「──祝福はするけどさぁ、女同士で付き合うって意味がわからんし」
このご時世に逆行するかのような放言を、喫茶店で堂々と話しているのは三浦優美子である。彼女はよく言えばクラスの中心的人物、悪く言えば「お山の大将」なところがあり、自分の理解できないものに対しては非常に攻撃的・排他的になるタイプの人間だった。「祝福する」と言っている時点で、彼女にしては破格の譲歩である。
可愛がっていた由比ヶ浜結衣が、雪ノ下雪乃と付き合いだしたことに対して、別に不満も無ければ迷惑もかけられていないのだし、結衣はも雪乃も心から幸せそうなのだが……優美子はうっすらと不満であった。
聞かされている後輩、一色いろはの方は別に同性愛に偏見は無いが、理解がないのでは同様の為、愛想笑いで「そですねー」などと言っている。
「なんだっけ? 同性愛っていうのは、実際には自己愛の発露みたいなもんだって何処か聞いたことがあるような……自分より可愛かったり若かったりする相手と、自分の同一視を恋愛感情と勘違いするとか何とか」
「へえー、三浦先輩、学があるんですねー」
優美子は頭は下手に良いため、2000年代にはとっくに否定されている“病理”扱いであった頃の同性愛の分析の知識が頭にあり、特に結衣がそんなものに血道をあげていることに苛立っているらしい。
優美子といろはの共通の想い人、葉山隼人が最近落ち着きがない……これは彼の想い人である雪ノ下陽乃が、雪乃の第二婦人として娶られてしまったからなのだが……のもあって、二人は理由のない軽い苛立ちをずっと抱えた状態であり、かといって互いにぶつける程は性格も悪くない為、なんだかピリピリした空気だけを周囲に振りまいていた。
「ぱんぱかぱーん! おめでとうございまーす!」
「うわぁっ!? な、なに!?」
「ひゃっ……えっ、はぁっ!?」
いきなり横合いから聞こえた声に振り向いた二人は、しかし声の主を見た瞬間に凍り付いてしまった。
そこには、神々しさすら感じさせる美しさと、神聖ですらある清楚さを称えた、完璧な造形の金色の髪と純白の装束の美女が立っていたからだ。
優美子もいろはも、いわゆる「可愛いだけのクソ女」カテゴリに入る存在であり、自分たちのことを美人だと認識しているのだが、目の前の女神と言われれば信じてしまいそうな女は、そんな二人をちんちくりんのマスコットにしか見えなくしてしまうほど、圧倒的な美貌の持ち主だった。多分、容姿にコンプレックスのある者は冗談抜きで見ただけで死ぬと思われる。
「ぐっ、あふたぬーん、えぶりわん! あなた方は私こと、百合の女神リリーティアによって選別されました! あなた達の恋心、私が見事に叶えて差し上げましょう!」
「な、何の女神? 女神って……頭おかしいんじゃないの!?」
「い、いや、でも先輩、周囲見て下さいよ……」
これほどの美女が大声で胡乱なことを叫んでいるのに、周囲はまるでこちらに注目していない。先まで優美子といろはのキツい感じに目を逸らしていた風ではなく、本当に一切この女神を名乗る美女を認識していない感じなのだ。
しかも、リリーティアの体からは金色の後光が溢れ出しており、軽く地面から浮いてすらいる。
「ま、マジモンの女神ってこと……!? 恋心を叶えるって……」
「あ、あの、わたしたちの好きな人被ってるんで、同時に恋が叶うってことは無いと思うんですが……そ、その場合は、早い者勝ちだったり?」
「あ、こら、抜け駆けすんな!?」
「ご安心あれ! 今どき二人、三人は当たり前! 二人そろって、確実に幸せにしてみせましょう!」
醜い争奪戦が始まりかけたところで、痒いところに手が届くサービスまで口にして見せるリリーティア。
二人は争いをおっぱじめかけた恥ずかしさもあって、リリーティアが話を進めるがままになる。
「それでは、最終確認です! お二人とも、私が恋を叶えてもよいですよね?」
「ど、ど、どうしましょう、三浦先輩!?」
「何で迷うの、チャンスじゃん! あー、そっか、あんたはヒキオにも横恋慕してるから……」
「そ、そんなことありません! はい! わたし、賛同します!」
「あーしも、恋を叶えてよ!」
二人からの確認を、しっかりと聞き届けたリリーティアは、ふんっと鼻息を荒くする。
「お任せください! 女神としてはまだまだ新人ですが、私は理想に燃えております! よくわからない同性愛の良さを、しっかりと体験して理解していただこうと思います!」
「は……?」
同性愛という単語に、二人は顔を見合わせる。
オタク文化をどちらかと言えば馬鹿にしているギャル&ゆるふわビッチにとって、百合が同性愛を指す言葉というのは、理解の外であった。
「ちょっ、ちょっと待てし!? 同性愛とか聞いてないっ! それ、あーしと一色をくっつけるってこと!?」
「はい、確かに言質は取りました! 確認したので、私、問題ありません!」
「ま、待ってくださいよ! それよりも前に『わたしたちの好きな人被ってる』って伝えてあるじゃないですか! 詐欺です、こんなもんっ!」
苦しいところを突っ込んだはずのいろはだったが、リリーティアはにっこりとほほ笑んで答を返してくる。
「良いですか? 私たちの界隈において……『同じ男を取り合う』は百合です!」
「な、なによそれぇっ!」
「い、一色! 逃げるわよ! こいつやばっ……」
「本当なら百合空間へと隔離して、そこで幸福な未来を確定させてもよいのですが、お二人はあくまで体験版ということで……もっとも、百合の魔力から逃れられるとはお目ませんけど♥ リリィ・フラーッシュ!!」
女神から百合パワーが溢れ出し、真っ白な光が逃げようとしていた優美子といろはを捕え──。
──喫茶店の中、何事も無かったように優美子といろはがコーヒーを傾けている。
先までの出来事など無かったかのような様子だが、優美子はコーヒーを持つ手が軽く震えているし、いろはも矢鱈と自分の身だしなみを気にしている風でせわしない。
「しゅ、祝福はするけどさぁ、女同士で付き合うって……い、意味わかんないよね?」
「え!? あ、はぁ……そ、そうですか、ね?」
メチャクチャぎこちない風に、先までの会話をリフレインする優美子、いろは。
何故なら二人は、もう互いのことが宇宙で一番大好きになっているのである。
ちらっ、ちらっという優美子の「わかるでしょ? ね、わかるっしょ?」という視線を受け、奉仕部に入り浸った日々で勇気を培ったいろはが、一歩を何とか踏み出した。
「み、三浦、しぇんぱいっ!」
「ひゃ、ひゃいっ!」
「だ、だったら……実際に体験してみればいい……んじゃ、ないですかね……?」
汗をだらだらかいて、真っ赤になって行われる、いろはの提言。
優美子も精いっぱいの勇気を振り絞り、いろはの両手にそっと自分のそれを重ねると「ま、まあ、そういう趣味はないけど、お試しっていうか?」と、その提案を受け入れるのだった……。
※
「あっ、あっ、あっ♥ 三浦先輩……んんっ♥ あぁぁっ♥」
「はぁ、はぁ……な、なに、これぇ……♥ ふ、触れ合ってるだけで♥ 一色に、いろはに触ってるだけで♥ あ、あーしまで気持ちよくなって……お゛っ♥」
我慢できずにホテルになだれ込んだ二人は、シャワーを浴びる余裕もなく、服を脱ぎ散らかしながらベッドの上へと飛び込んだのだが、抱き合っているだけで気持ちが持ち上がってしまい、優美子は軽く達してしまった。
自分の太股に、大好きな先輩の愛液がぴゅっぴゅっとかかってくる状況……いろはの脳がカッと熱くなり、優美子の胸の合間に顔を突っ込んでぐりぐりと左右に動く。
「ひあぁぁぁぁっ♥ ちょっ、激しっ……急に、どうしっ……んあぁぁぁっ♥」
「急にじゃないですっ♥ ず、ずっとこうしてみたかったからぁ♥ ああ、三浦先輩の♥ 優美子さんの匂い好きっ♥ 甘くて、つんと刺激的でぇ……♥ わたし、優美子さんの赤ちゃんになりたいですぅぅっ♥」
「やぁぁっ……こ、こんなかわいい赤ちゃんデキたら、あーし変態になっちゃうよぉ……ぜ、絶対に我が子に手ぇ出しちゃうし♥」
いろはが優美子の乳房にしゃぶりつき、夢中で乳首を吸い上げる。
優美子はそれだけでも軽く仰け反って絶頂が止まらなくなりながら、いろはの秘所へとゆっくりと手を伸ばした。
「さ、触って、いい……? あーし、爪、手入れしてないから……痛かったら、言って欲しい……♥」
「い、いいですよぉ……♥ 優美子さんにだったら、少しくらいは痛くされてもいいんです……ううん、ちょっと痛い方がいいかも……♥」
「いろは……♥ こ、この小悪魔ぁっ……♥」
くちゅっ……と濡れた秘所に優美子の指が沈み込む。夢中になって乳房に吸い付いていたいろはが、少しだけ身を丸めて優美子の体にしがみついてきた。その顔は涎を口の端から垂らしたトロ顔で、女同士の快楽に……大好きな相手に触られる気持ちよさに、完全に溺れているのが分かる。
「せんぱっ……んんっ♥ もっと、触ってぇぇ……♥ んぁっ♥ あっ……指、もっと入るからぁ……♥ 優美子さんを、もっと深く感じたいんです……♥」
「で、でも、これ以上は……は、初めて、奪っちゃいそうだし……♥」
「……♥」
いろはがわざと腰をへこ♥ へこ♥ と前後に動かし、優美子の指で秘所の奥を刺激させようとする。
優美子も最初は慌てていたが、求められているのなら……と覚悟を決める。
けれど、ただ触れ合っているだけでもこんなに気持ちよくなってしまうのだ……いろはの処女を奪って、正気でいられるだろうか?
「あーし、多分おかしくなるから……気持ちよすぎて、馬鹿になるから……♥ 嫌だったら、殴ってでも止めてね……♥」
「そんなことしません……優美子さんにされるなら、なんでも受け入れますから♥」
いろはが手を伸ばして甘え、首に手を回して……抱き寄せられると同時に、ぶつんっ……と処女が奪われる。
「うあぁぁぁぁぁぁぁあぁっ♥」
「いひぃぃぃぃいぃぃぃぃっ♥」
二人の頭に、凄まじい快楽の衝撃が走り……それによって、体験版の解除が成された。
優美子もいろはも一瞬にして正気に戻り、「処女を捧げながらイキ狂っている」という状況に大混乱する。
「う、うわぁぁぁぁぁっ!? な、なによ、これぇぇぇっ! は、離れてっ! 離れろぉっ!」
「うあぁぁぁぁっ! ら、乱暴にしないでぇぇぇっ! け、怪我しちゃうぅぅぅっ!」
自分の指が、後輩の秘所にずっぷりと挿入されていることを改めて確認し、優美子は身動きがとれなくなる。
そうすると、いろはがその細い足を絡めるようにして、優美子の体を寄せてきた。
「ちょっ、何を……!」
「い、一回はイカないと、これ抜けないんですっ! き、気持ちよくしてください……責任取ってくださいぃ……!」
そう言って優美子の足の間にも、いろはの細い足が捻じ込まれ、膝で秘所を刺激されながら、優しく膣内を刺激する羽目になる。
「はぁ……はぁ……♥ も、もう……♥ どうして、こんな目にぃ……♥ んあっ……あはぁぁっ……♥」
「あっ、あっ……気持ち、よすぎるぅぅっ……♥ うぅぅっ……先輩、好きっ♥ 優美子さん、好きぃぃぃっ♥」
「ちょっ、何言いだしてっ……♥」
二人の体の相性が良すぎたのもあるのだろう、処女を奪った相手を好ましく感じてしまっているらしく、いろはが本気で愛を囁き出す。
そうなると、優美子もどんどん熱気と快楽に飲み込まれていき、膝が秘所にこすれて与えてくる刺激も手伝って、処女を奪った責任を取らなければと思い出す。身内には甘い優美子の一面が、今はいろはの保護へと向かっていた。
「あっ、あっ、あっ♥ イッて♥ 早く、イッってよぉ……♥ いい子だから♥ あーしも、いろはのこと好きだからぁあぁっ♥ 早く、イけぇぇぇっ♥」
「んはぁぁぁぁぁぁっ♥ 優美子さん、好きぃぃぃぃぃっ♥ あい、愛してっ……んんーっ♥」
二人が達するのは、ほぼ同時。
ずりゅっ……と優美子の指が抜かれると、ほんのりと先端が赤く染まり、どろっ……と粘度の高い愛液が噴き出した。
「はっ……はぁぁ……責任、取るから……♥ 一色は、なんの心配もしなくて、いいからね……♥」
「優美子先輩……いろはって呼んでください……♥ 告白も、してほしいです♥」
「ちょ、調子のんなしっ♥ ……いろは、好きだよ……あーしが責任取って、カノジョになるから……♥」
「うれしい……わたしも、今は優美子先輩が好きです……♥」
お試し体験だったはずが、完全に互いに心を奪われ、そのまま第二回戦を始める二人。
どこかで今日も、百合の女神の完全勝利の笑い声が響くのであった……。