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二人花魁捩じれ心中の怪~上鳥徒花は負華を厭う

『──くだらない、くだらない……殺伐たる感情は、そこに至るまでの葛藤と、それ以前の温かなる記憶との剥離があってこそ……殺意にまで、憎悪にまで至ってしまっては、私の好みでは、無い』


 油の匂いが立ち込める遊郭の廊下、追い落とされた上に病に罹患した弟切花魁と、彼女に世話になりながら裏切った紅花魁。

 二人の女が今、炎を以て互いの因縁を精算しようとしていた時、突如として……その場には居ないはずの“何か”の声が聞こえた。

 周囲には他の花魁も、花魁付きの新造も、忘八の衆の類も居ない。ただ、二人の激怒憎悪に満ちた女がいるはずなのに……若々しく瑞々しい、少女の声がした。

 悪意に呑まれて思考が狂ってしまっているが、本来は貧しい家族の為にその身を売りに出すほど慈悲深い弟切花魁である。年若い少女のものと思わしい声に、思わず憎き紅花魁を焼き払わんとする手を止めてしまう。

 対する紅は油まみれの体を抱き、希望が見えたと声を張り上げた。


「誰でもいい! た、助けておくれぇっ! この醜い女を、どこかにやっちまっておくれよぉっ!」


 弟切に世話になりながら、浅はかな嫉妬で彼女を追い落とした紅は、それが弟切の逆鱗であると分かっていながら、殊更に目前の女を醜いと罵倒し、己を助けよと身勝手に吠える。

 一度は少女の声に殺意を抑えた弟切も、その目に狂熱を再び取り戻し──直後、爆ぜた。

 紅の、頭がである。

 「ぶぎゅぴっ」と家畜のような声を上げて、左右から何かに押しつぶされたように、首から上が吹き飛ぶ。

 それを呆然と見つめる弟切の体に、突如として強烈な“圧”がかかった。


「あがっ……げぺっ……」

『殺業は私が背負ってやろう……本来の美しさを、取り戻すがいい』


 全身に瘤が出来て苦しむという、心身両方を蝕む病。

 それに犯されきった弟切の痩せ切った体が浮かび上がり、めきめきめきと空中で“絞られる”。

 穴という穴から鮮血を噴き出して、体がらせん状にねじくれた状態で廊下に投げ落とされた亡骸であったが……瘤も出血の勢いですべて破裂したからか、その死に顔は何処か生前の美しさを取り戻しているようにも見えた。

 ──弟切花魁と紅花魁の怪死は長く怪談として語り継がれ、後に怨霊をある理由から“集めて”いる少女の目にも遊郭跡が止まったが、そこには何の霊の気配もないということで、早々に見限られたということだ。



「──この、姿は……?」


 弟切は、己の姿を顧みて驚いていた。

 瘤が無い。自分の体を襲い、その美しかった肌を覆っていた病の証が、何処にも見当たらない。

 場所は最後の記憶で立っていた、遊郭の廊下ではなくなっており、どこかの河原のようだ。

 水は何処までも澄んで美しいが、空の色が……まるで夕暮れに毒を溶かしたかのような異常な色合いであり、それを反射しているせいで、川まで不気味な色合いとなっている。

 恐る恐ると、弟切は川面を覗く。そこには花魁時代と違い、粗末な服にこそ戻っていたが、人を救うほどの価値を秘めた美貌が、全盛期そのままに取り戻されていた。


「あっ……あ゛ぁぁぁっ……お゛っ……お゛ぉっ……」


 しばらくは取り戻された己の美貌に感銘し、何度も川面を覗いていた弟切であったが、それも長くは続かない。

 憎い、憎い、あの女。自身が身請けされる直前で、酒に毒を混ぜた己の不幸の元凶、紅の声がしたからだ。

 どこだ、どこにいる。この美しい両の腕で縊り殺してくれる……!

 暗い情熱のままに見渡す弟切の視界に……二人の女が飛び込んできた。


「あ゛おぉぉぉぉぉっ♥ すごっ、すご、ひぃぃぃぃっ……♥ こんなの、こんなの知ったらぁっ♥ 男との、雄とのまぐわいになんて、戻れなくなるぅぅぅぅっ♥」


 紅もまた、美しさはそのままに、弟切と出会ったばかりの頃、野暮ったかった見た目に戻っているかのように、弟切の目には映る。 

 そんな憎悪の対象が……同じ女に、激しく背後から突きあげられ、ぶじゅぶじゅと結合部からは白い泡が立っていた。

 張り型の類ではない……両性具有。遊郭でも時おり見かける、あまりにも「同性を堕とす」のに、特化した性。

 色素の抜けた灰色の髪は、かつては銀に近い色合いだったのだろうか。容姿は整って……整いすぎているほどだが、目の奥には爛と得体の知れぬ燐光が宿っており、この美しい女は人ではないと、本能的に悟らせてくる。


『人の世は苦界、そこで行われるやり取り、感情の往復、それらには意味があるが……しかし憎悪だの殺意だの怨念だのは好かん。そんなもの無くても人は死ぬのに、最後を彩る上であまりにも不要な“黒”よ。私がそんなものは持っていく……お前たちはただ、美しく死んだ後もあればよい』

「死んだ……私が?」

「おへぇぇぇぇぇっ♥ いっ、くぅぅぅぅっ……♥」


 紅の中に、白いものが注がれる。

 それは生命の証、命を繋ぐものであるはずで……死んでいるというのなら、注がれた物は何で、今行っていることは何なのか。

 そんな疑問に答えてやろうというのか、紅の膣から肉竿を引き出し、弟切と向き合った女は、あまりにも女を狂わせる美貌を笑みの形に歪めて見せる。


『お前たちは、私の囚われたのさ。私はお前たちが“おばけ”と呼ぶ類の存在だよ…おばけなんぞ箱根の向こうだと、花魁のお前は馬鹿にするかね? 愚弄したところで、私は……上鳥徒花はここに在るけどね』


 徒花という、およそ人の名に相応しくない名称を名乗りながら、女は髪と肉棒を揺らす。

 弟切は身請け寸前まで行った相手に、醜女だと罵倒されるまで殴りつけられたばかりであり、男に対しては薄暗い憎悪のような感情があったが、同性を魅了することに関しては美男を遥かに上回ると言われる両性具有を前に、死したはずの肉体が熱く疼くのが分かった。

 先に紅をハメ潰しているのもあり、この女に……自分の人生を狂わせた相手に負けたくないと、そんな想いが沸き上がる。

 家族への仕送りと花魁にまで上り詰めた誇りも、目の前の肉竿の持ち主の魅力の前では無意味。自らを殺害した相手であることすら、制止の鐘になり得ない。

 気付けば弟切はその場で跪き、その豊かな胸を服からまろび出すと、肉竿を挟んで静かに奉仕を始めた。

 熱を孕む肉竿は、憎い女の愛液でぬれそぼり、その痕跡を消すように舌を這わせ、すすり上げる。

 徒花はそんな弟切の髪をしばらく撫でていたが、やがて口元に意地悪い笑みを浮かべ、喉奥まで肉竿を突っ込んでくる。


「おごおぉぉっっ♥ お゛っ♥ お゛ほぉぉっ♥」


 まるで物のように喉奥を使われ、じゅこじゅこ出し入れを繰り返し、喉に苦い液が広がっていく。

 如何に花魁などと言っても遊郭という場所自体が“そういう”行為の溢れる場所であり、それなりの辛酸も舐めてきたが……一見すると乱暴なこの扱いは、弟切にとっては苦しいものではなく、むしろ秘所が何度も愛液を噴き出し、使用されることの喜びを堪能していた。


「んぢゅっ……れろぉっ……♥ はぁ、はぁ……も、もう、我慢が出来ないよ……あたしの体を使っておくれぇ……♥ あ、あんたの好きなように、抱き潰しておくれよぉ……♥」

『弟切花魁ともあろうものが、下賤な亡霊風情に腰を振っていいのかな?』

「あ、あんたは下賤なんかじゃあ、ない♥ あたしは、自分の意思で……あんたに、この命を売るんだよぉ……♥ お゛っ♥ お゛ほぉぉぉぉぉぉっ♥」


 弟切花魁の太ももを抱え込むようにして体を間近に寄せられ、徒花はきっちりと己の肉竿を最奥まで挿入して見せると、ぱんぱんと激しく腰をぶつけ合わせる。

 これまで、体を売ることで半生近く過ごしてきた弟切をして、徒花との行為はあまりにも甘美。他の男たちとの愛情ごっことは、比べ物にならないほどのとろけるような快感が、下腹部から全身に広がっていく。

 憎悪や恨み、狂気の念が薄れていく。快楽によって全てが純化され、弟切の魂の形がより“女”として洗練されていく。

 大量の精液……徒花も死せる者ならば、それが精液と呼べるものなのかは怪しいが……を注ぎ込まれ、完璧に徒花の女へと堕とされ……過酷な人生が、完璧な反転を遂げたのを感じた。


「あぁぁぁ……♥ なんて、いとおしい……♥ ずっとあたしといておくれ、あんたぁぁ……♥」


 花魁の身でありながら……死した今、既にその地位に意味など無いのだが……徒花に甘え、所有して欲しいと甘えて見せる弟切。

 しかし、ここで先にハメつぶされていた紅が目を覚まし……もう死んでいるのに目を覚ますというのも奇妙な感覚だが……二人は徒花を巡って激しくにらみ合った。


「弟切花魁! また私の邪魔をする気か! あんたはいつも、あたしの進路に立ちはだかる!」

「黙りなよ、紅! 死んでからはもう、あんたに遠慮する必要もない! ここで二度殺してやるよ!」


 殺し合いを今にも始めようとする弟切と紅であったが、徒花が『そういうのはいらない』と指を鳴らす。


「ほへぇぇぇぇぇぇぇっ♥」

「あ゛っ♥ あ゛ぁぁっ♥ あ゛ぁぁぁ~っ♥」


 二人の意識は一瞬にして強い力で改変され……最初の関係。紅が慕い、弟切が世話を見た、あの日の光景にまで立ち戻る。

 いや、それよりも少しだけ……進展した関係か。


「弟切の姐さぁん……♥ お、オイラ、本当は姐さんに構ってもらいたかっただけなんだよぉぉ……♥ 好き、好きぃぃっ♥」

「ああ、わかっているよぉ、可愛い妹分……♥ 喋り方が元に戻っているじゃないかぁ、しょうのない……はむっ、んちゅっ……♥」


 愛し気に唇を交わし、体を押し付けあう二人の花魁の目からは完全に憎悪や恨みは消え去り、あるのはただただ熱い思慕と連帯だけ。

 二人は幸福に満ちた口づけを交わし、乳首をこすり合わせて腰をヘコつかせながら、互いの精液を噴き出している秘所を開け合い、徒花に甘えてみせるのだった……。




今回の攻め役

※上鳥徒花(うえとり あだばな)

・亡霊。一般的な区分としては悪霊や怨霊に分類されるべきなのだが、この世に未練を残す亡魂であり、身勝手な理由で人を殺傷する存在でありながら、憎悪や恨み、怒りなどを否定する謎めいた霊的実体。

・このままでは怨霊化するという美女の死の寸前に訪れ、その場の存在を殺しつくしてから、霊体にして両性具有で可愛がり、怨念や生前の悔いを晴らすという、善行か悪行か判断の尽かぬ行いを繰り返す。

・怨霊発生の阻止という点では抑止力側だが、この世の存在では無いのに殺人を行っているという点では法理の破壊者である。

・一応、どれだけ股間に来る相手であろうと①死の間際である②死後に怨霊化(それも強力なもの)する可能性が高い③悲劇的な出自であると主にこの三つの条件を満たさない限りは人を殺めない為、文字通りの“おばけ”……妖怪の類なのかもしれない。

二人花魁捩じれ心中の怪~上鳥徒花は負華を厭う

Comments

リクエストありがとうございました! ダークギャザリングは、まだ企画時代に初めてレズ堕ち書いた作品だったので、とても感慨深く書けました!

屋根が高い

前リクエスト消化前にリクエストしてしまったのに引き受けていただきありがとうございます。 今回もエロかったです。この二人がレズ堕ちしたらエロいだろうなって思ってたので見れてとても嬉しいです。それも含めてありがとうございました。


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