「オイオイオイオイ!何だよこれは!!??」
ここは格闘技場・・・今日対戦する両者が舞台に上がる。
片方からは大男。対して、もう片方からは年増もいかないような少女だった。
大男は上半身は裸で、下半身はダブッとしたズボンを履いていたが、その身体は筋肉の鎧を纏うかのように屈強で、背丈も優に2メートルを越えるくらい大柄で、見るからにサイボーグのような男だった。
対して、少女は落ち着いた佇まいではあるものの、見た目は幼くまだ子供である。
ランニングウェアにミニのプリーツスカート、ニーハイソックスにダンスシューズといった発育の良い活発そうな女の子だった。
「オイッ!何でガキがこんな所に紛れ込んでるんだよ!?」
大男の反応も当然である。少女の見た目は余りに幼すぎた。
「戦いに来たの!おじさんの相手は私よ!」
まっすぐな瞳でこたえる少女。その声は見た目の割に落ち着いている。
「オイオイふざけてんのか!!ガキはランドセル背負って学校に通ってろよ!!」
「子供だからって油断してたら後悔するわよ!」
「へぇ〜後悔って、何を・・・俺が 後 悔 す る っ て !! ??」
・・・ドゴァァァーーーーーーーーンッッ!!!
大男はいきなり少女の腹部めがけて蹴りを繰り出した。まだ試合は始まってもおらず、無防備だった少女は避けることが出来なかった。そして大男の蹴りをもろにくらってしまう。
・・・ダァァァーーーーーーーーンッッ!!!
勢いのままに少女は舞台の端まで吹っ飛ばされ、ゴロゴロと転がった。
試合開始前…不意の一撃を繰り出した大男をレフェリーは慌てて注意するが・・・
「ああ、悪い悪い!!お前らがチンタラしてるからだ!!もう試合が始まったかと思ったぜ!!早くしろよ!!」
全く悪びれる様子もない大男。
「許せない・・・」
吹っ飛ばされた少女だったが、よろよろと起き上がる。レフェリーに戦えるかと確認されるが、大丈夫ですとこたえ、ファイティングポーズをとる。
・・・カーンッッッッ!!
改めて試合開始のゴングが鳴り響く。この試合は、時間無制限で武器も持たない己の体一つで戦い合うルール・・・相手を戦闘不能にした者が勝者となる。
開始早々、少女は勢いよくダッシュし、大男の懐に飛び込むと
・・・ドォォンッッッ!!
大男のお腹に向けてボディブローを叩き込む。
「おぉぉ・・・・ぉぉぉ・・・な ん て な ! !」
クリーンヒットしたかと思われたが、大男には効いていなかった。筋肉質の巨体・・・彼の筋肉の鎧を撃ち壊すには少女の腕は余りに華奢すぎた。
・・・バキィィィ!!・・・ドゴァァァーーーーーーーーンッッ!!!
ニヤッと表情を変えると大男はそのまま拳を振り下ろす。トンカチのように少女の頭を殴り下ろす…と同時に少女を蹴り上げ、先程と同じように少女は吹っ飛ばされ、ゴロゴロと転がった。
「ハッハッハ!!俺はガキだろうが容赦はしない!!むしろ弱者を痛ぶったり、蹂躙するのが大好物なんだよ!!」
そう言うように、大男はこれまで多くの障害事件を引き起こしていた。女、子供、老人とその手口は残虐で、度重なる蛮行から地上では居られなくなり、このアンダーグラウンドへと活動圏を移すことになった。
少女はよろよろと再び起き上がった。大男との体格差は圧倒的であるにも関わらず、彼女の戦う意思は消えていない。再びファイティングポーズを取ると、走り出し大男目掛けてキック(中段狩り)を繰り出した。
・・・バキィィッ!!
大男は手と足を使ってガードしたが『!!!!』…想像よりも少女の蹴りは重かった。
「ガキがぁー!!こざかしいわぁ!!」
激昂した大男は大振りのパンチを放ったが、少女は素早い身のこなしでそれをかわす。この時、少女は腕力では大男に勝てないが、蹴りなど脚技を使えば勝機が見えるかもしれないと悟る。
・・・バキ、バキィィッ!!
・・・ブンッ!・・・ブンッ!
その後は決定打とはならないが、少女はキックを的確に打ち込み、大男の攻撃は当たる寸前でかわされる・・・そんな展開が続く。
「クソガキがぁ!!ちょこまかと動きやがって!!」
大男は肩で息をしていた。彼の屈強な身体を動かすにはかなりのエネルギーが必要であり、消耗が激しい。時間が経過するにつれ、大男の表情は確実に強張ってきていた。
「やあぁッ!!」
対して、少女は不意打ちからのダメージは受けたものの、まだまだ気力体力は充分で動きにキレが増してきている。
このままではまずいと思い始める大男・・・その時、彼の目に飛び込んできた物・・・それは、この闘技場の舞台は舗石タイルが敷き詰められていたが、一部が欠けている箇所があり、その欠けた破片が彼の目に飛び込んできた。それは尖った鋭利な破片だった。
『これだ!!』と思う大男・・・スッとその破片を拾い上げ、少女が蹴りを繰り出してくる瞬間を待つ。
「バカがぁ!!」
少女がキックを繰り出したが、向かってくるその脚に沿って、先程拾い上げた破片を受け止めるように突き出す。
・・・ビシャァァァァッ!!
少女は大男の行動に気付き、晒そうとするが間に合わず、タイルの破片は少女の脚に刺さりはしなかったが、ニーハイソックスが破れ、出血もしている。鋭利な先端が少女の脚を掠ったのだった。
少女は顔を強張らせる・・・次の瞬間、大男の大振りなパンチが少女を捉え…
・・・ダァァァーーーーーーーーンッッ!!!
少女の体ごと吹っ飛ばしてしまった。
しかし、ここでレフェリーが試合を止めに入る。武器を使用したのではないかと大男に問いただすが
「知るかよッ!!勝手なこと言うなよ!!今戦いの最中だぜ!!早く再開させろ!!」
圧をかけるように、大男はレフェリーに詰め寄り、試合は再開されることになった。
「どうしたガキ!?傷口が痛くて動けませんか〜??ハッハッハ!!」
「あなただけは許さない、絶対に!!」
「何言ってんだ!?ここから生きて帰れると思うなよ、クソガキがぁ!!」
「私の全てをかけて・・・倒します!」
再び身構える少女…その懸命な姿が大男には癪に触り、負傷した今が好機だと少女に覆い被さるように飛びかかる。ちょこまかと素早い少女の体を掴んで逃げられなくすれば終わりだと大男は考えた。
そして、身構える少女も逃げなかった。やはり、出血で動揺したのか、動きが鈍く反応出来なかったのだろうか?
そのまま、大男は少女の腕を掴み、ニヤッと笑みを浮かべる。後は引き上げて痛ぶるだけだった・・・
・・・ドゴォォォォンッッッ!!!
その瞬間、少女の膝が大男の顔面を捉えていた。・・・メキメキッ・・・と顔面に食い込むくらいの強烈な一撃・・・大男の引き上げる力が少女の飛び上がりを結果的に手伝ってしまったのだ。
少女は大男の懐以上の位置…顔面に飛び込むチャンスを伺っており、それが成功した。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
大男はそのまま倒され、のたうち回る。
体は筋肉の鎧で覆われているものの、顔面や額部分までは覆えない。少女の鋭い膝蹴りに、大男の額部分はぱっくりと裂けて出血する。さらに鼻血と重なって、彼の顔面は真っ赤に染まった。
「クソがぁぁッ!!絶対殺す!!殺してやるッ!!」
激昂した大男は、所構わず腕をブンブンと振り回す。出血が目に入り、視界もままならない状況の彼だが、怒りで腕を振り回し暴れるが、手応えが全くない。
「クソガキがぁ!!どこにいる!!??」
はっきりとはしないが、視界が僅かに晴れてきた大男が体勢を整えようとした瞬間だった。
「ここよ!じゃあ、いくわよ!」
大男には、少女の声が至近距離で聞こえる。次の一撃を加える為に、少女は暴れる大男の腕を全てかわしながら、彼の近くに居続けたのだ。
そして、飛び上がった・・・
・・・ドゴォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッッッ!!!
少女の蹴りは大男の頭部に直撃する。
強烈な打撃音と共に『ゴキッ』と鈍い音も響いた。
えっ?
お、おい?
首が?
闘技場内部では、一瞬時が止まったかのように静寂が流れたが、ポツポツと観客席から言葉が漏れ出した。
舞台上では大男が立ち尽くしている。
しかし、彼の首があらぬ方向へ曲がっていることは、誰の目からも明らかだった。
着地して、じっと大男を見つめていた少女・・・ポンと彼の体を軽く叩く。
・・・ダァァァァァァァンッッッッ!!!
仁王立ちしていた大男は、雪崩のように床に崩れ落ちた。
・・・カンカンカンカンカン!!!!
・・・戦闘不能!!戦闘不能!!
改めて場内アナウンスが流れる。
大男は大の字のまま仰向けに倒れ込み、見るも無惨な状態となっている。
そして、レフェリーからこの試合の勝者として紹介される少女は、拳を突き上げて勝利ポーズを決め、観客席からの大きな歓声にこたえる。
ここに、数多くの大罪を犯してきた大男は一人の少女によって成敗される結果となったのだった。
「ガキに負けて悔しい?
あっちの世界でしっかりと
反省しなさい!わかった!?」
少女はイタズラな笑顔で闘技場をあとにした。
トモダチ
2023-10-04 03:20:38 +0000 UTC8mg(ハチミリグラム)
2023-10-04 01:56:28 +0000 UTCトモダチ
2023-10-03 20:04:14 +0000 UTC