この記事では、冬眠中のWEB小説『画面の向こうのプロレスラー』の
登場人物看板ヒロインの【リリー(LILLY)】の過去対戦の回想をするにあたり
対戦相手の情報を募集しようという企画です!
↓詳しくはこちら

こちらで募集いただいた対戦相手
【カズキ(30歳/建設業)】さんの物語です!
※ちなみに、このシリーズは過去回想ですが各話ごとの時系列はバラバラです。
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舘崎和希(たてざきかずき)は日々の仕事に追われ、汗と泥にまみれた建設現場で働く30歳の男性。
身長180cmの彼は、鍛え抜かれた体格と卓越した筋力でどんな作業も力強くこなす建設現場でひときわ目立つ存在。
「舘崎!お願いできるか!?」
「はい!!」
仕事仲間は彼の仕事への姿勢を尊敬しており、特に難しい作業や重機の扱いを頼むときは、誰もが自然と彼へと目を向ける。つまりは、彼は建設現場の中でも特に周りから頼りにされる存在だった。
しかし、そんな和希だったが、ふと未来のことを考える瞬間…忘れかけていた夢が蘇る。若い頃から彼はプロレスに憧れていたが、現実的な選択を重視するうちに、その夢は遠ざかっていた。
「舘崎さん!」
「おうっ!任せろ!」
ある日、和希は仲間と仕事をしている最中…地面にハンマーを打ち込むことがあった。
・・・ガァァァァァーーーーーン!!!・・・
建設現場に響き渡るような力強い大きな音…その瞬間、鋭い稲妻が走ったかのように彼は思い立ってしまう。
『自分にはまだ何かできるのではないか?』
そんな強い想いが湧き上がる…
建設現場では何のこともない、日常の出来事…しかし、そのハンマーを打ち込んだ手応えが、彼の心の中…一度抑え込んでしまった夢が、再び燃え始めるかのように身体中を駆け巡らせてしまった。
その夜、和希は家に帰りプロレスの動画を見ながら、憧れていたリングの上に立つ自分を思い描いた。
彼は二十歳前後、プロレスラーを目指したこともあった。しかし、練習中の怪我が悪化し、長期化した結果、その道を断念することに至った経緯があった。
あの頃と今とでは考え方も変わっていた。
しかし、それでも諦められない夢もあることは事実だった。
『自分の体力は無限ではない。これからはもっと年齢とともに体力は低下し、衰えていくものだ。だとしたら・・・』
彼は建設現場の筋トレ器具で体を鍛え始め、昼間は建設業、夜は密かにプロレスの練習を始める。体力と筋肉には自信があった彼だが、技術の面で大きな課題も感じていた。どうにかして、プロレス団体に参加するチャンスはないか模索していた時、彼は友人にその相談を持ちかけていた。
「養成所やスクールとか?」
「まあな・・・アマチュアのイベントで経験を積むとか・・・いわゆる自主興行ってやつ!」
30歳からの挑戦…それはとても困難かもしれない。しかし、方法は幾らでもあると和希は信じていた。
「自主興行か・・・それで、自分の名前を売るってわけだな!」
「そう!ネームバリューを上げるんだ!それで、そのための一番の方法があるけど・・・知りたいか?」
「はぁ?そんなのあるのかよ!教えろよ!!」
「ほらっ、これ!」
そう言いながら友人は、自分のスマホ画面を和希に見せる。
「はぁ?・・・何・・・女??」
画面に映し出されていたのは、ある女性レスラーの画像だった。
「知らないのか?彼女は今最も話題のレスラーのリリーだよ!!」
「全くわからん!」
「・・・そうか、お前SNSやってないもんな!」
それから和希は友人からライブストリームマッチを活動の場とする女子レスラー『リリー』の詳細を教わった。
「この女が男相手にここまで負けなし?・・・まあ100パーセントヤラセだろうよ!」
「・・・そんな感じはしないんだけどなぁ・・・」
「そんなわけねぇよ!・・・まぁ、でも名前を売るにはうってつけの相手だってことはわかった!!」
「ああ、そうだな。しかも、対戦相手は常に募集してるし、一度応募してみるのもありかもな!」
「おぅ!わかった!そうするよ!」
こうして、和希はリリーとの対決に応募し、幾つかのオーディションを経て、運命の一戦を迎えることになる。
『女が相手でも手加減する必要な一切なし・・・ほんとかよ!?そんなこと許したら、どうなっても知らねぇぜ!・・・まぁ、生意気な女をボコるだけで、自分の名前を大きく売れるんだから・・・この募集に受かって万々歳だぜ!!』
和希はリリーのこれまでの戦いを見返したり、分析しようとはせず、”女性”という先入観のみで挑むのだった。
一方の『リリーチャンネル』も次回のライブ配信についてある問題を抱えていた。
次回の対決の場になるのは、『地方の過疎化が進んだとある町の観光センターのホール内に設置された特設リング』という舞台が予定されていた。
町おこしプロジェクトの一環として、リリーチャンネルが誘致されたという経緯だったが、過激な配信も度々行う彼女のチャンネルの性質上、そういった広告塔になるようなことはしないのが鉄則であり、場所を提供してくれたり、協力してくれることに感謝を示す…その点は重視していたが、商業的な意味合いを含ませると自由で純粋な楽しさが奪われることも考慮し、チャンネルを運営してきていた。
そんな中で、色々な要因が重なり、今回は地方の町で開催されることに至ってしまうのだったが、幾つか問題が生じていた。
町の運営側はPRの場ができたことに大喜びかもしれないが、リリーチャンネル側にとっては、そもそも町のPRが目的ではなく、対決がメインであり、過度な期待はしないでくださいというのが本音だった。
そこに温度差が生じるのは当然の帰結である。
今回の対決は地方ロケということもあって、和希は舞台となる〇〇県△△町へ前日入りしていた。ここには小規模であるが温泉街もあり、泊まる宿も料金含め全て手配してくれていた。
「では、登録名は『カズキ』でよろしいですか?」
「はい、それでお願いします。」
「了解しました!では、カズキさん明日は宜しくお願いします!」
泊まる旅館でチェックインを済ませ、リリーチャンネルスタッフと打ち合わせしていたカズキだったが、時刻はまだ15時…日の入りまではまだ時間があった。
「あのっ、ロードワークに行ってきてもいいですか?」
「えっ、あっ、はい!でも、明日試合が控えてますので、ほどほどで宜しくお願いします。」
「わかりました!」
体を動かしたかったカズキは、スタッフに了解をもらいロードワークに出た。
地方の田舎町の温泉街…人はまばらだが、僅かに観光客も歩いている。そして、空気も美味しい…トレーニングするには最高の環境だなと思いながら、カズキは温泉街をぐるっと一周するように走り抜けた。
ロードワーク中、カズキは少し休憩のため公共のベンチに腰掛けて休んでいた時の事……
観光客と思われる女の子が、工芸品店の軒先で店主と話し込んでいる姿が目にとまる。
「すごいですね〜!これとか形が独特で、人が作ったとは思えないくらいです。」
「ははっ!奥に工房もあるけど、見ていくかい?」
「はい!お願いします!」
「ははっ!興味待ってくれてありがとう!お嬢ちゃんはどこから来たんだい?」
「東京です!」
などと、観光客はまばらだったが、細々と営業されているこの温泉街の風景を噛み締めながら、カズキはその日のロードワークを終えた。
翌日、『リリー VS カズキ』の対決が近づいていた。
「今日はよろしくお願いします!」
△△町の観光センターのホールで今日の対決はおこなわれるが、観客は入れない形式をとり、撮影スタッフや関係者のみが見守る中での対決となるが、既に△△町の町長や議会議員などのお偉い方も来ており、いつもの撮影現場とは少し違う雰囲気を見せていた。
「彼等は”町おこし推進隊”と言いまして、△△町の魅力を日々発信しています!喋りも上手いので、もしよければ彼等を出演させてもらえませんか?」
「いやっ、基本的に出演は・・・」
「何なら、町長の私が話しさせてもらってもいいですよ!!」
今回の対決の舞台となる△△町側のアピールが激しく暴走気味になっている…このことは控え室のリリーにも逐一報告されていた。
「・・・という次第なんですけど・・・どうするんでしょうか・・・?」
「いいんじゃない。持ち上げるだけ持ち上げて・・・ヨイショして・・・・配信が始まったら・・・地獄へ叩き落せばいいだけのこと!!」
そう言いながら、暗黒微笑を浮かべるのは、本編のヒロイン(?)
「ひぃぃぃ〜〜!!この人、何かするつもりだよ!?ヤバいヤバいヤバい!!!こんな凶悪な顔の人見たことないです!!」
スタッフの一人が恐怖のあまり逃げ出し密告しようとするのを、もう一人のスタッフ(カメラマン)がそれを制止する。
「いいな!俺たちは何も聞いていない・・・彼女が何か企んでいることも知らない。俺たちは俺たちの与えられた仕事を全うするだけだ!!OK!?」
「お、OKです!」
そんなやり取りが起きている最中、もう一人の出演者…カズキも控え室でこの事態にはっきりとではないが、何か揉め事が起きているということだけは気がついていた。
『・・・ちゃんと開催されるのか?』
彼が思わず不安になる程、状況はゴタゴタしたままリリーチャンネルライブ配信が開始される。
「はい!始まりました〜!!今日の舞台はナント!〇〇県△△町の観光センター総合ホールからお届けしていま〜す!!」
視聴者に向けていつもの笑顔を振りまくリリー…ここはプロフェッショナルである。
「伝統工芸品や温泉街が有名なこの△△町は、〇〇県の中南部に位置し、人口一万・・・」
しっかりと正確な情報を視聴者に丁寧に伝えていくリリーのその姿に△△町の関係者も満足な表情を浮かべる。
「今日はここ、△△町の町おこしプロジェクトの一環として私達は招待されました〜!!そして、その町おこしプロジェクトについて色々調べて、実際に町にも散策しに行ってきました〜!!」
ここまでは、しっかりと町のPRをしている彼女だった……
「・・・でだ!!!」
先程までの明るく元気な表情は一変し、声のトーンが激変するリリー。
「このプロジェクトの内容について何回も見直し、町役場から資料も見せてもらったが・・・このプロジェクトはダメ!!全然、ダメ!!」
その場を凍らせるような発言をし始めたのだった。
「SNSなどのWEB媒体で地域の情報を発信したり、この町の目玉でもある温泉街や工芸品を広くアピールし、地域の活性化を進めていく・・・確かに、前向きな計画かと思うよね!でも、根本的な部分が抜け落ちてます!!」
周りはざわつき、混乱している中、尚も彼女は苦言を続ける。
「・・・伝統工芸の継承者問題、工芸品店や温泉旅館で働く人の持続可能な収入源の問題、大事な部分に対しての対策がなされていません。地域を活性化した結果・・・継承者問題、収入問題も解決できたらいいな〜っていう希望的観測の計画です!これは!一時的に成功を納めても、人材不足になってやがて衰退していくだけです!こんな計画に未来はない!!」
彼女が配信前に地獄に叩き落とすと言っていたのはこのことだった。
町おこしプロジェクトについて、これでもかという程、徹底的にこき下ろしたのだ。
『短期的な観光需要に依存していること』『伝統工芸技術の担い手不足に対する問題解決方法を提示していないこと』『観光の目玉でもある温泉街で働く事業者の収入向上に対しての支援不足』……リリーチャンネルライブ配信のオープンニングで時間をしっかり使って、これらの問題をリリーは指摘した。
「正論パンチが過ぎる・・・」「何を見せられているんだ・・・?」
視聴者の反応は様々だったが、リリーがここまで苦言を呈しているってことは、今回の舞台となった△△町の対応に問題があったことは伝わっていた。
当チャンネルは視聴者と寄り添いながら共に作り上げていくものであり、スポンサーの言いなりにはならないよというメッセージも彼女の言動には込められていた。
「町長!!ちょっと・・・どこへ!!??」
△△町の町長は顔を真っ赤にして出ていってしまい、後を追うように幾人かホールから出ていく。配信に出演したがっていた『町おこし推進隊』の皆の姿もなく逃亡していた。
「おいっ、ちょっと!!これはどういうことだよ!!」
「プロデューサー!尻拭い!頑張って!!」
「くっ、くそう!!」
リリーチャンネルスタッフや関係者達は混乱を極めていた。
あまりの混乱ぶりに、ライブ配信オープニングで『※Nice boat.』が2〜3分差し込まれる事態となってしまった。
【※Nice boat.とは:「都合により、番組を変更してお送りしています」とのテロップとともに城やボートを映した環境映像が代わりに流される状況】
この放送事故はかなりの話題となったが、△△町の住人や議会議員の何人かもリリーと同様のことを考えていたが、何も言えずにいた…そこに影響力のある人間からの後押しする発言…この町の方針を転換するきっかけになってしまうことは、後々になってわかることになる。
「後、30秒で配信再開します!!いいですね!!」
周りは混乱中だったが、演者の二人に呼びかけられる。
「・・・カズキさん・・・今日はゴタゴタして本当にごめんなさい!!もう終わりましたので、切り替えてよろしくお願いします!」
「もちろん!ちょっとびっくりしたけど、問題ないよ!!メンタルは万全だ!!」
リリーはお騒がせしたことをカズキに謝罪し、彼もそれを受け入れた。
「心がモヤモヤした状態で試合するなんて・・・カズキさんに失礼でしたから!!今は心もスッキリで気持ちも上がってます!・・・誰かをやっつけたくてたまらないメンタルかもです!!」
「言うね〜嬢ちゃん!!でも、そんな華奢な体で何が出来るって言うんだ!?パワーで圧倒してやるよ!!」
「・・・パワーですか・・・楽しみです!!」
程なくして配信は再開され、運命の一戦が始まる。
カズキは実物のリリーと対面してみて、彼女の可憐な見た目からは想像できないほどの強さを感じていた。同時に、彼女の発言の節々にも表れていたその知的さにも関心し、ただ持ち上げられ、ヤラセで人気を得てきた相手ではないことをここで初めて理解する。『対策なんて必要ない』と割り切ってしまったことを少し後悔した。
・・・カァァァァーーーンッッッ!!!・・・
ゴングが鳴ると同時に、カズキは一気に前進し、リリーに圧力をかける。
彼のパワーを活かしたショルダータックルや、持ち上げて叩きつけるボディスラムが次々と炸裂し、「おおっ!!」と視聴者からも驚きの声が上がる。
リリーはその攻撃を軽やかに受け流す場面もあれば、しっかりと耐えながら機を見計らっているようにも見える。
・・・バァシィィィィィ!!!・・・
一瞬の隙をついてリリーが回避すると、彼女は巧妙にハイキックで反撃に出る。
しかし、カズキは持ち前のパワーで押し返し、さらに強烈なラリアットでリリーを倒しにかかる。
・・・ガァァァァァーーーーンッッッッ!!!・・・
「おいおいおい!!やるじゃんこの対戦相手!」「強いよ!!」「やっぱりリリーは動揺してんのか?」
視聴者の反応は様々だったが、対戦相手のカズキは素人とは言え、只者ではないという認識を持ったことは間違いない。
しかし、どんなに勢いよくリングに叩きつけられてもリリーはムクッと起き上がってはファイティングポーズをとる。
『・・・手加減してないんだけどな・・・』
彼女が立ち上がる度に、カズキの表情は少し雲る……そんな展開が続いていたが、試合が進むにつれ、彼女の動きに変化が現れ始めた。
カズキの力技に対して、リリーは足技や俊敏な身のこなしで、少しずつペースを奪い返し始めていたのだ。
彼女はタイミングを見計らい、場外ロープを利用したダイナミックな空中技でカズキを翻弄するようになった。
・・・ダァァァァーーーーンッッッッ!!!・・・
60度の高さから飛び込んでくる攻撃の対処方法など練習してこなかったカズキにはどうしようもない。
リリーの空中攻撃にダメージを蓄積させていくカズキ…次第に試合のペースは彼女に傾きかけていた。
・・・バキィィィィィィィィィィィィ!!!・・・
飛び込んできたリリーを受け止めてからのカウンターのボディスラム!!
「どうだぁぁーー!!」
プロレスラーを目指し、挫折してからも汗と泥にまみれた建設現場で体を動かし続けてきたカズキの体力や精神力はまだまだ健在だった。
「これで終わりだ!!」
畳み掛けるように、リング中央で、カズキはリリーを持ち上げ、大きなバックブリーカーを決める。
・・・ダァァァァーーーーンッッッッ!!!・・・
彼のパワーは圧倒的で、リリーの体は大きく弧を描いてマットに叩きつけられる。
視聴者は息を飲み、カズキも自信に満ちた表情でゆっくりとリリーを見下ろす……しかし、その刹那、リリーはカズキの足を掴み、素早く下から転がし、予想外のアームロックを狙ったのだ。
「く、クソゥッ!!」
カズキが力任せにリリーを振り回そうとした瞬間、リリーは素早く反転し、カズキの腕を捉えてひねりながらその動きを封じ込める……この状況を見守る視聴者の脳裏には、これまでリリーが数々の大男を相手に打ち破ってきた光景が過ってしまった。
『・・・なんなんだよ!!こいつは!!??』
脳内を整理する余裕もなく、カズキは再び猛攻に出ようとするが、リリーが予想外の力強さを見せ始める。彼女は仕掛けてきたカズキの手を掴み、カウンター気味に彼の腹部にエルボーを仕掛ける。
・・・バキィィィィ!!!・・・
一瞬、カズキの動きが止まったところにすかさずリリーは彼を持ち上げ、まるで彼のパワースタイルを真似するかのように、ボディスラムを叩き込む。
・・・ダァァァァーーーーンッッッッ!!!・・・
驚きの表情のままカズキは、リング上に仰向けに倒れ込む。
「ヤバイって!!」「スゲェーーー!!」
セクシーなコスチュームに身を包んだ女子レスラーが大男を持ち上げ、宙に舞わせてしまう瞬間は圧巻だった。しかし、それだけでは終わらない。
リリーはカズキを転がすようにうつ伏せ状態にすると、彼の足首をしっかりと掴み、足をリングに固定するように踏み込みながらその姿勢を崩さないように慎重に引き寄せる…そして、彼女の体勢が整うと、カズキの両腕を取り、ゆっくりと彼の体を引き起こし始める…カズキの背中が徐々に反らされ、リリーは膝をリングに着けて安定させながら、彼を持ち上げる準備を整える…彼女が息を吸い込んで力を込めると、カズキの体は完全に宙に浮かび上がり、ロメロスペシャルの形が完成したのだった。
カズキの言葉にならない絶叫がこだましている。
「おおおおおおおお!!!!!」「ロメロスペシャルキタ━━━(゚∀゚)━━━!! 」「こんなこともできんのかよ!?」「強すぎるんだけど・・・この人・・・」
パワータイプのカズキの御株を奪うようなリリーの圧巻のパワー技に視聴者の興奮は爆上がりしていた。
「カメラマン!ちょっといい??」
リリーはカズキを持ち上げたまま、ライブカメラをこちらに向けてもらうように要望する。
「今日は色々と放送事故を起こして視聴者の皆さんには申し訳ありませんでした。このチャンネルは今ここで起きているありのままのリアルを伝えたいから、収録ではなくライブ配信にこだわってます!!上の立場の人からの意向とか忖度は一切するつもりはありません!したいなら、私に挑んで勝ってからにしなさい!」
彼女は視聴者を安心させるため、改めてリリーチャンネルの方針を宣言した。
「・・・それと、視聴者の中にはヤラセだろ!という声も多いので、これを見て本気でそう思う!?というところを見せつけてやろうという私の本音もちょっとありますが・・・ヤラセだと思う人は私に挑んでみて、本当かどうか体験してみてください!・・・それと、私にこうやってボコボコにされてみたい人も募集しているので、ぜひ概要欄から応募してくださいね!」
彼女はリリーチャンネルのPRも同時におこなった。
↑技を掛けている最中に!(技を掛けられているカズキにとってはたまったもんじゃない!)
♡ボコボコにされてみたい人募集♡
因みに、画面越しにリリーにそう呼びかけられたら、ライブ配信中に思わず、対戦相手募集要項をポチってしまう視聴者達が後を絶たなかった。
・・・ダァァァァーーーーン・・・
リリーの意思表明が終わり、ようやくカズキは解放され、リングに崩れ落ちたが、既に彼の体力は限界を迎えていた。
『・・・こんな・・・はずじゃ・・・』
起き上がることもできず、這い蹲りながらなんとかロープに逃げようとするが、リリーに引きとめられてしまう。
「肩を貸してあげるから起き上がりなさい!!」
リリーはそう言うと、よれよれのカズキを起き上がらせ立たせる…そして、背後に回ると力強く両肩にカズキの体を担ぎ上げる。
『いやっ・・・肩を貸すってこういう意味じゃ・・・』
カズキの体が彼女の肩の上で無防備に晒される。リリーはそのままカズキをしっかりと固定し、膝を曲げながら腰を使って圧力をかけ、彼の背骨と腰にじわりじわりと負荷をかけていく。
「アルゼンチンバックブリーカーだーーーッッッ!!」
カズキは最後の力でもがくが、リリーの力強いグリップから逃れることはできない。
「ヤバすぎるってこれ!!」「彼、死んじゃう!!」「羨ましすぎるぅぅx・・・」
視聴者の中にはここで絶頂に達してしまう者も多かった。
苦痛の表情を通り越して、意識が遠のいていくカズキ…もう試合の勝敗は決していた。
技を解き、リングに崩れ落ちた彼にリリーは覆いかぶさりながら、彼の右足を持ち上げる。
「ワン!!ツー!!スリー!!カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!!!」
鮮やかなスリーカウント勝ちでリリーが勝利した。カズキはリングに倒れ込んだまま動けなかった。
幾つかのハプニングもあったが、衝撃的な試合はここに幕を閉じることになった。
・・・それからのこと・・・
プロレスラーを目指し、名前を売るためリリーに挑戦することになったカズキだったが、敗退という結果にも関わらず、その希望は叶うことになる。
リリーとの一戦の模様があるプロレス団体の目にとまり、オファーを受けることになった。彼は30歳からの夢への挑戦が始まったのだ。
『いつか彼女にリベンジしたい』その思いが大きなモチベーションへと繋がる。
〇〇県△△町の地域基盤支援プロジェクトが始まり、クラウドファンディングに多くの支援が寄せらた。支援を必要とする人材への的確な補助、外部からのインターンシップの受け入れなど、下火になりつつある地方のある温泉街を救う活動が始まった。
そして、そのきっかけを作ったリリーは『エコノミックレスラー』という訳のわからない通り名が付けられ、散々地方の田舎町をこき下ろしたにも関わらず、多くの地方自治体からオファーが届くことになった。(丁重に断りました)
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2024-11-11 09:54:33 +0000 UTCフェリックス
2024-11-11 04:11:21 +0000 UTC