──野座間友子の人生は、これまででもっとも充実していた。
自分が好きなものやファッションを受け止めてくれる理解のある仲間たち、やり甲斐と使命感に満ちた忙しい日々。
時おり危険な目に合うこともあるが、しかしこれまでの無機質な静寂の日々にはもう帰れない……そんな時間を仮面ライダー部は彼女に与えてくれる。
ゴス友達とは距離が出来てしまったが、それはそれで自分が選択した結果だと受け止め、その日も放課後になると友子は部室に向かおうと席を立ちかける。
「野座間さん、ちょっといい?」
「……なに、来田さん」
来田初夏、クラスメイト。
所属するグループが違うのでほとんど話をすることは無いが、しかし珍しく友子の中で顔と名前が一致するクラスメイトの一人だ。
初夏には入学してすぐの頃、クラスの用事で何か機材を運ぶ役割を二人でやらされた時に、急な雨に降られたせいで素顔を見られてしまった経験があった。
『野座間さん、その顔って……』
今は如月弦太朗や朔田流星のお陰で、多少は自己肯定感も高まってきたのだが、その頃はメイクをしていない顔を見られるのは絶対の禁忌だと思っていたので、奇声を上げてその場を逃げ出してしまった。
考えてみれば機材を初夏一人に運ばせることになったので、一言くらい謝っておいてもよかったかもだが、なんだかんだとタイミングを外している内に今日まで来てしまっている。
もしかして、そのことで遂に文句が爆発したのでは……そんなことも考えていた友子だが、初夏が口にしたのは意外な言葉だった。
「野座間さんたちって、復讐代行みたいなことしてたよね? 私、実はちょっと興味があってさ」
「あれは……代行、という訳では無くて……」
実際には、ゴスグループの復讐に同道しただけであり、別に依頼を受けて執行とかした訳ではない。その結末も、今となっては苦いものだ(ゾディアーツスイッチを川に投げてしまったことも含めて)。
初夏はごく普通の、下流でも無ければ上流でもなく、勉強一辺倒でもなければ運動に汗も流していない、本当に普通の学生だ。そんな彼女が復讐に興味があるなど……もしかしたらゾディアーツが関わっているかもしれない。
「あの、来田さん……復讐は、あんまりよくない……でも、話を聞くことは出来る、かも……」
不器用に絆を深めつつある流星の過去を知っている為、復讐を一概に否定することの出来ない友子だが、それでもクラスメイトが思い詰めているならと助け船を出す。かつての彼女の内向性を想えば、考えられないような行動だ。
しかし……それを聞いた初夏は何故か目つきが鋭くなり、髪で目線を隠すように顔を伏せて「そうなんだ……それも、朔田くんの入れ知恵?」と呟いてきた。
「入れ知恵、じゃない……というか、流星さんは関係ない……」
「関係、あるよ。野座間さんは孤高を貫く、美しい黒百合だったんだ……それなのに、仮面ライダー部とかいう連中と、朔田くんと出会ってどんどん野座間さんは私以外に可愛い顔を見せるようになった!」
「あの、来田さん? ちょっと……」
「朔田くんと話してる時の自分の顔、見たことある? 完全に雌の顔になってるよ……ああ、許せない! ユルセナイ! 裏切りだよ、これは……! 黒いメイクも最近はめっきり薄くなって……野座間さんは私のパートナーになって欲しかったのに!」
何故かいきなり熱烈な告白を受けたが、同性愛に関して一切の偏見のない友子は「あ、ありがとう、でも、ごめんなさい」とあまりにもあっさりとそれを断ってしまう。
初夏は思いっきり肩を震わせてみせたが……それが収まると、今度は不気味に笑い始めた。
「裏切り者の野座間さん……復讐に興味があるって言ったでしょう? あなたを孤高の黒百合に戻すことが、私の復讐……! 星に、願いを……!」
「──ゾディアーツスイッチ……!」
初夏が取り出した白いドームから赤いスイッチの飛び出しているそれ……人を星座をモチーフとする怪人“ゾディアーツ”へと変化させる、危険なアイテムが押される。
初夏の体はあっという間に黒い煙へと覆われて、その中に星占いも嗜む友子でも見たことのない星座の形が浮かんだ。
それも已む無いことで、初夏の体に浮かんだのは“ゆり座”……フランスの紋章から取られた、現在は使われていない星座である。
煙が収まった後……そこには百合の花弁を逆さにしたような、花の妖精めいた一見すると可憐な怪人の姿があり、しかしよく見てみると全身から百合の花が突き出すようにして生えているせいで、痛々しい印象を受けてしまう。
「た、大変……弦太朗さんか流星さんに、知らせて……」
「逃がす訳ないでしょ! さあ、復讐開始よ!」
「きゃあっ! うっ、ごほっ、ごほっ……!」
百合の花からスプレーのような勢いで花粉が噴き出し、友子の体を黄色い煙で覆う。
百合の花粉は落ちにくいことで知られているが、何故か制服や体にそれらは付着することはなく、友子はむせ返っている最中なのに、吸い込まれるようにしてその鼻腔や口の中に消えていった。
「ひゃっく……の、喉がイガイガする……へぇぇ……な、なに、これぇぇ……♥」
友子の顔はほんのりと赤く染まり、まるで発情してしまったように股間をすり合わせている。そんな友子の体を、しゅるしゅると百合の蔦が伸びて拘束した。
「きゃあっ……♥ ど、どうしてぇ……♥ ぞ、ゾディアーツに捕まってるのに……ゾクゾク、ドキドキする……♥」
「ふふふ、これが私の力なのよ♥ リリィ・ゾディアーツは女性を強制的にレズ化させ、発情させる……レズビアンのことを“百合”と評するけれど、私に与えられた力は正にそれよ♥」
「ほ、本来の逸話と、何の関係もない力や特徴が発現するなんて……あぁっ♥ や、やめてぇぇ……♥」
ゾディアーツになると、少なからず変身者の体は大柄に変化するのだが、リリィ・ゾディアーツのパーツは部位ごとには細いままであり、しなやかで繊細な指が友子の秘所を撫で回す。
触手は彼女の小ぶりながら形のいい胸へと巻き付き、きゅっ♥ きゅっ♥ と乳首を刺激して見せた。
「あっ、あっ、あっ……♥ や、やめてぇ……♥ いや、なのっ……嫌じゃなくなるのが、嫌なのぉ……♥」
「くすっ、レズ化はさせられるけれど、ピンポイントで自分に惚れさせられる訳じゃないのが問題よね、この能力も……けれど、こうして触手も使って全身気持ちよくして、何度も何度もイカせれば……♥ 自然と野座間さんも私に惚れこみ、仮面ライダー部なんかとは手を切るという訳よ♥ あなたは、私だけの黒百合であればいいの……♥」
「あぁぁっ……み、身勝手なこと言われてるのに、嬉しく感じちゃってる……♥ んぁっ……♥ キス、ダメぇ……♥」
首筋に吸いつかれ、友子は真っ白な喉を見せつけるようにして弓なりに体を逸らせ、リリィ・ゾディアーツ……初夏のテンションを高めていく。
彼女はずりゅ、ずりゅと股の間に触手を通すと、何度も前後させて友子の秘所を刺激した。
「あはぁぁっ……♥ こ、こんなの……こん、なのぉぉっ……♥」
「抵抗は無駄よ、野座間さん……いいえ、こうやって抵抗すればするほど、私の野座間さんが男に毒されたんだと怒りが込みあがって来るわ! ほーら、追加の花粉をあげる♥ 快楽に狂って馬鹿になっちゃいなさい♥」
「おほっ……けほっ、けほっ……あぁぁっ……♥ か、体が、熱いぃっ……♥」
リリィ・ゾディアーツからの愛撫は繊細で、怪人に蹂躙されているとは意識できなくなりそうなほどだった。これもまた、失われてしまった“ゆり座”の加護なのだろうか。
本来は決して強いとは言えないリリィ・ゾディアーツだったが、友子へ向ける執着が、彼女の力を何倍にも増幅して見せている。
「ほらほら、もう我慢できないでしょう? 体の奥から熱くなって♥ 私が欲しくなってきたでしょう、野座間さん♥ あなたが孤高の黒百合、私はただ一輪それに寄り添うの……♥」
「うぅ、くぅぅっ……♥ も、もう、寂しいのは……♥」
「えい、強情ね♥ それなら先に初めてを奪ってしまいましょう♥ さあ、私を初めてのオンナとして認識しなさい♥」
「あぁぁぁぁぁっ♥ んっ、くあぁぁぁぁっ♥」
友子の体を貫く触手……全身を百合の花粉が与える催淫効果で弛緩させられているので、痛みはほとんど感じられない。
熱く火照っていた体の中をぐちゅっ♥ ぐちゅっ♥ と掻き混ぜられ、友子は仰け反りながら絶頂を繰り返す。
女同士の快楽を仕込まれ、耳元でリリィ・ゾディアーツが囁く。
「さあ、野座間さん……♥ あなたが好きなのは誰♥ その口で、ちゃんと言葉にしてちょうだい……♥ もう、私しか見えないでしょう♥ 私が居れば、仮面ライダー部なんていらないでしょう♥」
「うあぁぁ……あんっ♥ あはぁぁっ……♥ わ、私が……私が、好き……なのはぁぁ……♥」
甘く震える声で、友子が何かを口に仕掛けた……その時だ。
《──メテオ、、ゴー、レディ?》
《メテオ、リミットブレイク!》
「ホワチャアァァァァァァッ!」
「なっ……へぐぅぅぅぅぅっ!?」
猛烈な勢いで放たれた飛び蹴りによって、リリィ・ゾディアーツが吹き飛ばされる。
ごろごろと転がるリリィ・ゾディアーツに対し、触手の支えを失った友子の体が崩れ落ち……それをブルーメタルの装甲の戦士が抱きかかえた。
「りゅ、流星さん……メテオ……」
「喋らなくていい。すぐにメディカルスイッチのある部室に連れていく」
「お、おのれぇ! 仮面ライダァァァァァァァッ!」
乱入者に対して怒り狂い、大量の花粉を撒き散らすリリィ・ゾディアーツだったが、それはあくまで女性を同性愛者にする者でしかない。変身者が朔田流星……男性である彼には、何の影響も与えられなかった。
残された攻撃手段である蔦で締め上げようとするリリィ・ゾディアーツだったが、今のメテオは怒りに燃えており、生半可な攻撃では止められない。
「お前の運命は、俺が決める……!」
《Mars Ready?》 《OK Mars!》
メテオの武装である手甲・メテオギャラクシーが800度の超高温を発生させ、リリィ・ゾディアーツの体に叩き込まれる。
花粉や蔦など、植物としての百合の特徴を反映し過ぎたリリィ・ゾディアーツは、高温にも弱くなっていた。
「あつっ、あつっ、熱いぃぃぃぃぃぃぃぃっ! ぎゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」
全身を焼かれて弱り切ったところに、二度目の飛び蹴りが叩き込まれる。
ゾディアーツスイッチがリミットブレイクされ、まるで髪で作った手裏剣のように、初夏の体が吹き飛ばされるのであった……。
※
「うぅ~……結局、あの二人の関係を深める噛ませ犬、いや噛ませ花にしかなれなかった……」
変身解除とその際のダメージの影響で、初夏は病院に入院する羽目になっていた。
幸いにも放課後の教室が舞台だったので、初夏がゾディアーツ化したことは周囲には知られなかったが、授業期間なのでほとんどお見舞いに来てくれるものはいない。
「……来田さん」
「え、え!? の、野座間さん、どうして……!?」
しかし、そんな風にくさくさしているところに顔を出したのは、ゴスロリファッションに身を包んだ友子であった。
彼女はお見舞いだろうか、果物の包みを持っている。
「はっ!? まさかリリィ・ゾディアーツの力が残っていて、それで野座間さんを操って……!」
「あやつられて無いです……いろいろされたけれど、あなたが暴走してしまったのは、私の行動のせいもあったから……それに、好きになってくれたことは、純粋にうれしい……私を、受け入れてくれたってことで」
「うぐっ……」
そう言えば、メイクを落とした顔に惚れたことを初夏は口にしていなかった。
なんならメイクが薄くなっていることに文句を付けていたので、まるで友子が明るくなっていくのを妬んで、平素の友子に好感を抱いているように聞こえたかも知れない。
「(ま、まあ、いいか……)」
リンゴの皮を剥いてくれる友子の姿に、初夏は役得を感じるのであった。
「……ところで野座間さん、このあちこちで削られまくったウサギりんごちゃんは……?」
「おまじないのウサギよ……早くよくなるようにって」
「(個性的!)」
今回の攻め役
※来田初夏(らいた ういか)
・天ノ川学園高校2年C組の生徒。野座間友子とJK(神宮海蔵)のクラスメイト。“ゆり座”のゾディアーツ、リリィ・ゾディアーツのスイッチャー。
・特にどこの層に属しているという訳でもない普通の女子生徒だと思われていたが、本編の百合描写やねちっこい物言いを考えると、恐らくは隠れ百合ギーグだったと思わしい。
・名前の由来はショッカーライダーであり、実は最初期案では仮面ライダー部に入部して友子へ恋をした後、流星が正式に仮面ライダー部に受け入れられてから嫉妬でゾディアーツサイドへ行ってしまう、裏切りキャラとして設定されていたことから。JKと友子が同じクラスなのはこの脚本の名残で、JKとも絡む予定だったらしい。
・しかし、友情をテーマにしているフォーゼの作風でコズミックスイッチ登場後に裏切り者を出すのは違和感があることに加え、同性愛者を裏切り者ポジションにしてしまうと色々面倒くさいということで、一話限りのゲスト敵となった。出番を考えると、よかったのやら悪かったのやら。
・一部では謎のヤン百合人気があり、友子を中心にフォーゼヒロインをレズ堕ちさせる特殊な二次創作で引っ張りだこだったりする。なお、書き手が暴走した小説版では御覧の通り友子の処女を奪うシーンがあるが、当然テレビではボカされた描写になっている。
・『MOVIE大戦アルティメイタム』では、何故か白川芽以と付き合っている描写があり、流星と友子それぞれにフラれた者同士がくっついた形になる。製作スタッフによれば「後半で本来は流星がハッキリと芽以より友子を選ぶエピソードがあり、そこで出番がある予定だったが、タチバナ関係で展開が立て込んだので最終話の流星のセリフのみになった」という背景があるらしい。
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