人類進化の到達点──その一つであると言われる『超能力者』が、ついに人口の一割を占める時代へと突入した。
増え続ける超能力犯罪に対抗するべく、警察組織では特殊能力対策部門が設立されていた。しかし民間人の希望とは裏腹に悪に立ち向かえる能力者は限られており、僅か十数歳の若者にすら頼らざるを得ないという苦しい状況が続いている。
ある少女は生まれながらにして強力な力を自在に操ることができた。警察にスカウトされて以来は訓練を積み、日々能力を行使して治安の維持に努めている。
既に一人前とまで評される彼女ではあるがまだ若く、時に溜め込んだストレスで気が滅入る日もあった。
だが心配は無い。少女にはそういう時に最も効果的なストレス解消手段があったのだ。
彼女の住まいとして与えられた特殊警察寮の個室にて。
そのストレス発散方法とは、少女が今よりも幼い頃、テレビや漫画などで見ては憧れた状況を再現するものであった。
「よ~しっ」
張り切ってベッドの下に隠していた縄を取り出す。毛羽もなく綺麗に整えられた麻縄だ。
少女はそれを念動力によって浮遊させ、丁寧に自らの身体へと這わせていった。縄は複雑に絡み合い、所々で強く結びつけられる。
「これをこうして……ん……っ」
誰にも言えない彼女の趣味──それは自縛をすることであった。
以前どこかで拾った特殊な雑誌を開き、緊縛されたM嬢の写真を見ながら自分の身体で再現していく。本来ならとても真似できない縛り方ですら、超能力者の彼女にとってはお手の物であった。
「はぁっ、んん……!」
ギチギチと縄の音が身を捩る度に鳴り響く。
まだ控えめな胸を強調し、至る所に食い込ませた縄の締め付けで僅かな痛みが走る。本来であれば全身を緊縛されたこの状況は苦しくて仕方がないはずなのだが、趣味を始めてしばらく経っていることもあり、この頃は少し物足りなさを感じてしまうことの方が多くなっている。
もっと──もっともっと縛られたい。
昂った想いはついにある決断に到達した。
「……今日は、やってみようかな」
興味を抱きつつも多少の怖さを抱いていたため今まで試していなかったことがある。
少女は余った縄をある部位目掛けておそるおそる走らせていった。
そこは人間の代表的な急所に当たる部分。
自分の身体に情け容赦を掛ける必要はない。準備が整い次第、少女は縄をキツく締め上げた。
「ぁ……ぁあッ!」
縄尻を急いで後手に結びつける。これで身体を少しでも動かす度に、例の急所へさらに刺激を与える仕組みが作られた。
「ひいん、あぁっ……!!」
もはや落ち着ける姿勢など許されない。ただの呼吸さえも少女の秘められた部分を責め立てる。
「あっ、はぁ……んんっ……!」
夢中で縄の感触を味わい続ける。
自分がとても残酷な仕打ちを受けていることにえも言われぬ興奮を覚えていた少女は、ある一つのミスに手遅れになるまで気付くことができなかった。
「す、すごい……き、きもちい……」
「何をやっているの!?」
「ッ──!?」
自室の入り口から一人の女性が驚愕を浮かべた表情でこちらを見ていた。
──えっ、嘘!? 鍵閉め忘れてた!?
女性は少女に食い込む縄と宙に浮いた雑誌をそれぞれ一瞥するが、すぐには状況を理解できない様子でいた。
彼女は超能力者ではないながらも、寮に住まう少女達の面倒を見てくれる心優しい女性であった。少女にとっても例外ではなく、実の姉のように親しみを感じる数少ない相手なのだ。
「いやぁっ!!」
少女はさっきまで楽しんでいたものをはるかに超越する羞恥心に見舞われ、あっという間に冷静さを失ってしまった。
耐え切れなくなった末に取った行動は瞬間移動能力による縄からの脱出と、念動力の浮遊による自室からの脱走であった。
──見られた! 見られた! 見られたぁっ!!
もう恥ずかしくてこの寮にはいられない。それどころか誰とも顔を合わせられるはずもない。
勢いのまま飛び出していった少女はその後、乱れた心を落ち着けられるまで寮に帰ることは無かった。
一方──部屋に取り残された女性は自らを締め付ける縄に苦しめられていた。
「ああああぁ……ッ!!」
超能力少女は瞬間移動能力によって縄からの脱出を果たした。しかしその能力は転移先に物体があった場合、元の自分の場所と入れ替えるという特性があった。
おそらく少女は逃げ出すための移動先を部屋の入り口に設定したのだろう。
そしてそこには少女の痴態を目撃した女性が立っていた。
直前まで少女を縛めていた縄の中には当然女性が収められることになり、結果全身をとんでもない痛みと共に締め付けられることとなった。
──痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃっ!
少女との体格差によって縄の拘束は途方もない苦痛を生み、まだボンレスハムの方が伸び伸びしているとさえ感じる有様であった。
「だ、誰にも言わないから……帰ってきてぇ……!!」
思わずのたうち回ってしまったせいでさらなる痛みに襲われる。
部屋には少女が所持する文房具があるはずで、中には縄を切れる刃物もあるだろうが、ピョンピョン跳び回って探すことなどとても出来る状況ではなかった。
もはや女性に残された手段は自動で閉まっていた部屋の扉を見つめ、少女が帰る時を待ち続けることだけだ。長い夜を予感し、彼女の胸中は途方もない絶望に覆われるのであった。
4wearemanytoo
2024-02-18 16:17:14 +0000 UTCぬ!@一次創作限定
2023-09-30 23:20:50 +0000 UTCユーリ
2023-09-30 22:47:58 +0000 UTC