没作品
Added 2020-08-22 08:15:06 +0000 UTC三宅翔太、高校2年生、身長181㎝、体重66kg。 長身で少し童顔であったが、整った可愛らしい顔つきから男女共にモテた。 大人しい性格であるためイケイケグループでつるむ事はなかったが、彼の周りには常に人がいてみんなからは翔ちゃんと呼ばれて平和な人生を過ごしてきた。 「なんか今日は疲れた……」 体がふらつく。 「おいおい翔ちゃん!大丈夫か!? こっちに倒れないでくれよ!?」 身長が低めの友達が冗談交じりに心配する。 確かに大きな体で倒れ込まれたら大変だ。 「今日はもう帰るね」 「おう、気をつけろよ」 そう言うと翔太は学校を出て歩き始めた。 こんな感覚は今までにない。 なんだか頭が痛いような、目眩がするような……そう思っていると目眩がどんどんと強くなってきた。 これは歩けない。 翔太はたまたま通りかかった公園のベンチに寝転がり、休息を取った。 そして、いつの間にか眠っていた。 突然太陽の日差しを感じて目が覚めた。 少し肌寒いような感覚。 目眩はもう治った様だ。 「んー……寝ちゃったのか……」 少しうとうとしながら手で目をこすり、辺りを見渡した。 「あれ?」 見たことのない景色。 そして、妙に涼しい。 直接肌に風が当たるような…… 「え!?」 思わず声が漏れてしまった。 自分の胸、自分の腹、自分の陰茎、自分の足全てが見える…… つまり翔太は全裸であった。 翔太は慌てて立ち上がり、もう一度辺りを見回した。 緑色の絨毯が広がっている。 太陽が出ている事から外であることには間違いはないだろうが、やはり見たとこのない景色であった。 「あのーすみまs」 誰かを呼ぼうと声を出したが、ハッと思って咄嗟に口を塞いだ。 自分は今全裸である。 安心して貰えない。 履いてないのだから…… 人の助けを借りるということは即ち刑務所行きが決定するのだ。 翔太はおもむろに左手で自分の逸物を隠し、今一度周りを確認する。 何かで見たことのあるような景色のような…… (あ!) テレビで見たことがあった。 ヘリコプターから映し出される自然の景色。 それが今見てるものとクリソツであった。 よく見ると地面に広がる緑の絨毯は小さな木の集合体。 足元には翔太の足で踏み潰された木片が散らばっていた。 (へえ。 凄く細かく作られたパノラマだなぁ) 翔太は精密に作られたそのパノラマの一部を踏み壊してしまった罪悪感を覚えつつ、その足首辺りまである木のミニチュアの綺麗さに感心した。 しかし、次に困った事になっていた事に気が付いた。 どういうわけか、自分が寝ていた事で壊れている場所以外は360度全て美しいパノラマなのだ。 ここまでどうやって来たのだろうか。 状況に脳が追いついてはくれない。 全裸である以上時間もあまりかけられない。 少し先に足のサイズが28.5㎝の翔太の両足を入れても余裕がある位の広さの木が生えてない草原があった。 仕方がない…… 「ごめんなさい」 翔太はそう一言呟くと、草原の方向にパノラマ内を数歩歩いてみた。 地面はまるで新雪の上であるようなくらいふかふかで柔らかく足に体重をかけると陥没し、その上の木も足の裏に触れた瞬間に簡単に壊れてしまった。 翔太の体は草原内におさまり、もう一度辺りを見回す。 数歩歩いては見たものの、どこにも出口が見当たらなくては出ようがない。 水平線はくっきりと見え、心なしかいつもよりも丸く見えた。 (どこまでこのパノラマは広がっているんだ……) 翔太は途方にくれた。 こんなに広いパノラマを見るのは初めてだった。 (どこなんだここは…… どうやって来たんだ…… なんなんだここは……) 様々な思いが翔太の脳内を巡り巡る。 (昨日は確かに公園まで歩いて、そこのベンチで休んだはず……それでその後……) 翔太は腕を組んで悩み続けた。 しかし答えなど見つかるわけはなかった。 「ふー……」 深くため息をついて顔を上げる。 青く澄み渡った空。 翔太はゆっくりと足の置き場を変えながらその場で一周回り、景色を見渡す。やはり呆れる程に美しい景観である。翔太が踏み荒らした所以外は。 「どうすれば良いんだよ……」 思わず声が漏れる。 「うてー!」タタタタタターン 突如、かすかに聞こえた人の声。 全裸の翔太は本能的にしゃがみ込み、小さく丸まるように身を隠した。 もっとも、翔太の身体を隠せるような物は何もないが。 「…………」 顔を上げて様子を伺う。 (誰もいない……?) 翔太は首を傾げつつ、耳をすませた。 「うてー!」タタタタタターン (やっぱり人がいる! しかもその後小さな破裂音までしっかりと聞こえた。 遠くで自衛隊の訓練でもしているのだろうか。 いや、しかしそれにしては妙に下の方から声が聞こえたな……) そう思った翔太は何気なく足元に目を落とした。 そこには…… 何千ものアリの大群が足の周りに群がっていた。 「うわぁ!!!」 翔太は足元にわさわさと這うアリの大群の気持ち悪さに思わず絶叫し、尻餅をつき後ろに手をつき股を開いて足を高く上げた。 お尻をついた柔らかい地面は大きく陥没した。もはや変態のポーズであるがそれどころではない。 「おのれぇ!化け物め!!怯むな!!全弾うてえ!!」タタタタタターン 破裂音と共にアリの大群から胡麻のような物が飛び交った。 「え!?」 何かが違う。 「え!?」 喋るアリ? 「ん!?」 アリじゃない? 「ちょ……」 翔太は大きく上げている股の間から必死に目を凝らして見る。 足は2本。 2本の手の様な物も見える。 これは……紛れもない人の形をした生物であった。 翔太は起き上がり翔太の体重で粉砕する周りの木々を気にもとめずに四つん這いになって地面に這うその生物をよく観察した。 体長は5mm程度。 翔太の爪よりも小さく、頭なんかは胡麻くらいの大きさで表情までは分からなかったが、服を着たそれらは大きさが極端に小さい事を除き、翔太と同じ人間であった。 翔太の心拍数が上がる。 大発見ではないか。 「こ、言葉話せるの?」 緊張からか声が震える。 「確実に殺せ!!なんとしてもだ!!!」 小人の軍団の1cmほどの馬の様なものに跨った1番偉そうな人がそう叫んでいる。 小さ過ぎる故に表情が見れないが、翔太への殺意がビンビンと感じた。 「ちょちょっと、なんでそうなるの!?」 小人の気迫に少し慌てて顔を遠ざけた。 「何を吐かすか!我が同志を虐殺し。それを惚けると言うか!!」 小人の長の怒りは半端ではないようだ。 虐殺とはなんのことだろうか。 「こんな無残な死を遂げた同志の恨み!!殺しても殺したりぬわ!!!」 翔太は小人の長の指差す方向に目をやった。 少し前までは美しかった草原が今では翔太の足跡でボコボコになり、土肌となっていた。 「我々の同志を踏み潰した恨みとくと味わえ!!」 この小人の長の言葉に翔太は察し、足跡をもう一度注視し理解した。 土以外に異物がある。 何かについては容易に想像がついた。もはや原型など残ってはいないが砕け散った何百という肉片と骨片であった。 翔太は急いで足の裏を確認する。 茶色くこびりついた土に混じってどす赤黒いシミ。 肉の欠片もこびりついている。 翔太の予想は確信へと変わった。 今度は尻餅をついて出来た2つのクレーターを覗き込んだ 。 千はあろうかという肉片。 ちょうど尻の割れ目の部分にあたった地面では運が良いのか悪いのか、翔太の体重がちゃんと乗らなかったために、完全には潰れずに悶え苦しみながらも生き残っていた小人も何人かいた。 「ご、ごめん」 反射的に言葉が出る。 「ごめんで済む問題か!!??」 いやいや、小人の言うことは正論でしかない。 人を殺されてごめんで許せる人などいない。 しかし、突然の出来事過ぎて翔太には殺した実感がなかった。 「ごめん。 殺す気はなかったんだ……ただ周りを見てて……」 「それで貴様は、生前誰であったのか、そもそも人間だったのかさえ分からないくらいにぐしゃぐしゃに潰された我が同志にどう償う?」 「それは……」 「死んで償え!!!」 こう言われると言葉が出ない。 人間は皆気づかないうちに道端のアリを踏み潰しているものだ。 そして、踏み潰したことに気が付いたとしても陳謝する事はない。 突然アリが日本語を話せるようになったとしても、踏み潰した事に心から陳謝出来る人間はそういないだろう。 ましてや自ら命を断つことなんて出来るだろうか? 翔太のそれはそういうことだ。 しかし強気な小人である。 小人の身長は約5mm。 翔太の身長は小人の約360倍もあり、某巨人漫画で例えるなら、翔太は小人にとっては600メートル級の超大型巨人と言うことになるのだ。 そんなに巨大な生物を前にして積極的に戦えるとは勇敢だ。 普通なら真っ先に逃げてしまうような気がするが…… とにかくせっかくここの情報が手に入る可能性のあるものにであったのだ。 ここはなんとしてでも小人の怒りをなだめる必要がある。 小人をよく見ると鎧を着て、先ほど飛ばした胡麻のようなものは大砲であろう。 中世ヨーロッパの雰囲気を感じる。 「なんでも働きますし、抵抗もしません。 絶対に従いますから。 生きて償いたいのです」 翔太はさりげなく死なない事を言いつつ必死に説得を試みた。 「なんでもか?」 「はい、なんでも……」 はたから見るとアリに頭を下げている様な奇妙な感じになってはいるが、翔太は必死だった。 小人の長はニヤリと笑みを浮かべると兵士に指示を始めた。 「この巨人を我々の国まで拘引する。 二心を起こさせぬよう全員で行う!」 そして、翔太のほうを振り向いて叫んだ。 「貴様は立て! 貴様を我々が取り囲むようにして連れて行く」 翔太は頷くと言われた通りに小人を踏まない位置で立ち上がった。 二千はいるだろうか。大量の小人が翔太の足元1cmくらい空けて集まりだす。 翔太の足元に20cmほどの太さの小人の輪が完成した。 やはり大量の小さな生物がわらわらと集まっていると気持ちが悪い。 翔太はどうして良いか分からずにいた。 小人達がそれぞれの足を取り囲んでいるが、連れて行くと言うのはどういうことか。 「早く歩け!!」 翔太が戸惑っていると小人の長が怒鳴り散らした。 「ええ……どうやって?」 この小人の輪を跨げば良いのか?そう思い翔太は右足を持ち上げて前に進めた。 「うわああああ!!」 翔太の右足の通り道の下にいた小人達は踏み潰されるのかと思いパニックを起こした。しかし、それがまずかった。踏み潰されんと飛び出した小人数人が翔太が足を踏み降ろそうとした方向に走り出していた。 「おっと!」 翔太はとっさに足の置き場を変えようとしが…… グシャッ! なんとも運が悪かった。 翔太は既に体重移動がされていたために、足の置き場を大きく変えることが出来なかった。 それ故に逃げ足が早かった小人数人を下敷きにしてしまったのだ。 翔太は思わず右足を持ち上げて足の裏を見る。 足の踵付近には見るも無惨なシミがこびりついていた。 「貴様ぁ! やはり我々が気を許した隙に!!!」 「い、いや、そんなつもりは……」 一瞬の不注意で何人もの人間を殺してしまった。 あまりにもひ弱な小人。 翔太はあわあわと手を振った。 「ごめんなさい…… 俺どうすれば良いの?」 「くそ! 化け物め…… 貴様は我々の包囲内を進め! 次にこの包囲から逃げようと試みた時! 我々は貴様を処刑する!!」 「わ、分かった」 小人は再び翔太の足の周りにわらわらと集まり、輪を作った。 「それでは行くぞ。 進め!」 小人の輪は翔太の爪先の先1.5cm程まで進んだ。 「早く貴様は前に進め!」 「え!? 進むの!?」 「当たり前だろうが!! 貴様が進まないと進めないだろう!!!」 「わかったよ」 翔太がすり足のように慎重に5mmほど足を前にズラすと、再び小人達が進み始める。 (こ、これをずっと続けるの!?) その場で足踏みでもしているのかというくらいにしか進んでいない。 たった一歩の距離に何十分かけているのか。 しかも、前に進み過ぎて潰してしまわないように神経を使ってのこの作業。 2時間も歩いて行くうちに疲れてきてしまった。 「あの……この辺で休憩を……」 「なんだと!? そんな事をしていたら日が暮れてしまう。 この先の山を越えたら我々の国に着く。 それまで休憩はなしだ」 翔太は顔を上げて前を向いた。 ずっと下を見続けてたから気が付かなかったけど、確かに次の山の向こうに城のような物が見えた。 (普通に歩けば数分の距離なのに……) ふうっと大きなため息をつき、再びほぼその場での足踏み作業を開始した。 気付けば太陽も沈み始めている。 これ以上暗くなってしまったら小人たちの姿を確認出来なくなってしまうが…… 「よし! 着いたぞ! 貴様はそこで待っていろ!! 私が国王と話をしてくる」 (やっと着いた…… もう足が痛い…… 座りたい……) もう足元の様子が立った状態からではよく見えなくなっていた。 (むやみに動いたらまた小人を踏んづけちゃうかもしれない…… でも、結構暗くなってきたし、ゆっくりとしゃがめば気がつかれないかな?) そう思った翔太は足の置き場を変えないようにしながら腰をゆっくりと下ろし始めた。 その時 「きゃああああああ!!!!」 巨大な物体が降ってきたと翔太のお尻の下で突如パニックが起こってしまった。 (あちゃー、バレちゃったか…… 怖がらせる気はなかったんだけどな……) バレたものは仕方がない。 おそらく後でお咎めがあるだろうが、とりあえずお尻の下にいる人たちはお尻の下から逃げてくれるだろう。 それならしゃがむのではなく、座る事が出来る。 翔太は注意深くお尻の下の地面の様子を注視し、小人がいない事を確認してからお尻を地面につけた。 「ふう……はあ……」 一気に力が抜ける。 ここにきてようやく息をつくことが出来たのだ。 本当は足を伸ばしたいが、今はまだこれで我慢しよう。 一息つくと、色々な事が頭の中をよぎった。 (ここに来たのはなぜだろう? ここはどこなのだろう? なぜここの人達はこんなに小さいのだろう? それとも俺が大きくなっちゃったのかな? 小人さん達には悪い事をしちゃったな…… 悲しんでる人達も大勢いるかもしれない…… 俺は元の所に戻れるのかな? これって本当に夢じゃないのかな? もうわけがわからないよ……) 翔太は頭を抱える。 常識では考えられない。 こんな小人の世界なんて聞いたことがない。 (けど、とりあえずお話出来る人と出会えて良かった。) ぐぅー 安心したら急にお腹が空いてきた。 (そう言えば、ずっと何も食べてないなぁ…… ん?) 視線を感じる。 それも沢山の。 翔太は地面を見下ろした。 大量の小人が翔太の身体を取り囲む様にして観察している。 それは翔太の陽物の周りにも…… 翔太は自分が全裸である事を思い出した。 すると突然猛烈な恥ずかしさにかられ、その陽物を自分の右手で覆い隠した。 (う、うわぁ…… みんななんでこんなところをじっと見てるの?) 顔に熱が上がってくるのを感じて左手で自分の顔を隠した。 もしかしたら、小人達にとってはそれを含めた翔太の身体があまりにも大き過ぎて、どこがなんであるか、そもそも全長はどんな形をしているのかもよく分かっていないのかもしれない。 だから翔太のそれも、近くで見ていた小人達はそれが何物であるか分からずに観察していただけであろう。 近くで見ていたからこそ、そのスケールのデカさになんだか分からなかったのかもしれないが、近くで見られていたからこそより恥ずかしさが増した。 (は、はやくあの隊長みたいな人帰ってきてよお) 翔太は顔を伏せたまま、小人の長を待ったのだった。