそも処女で無いと神聖魔法の使えない回復術師に関係を迫るような、致命的バカであるナッシュはあっという間に納得し、それどころかレモラ姫とも関係が結べるかもと鼻を伸ばしていた。
ミルフィナの心の中で膨らみ続けていた、ナッシュに対する嫌悪感……それが遂に限界を迎えたのは、この醜悪な表情を見た時だったと思う。
その始まりは、あの罪の夜……ナッシュがサマラへと関係を迫り、遂には怒りに任せて撲殺した日に遡る。
それまでは英雄色を好むくらいの気持ちで、ミルフィナはナッシュの多情さをかなり甘く見積もっていた。
けれど、サマラの死はまざまざと見せつけたことになる……自分たちが毎夜のように抱かれていた男の本性が、どれほどに醜く腐れたものであったかを。
見ないように、見ないようにと視線を逸らしていたら、サマラが死んだ。殺されてしまった。
恐らくはただ一人、純粋な気持ちで魔王を倒そうとしていた娘を。
「いい子ぶってるのが、ずっと嫌だったんだよね」
そう口にした言葉は、震えていた。
よりにもよって、サマラの死体の遺棄を命じられた時のことだ。逆らって真実を叫べば、自分たちも殺されてしまうと思ったし、何よりも勇者ナッシュという希望が世界から失われてしまうのが怖かった。
だからミルフィナは、殺されたサマラが悪かったんだと口にした。この子は殺されるくらい嫌な子だったんだ。勇者に逆らうからこうなったんだ。サマラが悪いんだ。ウチは悪くない……。
ミルフィナもガブリエラも口々にサマラの行いや容姿を貶し、けれど言葉を重ねても命を奪われてしまう説得力など何処にも産まれなくて……結局、彼女の死体をこれ以上は長く抱えておけなくなって、使われていない井戸へと遺棄した。
どうして墓場に埋葬してあげなかったんだろう。どうして仲間として最低限悼むことが出来なかったんだろう。
あれからティナやガブリエラとの関係は一気に悪化して、その元凶であるはずのナッシュに依存するしか無くなった。
広い外の世界を旅するべく森を飛び出したエルフ、自由気ままな自然の民ミルフィナ──自分はもう、どこにも行けないくらいに囚われてしまっている。
サマラの死に? ナッシュの暴力に?
どちらでもない、自分を偽ったことにだ。
「(ティナが、羨ましい……どうして、あの娘は急にナッシュにも対等に話せるようになったんだろう)」
ナッシュによって妻帯されることが決まり、そのことをもう喜べないミルフィナは、ナッシュからの寵愛をもっとも深く受けているガブリエラよりは、ティナの方と話が通じると思い、今の気持ちを相談することにした……いや、本当はどうしてティナが自由になったのかを知りたかったのかもしれない。いつもニコニコと楽しそうなのは、エリクサー中毒では説明がつかない。
「ミルフィナから話しかけてくるなんて、珍しい。てっきりもう、アタシのことなんて嫌いになって、仲間だと思ってないものかと」
「皮肉はやめてよ。ウチは、真剣に相談に来てるんだから……ティナ、どうして変われたの? あんた、ナッシュに段々呼ばれなくなって、ガブリエラと差が付けられて、一番焦ってたじゃない」
ミルフィナも“正妻”がガブリエラに決まろうと変遷していくことには、大いに焦っていた。好意からではない、正妻になれなかったら、サマラのように消されてしまうリスクが付きまとうからだ。
けれど、ティナが自分以上に大騒ぎしていたから、内心でその姿を馬鹿にするようにして……何とか余裕を保っていたのだ。
それなのに、今のティナはナッシュにまるで執着していないように見える。それでいて、ナッシュの方は自分からティナを袖にしたとは言え、彼女を遠ざけようと思ってはいないし、ティナの変遷自体にも気づいていないだろう。
その自由さが、羨ましい。心の平穏が欲しい……ミルフィナはそう願う。
いっそ蓄電して森に帰ろうかとも思ったのだが、ナッシュの異常な執着心を思うと、火を点けるくらいのことはやりそうで実行できなかった。
ならもう、今以上にナッシュに支配されるようになる今後の生活で、平穏を得る為にはティナに縋るしか無いではないか。
けれどティナは、薄く笑みを浮かべたままミルフィナの背中を見つめている。ミルフィナ自身よりも少しだけ高い、椅子から立った時のミルフィナの頭がある辺りを見つめて、軽く手さえ振ってみせる。
振り返っても、何もない。何も……居ない。
「ふ、ふざけてるの?」
「ふざけてなんて……♥ アタシは自分の心を安らがせてくれている、その原因について前向きにアンタに教授をしているのよ、ミルフィナ。気づかない?」
「な、何を言って……」
「あの夜のことを覚えてる?」
背中が、ゾッと冷える。
二人の……正確にはガブリエラも含めて三人だが……彼女たちに共通する“夜の話題”など、ナッシュの暴力的で早漏なセックスを除けば、サマラのことしか無い。
「……忘れられる訳、ないじゃない。あの時、きっとウチらは“正義の味方”じゃなくなったんだよ。サマラと一緒に、ウチらの正当性は死んだんだ……そうじゃなきゃ、世界を救った勇者様と添い遂げられるのに、こんなに嫌な気分が胸に満ちたり、するもんか」
ひゅー ひゅー
建付けでも悪いのか、何処かから風が吹き込む音がした。
生暖かい、不自然な風。自然に吹きすさぶそれならば、何でも享受できるエルフでも、背中がゾクリと寒くなるような風。
それは……絶対に気のせいだが、エルフが例え人間よりも聴覚に優れていようとも気のせいに違いないのだが──耳元で、聞こえた気がした。
「そうね。サマラの死を見過ごしたこと、それがアタシたちの最大の失敗だった。ナッシュのせいで殴り殺されてしまった、可哀そうなサマラ……何か蘇生の手段があったかも知れない。それなのに、アタシたちは井戸に彼女を捨てた」
「ねえ、何が言いたいの? ティナ、この部屋……少し寒くない? あ、あんたはエリクサーの過剰摂取で、体が熱いのかもしれないけれど、ウチはこんな……不自然に寒いのは……」
まるで冷却魔法でも使っているように、周囲がひんやりと冷えている。
人よりも表面積の多い、エルフの耳が赤く染まり、じんと痛む。
「あの時、サマラの足を持っていたのはガブリエラだったよね……ああ、勿体ない。どうして、代わってて言わなかったのかなぁ」
「ティナ……ちょっと、ティナ?」
「やわらかい、まだ熱が残ったサマラの足に触れるチャンスだったのに……し、下着だって、見えちゃったかも知れないよね。ああ、なんだろう、興奮してきた……ガブリエラはズルい……ナッシュはもう、どうでもいいけど、あの子から見た臨終のサマラって、どんな風だったんだと思う……?」
「き、気持ち悪いこと、聞かないでよ! あんた、一体何を……ひぃっ!」
ひゅー ひゅー
はっきりと、耳元で聞こえた。隙間風なんかではない……間違いなく、人の吐息。
誰も居ないのに。何も居ないのに。息だけが、一つ多い。
「ねえ、ミルフィナぁぁ……あなた、アタシらのなかでは一番サマラと仲良かったよね。サマラのことも、一番理解していた気がする……ズルい……妬ましい……でもね、それってサマラが喜んでくれるってことだと思うんだ。好きな人に喜んで欲しいよね、ミルフィナ。わかるよね、ミルフィナ。ほんの一瞬だけ、虚像であったとしても、同じ相手を好きだったじゃない。これから、同じ相手を好きになるんだから」
「わ、わけ、分からない! あんたに相談したの、間違いだったよ! こ、この気狂い! あんた、サマラに取り憑かれてるんじゃないの!」
ミルフィナが、想ってもいない言葉を口にしてしまった瞬間、ティナはなんと評せばいいのか……透明で綺麗な笑みを浮かべて、もう一度ミルフィナの背後を指差した。
「取り憑かれているのは──あなたの方だよ、ミルフィナ」
振り返った顔を、冷たい何かが覆う。」
ひんやりとした肌、胸とお腹の中間辺り。そこに顔を埋められて、ミルフィナは声も出せないほどに戦慄しながら、手足をじたばたと動かす。
何も感じなかった! 何も察知できなかった! 何も居なかった! そのはずなのに!
ひんやりと冷たくて、不思議な柔らかさがあって、それで……少しだけ、華に似たにおいがする。
ミルフィナも、勇者パーティとして数多の魔物と戦ってきたのだ。数多の魔物が人を殺した風景も見てきたのだ。
だから、この感触も、冷たさも、匂いも。思い当たるものがあってしまった。
「し、屍蝋……?」
それは、死体がある種の条件を揃えた時に、腐敗もせず朽ちもせず大地に還らず、蝋へと変わる現象。
まるで『正解です』とでも告げるように、ミルフィナの後頭部が優しくなでられ……むにりと、尻肉が“両手”で拘束された。
ティナの気配は動いていない。くすくすくすくすと笑いながら、エルフでも気配を察知できない何かのお腹に顔を埋められて、優しく頭を撫でられながら、こんなに気持ちいい手つきなんてあるんだと蕩けてしまいそうなほど巧みに、尻を揉まれているミルフィナを見ているのが分かる。
それはますますおかしなことだ。目前の何かは、ミルフィナの頭をしっかりと拘束し、もう片方の手で後頭部を撫でているではないか。なら、この尻を揉んでいる手はなんだ?
「ひっ、ひあぁぁっ……あっ♥ んっ、あぁっ……♥ ダメっ、やめっ……こ、怖いぃ……♥ んっ、へぇぇぇ……こ、怖いのに、気持ちよくされたくないよぉぉっ♥ ゆ、許してっ♥ 許して、サマ──あはぁぁぁっ♥」
くちりと、左右からエルフの耳が口内に収められた。
エルフの耳が性感帯であることは広く知られており、ミルフィナもナッシュから何度も乱暴な愛撫を受け「こんなもんか」と思ってきた。
その“耳フェラ”は、まるで違っていた。こんなに心地よく、耳の僅かな肉や軟骨をほぐすように舐め回し、唾液がとろりと耳内に流れ込む感覚だけで、ミルフィナは何度も絶頂しそうになる。
「(うそ、でしょ……♥ こんな優しいセックスがあるなんて……セックス、そう、セックスだわ……♥ ウチの体、得体の知れないなにかに……ああ、間違いなく“愛されて”る……♥ 腕が何本とか、口が幾つとか、もうどうでもいい……こんなに心地よくしてもらったの、始めてぇぇ……♥ う、ウチも……ウチも、好きになっちゃうよぉ……♥)」
ナッシュが初恋の相手だった。悪い男に騙される典型で、初めて体を許した男が最高の相手だと信じていた。信じたかった。
けれど、違うのが分かってしまう。ナッシュなんて、男の中でも下の下だ。ましてや、こんなにも柔らかく、抱かれていること自体が癒しになるようなものを与えてくれる存在が、此の世にあるなんて。
……この世に? 本当に?
「(ダメ……気づいちゃ、ダメ……♥ ウチ、ウチは知ってる……♥ この匂い、甘い鼻みたいな香り……蝋になる前の体臭、知ってる……♥ だって、一緒に旅をしたもん……ウチと一緒に、野宿で見張りをしてたこともあった……♥ ああ……気付くな、気付くな、気付くなぁ♥ こ、壊れる……気づいたら、ウチ、発狂しちゃう……ナッシュの元にも、もう自然にも帰れなくなって──)」
『ミルフィナさァん』
ひゅー ひゅー
「あっ、あっ……サマラぁぁっ♥」
ゆっくりと、柔らかなお腹が離される。
死人の色合いをした胸が、ぽよりと少しだけ鼻先に触れて、そうして……ナッシュにぐしゃぐしゃに粉砕されてしまっていたのを、三人で少しだけ整えた、同じ女としてそのまま死んでほしくないと思った、そんな顔が──懐かしい回復術師の顔が、覗き込んできた。
白目を剥いて失神しながら、ミルフィナはじょぼじょぼと失禁する。
けれど、その口元は狂気じみた笑みを象っていて……もう彼女が、正気の世界に見切りをつけた証になっていた。
※
「──まるで夢のようだ。そう、想わなくてはいけないのだろうな」
ガブリエラは、ナッシュの“ただ一人の”花嫁として、白無垢に身を包みながら、そう思った。
勇者ナッシュ・ロウは冒険を共にした三人の美女と同時に結婚すると、そう発表されていたのだが、魔法使いティナは自分がガブリエラには決して敵わないと自己申告し、ナッシュを任せると涙ながら去っていき、ミルフィナも自然の様子を見に行く必要があるからと言って、ガブリエラにナッシュを任せて去ってしまった。
ナッシュは来る者は拒まないが去る者は許さない性格だと思っていたが、ティナとミルフィナについては何故か驚くほどあっさりと「あっ、そ」と諦めて見せた。
ナッシュはここ最近だけでレモラ姫との関係を極めて強くしており、恐らくは彼女と関係を続けるなら妻は少ない方がいいと判断したのだろう。ハーレムなどということを考え付くものは、それを撤回する時の思考も褒められたものではないのが常だ。
それでも……ガブリエラはまだ、ナッシュのことを愛していると思う。ただ一人の妻として、ティナやミルフィナに張り合うのではなく、いずれはレモラ姫相手の遊びをやめてもらうように、心を込めて愛するべきだと思った。
そう思わなければ……正しさを求めて生きてきた人生で、見過ごした過ちの群れに足を取られてしまいそうになる。
「……サマラ」
また口から、彼女の名が突いて出る。
ナッシュに殴り殺された、回復術師の少女。
いつだって仲間だと思っていた。ナッシュを巡るライバルだとは感じていたが、憎悪を抱いたことは無かった。それはサマラがナッシュをまるで意識していなかったからかも知れないし、サマラが本当に……悪意を持つには善良すぎる子だったからも、ある。
こんなことがあった──オークの村に天災が怒り、傷ついたオークの母子が居た。
ナッシュは殺してしまえと言ったが、サマラは彼らに回復術をかけて癒した。魔王との戦いにおいては、彼女はむしろ前向きだったのに、だ。
自分はあまりにも自然に、サマラが見ていないところでオークたちを殺そうと頭で考えているのに気づき、愕然とした。サマラの思考を一貫性の無い物だと思っていたのに……自分の思考が人間性の無い物に変わりつつあるのが怖かった。
ましてそれが……ナッシュと過ごした日々のせいだなどと、思い知らされるのは!
「(だから私は、ナッシュに好かれるために従順に尽くした。愛や情は、もっとも人間らしい表象だと信じたからだ……ああ、けれど、けれど。だからと言って、あの娘は井戸に擲たれるような子だったか? 優しく、正しく、迷うことを止めず、あの子の心根こそ勇者のそれだと、私の武が訴えかけている……私たちは、勇者を殺したのか?)」
ガブリエラは、表面上は平静を装い、ナッシュとの愛に前向きなように見えていたが……実際のところ、その精神は荒廃の一途といって過言ではなく、その思考も狂気的なものに変わりつつあった。
ティナやミルフィナがサマラの死後に攻撃的になったのは、ナッシュが互いに相争わせることで結託を無くし、サマラのことを誰かに告解したりしないようにという企みによるものだったが、ガブリエラだけは明確な罪悪感で精神の変調を迎えていた。
「サマラ、サマラ、サマラ……お願いだから、もう、解放してくれ……私だって、幸せになりたいんだ……魔王は倒れ、平和は訪れた……君の功績だって、千年語り継がれるだろう……それで、いいじゃないか……」
白無垢で結婚を目前に控えた花嫁とは思えない独白。
顔を覆い、化粧が落ちないよう懸命に涙をこらえながら、ガブリエラはひたすら死者へと謝罪を繰り返す。
罪を三等分で来た仲間たちは、もう、居ない。
ひゅー ひゅー
「……何の音、だ……?」
顔を上げたのは、戦士としての本能だろう。それが詳細のつかめぬものであっても、取り敢えず対策するという戦闘者の智慧だ。
そうして目前を凝視したガブリエラは──そこに立っている少女と、思い切り目があった。
サマラ。死体を遺棄した時は、装束姿ではなく休む為の軽装になっていたはずだが、今は回復術師の正装をしている。
肌は死人めいた色合いであり、その眼が赤く発光していても……生来の美しさは失われていない。
「あ、アンデッド、なのか……!?」
『さあ、どう思います?』
サマラは、想った以上にハッキリと喋ると……ガブリエラの体に抱き着いてきた。
冷たい、寒い、怖い。それは、死者の体温だった。アンデッドは闇の生命である為か、腐敗の侵攻に際して熱を放つものが多い。けれど、サマラは冷たい。本当に、死者の温度だ……ガブリエラは静かに失禁し、ガタガタと震えながら崩れ落ちようとする。
けれど、許されない。サマラの力は、生前とは比べ物にならないほど強く、ガブリエラをあっさりと支えて見せている。
「あぁぁ……さ、サマラぁぁ……ゆ、許してくれっ……! 殺したのは、私じゃない! 私たちじゃないんだ!」
『ええ……知ってます。それで……許されると思いますか?』
「ひあぁぁっ……な、なんでもする……何でもするからぁ……! お願いだから許してくれ! て、天のいと高き場所へ行ってくれぇぇっ!」
『それじゃあ、ここ……こぉこ……。手を、突いてくださいよ』
爪の剥がれた、痛々しい手がガブリエラの両手をしっかりと掴む。
そうやって導くように、鏡台にガブリエラの手を突かせて。一人で何とか立てるようにして。
サマラはその背後に立つ。気配は感じる。振り向けば、そこにいる。なのに、鏡の中にはサマラの姿が無い。
怯え切っているガブリエラが、もう一度中身の無い謝罪を繰り返そうとした瞬間──。
ずどんっと。
思い切り不浄の穴……後ろの穴の、指が捻じ込まれた感覚があった。
サマラは立ったまま、ピクリとも動いていない。ただ……虚空に浮かぶ何かの“力”が、ガブリエラへとカンチョーをぶち込んだのだ。
「おひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ♥ ひぎょっ♥ ぴぎょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ♥ ほっ、ほっ、ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ♥」
グリグリと菊門の中で感触が捩じられ、捻られ、前の穴をナッシュに開発され切ったガブリエラに、未知の快楽と被虐の悦楽を刻み込んでいく。
その間も、サマラ自身はゆらゆらと左右に揺れながら、ぺちんぺちんと優しく尻たぶを叩いて見せており、辱めて痛めつけるようなその行為が、堪らなく……ガブリエラの官能に火を点ける。
「あひぃぃぃぃぃぃぃぃ~っ……ど、どうひてぇぇぇっ……どうひて、こんなことにぃぃぃっ♥ こんなっ、お゛っ♥ お゛ほぉぉぉぉぉっ♥」
それは、ガブリエラがずっと、ナッシュとの行為を罪悪感で続けてきたからだ。
喘ぐのも、悶えるのも、嬌声をひり出すのも、全てナッシュの愛ゆえだという、免罪符を得る為の好意に過ぎなかったからだ。
今、この瞬間は違う。死んだはずのサマラに与えられている“罰”は、狂気と正気の境界線をさまよい続けてきたガブリエラにとって、対面しなければならない“現実”だ。
靄がかかっていたようなガブリエラの意識に、尻から伝わる焼けるような感覚が火をくべていく。
ずぼっ……と“力”が引き抜かれ、崩れ落ちないようにいきんだ表紙に、ぶぼほっ! とガスが漏れてしまう。
その無様な姿こそが己だと、勇者の花嫁などというのは幻だと、教え込んでくれる。
ぺちぺちぺちと繰り返される打擲に、じょぼじょぼと愛液を何度も噴き出しながら、ガブリエラは涎を垂らして絶頂を繰り返す。
生と死が転換したこの場所で、現実は幻となり、妄想が現実として噴き出す。
『ガブリエラさん、もっと、もっとよくして上げますね……どこが触って欲しいですか?』
サマラの声がわんわんと頭蓋骨の中で反響する。
ガブリエラの体は、ほとんど自意識の無いままに尻穴をみちみちと両手で開き、サマラに向かって壊れた笑みを浮かべていた。
『良い子ですね』
「あぎひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~っ♥」
贖罪は、かくて成される。
※
──勇者ナッシュ・ロウの死は大々的に報じられた。
結婚式の当日、白い礼服姿のままで首を吊ったのだ。
それも自発的いうよりは、目撃していた……そして、今は正気を失ってしまっている……レモラ姫によれば、会場に向かわないと等と言いながら、窓に足をかけてごく普通に歩き出そうとして──窓枠にタイがかかって吊られた形だったという。
何故か来賓であるレモナ姫がナッシュと共にあったことや、魔族による報復の警戒などもあって、ナッシュの死体はしばらくの間は誰にも触れられずに放置され、垂れ流した糞尿が白衣にはよく目立った。
花嫁であった戦士ガブリエラは「サマラの死以来、何か思いものを抱えていたように見えた。すべては支えられなかった私の責任だ」と語った。
勇者の死は人々の心に不安と恐怖をもたらしたが……しかし、希望もあった。
ガブリエラが、勇者の子を妊娠していたことだ。
※
──数か月後、王都プルトの一角にて。
「ふぅー……ふぅー……♥ はっ……はぁぁっ……♥ く、くるぅぅ……破水、くるぅぅぅっ♥」
ガブリエラが、ただ一人で……豪奢な部屋の中を思えば、いくらでも人は雇えるだろうに……出産に向き合っていた。
一応、傍にはかつての仲間である、ティナとミルフィナがいるのだが、彼女たちは手伝いをする様子はない。ただひたすらに……ガブリエラの出産を待ちわびているらしい。
「はぁぁぁっ♥ おいで……帰って、おいでぇぇっ……♥ わ、私の、サマラぁぁぁっ……んおぉぉぉぉぉぉっ♥ ふんぎゅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~っ♥」
ぶしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♥ と激しく羊水が飛び散り、出産と共にガブリエラがアクメをキメる。
同時に、赤ん坊にしてはあまりにも大きすぎる……そんな“何か”がガブリエラからひり出され、ティナとミルフィナが駆け寄った。
「ああ、お帰りなさい、サマラ♥」
「サマラ、サマラぁっ♥ 私たちのサマラぁっ♥」
赤ん坊のようにつるつるの肌で、少しばかりに疵さえもない美しい顔で、産み落とされたサマラは、ゆっくりと笑い……最初の呼吸をゆっくりと行った。
ひゅー ひゅー