──未だに人類に全容を表さぬ氷結の地・北極。
その海中にてそびえる要塞・氷結城では、今日も暗黒種デーボスを蘇らせる為に、百面神官カオスが率いる戦鬼たちが恐るべき計画を練って……。
「あっはっは! 乙女坂コロリ先生の作品は最高だなぁ~。笑えて泣けて、恋敵に怒って楽しんで、喜怒哀楽の全部楽しめちゃうよぉ」
……楽しみの密偵ラッキューロは愛読している『少女こずみっく』に顔を埋めるように愉快な時間を過ごしているが、まあこれが彼の常態である。
カオスからはかつて「驚くほど働かんな」と評されたことがあるが、自主的な計画を立てることが少ないだけで、実は怪人デーボモンスターの巨大化を担当している関係で、戦鬼たちの中では一番働いているといたりする。これくらいの休憩は許されて然るべきであった。
「さーて、それじゃあ一番のお楽しみ、青柳ゆう先生の作品を……」
「きゃはははっ♥ 相変わらずラッキューロは人間の漫画が大好きねぇ~」
「きゃっ! な、なぁんだ、キャンデリラ様じゃないですかぁ。カオス様かと思ってびっくりしましたよ」
「うふふ、ごめんね。楽しいことを思いつくと、ついついそれに夢中になっちゃうのよねぇ♥」
現れたのは喜びの戦鬼・ラッキューロの直属の上司であるキャンデリラである。ハートマークをモチーフとした姿は、常に笑っているようにみえるが、実際は常に笑っているという、文字通りの喜びの感情の化身なのだ。
「また何か面倒なこと……じゃなかった、作戦を考え付いたんですかぁ?」
主従の仲が良すぎて遠慮が無い物言いが出かけたが、キャンデリラの作戦は「人間の喜びの感情を集める」という性質上、ラッキューロからすると「人間に奉仕活動してるみたい」と不満を抱かせるものが多く、ついでに言うとキャンデリラの生み出すデーボモンスターも「作戦は全然でそこそこ強い」という怪人ばかりであり、ぶっちゃけあまり優秀な幹部ではない。
ラッキューロの愚痴は聞こえなかったようで、キャンデリラはきゃははと笑いながら、懐から漫画本を取り出す。
『少女こずみっく』に比べると、表紙の女の子たちのフォルムは丸っこくて可愛さに全振りしており……要するに“萌え”系の雑誌であった。
「えぇと……『漫画ライフゆらら』? なんですか、この雑誌」
「前に地下でライブした時に、ファンの人が置いていった雑誌なのよ! それを読んでみたら、びっくり仰天! 意外な形で人間は喜ぶってことを知ったのよぉ♥ きゃはははっ!」
キャンデリラは実に楽し気にデーボモンスター作成にかかろうとしているが、ラッキューロは「どうせ何か勘違いしてるんじゃないかなー」と鋭くも失礼なことを思う。
キャンデリラが開いたページでは、彼らデーボス軍の天敵・キョウリュウジャーを思わせる変身ヒロイン同士が、まるで恋人のようにイチャイチャしている漫画が掲載されていた……。
※
──それから数時間後、街では大混乱が引き起こされていた。
「お姉ちゃん、私、お姉ちゃんのことが好きだったの! 今まで言えなかったけれど、もう我慢できない! 私と結婚して!」
「きゃー! 世界一可愛い妹からの告白なんて、受け入れるしかないわ! 二人でウェディングドレスを着ましょうね!」
「ごめんなさい、あなたっ! 私、自分にもう嘘はつけない! 鈴木さんの奥さん! 私と一緒に逃げて頂戴!」
「田中さんも奥さん! ええ、愛の逃避行と参りましょう! さながら私たちは野山に力強く咲く百合だわ!」
「オーゥ、ジャパニーズガールはとってもアクティヴデース♥ ワタシのオッパイ、そんなに好きデスカー♥ ワイフにしてあげマース♥」
「お父様、お母様、ごめんなさいませ……親に決められた婚姻を捨て、わたくしはメリケンで国際百合婚いたします♥」
……街のあちこちで、血縁だろうと恋人がいようと夫がいようと関係なし、女同士で激しく愛し合い、告白しあって、中には「あっ、あっ……気持ちいいよぉ♥」「ふふっ、指を二本も飲み込んじゃってるわ♥」と、ニチアサでは映せない光景が展開されかけている。
獣電戦隊キョウリュウジャーのキョウリュウピンクことアミィ結月、それにこの事態の解析の為に同行した二代目キョウリュウヴァイオレットこと弥生ウルシェードは、目前で展開されている百合漫画……というよりも、もはやマニアックなAVのような光景に、思わず頭を抱えてしまう。
「ワォ……これって何がどうなってるの? 日本はLGBTに関しては後進国だと思ってたのに」
「アミィさん、危ないネタはやめてください! これは……デーボモンスターの仕業です!」
弥生の解析用の伊達眼鏡に無数のデータが浮かび上がり、街の女性たちがおかしくなっている原因が、デーボモンスターにあることを知らせてくる。
見れば街の中央で、テッポウユリの花弁からライオンが顔を覗かせているような、奇妙な姿のデーボモンスターが確認できた。
「ユーラッラッラッ! どいつもこいつも百合になるがいいーっ! 幸福の中で人類は緩やかな終末を迎えるのだぁーっ!」
「メチャクチャ怖いこと言ってる! こいつ、誰製のデーボモンスターなの?」
街では女性に恋人を奪われたり、妻から裏切られたり、一気に家庭崩壊カウントダウンを突きつけられたりした、男たちの嘆きの声が満ち溢れている。
怒り、悲しみの色合いが濃く、怒りの戦鬼ドゴルドか、哀しみの戦鬼アイガロンの手によるものかとアミィは考えたのだが、デーボモンスターは意外なことを口に出してきた。
「ユララララッ! 我こそは喜びの戦鬼キャンデリラ様が生み出せし新たなるゼツメイツ! デーボレズールン!」
「キャンデリラぁ? いや、この光景の何処に喜びがあるのよ!?」
「いえ、アミィさん……その、少々特殊な波形ですが、複雑な喜びを覚えている男性もそこそこいらっしゃるようです」
「えぇ……」
レズNTRに興奮する男性たちに、思わずドン引くアミィ。
キャンデリラとしては『漫画ライフゆらら』の掲載内容の九割くらいが女の子同士がイチャイチャしている内容だった為、単純に「女の子たちがお付き合いすれば、それを見て人間は喜ぶ」と考えてこのデーボモンスターを生み出したのである。
しかし結果的に、怒りや悲しみの感情も合わせて収集する様子から、氷結城で見守るカオスは「見事だぞ、キャンデリラ」と称賛の言葉を投げかけ、当のキャンデリラは「あれー?」みたいな呆けた笑顔をしていた。
「隙ありならぬ、好きあり! キョウリュウジャー、お前たちも百合になれ! ヤガテユリニナール!」
「きゃぁぁぁぁっ!?」
「あ、アミィさっ……ひゃぁぁぁんっ!」
うっかりと敵の前で放心してしまったアミィと弥生は、謎の奇声と共に放たれた怪光線を正面から浴びてしまい、桃色の輝きがその体に纏わりつき始める。
二人は本来、キョウリュウレッドこと“キング”桐生ダイゴを巡る恋敵同士なのだが……それはそれとして女戦士同士で仲良くもしており、その友好度の高さと後ろに張り付く巨大感情が、妙な方向性を与えられてしまっていた。
「あ、アミィさん、私……♥ んっ♥ あぁっ……♥」
「はぁ……はぁ……何も言わなくてもいいわ♥ このハートの高鳴りが、全てを伝えてくれるから……大丈夫、これでも私、全寮制の女子校に通ったこともあるから♥ こういうの得意だから♥」
実際、アミィは実はかつて通っていたカソリック系のミッション校にて、その抜群の容姿と行動力、そして気遣いから後輩どころか先輩、果ては教師にまで注目されて愛されていた過去がある。
もっとも、そのせいで礼儀作法の類に関しての注意をほとんど受けずに卒業に至ってしまい、今の残念美人が出来上がるのだが……かつては軽く流していた女の子たちへの対応を、弥生に対してはねっとりと繰り広げていく。
小柄で大人しい弥生の体を抱き寄せ、自分の胸と弥生の胸を重ねると、その整った顔を両手でホールドし、そっと唇を近づけていく。
弥生が恥ずかしがって目を閉じたところで、すぅぅ……と息を吸い込むと「ふぅぅぅ……♥」と甘い吐息をかけるアミィ。
弥生はあまりにもフェロモンたっぷりの息が甘すぎて、視覚を封じた状態で吸い込んでしまったせいもあり、それだけで「あうぅぅっ♥」と身をよじらせて絶頂を迎えてしまう。
「ふふっ、これだけイッちゃうんだ……♥ 見て、これ♥ 軽く下着の上から撫でただけでぐっしょり……♥ いやらしい子ね♥」
「はぁ……あっ、あっ……♥ あ、アミィさん♥ こんな、街中で……あうっ♥」
「いいじゃない、見せつけてあげましょうよ♥ キョウリュウピンクとキョウリュウヴァイオレットは、百合婚前提でお付き合い中ですって♥」
くちゅっ……と淫らな水音と共に弥生の中へとアミィの指が沈み込み、熱くて狭い中をぐちゅっ……ずちゅっ……と掻き混ぜ、指の形を覚えさえていく。
弥生は懸命に、すがりつくようにアミィに抱き着いて耳元で荒い息を聞かせ、目の前の少女がアミィに可愛がられるだけでの犠牲獣であるかのように思わせてくる。
……だがしかし、アミィは忘れていた。弥生がキョウリュウジャー全員のデータを収集しており、アミィも知らないアミィのことまで把握しているという事実を。
「んあぁぁぁっ♥ なっ、なんでぇぇ……こんな、おほぉぉっ……♥ お、お尻触られるだけで、すごっ……んんーっ♥」
「ああ……♥ アミィさん、可愛いです♥ ここ、アミィさんの性感帯なんですよ……お尻を揉まれて気持ちよくなっちゃうなんて、もしかしてアミィさんはマゾの人なんですか♥ そ、そうだったら、私、頑張ってサドの人になりますから♥」
弥生が「えい♥ えい♥」と可愛く声を上げながら、アミィの張りのある尻を何度もぺちぺちと叩く。
その度にアミィは「あっ、あぁぁっ♥ んっ、くあぁぁっ……♥」と切なげな声を漏らし、弥生の体に寄りかかるように力が抜けていく。
先輩戦士であり、頼れる味方であるアミィが、自分に甘えている……それは弥生にとっては、植え付けられた感情とは関係なく、たまらない興奮を呼ぶシチュエーションであった。
「はぁぁぁ……アミィさん、ごめんなさいっ♥ 私、荒れちゃいます♥ 止めてみてくださいっ♥」
「お゛なぁ゛っ♥ お、お尻に指、はんしょくぅぅぅぅっ♥ す、好きになっちゃうぅぅぅっ♥ 本当にお嫁さんにしてほしくなっちゃうから、駄目ぇぇぇぇっ♥」
「なってくださいっ♥ なれっ♥ なれぇぇっ♥ 私のお嫁さんになるんですっ♥ プレズオンで宇宙の海を新婚旅行しましょう♥ いいでしょう、愛してるんです♥」
アミィのあまりの愛らしさに、ちょっとオラついてしまう弥生。
しかしアミィとて、百戦錬磨の元女子校ハンター。ただやられるばかりで終わらない。
再び手マンを再開し、ぐにぐにと陰核の後ろの辺りを激しく刺激しながら、ちゅっ♥ ちゅっ♥ とバードキスを何度も弥生に落とす。
弥生はすっかりアミィの可愛さに頭をやられてしまっているので、その度にびゅっ♥ ぴゅるるっ♥ と軽イキして潮を吹いてしまい、「あうぅぅ……♥」と小さく喘ぎながら涎を零す。
「こ、この程度で、私をお嫁さんにできると思わないで♥ 嫁ぐのは、そっちの方何だからぁっ♥ 実家で何不自由なく主婦させてあげるっ♥ うちにお嫁入りしなさいっ♥ 専業主婦になれっ♥ なれぇっ♥ 夜は毎日子作りよっ♥」
「あぁぁぁぁっ♥ す、素敵ぃぃぃっ……♥ で、でも、負けませんっ♥ 私のお嫁さんになってぇぇぇっ♥」
「そっちが結婚するのっ♥ 私のこと旦那様って呼んでっ♥ あなたって呼んでぇぇっ♥」
激しい……あまりにも激しいセックスバトルが繰り広げられ、遂には二人は街のど真ん中で貝合わせを始めてしまい、街中のレズ化した女性たち共々、激しくレズセックスに耽ってしまう。
人目も憚らずに快楽の頂点に達した二人は「あぁぁぁぁぁっ♥」「イクぅぅぅーっ♥」と絶叫しながら、互いの膣内に愛液を注ぎ込み合い、頭の中は「妊娠♥ 妊娠♥ 百合妊娠♥」一色になってしまっていた。
「ユラララララッ! キョウリュウジャー、恐れるに足らず! 百合の花の下に人類は滅亡していくのだぁーっ! お前たちはスーパーヒーローではなく、この街のレズセックスシンボルになるがいい! ユーラッラッラッ!」
勝利の哄笑を上げるデーボレズールン。
しかし、その横っ面へとガブリボルバ―の弾丸が叩き込まれた。
「ユラーッ!?」
「まったく、こんな騒ぎを起こしやがって! 許さねぇぞ、デーボモンスター!」
そう、キョウリュウジャーはスピリットレンジャーを除いても、まだ四人もいる。
街中での騒ぎを治めつつ、ついでにあちこちでキョウリュウブラックことイアン・ヨークランドがナンパしてきた女の子たちから暴言を吐かれてダメージを食らいつつ、この場に駆け付けたのだ。
「……おい、なんでキングはアミィと弥生ちゃんがあんなことになってるのに、全然平気そうな顔してるんだ? 俺は小鹿のように膝から崩れ落ちそうなんだが」
「繊細だなぁ。キングは世界中回る中で、同性のカップルを見慣れてるらしいからね。レズを見ても驚きレス! なんちゃって」
「この状態で冗談が言えるノッさんも怖いよ……」
イアンと立風館ソウジに引かれつつも、キョウリュウチェンジを遂げるキョウリュウジャーの面々。
デーボレズールンは怒りに燃え、男たちへ襲い掛かる。
「百合に挟まる汚らわしい男どもめぇーっ! 非生産的とか男の良さをとか言う気だろう、このレイシスト!」
「……」
「イアン、黙るのはやめた方がいいと思うよ」
「何がレイシストだ! 寛容と押し付けは違うんだよ! 人の心を捻じ曲げる、お前はただの怪人だ!」
「なっ、なっ、何をぉーっ! このままシリーズ化して、後輩のレンアイワルド並に色んなカップルを百合化させてやるのだ! 食らえ、ヤガテユリニナール!」
放たれた怪光線がキョウリュウジャーを貫く。同じころ、アミィと弥生の指がそれぞれの秘所を貫く。仲間のバトルも完全無視で、全開百合バトル真っ最中だ。
……しかし、キョウリュウジャーの面々にはまるで、一切、何の効果も現れない。
当然である、彼らは男性である……トランスジェンダーであるとか、あるいはTSして女体化しているとかなら効果もあったかもだが、生粋の“男の中の男”たちに、百合光線が利くはずもない。
そして、運の悪いことに……今回は作戦を上手く“いきすぎ”な位に遂行したデーボレズールンであったが、まるでバランスを取るようにこれ以外の攻撃手段を持たず、四人の一斉射撃であっさりと爆散してしまう。
「ぐわぁぁぁぁぁぁーっ! れ、レンアイワルド、後は頼む……次回は、天野美琴ちゃんも含めて3P……ユラーッ!」
こうして、人類の生殖機能に深刻なダメージを与え、新たなるゼツメイツとなるかと思われたデーボモンスターは、単発回で木っ端微塵に消し飛んだのだった。
ちょうどアミィと弥生も、互いの秘所をシックスナインで舐めまわしていたところで、正気に戻る。
「あっ……きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
「わ、わ、わぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「よう、二人とも……そういうことをする時は、フィンドムを使った方がいいぜ!」
ちなみにフィンドムとは、指用のコンドームである。
ばっちりと記憶が残っている上に、恋のお相手であるキングにニッコニコでアドバイスまでされて、アミィと弥生はしばらくの間、互いどころかキョウリュウジャー全員に対して思いっきりぎくしゃくしたという……ある意味では、キャンデリラのもう一つの大戦果であった。
──ちなみに、被害者たちも全員元の鞘になんだかんだで戻っていったが、冒頭の姉妹だけは本当の恋人関係になったとか、何とか。
屋根が高い
2023-11-22 09:22:15 +0000 UTCソウシップ
2023-11-22 08:58:15 +0000 UTC