月本彩。今日の俺の対戦相手の名前だ。
デビューから連戦連勝し、勢いに乗っている若手ボクサー。一方の俺は勝ったり負けたりを繰り返し、年齢的にもピークを過ぎつつあった。このマッチメイク、『男同士なら』俺は所謂噛ませ犬と呼ばれる立場だっただろう。
男と女はスポーツ、こと格闘技においては越えられない壁が存在している。そして体格的にも俺の方が勝っていた。彼女を踏み台にもう一度浮上してやる、そう強く誓い試合に臨んだのだったが───
試合は一方的な展開になった。俺が一方的に殴られ続けたのだ。
彼女が大きなバストを揺らしパンチを繰り出す度に、俺の身体にダメージは蓄積された。必死になって反撃をするが俺の攻撃は当たらず、彼女の攻撃は当たる。そんな展開が8ラウンド程続いた。
女のパンチでは絶対に倒れない。いつの間にか目標が『勝利』から『最後まで立っている』に変わり、萎えそうな心と力尽きそうな身体を懸命に鼓舞し続けた。客観的に見れば試合が続行できる状態ではなかっただろう。そんな時
女の優しい声が聴こえ、そして
朦朧とする意識の中、顔全体を柔らかい何かが包んだ。
その感触を感じながら、俺の意識は途絶えたのだった。
病院のベッドで俺は年下の女に完敗した現実を噛みしめ、そして思い知った。最終的に彼女からは“敵”としてさえ認識されなくなっていたのだ、と…。
【おまけ】
描いたはいいけど使う機会の無かったキス差分です。